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5巻
5-2
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「「「ベァ……」」」
何匹ものベアーラビットがリューの青い炎に包まれる。
それを見た周りのベアーラビットが動きをとめた。
数十秒後に炎が収まると、こんがりと焼き上がったベアーラビットの出来上がり。
「つっよっ」
俺が驚いていると、リンネも同じような表情で俺のところに戻ってきた。
「今のなに!」
「リューが放ったファイヤーブレスだ。とんでもなく強力だったな」
「本当に生まれたばかりだとは思えないわね」
「あぁ、ホントにな。これからどれだけ成長するのか楽しみだ」
「なんでこんなに強いのかしら?」
ドラゴンとは言え、生まれて間もない赤子。
Aランクモンスターを一度に何匹も屠る力があるとは思えない。
「それはお二人の魔力を受けて育ったからだと思われます」
「そうなのか?」
「はい。ドラゴンは親の血だけでなく、与えられた魔力を受け継ぐと言われています。ドラゴンの身に二人の魔力が注がれ、普通のドラゴンとは違う見た目と力を手に入れたのでしょう」
「なるほどなぁ」
襲い来るベアーラビットを危なげなく倒しながら、俺はバレッタの説明に頷く。
リューの強さの理由はそういうわけだったのか。
確かにSSSランクのリンネの力と超古代文明のおかげとはいえSSSランク以上とされる俺の力が合わされば、相当な強さになるだろうな。
元がドラゴンならなおさらだ。
「よし、お前で最後だ!」
「ベァアア……」
俺たちはそれから数時間で千匹以上ものベアーラビットを倒した。
もう周囲にベアーラビットらしき姿は見えない。
「お疲れ様」
「あぁ、リンネもな。思った以上に時間がかかったな」
「えぇ、まさかここまで大規模な群れを作っているとは思わなかったわ」
「確かにアコーニの言う通り、少し面倒な相手だったな」
「そうね。最低でもSSランクはないと一人じゃ厳しいと思うわ。それ以下なら複数のパーティが組まないと無理ね。それでも犠牲が出るだろうけど」
自分で言うのも何だが、超古代文明の力によって俺の戦闘力はリンネより上だ。
くわえて、リンネも治療やこれまでの経験によって、さらに力を増している。
実質、戦力としてはSSSランク以上が二人に、Aランクのモンスターを簡単に屠る仲間が三人。
これだけの戦力が揃っていたからこそ、あっさり壊滅させることができたと言える。
「依頼は完了したと言ってもいいと思うか?」
「一帯にベアーラビットの気配はありません。個体数の増加は収束に向かうでしょう」
リンネに聞いたつもりだったが、代わりにバレッタが答えた。
「本来なら調査が必要だけど、バレッタが言うのなら問題ないと思うわ」
リンネもバレッタの言葉に首を縦に振った。
二人がそう言うなら依頼達成で良いな。
「それじゃあ、これで仕事は終わりだ。早速遊ぼうか」
『やったぁ!』
『僕は雪で巨大かき氷を作りたい!』
「キュッ!」
雪で遊ぶと言えば、思いつくのはスキーやスノボーだろう。
もちろん、アルゴノイアには似たような道具が揃っている。
俺たちはスキーウェアに着替えて、スキーを楽しむことにした。
四足歩行用のスキー板まであり、イナホとリューもスキー靴を履いている。
ただ、スキー靴といっても地球のものとは違い、動きにくさを感じない。
まずはある程度の高さまで登り、開けている場所を探す。
この辺りならスキーで滑るのも問題ないだろう。
俺たちは人間離れした身体能力で簡単に山の斜面を登っていける。
俺以外は全員初心者。なんでもできるバレッタが監督して滑る練習が始まった。
「まずは靴をスキー板に固定してください」
指示に従って靴をスキー板にはめると、地球のスキー靴のように靴が固くなった。
靴にも高度な技術が用いられていて遊びやすいようになっているらしい。
バレッタが見本を見せて下で待ち、俺たちがそこまで滑る、という行為を繰り返す。
「へぇ、思ったよりも簡単ね」
『これ楽ちーん』
『おもしろーい!』
「キュッキュッ」
リンネはSSSランク冒険者だけあって、流石の身体能力であっという間に適応していた。
イナホたちも開けた斜面で滑るのは簡単にできるようになった。器用なものだ。
それからスノボーやそりもやってみたけど、どれも全員簡単に覚えてしまった。
「ただ滑っても面白くないから頂上から滑ろうか」
「そうしましょ」
