誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン

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3巻

3-2

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「あねさんが、レディだってよ」
「レディだなんていう歳か?」
「いや、それはないだろ」

 でも、お前らそれ、全部こっちに筒抜けだぞ?

「あんた達、なんか言ったかい?」
「「「いえ、何でもありません!」」」

 案の定、アミノまでその言葉は届いていたようで、彼女は威圧感のある笑顔で彼らを黙らせていた。

「悪かったな。子供扱いして」
「いや、同族以外じゃよくあることさ。気にすんな」

 自己紹介を済ませて、俺がアミノに謝っていると、先に飛び出した俺達を追ってきていたシルバとチャリオンが到着した。

『ご主人様、ご無事ですか?』
「ああ、何も問題ない」

 俺がシルバと会話している横で、アミノが目を丸くしている。

「な、なんだいこりゃあ……」

 そこで、俺はシルバとチャリオンの隠蔽いんぺいモードを起動するのを忘れていたことに気づいた。
 迂闊うかつだった。
 まぁここまではっきり見られてしまっては、今さら隠し通すのも難しいだろう。
 そう考えたところで、脳内にバレッタの声が響く。

『記憶の改竄かいざんもできますよ?』

 やらんでよろしい。

かしこまりました』

 頭の中に流れた、バレッタの悪魔のような誘惑ゆうわくを拒否する。まったく油断も隙もない。
 それから、ドワーフ達に馬車を隠すことを諦めた俺は、アミノに説明した。

「これは俺達が使っている普通の馬車だ」
「どう見ても普通じゃねぇだろ! なんでこんな精巧せいこうな馬みたいなゴーレムが屋形を引いているんだ? それだけじゃねぇ、この屋形も相当な代物しろものだろ」

 驚くアミノに対して、リンネがまるで自分のものであるかのように勝ち誇った顔で説明する。

「ふふーん。ケンゴの馬車はすごいんだから。まったく揺れないし、見た目よりも広いし、お風呂やトイレもあって、保管している食料は一切腐らないのよ! 不便がまったくないから、長旅が素敵なものだと思えるようになったわ」

 なんでリンネがえらそうなんだ?

「ちっ。なんだよ、それ。親父でもまだまったく実現できてねぇもんばかりじゃねぇか」
「ん? アミノの親父さんは馬車でも作ってんのか?」
「いや、ちげーよ。ウチは生活を便利にする魔道具を作ってんのさ。今世界で流行はやっている道具の多くは親父おやじの発明なんだぜ? どうだ、すげぇだろ?」
「それはすごいな。それだけの魔道具を開発したなんて、本当に天才なんだな」

 この世界では、蛇口じゃぐちのように水を出したり、コンロのように火をおこしたり、お湯をかしたりするために魔道具と呼ばれる高価な道具が使用されている。
 魔道具は、庶民しょみんレベルまで普及されているわけではなく、富裕層や貴族達の間では当たり前に使用されるくらいには広まっているという状況だ。
 そんな高度な道具を開発したとなると、よほどの人物ってことになるだろうな。

「はははっ。自慢じまんの親父さ。でも、その親父でさえ、まだ手が届かない技術なんだよな、こいつは。信じられない気持ちだよ。ちょっとだけ、ちょっとだけ中も見せちゃくれねぇか?」
「気になるのも無理はないが、まずは今日の野営場所に行ってからにしないか」

 流石にこの場で馬車の見学まで始めたら、時間がどれくらいかかるか分からない。
 俺達にも目指す場所があるし、いつまでもこんな道の途中にいるわけにもいかないからな。
 俺がそう提案すると、アミノが頷いた。

「それもそうだな。悪かった。それで相談なんだが、私らと一緒に大洞窟まで行っちゃあくれねぇか。護衛はみんな負傷して使いものにならないしよ」
「目的地は一緒なんだな。乗りかかった船だし、送り届けてやるよ」
「助かる。報酬ほうしゅうは後で渡す。よし、お前ら、使えるものは馬車に積み込んで出発できるように準備しな」
「「「うっす!」」」

 お互いに話し合ってから、ドワーフ達の出発に合わせて俺達も馬車を走らせた。


 馬車の中でくつろぐこと数時間、今日の野営場所にたどり着いた。元々は馬車の中で寝ようと思っていたが、今日は外でテントを張ることにした。
 馬車を止めると、アミノとの約束通り、さっそく馬車内の見学を始めた。

