あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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最終章 永遠の愛編

第84話 謎の手紙/亮二・隆

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 日曜日、俺は加奈子ちゃんが創ったボランティア部の初めての活動にお手伝いをするという形で参加した。

 俺は加奈子ちゃんと待ち合わせをして一緒に活動場所であるコミュニティーセンターに足を運ぶと少し早くついてしまい、他の部員の姿は無かった。

「なんだか緊張するなぁ……」

「フフフ……でも部員の一部の人達もりょう君以上に緊張していると思うよ。あ、顧問の先生もね」

「え、そうなのかい?」

「そうだよ。数名の人達はりょう君の事を知っている人達だから……」

「そういうことかぁ……俺が入院している時にお見舞いに来てくれた子達もいるってことなんだね?」

「う、うん……」

 あの日、お見舞いに来てくれた人達の顔はある程度覚えている。俺が記憶を失っている事を知った時、凄いショックを受けた表情をしていたのが印象的だったから……

 そして、それからは加奈子ちゃん以外は誰もお見舞いには来てくれなかった。それだけ俺に忘れられた事が悲しかったということなんだろう。きっと悲しくなる程の交流を以前はしていたんだろうなぁ……

 だから俺は今日、彼女達に会ったら一言謝るつもりだ。そして一から交流を深めよう、新しい思い出を作っていこうと言うつもりでいる。

「 「か、鎌田先輩……」 」

「え?」

 俺の名前を呼んだ女の子二人は髪型は違うが同じ顔をしている子、きっと双子だろう。そして加奈子ちゃんと中学から親友で前にお見舞いに来てくれた事のある平田姉妹……前に会った時より二人共大人っぽくなっているなぁ……

「二人共、久しぶりだねぇ……前はお見舞いに来てくれてありがとね」

「いえ、そんなお礼なんて……それよりもあれから一度も顔を出さなくて申し訳ありませんでした……」

 髪の長い方の女の子が涙ぐみながら謝ってきた。

「気にしなくていいよ。俺が君達の事を忘れてしまったのが原因なんだろうし……それよりも今日はよろしくね? 今日からまた新しい思い出を作っていこうよ」

「 「は、はい!! こちらこそよろしくお願いします!!」 」

 彼女達に笑顔が戻る。

 すると続々と他の部員が集まり出し、その中の数名の男子や女子達も俺に気付いた瞬間、一目散に取り囲み、笑顔で中には涙を流しながら声をかけてくれた。

「鎌田さん、お久しぶりです!!」「鎌田先輩、お身体はもういいんですか?」
「今日は一緒にボランティア活動が出来て嬉しいです!!」「私、嬉しくて泣いちゃいそうです!!」

 俺はとても幸せな気持ちになれた。これも加奈子ちゃんのお陰だと思いながら彼女の方を見ると加奈子ちゃんも微笑みながら涙を流していた。

「あら、鎌田君、凄い人気だねぇ? 鎌田君の方が顧問の先生みたいだわ。フフフ……」 

「え? あ、あなたは……俺が目覚めた日にお見舞いに来てくれた……」

「はい、立花朱里です。あなたの元大学の先輩で今は青葉東高校ボランティア部の顧問をしています。今日はせっかくのお休みなのにお手伝いに来て下さってありがとうございます」

「こ、こちらこそ俺みたいな部外者を参加させていただいてありがとうございます」

 そうだったんだ。この人が加奈子ちゃん達の顧問……まさかあの時お見舞いに来てくれた人が教師になっていたなんて……

 俺はとても驚いたが何故だか、この立花さんが顧問に適任だという気持ちにもなった。

「鎌田君? 前は前の思い出として大事かもしれないけど無理に思い出す必要なんて無いわ。それよりもこれからの方がもっと大事だと思う。これからの人生の方が長いんだしね。それを実践している加奈子ちゃんを見て私もようやくその思いになれたの」

 立花さんの言葉を聞いてこの人も俺が記憶を失った事で悲しい思いをした一人なんだと理解した。そして俺を含めたたくさんの人達が加奈子ちゃんの行動によって心が救われているんだという事も改めて知る事ができた。。

