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第6章 七夕編

第31話 初恋の人以外からの告白

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 俺は『つねちゃん』の事が気になり買い物どころではなかったが、他の三人が段取り良く買い物をしてくれたので、なんとか無事に『七夕祭り』で使う衣装の材料などは全て揃える事が出来た。

 そして俺達は解散するのだが、高山、石田と次々に別れたが寿は俺と家が近所なので俺としては非常に気まずい状態では有るが一緒に自宅に向かって帰っているところである。

 しばらくは二人共、会話もせずに黙って歩いていたが、寿の方から小さい声で俺に話しかけてきた。

「五十鈴君、今日はゴメンね……」

「えっ、何の事?」

 俺は寿が急に謝ってきたので少し驚いてしまった。

「五十鈴君は常谷先生達と一緒に買い物がしたかったんでしょ? それなのに私が断ってしまったから……五十鈴君、とても気を悪くしてるんじゃないかなぁと思って……」

 俺は更に驚いた。

 まさか俺が『つねちゃん』と一緒に買い物が出来なくてガッカリしていた事を寿に見抜かれていたとは……

 『中身が大人』の俺としては不覚を取ってしまった感がしてしまう。

 ただ俺も寿に返事をしない訳にはいかないので、脳みそをフル回転させ、当たり障りの無い返事をする。

「いや、別に俺はなんとも思ってないよ。ただ、つねちゃん達と一緒に買い物をすれば向こうは大人だしさ、色々とアドバイスももらえてスムーズに買い物が出来るかなぁとは思ったけど……でも今日の買い物は寿達が凄く頑張ってくれたお陰で俺達だけでも問題なく買い物出来たから……だから寿は何も気にする必要は無いよ……」

「本当に?」

「ああ、本当だよ……」

 寿は一瞬、間を空けてから俺にこう言った。

「五十鈴君は、ホント、優しいよね? だから私……」

 俺は寿が次に言おうとしている言葉が何となく分かったので非常にマズイと思い、話を変えようとしたが、寿の方が話を変えてきた。

「ねぇ、五十鈴君覚えてるかな? 一年生の頃に私が五十鈴君に百円をあげた事……」

「えっ? ああ、そう言えばそんな事あったよね。俺が散髪をした帰りの時だったかな?」

「そうそう、その時だったわ。その時、五十鈴君は行きたいところがあって電車賃が必要でお金に困っていたよね?」

「そ、そうだったね……それであの時、寿が自分のお小遣いの百円を俺にくれたから、とても助かったんだよ。今頃だけど、あの時は有難う……」

 俺は何故、寿が五年前の話を持ち出して来たのかよく分からなかったが、とりあえずお礼を言ってみた。

「あの時、五十鈴君にお金をあげる代わりに、どこへ行ったのかまた教えてね? って言った事も覚えてるかな?」

「えっ?、そうだったかな? そ、そう言えばそんな約束もしてたような……」

 俺は少しだけ『小学生』の寿に対して焦りの感覚が出始めて来る。

「でも五十鈴君……結局、教えてくれなかったよね? まぁ私も聞かなかったんだけどさ……」

「そっ、そうだよ、そう!! 寿が聞いてこなかったから俺もつい、言いそびれたというか……」

「五十鈴君……あの時、常谷先生の家に行ったんでしょ?」

 俺は更に更に驚いた。
 まさか寿にそこまで知られていたとは……

 でもさすがに俺も寿にここまで知られていたら誤魔化す必要も無いなと思ったと同時に寿が俺に『告白』する前に諦めさせる良いチャンスだとも思い、ここは正直に言おうと決断した。

「そ、そうなんだ。あの時、俺はつねちゃんの家に行ったんだよ。でも一人で行こうと思ってたのにさ、駅前で今日商店街で会った志保さんに捕まっちゃってさ、結局二人で一緒に行く事になったんだよ……」

「へぇ、そうなんだぁ……でも常谷先生の家に行ったのは何故? 常谷先生の事が好きだから……?」

 俺は覚悟を決めた。

「そ、そうだよ。俺は『つねちゃん』が好きなんだ。大好きなんだ。その気持ちは今も変わってない……」

 遂に寿に言ってしまった……
 もし明日、クラス中にこのこの事が広まっていたらどうしようという不安が湧いてくる。

「やっぱりそうなのね。私もそうかなって思ってたの。でもね、私も五十鈴君の事が好きなの!! 大好きなの!! それだけは知ってて欲しいの!!」

 俺は唖然とした。

 今までこの五年間、寿に告白させないように努力をしてきたのに……
 そして今日、告白をさせない為に『つねちゃん』に対する思いを伝えたはずなのに……

 俺は『生まれて初めて』女の子から告白されてしまった……




――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

遂に隆は寿さんに告白されてしましまいまいした。
『過去の世界』から含めても女子から初めての告白......
隆は一体どうするのか!?

次回もお楽しみに(^_-)-☆
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