異世界の住人は整備されたゲレンデで滑るスキー程度のスピードでは満足できない。
崖のような急な坂や険しい山道みたいな場所を滑るくらいがちょうどいい。
転んだところで怪我すらしないだろうしな。
この山は標高が数千メートルで、頂上付近にはまるで崖のような傾斜がある。
そこからなら相当スリリングな滑走を楽しむことができるはずだ。
俺たちはあっという間に山の頂上まで登り切り、辺りを見下ろした。
「なかなかいい景色ね」
「そうだな」
雪山では吹雪が良く発生するが、今日は雲一つない青空。
まさに絶好のスキー日和と言ったところだ。
俺はスノボー、リンネとバレッタはスキー、イナホたちはそりを選んだ。
「フィーは二人が落ちないように風で守ってくれよ」
『フィーにおまかしぇ~』
フィーが嬉しそうに手を上げた。
スキーやスノボーは道具に足が固定されているけど、そりはそうはいかない。
あまりに急な坂やでこぼこした場所を進めば、簡単に吹き飛ばされてしまう。
そこをフィーの風を操る力で皆を飛ばないように上手く押さえてもらうというわけだ。
「よし、行こう!」
「『『「おーっ(キュッ)」』』」
皆でほとんど垂直に近い斜面を滑り下りていく。
地球にいた頃の俺ならビビッて崖の傍に行くこともできなかったに違いない。
でも、今の俺にとってはこの程度大したことじゃない。
スピードスキーと呼ばれる競技だと、時速は二百キロを超えるそうだが、今の俺たちはそのスピードも超えているかもしれない。
このくらいのスピードなら結構楽しい。
思い返せば、マリンスポーツも同じだった。
海でもパワーボートくらいの速度でやって初めて俺たちは楽しめたからな。
海と違うのは障害物もあって危険が増しているというところだ。
でも、俺たちにとってはそれも、ただ楽しみが増すスパイスの一つでしかない。
「ひゃっほーっ!」
「これは爽快ね!」
『面白ーい!』
『きゃははははっ!』
「キュウウウウッ!」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ
だが、スパイスはそれだけでは済まなかった。
後方から地鳴りのような音が聞こえてくる。
一瞬振り返ると、斜面の雪に亀裂が入っていく光景が見えた。
雪崩が起こる直前の兆候だ。
その直後、雪崩がまるで波のように俺たちに押し寄せてくる。
前門の障害物、後方の雪崩。
二つの脅威に挟まれた俺たちは、少し身の危険を感じつつも楽しみながら滑っていく。
徐々に傾斜がなだらかになってきた頃、前方にジャンプ台のような地形が見えた。
「いっちょやってみるか」
「何するつもり?」
「まぁ見てろって!」
リンネの疑問に答えずスピードを上げてジャンプ台から飛んだ。
そして、ハーフパイプ競技の選手も真っ青な難易度のトリックを決めて着地。最高に気持ちいい。これは癖になるな。
「なにそれ、面白そうじゃない!」
俺の技を見ていたリンネがやる気を漲らせた。
リンネも俺と同じようにジャンプ台のようになっている岩場を見つけて思い切り飛んだ。
リンネが何十メートルもの空中を舞う。
俺の技を見て思いついたのか、モーグルの選手が披露するような技を決めた。
アクロバティックでなかなか堂にいった様子だった。
『フィーもやるぅっ!』
さらにフィーが後に続こうとする。
フィーは風の力で加速して盛り上がっている部分に特攻。
何十メートルも上空に飛び上がって縦に何度もグルグルと回転して着地した。
そりとは思えないド派手な技だ。
バレッタは無表情で顔色一つ変えず滑り、盛り上がりでジャンプして技を決めた。
その技はもうなんというか神業と呼んで差し支えないほど美しかった。
「なかなかやるな! 次は俺の番だ!」
「私も負けないわよっ!」
『フィーも!』
俺たちは各々が考えた技を披露しあいながら山を下った。下の方まで戻ると、雪崩も収まっていた。
それから何度か頂上まで登って、麓まで滑り下りるという遊びを繰り返し楽しんだ。
「なかなか面白かったわね。たまにやってもいいわね」
「そうか? それじゃあ、また今度やりにこよう」
「良いわね。楽しみにしてるわ」
リンネが満足げに笑う。
楽しそうで何よりだ。
「それじゃあ、次の遊びだ」
「今度は何するの?」
「雪合戦だ」
「雪合戦?」
不思議そうな顔のリンネに雪合戦について説明する。
ルールは相手の雪玉に当たったら退場。仲間が全員いなくなったら負けだ。
ドッジボールに近い。
本来なら相手陣地の旗を取るのが勝利条件だけど、人数が少ないからやめた。
「という感じのゲームだな」