「は、はい……そうですね。俺も加奈子ちゃんのお陰でそう思えるようになってきました……」

「お互い、今を……これからの人生を精一杯頑張りましょうね?」

「はい、頑張りましょう」

「ちょ、ちょっと立花先生もりょう君も、急に私のお陰だとか言わないでくださいよ。そんな事言われたら凄く恥ずかしいから……私、何もしてないし……そ、それよりもみんな、揃ったみたいですしそろそろ準備に取り掛かりませんか!?」

「フフフ……そうね」

 照れている加奈子ちゃんはとても可愛らしくて俺はじっと見つめていた。



――――――――――――――――――――――――

 土曜日、今日は仕事が休みだが俺は自宅の書斎で来週行われる青葉市の新しいシンボルとなる大観覧車『ジャンプスター』開業記念セレモニーの打ち合わせ資料を眺めていた。

 資料には開業予定日は平成25年4月29日祝日と記載されていた。まぁ、ゴールデンウイーク初日に開業するのは当然だな。

 でも何故、ジャンプスターの部品の一部を製作しているだけの中小企業の社長の俺が開業記念セレモニーの打ち合わせという大事な会議に参加するのか、それは仕事を受注してくれている大手の橋本金属青葉工場の製造部長が俺の弟、博だということもあるが、もう一つ、セレモニーの際に超目玉となる企画が考えられていて、それを実現する為には俺の協力が不可欠だということからだった。

 その超目玉というのはそのセレモニーに青葉市が生んだ2大女優、岸本順子と五十鈴広美にも出席してもらいたいからだということだ。

 岸本は俺の同級生で広美は俺の娘ということで俺がお願いすれば二人共快く引き受けてくれるのではないかという安易な考えで俺みたいな者が大事な会議に参加せざる負えなくなったのだ。

 まぁ、おそらく二人のことだからスケジュールさえ合えば嫌だとは言わないだろうが、もし二人の所属している事務所が拒否したらどうしようと考えるだけで気が重たくなってしまう。

 俺も青葉市で生まれで地元に愛着はあるし、学生時代の思い出がたくさん詰まっているエキサイトランド跡地にできた観覧車ジャンプスターには『前の世界』から『こちらの世界』に再び戻り幸せな人生を歩むキッカケをくれた乗り物だという恩みたいなものもあるり成功はさせたいと思っている。

「はぁ……でも責任重大だよなぁ……」

 コンコン

 部屋のドアを誰かがノックしてきた。

「隆君、入ってもいいかな?」

 ノックしてきたのは香織だった。

「ああ、いいよ」

 ガチャッ

「あのね、隆君宛てに手紙が届いているんだけど、差出人の名前は無くてKTって書かれていて……これって差出人のイニシャルなのかしら?」

「KT?」

 俺は香織から手紙を受け取り封を開け中の手紙を取り出した。文字の感じからして差出人は女性のような気がする。

 そして俺はその手紙を読んで衝撃を受ける。

『突然のお手紙、お許しください。来年、行われるジャンプスターの開業記念セレモニーの日をあなたが知恵を絞り4月30日にしてほしいのです。そうすれば五十鈴隆、石田浩美、そして私が変えてしまったこの世界の未来に対する反動が、あの子達によって全て終わらせることができるでしょう。これがあなたにとって最後の試練です。あの子達やかかわってきた全ての人達の幸せの為に頑張ってください。遠く離れた場所からあなたをずっと応援しています。 KT』

 一体、これはどういうことなんだ? この手紙の内容を信じろと言うのか?
 
 でも俺や石田の秘密を知っているということはこのKTという差出人もタイムリープ者ってことなのかもしれない……

 ただ4月30日の平日に記念セレモニーをやれっていうのは難しい話だな。
 何故29日の祝日ではダメなんだ? たった一日しか違わないのに……

 それに俺達が未来を変えてしまった為に起こったいくつかの反動……それを『あの子達』が終わらせる……あの子達……

 あっ!!

 ま、まさか……そういうことなのか……

 だから俺に最後の試練という形でこの日に……






――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
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