「うぉ~、すっげぇ!」
「マジックバッグみたいだぜ」
「高級ホテルよりも設備が整っているな、この馬車」
「大金持ちだってこんな馬車に乗れないぞ?」

 ドワーフ達は珍しいものを見れてよほど嬉しかったのか、満足そうな顔で見学を終えた。
 俺達がある程度監視していたこともあり、問題も特に起きなかった。

「お疲れ様~」
「お疲れ~」

 ただ、何もなかったとはいえ、他人をまねいたことで気疲れしてしまった。
 俺達はアミノ達が帰った後でソファにぐったりもたれかかる。

『おつかれさま~』
『お姉ちゃん、お疲れ様~』

 俺達を心配しながら、フィーとイナホが膝の上に飛び乗った。どちらも俺達の疲れを癒しに来てくれたみたいだ。
 俺の腹に抱き着いているフィーの頭を撫でていると、気持ちが落ち着いていく。
 それから先ほどの見学時の様子を思い返した。
 ドワーフとここまで接したのは今回が初めてだけど、鍛冶かじに限らず、物作りに対してものすごく貪欲どんよくだ。これがドワーフのドワーフたる所以ゆえんなんだろうな。

「おーい、いいもん見せてもらったからな。今日は酒盛りするぞ!」

 そのままソファで休息していると、馬車のドアをドンドンとたたく音とともに、アミノの声が響く。
 扉を開けるとそこには、清々すがすがしいほどの笑みを浮かべながら酒瓶を片手に持つアミノの姿。
 どうやらまだ騒がしい時間は続きそうだ。

「ひゅー、姉御は太っ腹だぜ!」
「だーれが太ってるって?」
「ひぇー、誰もそんなこと言ってねぇよ、あねさん。かんべんしてくだせぇ」
「まったくしょうがないねぇ。今日は気分がいいから見逃してやるよ」

 アミノの反応が予想外だったのか、ドワーフの一人が目を丸くした。

「こんなことが起こるなんて!?」
「文句でもあるのかい?」
「いえ、滅相めっそうもありません」

 ドワーフはアミノから離れてうたげの準備を始めた。
 アミノも器用に包丁を使って、あっという間に明らかに酒のつまみになりそうな料理を作っていく。塩辛そうな料理ばかりが食卓に並ぶ。
 普通の人が食べたら塩分がヤバそうだな。

『単純計算で、十日分くらいの摂取量になりそうです』
「それはすぐに病気になりそうだな……」

 幸い俺達は魔導ナノマシンによって体内が常に最適な状態で保たれているので、健康を気にする必要はまったくない。もし一般人のままだったら、すぐに体調を崩していたな。

『ハイッポー!』

 俺達はドワーフ式の乾杯を行い、料理に舌鼓したつづみを打ちながら酒を飲む。案の定料理は非常に濃い目の味付けで、酒が進む進む。
 リンネなんかはあっという間に酔いつぶれてしまった。
 魔導ナノマシンの働きを調整すれば酔わなくすることも可能だろうが、それは野暮やぼってものだろう。

「よう、飲んでるかい?」
「あぁ、この通りだ」
「SSSランク冒険者と聞いていたが、酒にはあまり強くないんだねぇ」

 アミノはリンネの寝顔を見て不思議そうな顔をする。

「危険が近づけば、勝手に起きるさ」
「あんたがいるから安心してるのかね」
「まぁ、そんなところだろうな」

 それまでリンネの顔をのぞんでいたアミノが、途端にグラスを持って俺に向けた。

「やけるねぇ。よし、ここは一つ酒飲み勝負でもしないかい?」
「俺が勝ったら?」
「大洞窟のとっておきの情報をくれてやるよ」
「ほほう。それは興味深いな」
「でも、私が勝ったら、あんたは俺の男だ」

 情報に食いついた俺に、ニヤリとあくどい笑みを浮かべるアミノ。

「こりゃあ、負けられそうにないな」
「軽口を叩いていられるのも今のうちだよ」
「そっくりそのまま返してやるよ」

 俺達が話している間に、木製のデカいジョッキに酒が注がれる。
 そのまま飲み比べが始まった。
 当然、勝負は俺の圧勝。ちょっと卑怯ひきょうかもしれないが、負けられない以上、魔導ナノマシンによってアルコール成分はすぐに分解させてもらった。