「ふーん、なるほどね。面白そうじゃない」
「まずは、チーム分けをするぞ」
『僕はパス。寝てるねぇ』
イナホは雪合戦には興味がないらしく端に寄って寝始めてしまった。
くじ引きの結果、俺とフィーが同じチームで、リューがリンネのチームになった。
『まけないよぉ!』
フィーが目に炎を宿して拳を握る。
「それでは私が戦場を整えさせていただきます」
バレッタがその提案とともに指を鳴らすと、いくつもの小さな雪の壁が出現する。
そして、最後に四方が雪の壁で覆われて、体育館くらいの広さのフィールドができた。
この中で戦い、雪壁に隠れることで相手の雪玉を回避することができるわけだ。
「なんか体が重いな」
「全員の力を一定に抑える空間を展開しました。魔法も使用できません」
「なるほどな」
普段の状況で戦ったら、身体能力が人間という枠組みを超えているし、魔法などの超常的な力があるからバレッタがバランスをとってくれたというわけか。
なんでもありだと、ルールもへったくれもないもんな。
俺たちはお互いの陣地に移動した。
「それでは対戦を開始します。準備はよろしいですか?」
「あぁ、俺はいつでも」
「私もよ」
「それでは、カウントダウンを開始します。五、四、三、二、一、スタート!」
バレッタの合図によって対戦がスタートした。
「フィー、いくぞ!」
『おおーっ!』
俺たちは雪壁に隠れながら進んでいく。
「フィー、こうやって雪玉を作っておくんだ」
『わかったぁ』
隠れてリンネたちの気配を探りつつ、フィーに武器の作り方を教える。
それからいくつか雪玉を抱えながら二手に分かれて、先に進む。
「フィーは向こう。俺はこっちから行く」
『りょーかーい』
――ザリッ
しばらくすると、硬い雪を踏みしめる音がした。
静かに雪壁に隠れて様子を窺う。
「キュッ」
様子を見ていた場所に現れたのはリューだった。周りをきょろきょろと見回している。
なんだか初めてのお使いでも見ているようで微笑ましい気持ちになる。
でも、勝負は勝負。手抜きはなしだ。
「よっとっ!」
「キュキュゥ……」
隙をついて雪玉を投げると、まっすぐリューにぶつかった。
『リューちゃん、アウト。退場いたします』
バレッタの声が響き渡ると、リューが転移するようにその場から消えた。
おそらくバレッタが移動させたんだろうな。
これで後はリンネ一人。フィーと二人がかりで追い詰めれば俺たちの勝ちだ。
『フィーちゃん、アウト。退場いたします』
でも、俺の思惑は外れる。
フィーがリンネにやられてしまった。
仕方ない。後は一騎打ちだ。俺は全神経を集中して相手の様子を把握しようとする。
こうなったら動かない方が有利だ。
――ザッザッザッザッ
しばらく待っていると、リンネの足音が聞こえてくる。
ふっふっふっ、これなら不意打ちができる。
リンネとの距離が徐々に迫る。
十メートル、五メートル、三メートル……今だ!
「はっ」
俺が飛び出して雪玉を投げる。
でも、その雪玉がリンネに当たることはなかった。
「甘いわよっ」
「ぶへっ!?」
なぜなら、リンネは俺の行動を読んでいたようにしゃがんでいたから。
そんな俺の隙を突いてリンネが雪玉を当ててきた。
『ケンゴ様アウト。このゲーム、リンネチームの勝利です』
「やったぁ!」
「いやぁ、やっぱりリンネには敵わないな」
「そりゃあ、冒険者の訓練でこういうのもたくさんやったからね。簡単には負けないわよ」
俺の戦闘力は超古代文明の力で上乗せされた部分が大きい。
小さい頃からきちんと技術を培ってきたリンネに敵うはずもない。
俺の剣術の師匠でもあるしな。
「ま、これが雪合戦だ。子供のころはこんなに明確なルールに則ってはやらなかったけどな。お互いに雪玉をぶつけあうだけだ」
「なるほどね。結構あっさり終わってしまったから今度はもっと大人数でやりたいわね」
「そうだな」
雪合戦をやるには少し人数が少なすぎた。
次はエルフやドワーフ、それに勇気たちを誘ってみるか。
「よし、最後はかまくらを作るぞ」
「かまくら?」
「なんていうか、雪で作った簡単な洞穴のような家のことだ」
「へぇ~」
「まぁ、作ってみれば分かるさ」
俺たちは全員で力を合わせてかまくら作りを始めた。
「ふぅ、結構大変ね」
「まぁな、普通はもっと小さいからな。ここにいる全員が入れるだけのかまくらとなったらそれなりに時間もかかる」
ここには俺とリンネ、イナホ、フィー、リュー、バレッタの六人がいる。
六人が入っても狭くないかまくらとなると、相当大きくしなければならない。
時間がかかるのはしょうがない。
