上 下
39 / 133
第7章 夏休み編

第39話 初恋の人以外の人と〇〇……そして……

しおりを挟む
 俺のお見舞いに来てくれた高山と石田であったが、高山の方が用事があるという事で先に帰ってしまう。

 そして俺の部屋には俺と石田の二人きり……

 俺は頭痛を我慢して余裕が無いという事もあり、別に石田と二人きりと言う状況を意識していなかったが、石田の方はそうでも無かったようだ。

「た、高山君、先に帰っちゃったね……?」

「あ、う、うん、そうだね……石田はまだ帰らなくて大丈夫なの?」

 正直俺は石田にも早く帰ってほしかったので、それを悟られない言い方をしたつもりだったが……

「私にも早く帰ってほしいの……?」

「そっ、そんな事は無いよっ!! ……痛っ!!……」

 石田から予想外の返しが来たので、俺はつい焦ってしまう。と同時に頭痛もさっきよりもひどくなってきた。

「ゴメンゴメン、五十鈴君……体調悪いのに長居をしてしまって……私も、もうすぐ帰るから。でも、もう少しだけいさせてくれない? 今日は高山君が用事があって先に帰る事は知っていたし、先に帰るのを待ってたの……」

「へっ?……」

 俺は石田が何を言いたいのか、何をしたいのか理解が出来なかった。

「私、どうしても五十鈴君と二人きりになった時に話したいことがあったの。でも今までそういうチャンスが無かったというか……五十鈴君がこんな時に申し訳ないんだけど、なんとなく今日しか話せない様な気がして……」

 石田のこんな真剣というか、素の顔は今まで見た事が無い。
 いや、一度だけあったかな?
 そう、『七夕祭り』の時の……

「実は私、聞いていたんだ……あの『七夕祭り』の始まる前に五十鈴君とつねちゃんが話をしているところ……私、ずっと聞いていたんだ……」

 俺は驚きのあまり声が出ない……

 やはりあの時、石田は柱に隠れて俺達の会話を聞いていたんだ!?
 そして石田はこの約一ヶ月、何も知らないフリをして過ごしてきたのか?


「い、石田、お前……その事をみんなに……」

「心配しないで。誰にも言わないわ。それに言っても誰も信用しないわよ。まさか五十鈴君とつねちゃんが結婚の約束をしてるだなんてさ……」

 俺は石田の言葉に少しホッとしたのも束の間……

「でもこれだけは言わせて!! 絶対に無理だからっ!! 五十鈴君とつねちゃんが結婚なんてあり得ないから!! だってそうでしょ!? 余りにも二人の歳の差が有り過ぎるじゃない!!」

 俺は石田に『正論』を言われて少しカチンときてしまい頭の痛みを我慢しながら言い返す。

「とっ、歳の差なんて関係無いだろ!? 好き同士が結婚して何が悪いんだよ!? 石田は、こっ、寿の事を思って言ってるんだろうけどさ……」

 しかし、石田は俺に更に予想もしていなかった言葉を返してくる……

「ひっ、久子は関係無いわ!! 久子が五十鈴君を好きだって事は分かってるわよ!! で、でも……そんなの関係ない……わ、私も前から五十鈴君の事が好きだったの!! 私の事をいつも気にかけて声をかけてくれる五十鈴君が大好きだったの!!」

「へっ?」

 俺は更に驚きのあまり、次の言葉が見つからない……
 そんな俺に石田は追い打ちをかけるように話し出す。

「私は久子と友達だから……だから私は五十鈴君の事を諦めようと努力していたのに……だから久子と五十鈴君をくっつけて完全に諦めようとしていたのに……でもあの『七夕祭り』の時の二人の会話を聞いて、私……気が変わった……あんな『おばさん』に五十鈴君を取られるくらいなら、久子に遠慮なんてしている場合じゃない!! 私は自分に正直になろうって……」

「い、石田……」

「お願い、五十鈴君!! つねちゃんの事を忘れてとは言わないわ。直ぐに忘れられるはずないんだから……でもこれからは私の事も少しは見て欲しい!! そして私も五十鈴君の事が大好きだという事を覚えていて欲しい!! だから五十鈴君が私の思いを忘れない為にも……」

 えっ!!??

 石田は突然俺に抱きついてきた。そして……

 石田から俺の唇に自分の唇を合わせてきたのだ。

 石田とのキス……おそらく時間にして二、三秒だっただろうが、俺にとってはとても長い時間に感じた。 


 そして石田はソッと唇を離すと真っ赤な顔をしながら俺と視線を合わさずにこう言った。

「じゃ、じゃあ、私も帰るね? 早く良くなって試合、絶対に観に来てね? そ、それじゃあ、お大事に……」



 俺は布団の上に座りながら、そして自分の唇を触りながら茫然としていた。

 まさか、石田が俺の事を……
 たしかに『過去の世界』でも仲が良かったのはたしかだが……

 でも俺の方が石田の事を好きだったはず……
 いや、違うな。俺は石田の気持ちを知る事は出来なかったんだ……

 だって石田は中三の夏にこの世を去っているのだから……


「うっ、頭が痛い!!」

 あれだけ『つねちゃん』に嫉妬をしていた俺が、自分からでは無いとはいえ石田とキスをしてしまった事への『罪悪感』も重なり、頭痛が更に悪化してきた。

 俺は布団に潜り込み、もがき苦しむ……

 つ ね ちゃ ん ご め ん

 そして俺はまた気絶するかのように眠りについたのだったが……


 ビリッ ビリビリッ

 突然、俺の身体に電気が走る様な感覚が起こり、そして数秒後、身体中に『昔』経験したことのある激痛が襲ってきたのであった……





――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

これで夏休み編は終わりです。
そして次回から新章が始まるのですが......

次回もどうぞお楽しみに(^_-)-☆
しおりを挟む

処理中です...