「それで、大洞窟のとっておきの情報っていうのは?」
「まったく、わたしよりつよいおとこなんてはじめてだよぉ。どうだい、ほんとぉにわたしのおとこにならないかい?」
「遠慮しておくよ、俺はリンネ一筋だからな」
「ちゅれないねぇ~」

 彼女はそう言ったきり、ガツンとテーブルに突っ伏した。

「後は頼んだぞ~」
「うぃっす。お任せください」

 他のドワーフ達にアミノを任せ、俺はリンネを抱きかかえてテントの中に入る。
 先に寝ていたフィーとイナホを起こさないようにリンネを横たわらせて、俺も床についた。


 翌日。

「いやぁ、昨日は悪かったね」

 二日酔いらしいアミノが辛そうにしながら、申し訳なさげに頭を下げる。

「楽しかったから気にするな」
「そう言ってくれると助かる。それでとっておきの情報の件だけどね」
「ああ」
「遥か昔に繁栄はんえいした都市が、大洞窟の奥にはまだ残っているって噂だ。出所はハッキリしないけどな。でも、親父も街の偉い連中もそれを確信している。しかも、その都市では高度な技術が使われていたらしい。それこそあんた達の乗っている馬車のような、な」

 俺はアミノの視線を受けてドキリとした。
 しかし、顔に出さないように努めて平静な態度を心がける。
 リンネはアミノの話を聞いて目を輝かせていた。昨日の酒のことなどつゆ知らずといった様子だ。

「へぇ~、それは楽しみが増えたわね! 高い技術を持っていたのに、なぜか滅んだ古代都市。それが大洞窟にあるっていうのなら、是非ともお目にかかりたいわ。今のところ誰もたどり着いたことのない大洞窟の最奥。くぅ~、ロマンがあふれてる。冒険者らしくなってきたじゃない!」

 ロマンを求めて冒険者をしているリンネからすれば、こういう話はたぎるものがあるのだろう。
 かくいう俺も船に繋がる古代都市があるかもしれない可能性に、胸がおどっていた。

「ははぁ、流石SSSランク冒険者。変わってるねぇ。SSSランク冒険者ってのはあんたみたいな奴ばっかりなのかい?」
「どうかしらね。自分が行ってみたい場所。倒してみたいモンスター。そういう目標を達成していったらいつの間にかSSSランク冒険者になっていたわ」
「やっぱり高ランク冒険者ってのはどこか変わってるのかねぇ」
「アミノほどじゃないと思うけど」
「自分じゃ分からないもんさ。それじゃあ、出発しようか」
釈然しゃくぜんとしないけど、分かったわ」

 リンネ達の話が終わったところで、俺は全員に声をかける。

「よし、準備が終わったなら大洞窟へ出発するぞ」

 皆の元気な返事を聞き、俺達は馬車に乗り込んで大洞窟を目指した。


  第二話 大洞窟


 御者席に座って前方を見ていると、目的地が見えてきた。

「あれが大洞窟だよ」
「おお、確かに大と名前につくだけのことはあるな」
「本当ね」

 それは小さめの山の斜面しゃめんに開いた巨大な穴だった。
 本来そんなに大きな穴が山に開いていれば、崩落ほうらくしてもおかしくなさそうだが、何かしらの力が働いているのか、そのままのバランスが維持されていた。本当に不思議なことばかりでこの世界は飽きないな。
 アミノ達と会って出発してから、ここまで十日ほどかかった。シルバとチャリオンであれば二日くらいで着いてしまう距離だったが、護衛役としてアミノ達の速度に合わせたら、かなり長引いてしまった。
 その間、モンスターに遭遇そうぐうすることもあったが、リンネが魔法の練習をしたがって魔法を連発ししたため、危険はそれほどなかった。
 外から見たら大きな穴があるだけの大洞窟の前は、入り口に続く道まで多くの人で溢れかえっていた。
 それだけじゃなくて、大洞窟の外に住んでいる人もいるのか、テントが多数広げられていて、整備された道の両脇には出店のようなものまである。
 様々な美味しそうな香りが俺達の鼻孔びこうをくすぐる。