内部を掘るのは俺が担当し、一時間ほどかけてようやく完成した。
『お腹空いた~』
かまくらが完成したところで、イナホが大きな口を開けて欠伸をしながら目を覚ます。
確かに、気づけば仕事と遊びで長い時間が経っていた。
イナホの言葉につられて、俺も急にお腹が空いてきた。
「結構動いたから何か食べたいわね」
『ぺこぺこ~!』
「キュッ」
それはリンネたちも同じだったようだ。
先ほど狩ったベアーラビットから獲れた肉は全て倉庫に収納済みだし、あの肉を使った料理でも作るか。
そう思ったが、測ったようなタイミングでバレッタがやってくる。
「お待たせしました。食事のご用意をしました」
彼女の前には料理を運ぶワゴンがあった。
その上には、ぐつぐつと煮え立つおでんが見える。
コンビニにありそうな業務用のおでん鍋で様々な具が入っていた。
寒い場所で食べるのにはぴったりだ。
俺たちはかまくらの中に揃って入る。
「へぇ~、雪で作られているのに結構あったかいのね」
「あぁ、風が入って来ないだけで全然違うし、雪には断熱作用もあるからな」
皆が興味深そうに内部を眺める。
俺もここまで本格的なかまくらを作ったのは初めてだ。
皆の様子を見て頑張って良かったと思った。
「それじゃあ、食べようか」
「『『「いただきます(キュッ)」』』」
早速ワゴンで運ばれてきたおでんから好きな具を選んで食べる。
「まずは大根かな」
綺麗に出汁色に染まった大根を一口齧った。
あっつあつの出汁が噛んだそばから溢れてくる。
中心までしっかり味が沁み込んでいて、こんぶとかつおの香りが鼻を通りぬける。
あぁ、これだよ、これ……
寒い時期にあっつあつのおでん。体の奥からしみわたっていく。
「卵、美味しいわね」
リンネは卵が気に入ったらしい。
おでんの汁をしっかり吸いこんだ卵も捨てがたい。
『やっぱりお肉だよねぇ』
イナホは牛すじがお気に入り。やはり肉か。
もともと串に刺さっていたけど、それだけじゃ足りなかった。外して山盛りにしてもらっている。
牛すじも悪くない。
『しらたきっていうのすきぃ』
フィーはしらたきが気に入ったらしい。
おでんの中で一番出汁の美味さを味わえるのはこれじゃないだろうか。
その上ヘルシーなのでいくら食べても太りにくい。
俺もなんだかんだでおでんの中でしらたきが一番好きかもしれない。
「キュキュウッ!」
リューはもち巾着を美味しそうに食べている。
しらたきと違い、もちは高カロリー。
ついつい何個も食べてしまいそうになるが、太ってしまうのが難点だ。
他の具材もしっかりと中まで味が染みていて美味しかった。
相当の量が用意されていたはずなのに、五人でほとんど食べつくしてしまった。
「食後のデザートもございますよ」
「なにかしら」
「おしるこになります」
バレッタはそう言ってリンネにお椀を差し出す。
リンネはクンクンと匂いを嗅いだ。
「色はすごいけど、この甘そうな匂いは美味しそうね」
おしるこはぱっと見だと黒寄りの紫色の液体だからな。
確かに食べ物では、あまり見ない色かもしれない。
リンネが臆せず口に入れた。
俺と一緒に未知の料理を食べまくったせいで慣れてしまったいみたいだ。
「美味しいわね。餅とこの汁の素朴な甘さがよく合うわ」
リンネはおしるこの美味しさに頬を綻ばせる。
フィーたちもすぐにおしるこを受け取って美味しそうに食べ始めた。
俺もバレッタからおしるこのお椀を受け取って口に運ぶ。
うん、美味しい。ほんのり塩味の入れることで引き立つ小豆の甘みが餅に絡む。
「おかわり!」
リンネがバレッタにお椀を差し出した。
仲間たちも我先にとお代わりを始め、俺も出遅れまいとそれに続いた。
「よし、ここで最終兵器を出そうと思う」
「なにそれ」
「こたつだ」
「こたつ? 名前だけ聞くと全然強そうに思えないわね」
「何を言ってるんだ。こたつは入ったら、二度と出ることができない最恐の道具なんだぞ」
「ホントかしら」
「見てろよ?」
俺はエイダスを使って倉庫からこたつを取り出すと、かまくらの真ん中に設置した。
その大きさはかなり大きくて七、八人で入っても余裕がありそうだ。
そのまま俺は靴を脱いでこたつに入って横になる。
「あぁ、これこれ……もう出たくない……」
超技術で造られたこたつはすでに保温されていて、足先からじんわりと温まっていく。
「あ、ずるい。私も」
リンネも滑り込んできた。
「つめたっ」
リンネの服が当たって一瞬びくりとしてしまった。
「あぁ~、これはお風呂や暖房とも全然違うわねぇ。あったかいわぁ」
