またいつか会いましょう

盛のクマさん

文字の大きさ
2 / 2

リオとリリス

しおりを挟む
あの後ボクはリリスを連れて家へ連れて帰った。
リリスは落ち着かないようで暫く椅子に座ってモジモジしたり、ボクの後をついて歩いたりしていたが今は本を読んでいた。
さて、そろそろ昼ごはんの準備をしようかな。

「リリス、何か食べたいものある?」

一応聞いてみたら本を足に押し当ててきた。それは色々なベリーがはいったパイだった。

「…これ!これたべたい!」
「ははっ リリスは甘い物たべたいの?」

目をキラキラさせてうなずいた。だが、お昼ご飯としてはとても不釣り合いだったた。

「他は?」
「…パン」
「パン?…じゃあサンドイッチにしない?」
「…サンドイッチたべたい!」
「わかった!作るから手伝ってくれない?」
「…てつだう!」

畑に行って野菜を取ってくると、リリスはそれを切らせろと言わんばかりに包丁をブンブンと振っていた。苦笑いをして優しく包丁を取り上げ、切り方を教えた。リリスはとても器用で物覚えもよかった。野菜を切る時のザクザクしたのが気に入って切らなくてもよいレタスの根っこを細かくなるまで切っていた。野菜を切った後、パンにバターをぬってリリスに好きなものを挟むように言ってから渡した。キャベツ、トマト、レタス、ハム、卵、他にもフルーツをいくつか用意されている具材達はどれもみずみずしく、とても美味しそうだ。目をキラキラとさせてどんどんとサンドイッチを作っていく。大丈夫だな、と思い使った皿やまな板を洗っていると服をグイッと引っ張られた。若干転びそうになる程引っ張られ、ビクッとする。

「びっくりしたー、どうかしたの?」
「…」
「終わった?」
「…あのね」
「うん」
「…」

リリスはモジモジもして言いずらそうにしていた。どうしたんだろう、怪我でもしたのかな!?
無言が続き、その間ずっと不安なことが駆け巡り不安で仕方ない。苦手なものでもあった?虫でもいた?具合い悪くなったの?なんだ!なんだ!どうしたんだ!
暫くボクがわなわなとしているとリリスが口を開いてくれた

「…あのっ」
「ん?」
「………にんじん…たべたい」
「ああ!ニンジンね!!」
「…ある?」
「あるとも!ごめんね!気づかなくて!」
「…ううん」

なんだ…サンドイッチの具か!あー、びっくりしたー
そう言えばうさぎの主食はニンジンなどを中心とした野菜類だ。そんなことも忘れていたなんて…。
とりあえずまた畑に行き、ニンジンをとってきて煮たニンジンを簡単に切り渡した。すると残りのサンドイッチは全部ニンジンだらけにされてしまったので残った野菜はサラダにした。はぐはぐと頬張る様子を見る限りお腹が空いていたようだ。何はともあれ話すようになってくれたし馴染んでくれたようで、とても嬉しい。
あと片付けをした後、ボクはパトロールに行かなくては行けなかったため、マシュの家にリリスを預けることにした。

「…どこに行くの?」
「マシュの家だよ」
「…?」
「ああ、マシュは昨日あったクマだよ。忘れちゃったかな?」
「…くま…ましゅ…」
「行けばわかるはずだよ」
「…うん」

マシュの家は花畑を通って行くと近い。リリスもいるから丁度いい、そっちを通るとするか。リリスはおんぶされながら、あれは何?きれいだね。と沢山話していた。リリスは初めて見る植物はボクに訪ねて来た。教えてあげると繰り返して言い、覚えていた。こうして見ると、妹が出来たみたいでなんだか嬉しい。
あっという間にマシュの家まで来てしまった。ドアをノックすると転んだようなドシン!という音がしてからドアが開いた。

「いてて…誰だい? これはこれは、リオじゃないか」
「…わたしもいるわ」
「と、リリスちゃん!ご要件は?」
「やあ、マシュ。ボクこれからパトロールなんだよ、だからリリスの事お願いできないかな?終ったらすぐ来るからさ」
「なんだ!いいとも!」
「リリス、いいかい?」

二人の話を聞いていたはずなのにリリスは首をかしげた。

「ボクがパトロールをしている間、マシュの家で待っていてくれないかな?」

するとリリスは首を左右に振った。

「…わたしも行きたい、一緒じゃだめかな?」

リリスはボクの服をぎゅっと掴んで陰に隠れていた。どうしよう。かわいいな。

「結構歩くよ?大丈夫なの?」
「…うん」
「仕方ないな…」

とりあえず連れて行くことにした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

痛みは教えてくれない

河原巽
恋愛
王立警護団に勤めるエレノアは四ヶ月前に異動してきたマグラに冷たく当たられている。顔を合わせれば舌打ちされたり、「邪魔」だと罵られたり。嫌われていることを自覚しているが、好きな職場での仲間とは仲良くしたかった。そんなある日の出来事。 マグラ視点の「触れても伝わらない」というお話も公開中です。 別サイトにも掲載しております。

処理中です...