「それにしてもにぎわっているなぁ」
『美味しいものあるかなぁ』
『しとがいっぱいだぁ!』

 俺が感想を漏らすと、肩に乗るイナホと頭の上のフィーも興味深そうに辺りを見回した。

「ダンジョンの近くが賑わうのはどこも一緒だけど、街のようなものは見当たらないわね」
「確かにそうだな」
「はははっ。それは見てのお楽しみさ」

 アミノが意味ありげに笑う様子を見て、俺とリンネは顔を見合わせて首を傾げた。
 長蛇の列だけあって入るのにかなり時間がかかる。
 自分達の順番は当分先になりそうなので、俺とリンネは出店を見ることにした。
 馬車をしまい、フィーとイナホにねだられるまま、屋台へ向かう。
 アルクィメスのロドスの店のような串焼くしやきの店以外にも、タイ風のスープを売っている店、魚を串焼きにして売っている店、焼栗やきぐりっぽいものを売っている店があった。果物をしぼったっぱいジュースを売っている店なんかも並んでいる。

『うまうまっ』
『おいひー』

 イナホとフィーは色んなものをたくさん食べられてご満悦まんえつだ。見てるだけで胸焼けしそうな量だったので、俺とリンネは二人で分けて食べた。
 ドワーフ料理というものをある程度堪能たんのうできたと思う。

「通っていいぞ」

 屋台通りを散策しながら進むこと数時間、ようやく俺達は大洞窟の中に足を踏み入れる。

「普通は外の方が賑わうはずなのに、中が外より混雑しているなんて不思議ねぇ」
「言われてみればたしかに」

 大洞窟がモンスターの出現する場所だと知っていれば、外の方が安全だと思うはず。それにもかかわらず、冒険者らしき人物だけでなく、商人のような格好をした人や一般人も大洞窟の中へと入っていく。

「もう少し進めば分かるよ」

 もったいぶった言い方だな。
 まぁ、絶対に今知りたいってわけでもないので、俺は何も言わずにアミノに従って先へ進んだ。
 洞窟になっていて薄暗いはずが、むしろ徐々に明るくなってきた。

「あれは……」

 通路の先が光で溢れて全貌ぜんぼうが見えない。
 その光の手前まで近づいて、ようやくその先に広がる光景が目に入った。
 そこには街が広がっていた。

「いやぁ、まさか大洞窟の中に街があるとは思わなかった」

 俺が驚愕きょうがくしていると、アミノが得意げな顔になった。

「くっくっく。良い顔してるねぇ。黙っていた甲斐かいがあるってもんだよ」
「普通の街とも少し違うわね」

 リンネも、目の前の景色に衝撃を受けている。
 街の造りは基本的に中世ヨーロッパ風なのだが、スチームパンクのような世界観で、歯車などの部品や機械が露出ろしゅつしている建物がところどころに紛れ込んでいた。
 その上、よく見ると、作業を自動的に行うロボットのようなものが街の中を行き来している。
 大きな自動お掃除ロボットが動いているような感じだ。

「あんた達、ドワーフのこと、そんなに詳しくないんだな?」
「そうねぇ、知っているドワーフは親代わりだった鍛冶師のグオンクくらいだし、他の知り合いも鍛冶師か酒造をいとなんでいる人ばかり。それくらいしか知らないわ」

 それなりにこの世界で色んな種族と関わっているはずのリンネでさえ、そんな感じなのか。

「あぁ~、それも間違っちゃいねぇが、鍛冶だけじゃねぇな。今世界に流通している魔道具の多くは私らドワーフが作ってんだよ」
「へぇ~、そうだったのか」
「ああ。色んな道具を生み出しては試してを繰り返しているせいで、この街はこんな風になっちまったのさ」

 アミノの説明を聞いて、俺はその意味を察した。
 つまりここは、この世界の今の最先端技術が詰まった街だということだ。

「それにしてもかなり賑わっているけど、これもいつも通りなのか?」
「いや、実はもうすぐ建国祭けんこくさいの時期でな。多くの観光客が来てるからだ」
「そういうことか」
「私達が外に出ていたのも、建国祭に必要なものを手に入れるためだ。その帰りにモンスターに襲われて、あわや死ぬところだったけどな。あんた達には本当に感謝している」
「だから、たまたま目的地が同じだっただけだから気にしなくていいって言ってるだろ?」
「そうは言ってもなぁ。とりあえず、報酬はきちんと出すからな。他にも何かしてほしいことがあったら、なんでも言ってくれ。本当にな・ん・で・もいいからな?」