だが、俺の反応を気にせず、リンネは恍惚の表情を浮かべている。
彼女もこの魅力に取りつかれてしまったようだ。
『あったかぁい。もうずっとこの中にいたいな』
流石猫。こたつの中で丸くなるのは異世界でも変わらないらしい。
『ねみゅくなってきたぁ』
こたつで横になったフィーはウトウトし始める。
リューはすでに寝入っていた。
俺の意識もなんだか遠くなってきた。
気づけば意識が飛んでいた。
「ん? ここは……」
「おはようございます。こたつで寝入っておられました。二時間ほど経過しています」
こたつの中の居心地がよすぎて、いつの間にか意識が飛んでいたみたいだ。
「そうか。全員一旦起こして馬車に移動しよう」
「かしこまりました」
俺たちは馬車で一夜を過ごした後、依頼の達成報告をするために港町に戻った。
何匹ものベアーラビットがリューの青い炎に包まれる。
それを見た周りのベアーラビットが動きをとめた。
数十秒後に炎が収まると、こんがりと焼き上がったベアーラビットの出来上がり。
「つっよっ」
俺が驚いていると、リンネも同じような表情で俺のところに戻ってきた。
「今のなに!」
「リューが放ったファイヤーブレスだ。とんでもなく強力だったな」
「本当に生まれたばかりだとは思えないわね」
「あぁ、ホントにな。これからどれだけ成長するのか楽しみだ」
「なんでこんなに強いのかしら?」
ドラゴンとは言え、生まれて間もない赤子。
Aランクモンスターを一度に何匹も屠る力があるとは思えない。
「それはお二人の魔力を受けて育ったからだと思われます」
「そうなのか?」
「はい。ドラゴンは親の血だけでなく、与えられた魔力を受け継ぐと言われています。ドラゴンの身に二人の魔力が注がれ、普通のドラゴンとは違う見た目と力を手に入れたのでしょう」
「なるほどなぁ」
襲い来るベアーラビットを危なげなく倒しながら、俺はバレッタの説明に頷く。
リューの強さの理由はそういうわけだったのか。
確かにSSSランクのリンネの力と超古代文明のおかげとはいえSSSランク以上とされる俺の力が合わされば、相当な強さになるだろうな。
元がドラゴンならなおさらだ。
「よし、お前で最後だ!」
「ベァアア……」
俺たちはそれから数時間で千匹以上ものベアーラビットを倒した。
もう周囲にベアーラビットらしき姿は見えない。
「お疲れ様」
「あぁ、リンネもな。思った以上に時間がかかったな」
「えぇ、まさかここまで大規模な群れを作っているとは思わなかったわ」
「確かにアコーニの言う通り、少し面倒な相手だったな」
「そうね。最低でもSSランクはないと一人じゃ厳しいと思うわ。それ以下なら複数のパーティが組まないと無理ね。それでも犠牲が出るだろうけど」
自分で言うのも何だが、超古代文明の力によって俺の戦闘力はリンネより上だ。
くわえて、リンネも治療やこれまでの経験によって、さらに力を増している。
実質、戦力としてはSSSランク以上が二人に、Aランクのモンスターを簡単に屠る仲間が三人。
これだけの戦力が揃っていたからこそ、あっさり壊滅させることができたと言える。
「依頼は完了したと言ってもいいと思うか?」
「一帯にベアーラビットの気配はありません。個体数の増加は収束に向かうでしょう」
リンネに聞いたつもりだったが、代わりにバレッタが答えた。
「本来なら調査が必要だけど、バレッタが言うのなら問題ないと思うわ」
リンネもバレッタの言葉に首を縦に振った。
二人がそう言うなら依頼達成で良いな。
「それじゃあ、これで仕事は終わりだ。早速遊ぼうか」
『やったぁ!』
『僕は雪で巨大かき氷を作りたい!』
「キュッ!」
雪で遊ぶと言えば、思いつくのはスキーやスノボーだろう。
もちろん、アルゴノイアには似たような道具が揃っている。
俺たちはスキーウェアに着替えて、スキーを楽しむことにした。
四足歩行用のスキー板まであり、イナホとリューもスキー靴を履いている。
ただ、スキー靴といっても地球のものとは違い、動きにくさを感じない。
まずはある程度の高さまで登り、開けている場所を探す。
この辺りならスキーで滑るのも問題ないだろう。
俺たちは人間離れした身体能力で簡単に山の斜面を登っていける。
俺以外は全員初心者。なんでもできるバレッタが監督して滑る練習が始まった。
「まずは靴をスキー板に固定してください」
指示に従って靴をスキー板にはめると、地球のスキー靴のように靴が固くなった。
靴にも高度な技術が用いられていて遊びやすいようになっているらしい。
バレッタが見本を見せて下で待ち、俺たちがそこまで滑る、という行為を繰り返す。
「へぇ、思ったよりも簡単ね」
『これ楽ちーん』
『おもしろーい!』
「キュッキュッ」
リンネはSSSランク冒険者だけあって、流石の身体能力であっという間に適応していた。
イナホたちも開けた斜面で滑るのは簡単にできるようになった。器用なものだ。
それからスノボーやそりもやってみたけど、どれも全員簡単に覚えてしまった。
「ただ滑っても面白くないから頂上から滑ろうか」
「そうしましょ」
異世界の住人は整備されたゲレンデで滑るスキー程度のスピードでは満足できない。
崖のような急な坂や険しい山道みたいな場所を滑るくらいがちょうどいい。
転んだところで怪我すらしないだろうしな。
この山は標高が数千メートルで、頂上付近にはまるで崖のような傾斜がある。
そこからなら相当スリリングな滑走を楽しむことができるはずだ。
俺たちはあっという間に山の頂上まで登り切り、辺りを見下ろした。
「なかなかいい景色ね」
「そうだな」
雪山では吹雪が良く発生するが、今日は雲一つない青空。
まさに絶好のスキー日和と言ったところだ。
俺はスノボー、リンネとバレッタはスキー、イナホたちはそりを選んだ。
「フィーは二人が落ちないように風で守ってくれよ」
『フィーにおまかしぇ~』
フィーが嬉しそうに手を上げた。
スキーやスノボーは道具に足が固定されているけど、そりはそうはいかない。
あまりに急な坂やでこぼこした場所を進めば、簡単に吹き飛ばされてしまう。
そこをフィーの風を操る力で皆を飛ばないように上手く押さえてもらうというわけだ。
「よし、行こう!」
「『『「おーっ(キュッ)」』』」
皆でほとんど垂直に近い斜面を滑り下りていく。
地球にいた頃の俺ならビビッて崖の傍に行くこともできなかったに違いない。
でも、今の俺にとってはこの程度大したことじゃない。
スピードスキーと呼ばれる競技だと、時速は二百キロを超えるそうだが、今の俺たちはそのスピードも超えているかもしれない。
このくらいのスピードなら結構楽しい。
思い返せば、マリンスポーツも同じだった。
海でもパワーボートくらいの速度でやって初めて俺たちは楽しめたからな。
海と違うのは障害物もあって危険が増しているというところだ。
でも、俺たちにとってはそれも、ただ楽しみが増すスパイスの一つでしかない。
「ひゃっほーっ!」
「これは爽快ね!」
『面白ーい!』
『きゃははははっ!』
「キュウウウウッ!」
――ゴゴゴゴゴゴゴッ
だが、スパイスはそれだけでは済まなかった。
後方から地鳴りのような音が聞こえてくる。
一瞬振り返ると、斜面の雪に亀裂が入っていく光景が見えた。
雪崩が起こる直前の兆候だ。
その直後、雪崩がまるで波のように俺たちに押し寄せてくる。
前門の障害物、後方の雪崩。
二つの脅威に挟まれた俺たちは、少し身の危険を感じつつも楽しみながら滑っていく。
徐々に傾斜がなだらかになってきた頃、前方にジャンプ台のような地形が見えた。
「いっちょやってみるか」
「何するつもり?」
「まぁ見てろって!」
リンネの疑問に答えずスピードを上げてジャンプ台から飛んだ。
そして、ハーフパイプ競技の選手も真っ青な難易度のトリックを決めて着地。最高に気持ちいい。これは癖になるな。
「なにそれ、面白そうじゃない!」
俺の技を見ていたリンネがやる気を漲らせた。
リンネも俺と同じようにジャンプ台のようになっている岩場を見つけて思い切り飛んだ。
リンネが何十メートルもの空中を舞う。
俺の技を見て思いついたのか、モーグルの選手が披露するような技を決めた。
アクロバティックでなかなか堂にいった様子だった。
『フィーもやるぅっ!』
さらにフィーが後に続こうとする。
フィーは風の力で加速して盛り上がっている部分に特攻。
何十メートルも上空に飛び上がって縦に何度もグルグルと回転して着地した。
そりとは思えないド派手な技だ。
バレッタは無表情で顔色一つ変えず滑り、盛り上がりでジャンプして技を決めた。
その技はもうなんというか神業と呼んで差し支えないほど美しかった。
「なかなかやるな! 次は俺の番だ!」
「私も負けないわよっ!」
『フィーも!』
俺たちは各々が考えた技を披露しあいながら山を下った。下の方まで戻ると、雪崩も収まっていた。
それから何度か頂上まで登って、麓まで滑り下りるという遊びを繰り返し楽しんだ。
「なかなか面白かったわね。たまにやってもいいわね」
「そうか? それじゃあ、また今度やりにこよう」
「良いわね。楽しみにしてるわ」