「なんでも」のところを強調しながら、アミノが意味ありげな笑みを浮かべる。
 そんな彼女を見ていたら――

「いたっ」

 急に脇腹に痛みが走った。振り返ると、リンネがほおふくらませて俺の腹をつまんでいる。

「今鼻の下を伸ばしてたでしょ」
「いやいや、それはないから。神に誓って」
「本当に?」
「当然だろ。俺はリンネ一筋だよ」

 俺は不安そうに見つめるリンネを抱き寄せて答えた。

「はいはい、お熱いこって」

 アミノが不貞腐ふてくされるように言って、先へ歩き出す。

「ひとまず、宿を取るのが先決だな。そうしないと外で寝ることになりそうだ」

 アミノの後を追いながら、俺はそう話しかける。

「うーん、これから宿を取るのは難しいと思うぜ? どこも観光客で埋まっているからな」
「そうか……」

 無理して宿を取らなくても馬車を置ける場所さえあれば、そこで寝られる。船に転移してしまうのも一つの手だな。

「リンネ――」

 俺がリンネに相談しようと話しかけたところに、アミノの声が重なる。

「そこで礼代わりってほどでもないが、ウチにとまらないか?」
「いや、それは悪いだろ」

 恩返しのつもりなんだろうが、報酬をくれると言っている時点で対価は十分だ。
 それ以上礼を受けるのは、むしろ申し訳ない。

「いんや、ウチ、部屋が結構空いててな。使ってくれるならそれに越したことはねぇんだよ。こっちもあんた達の料理を食いたいしな」
「それが狙いかよ」
「へへへっ」

 もしかしたら、バレッタ特製の料理を食べたいというのは、こっちが遠慮しないための口実なのかもしれない。食べたい気持ちは本物だろうけど。

「どうする?」
「私は構わないわ」

 リンネに確認すると、彼女は首を縦に振った。

「そうかい。それじゃあ、ついてきとくれ。ウチまで案内するよ」
「了解」

 それからアミノの家を目指して、街を歩くこと数分。

「ここだよ」

 アミノに案内されたのは、時計のような機械がむき出しになって見える不思議な構造の建物。いかにも何か発明してますと言わんばかりの見た目をしている。

「個性的な建物だな」
「そうね」

 俺とリンネが感想を漏らすと、アミノが笑った。

「まぁ、親父が発明家だからな。ちょっと散らかってるが、中に入ってくれ」
「お邪魔します」


 中はお店のようになっていた。棚には色々な魔道具が並んでいる。
 商品の品出しや会計なんかも、人の代わりにロボットのような魔道具が行っていた。

「面白そうな魔道具がたくさんあるな」
「へへーん、だろ。親父は天才だからな」

「親父さんのこと好きなんだな」
「当然だろ。発明家としてめちゃくちゃ尊敬してんだ」
「その親父さんはどこに?」
「さっき話した古代都市を求めて、大洞窟の奥に潜ってるところさ。かれこれ半年くらいは経ったか。建国祭には参加するって言ってたから、そろそろ戻ってくんじゃねぇかな」
「そうか」

 店のバックヤードに入ると、散らかっているとアミノが言った通り、様々な魔道具が積み重なっていた。それによって壁ができてしまうほどだ。

「この部屋を使ってくれ」

 両脇を魔道具で隔てられた通路を抜け、俺達は客間に案内された。

「おお、案外広いな」
「えぇ、外とは大違いね」

 部屋は先ほどまでと打って変わって綺麗きれいに片づいていた。
 俺達の反応を見て、アミノが弁解する。

「出来上がった作品ってのはなかなか捨てらんなくてね。いつの間にか家の中がいっぱいになっちまったんだよ。まぁ客室は綺麗なままだから勘弁してくれよな」
「いやいや、全然構わない。横になるスペースさえあれば問題ないさ。それより、街を少し回ってきてもいいか?」
「ああ。好きにしとくれ。夕飯だけ用意してもらえると助かる」
「あいよ」

 アミノの許可をもらった俺達は、ドワーフの街を堪能するため家を出た。


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