リンネが満足げに笑う。
楽しそうで何よりだ。
「それじゃあ、次の遊びだ」
「今度は何するの?」
「雪合戦だ」
「雪合戦?」
不思議そうな顔のリンネに雪合戦について説明する。
ルールは相手の雪玉に当たったら退場。仲間が全員いなくなったら負けだ。
ドッジボールに近い。
本来なら相手陣地の旗を取るのが勝利条件だけど、人数が少ないからやめた。
「という感じのゲームだな」
「ふーん、なるほどね。面白そうじゃない」
「まずは、チーム分けをするぞ」
『僕はパス。寝てるねぇ』
イナホは雪合戦には興味がないらしく端に寄って寝始めてしまった。
くじ引きの結果、俺とフィーが同じチームで、リューがリンネのチームになった。
『まけないよぉ!』
フィーが目に炎を宿して拳を握る。
「それでは私が戦場を整えさせていただきます」
バレッタがその提案とともに指を鳴らすと、いくつもの小さな雪の壁が出現する。
そして、最後に四方が雪の壁で覆われて、体育館くらいの広さのフィールドができた。
この中で戦い、雪壁に隠れることで相手の雪玉を回避することができるわけだ。
「なんか体が重いな」
「全員の力を一定に抑える空間を展開しました。魔法も使用できません」
「なるほどな」
普段の状況で戦ったら、身体能力が人間という枠組みを超えているし、魔法などの超常的な力があるからバレッタがバランスをとってくれたというわけか。
なんでもありだと、ルールもへったくれもないもんな。
俺たちはお互いの陣地に移動した。
「それでは対戦を開始します。準備はよろしいですか?」
「あぁ、俺はいつでも」
「私もよ」
「それでは、カウントダウンを開始します。五、四、三、二、一、スタート!」
バレッタの合図によって対戦がスタートした。
「フィー、いくぞ!」
『おおーっ!』
俺たちは雪壁に隠れながら進んでいく。
「フィー、こうやって雪玉を作っておくんだ」
『わかったぁ』
隠れてリンネたちの気配を探りつつ、フィーに武器の作り方を教える。
それからいくつか雪玉を抱えながら二手に分かれて、先に進む。
「フィーは向こう。俺はこっちから行く」
『りょーかーい』
――ザリッ
しばらくすると、硬い雪を踏みしめる音がした。
静かに雪壁に隠れて様子を窺う。
「キュッ」
様子を見ていた場所に現れたのはリューだった。周りをきょろきょろと見回している。
なんだか初めてのお使いでも見ているようで微笑ましい気持ちになる。
でも、勝負は勝負。手抜きはなしだ。
「よっとっ!」
「キュキュゥ……」
隙をついて雪玉を投げると、まっすぐリューにぶつかった。
『リューちゃん、アウト。退場いたします』
バレッタの声が響き渡ると、リューが転移するようにその場から消えた。
おそらくバレッタが移動させたんだろうな。
これで後はリンネ一人。フィーと二人がかりで追い詰めれば俺たちの勝ちだ。
『フィーちゃん、アウト。退場いたします』
でも、俺の思惑は外れる。
フィーがリンネにやられてしまった。
仕方ない。後は一騎打ちだ。俺は全神経を集中して相手の様子を把握しようとする。
こうなったら動かない方が有利だ。
――ザッザッザッザッ
しばらく待っていると、リンネの足音が聞こえてくる。
ふっふっふっ、これなら不意打ちができる。
リンネとの距離が徐々に迫る。
十メートル、五メートル、三メートル……今だ!
「はっ」
俺が飛び出して雪玉を投げる。
でも、その雪玉がリンネに当たることはなかった。
「甘いわよっ」
「ぶへっ!?」
なぜなら、リンネは俺の行動を読んでいたようにしゃがんでいたから。
そんな俺の隙を突いてリンネが雪玉を当ててきた。
『ケンゴ様アウト。このゲーム、リンネチームの勝利です』
「やったぁ!」
「いやぁ、やっぱりリンネには敵わないな」
「そりゃあ、冒険者の訓練でこういうのもたくさんやったからね。簡単には負けないわよ」
俺の戦闘力は超古代文明の力で上乗せされた部分が大きい。
小さい頃からきちんと技術を培ってきたリンネに敵うはずもない。
俺の剣術の師匠でもあるしな。
「ま、これが雪合戦だ。子供のころはこんなに明確なルールに則ってはやらなかったけどな。お互いに雪玉をぶつけあうだけだ」
「なるほどね。結構あっさり終わってしまったから今度はもっと大人数でやりたいわね」
「そうだな」
雪合戦をやるには少し人数が少なすぎた。
次はエルフやドワーフ、それに勇気たちを誘ってみるか。
「よし、最後はかまくらを作るぞ」
「かまくら?」
「なんていうか、雪で作った簡単な洞穴のような家のことだ」
「へぇ~」
「まぁ、作ってみれば分かるさ」
俺たちは全員で力を合わせてかまくら作りを始めた。
「ふぅ、結構大変ね」
「まぁな、普通はもっと小さいからな。ここにいる全員が入れるだけのかまくらとなったらそれなりに時間もかかる」
ここには俺とリンネ、イナホ、フィー、リュー、バレッタの六人がいる。
六人が入っても狭くないかまくらとなると、相当大きくしなければならない。
時間がかかるのはしょうがない。
内部を掘るのは俺が担当し、一時間ほどかけてようやく完成した。
『お腹空いた~』
かまくらが完成したところで、イナホが大きな口を開けて欠伸をしながら目を覚ます。
確かに、気づけば仕事と遊びで長い時間が経っていた。
イナホの言葉につられて、俺も急にお腹が空いてきた。
「結構動いたから何か食べたいわね」
『ぺこぺこ~!』
「キュッ」
それはリンネたちも同じだったようだ。
先ほど狩ったベアーラビットから獲れた肉は全て倉庫に収納済みだし、あの肉を使った料理でも作るか。
そう思ったが、測ったようなタイミングでバレッタがやってくる。
「お待たせしました。食事のご用意をしました」
彼女の前には料理を運ぶワゴンがあった。
その上には、ぐつぐつと煮え立つおでんが見える。
コンビニにありそうな業務用のおでん鍋で様々な具が入っていた。
寒い場所で食べるのにはぴったりだ。
俺たちはかまくらの中に揃って入る。
「へぇ~、雪で作られているのに結構あったかいのね」
「あぁ、風が入って来ないだけで全然違うし、雪には断熱作用もあるからな」
皆が興味深そうに内部を眺める。
俺もここまで本格的なかまくらを作ったのは初めてだ。
皆の様子を見て頑張って良かったと思った。
「それじゃあ、食べようか」
「『『「いただきます(キュッ)」』』」
早速ワゴンで運ばれてきたおでんから好きな具を選んで食べる。
「まずは大根かな」
綺麗に出汁色に染まった大根を一口齧った。
あっつあつの出汁が噛んだそばから溢れてくる。
中心までしっかり味が沁み込んでいて、こんぶとかつおの香りが鼻を通りぬける。
あぁ、これだよ、これ……
寒い時期にあっつあつのおでん。体の奥からしみわたっていく。
「卵、美味しいわね」
リンネは卵が気に入ったらしい。
おでんの汁をしっかり吸いこんだ卵も捨てがたい。
『やっぱりお肉だよねぇ』
イナホは牛すじがお気に入り。やはり肉か。
もともと串に刺さっていたけど、それだけじゃ足りなかった。外して山盛りにしてもらっている。
牛すじも悪くない。
『しらたきっていうのすきぃ』
フィーはしらたきが気に入ったらしい。
おでんの中で一番出汁の美味さを味わえるのはこれじゃないだろうか。
その上ヘルシーなのでいくら食べても太りにくい。
俺もなんだかんだでおでんの中でしらたきが一番好きかもしれない。
「キュキュウッ!」
リューはもち巾着を美味しそうに食べている。
しらたきと違い、もちは高カロリー。
ついつい何個も食べてしまいそうになるが、太ってしまうのが難点だ。
他の具材もしっかりと中まで味が染みていて美味しかった。
相当の量が用意されていたはずなのに、五人でほとんど食べつくしてしまった。
「食後のデザートもございますよ」
「なにかしら」
「おしるこになります」
バレッタはそう言ってリンネにお椀を差し出す。
リンネはクンクンと匂いを嗅いだ。
「色はすごいけど、この甘そうな匂いは美味しそうね」
おしるこはぱっと見だと黒寄りの紫色の液体だからな。
確かに食べ物では、あまり見ない色かもしれない。
リンネが臆せず口に入れた。
俺と一緒に未知の料理を食べまくったせいで慣れてしまったいみたいだ。
「美味しいわね。餅とこの汁の素朴な甘さがよく合うわ」
リンネはおしるこの美味しさに頬を綻ばせる。
フィーたちもすぐにおしるこを受け取って美味しそうに食べ始めた。
俺もバレッタからおしるこのお椀を受け取って口に運ぶ。
うん、美味しい。ほんのり塩味の入れることで引き立つ小豆の甘みが餅に絡む。
「おかわり!」
リンネがバレッタにお椀を差し出した。
仲間たちも我先にとお代わりを始め、俺も出遅れまいとそれに続いた。
「よし、ここで最終兵器を出そうと思う」
「なにそれ」
「こたつだ」
「こたつ? 名前だけ聞くと全然強そうに思えないわね」
「何を言ってるんだ。こたつは入ったら、二度と出ることができない最恐の道具なんだぞ」
「ホントかしら」
「見てろよ?」
俺はエイダスを使って倉庫からこたつを取り出すと、かまくらの真ん中に設置した。
その大きさはかなり大きくて七、八人で入っても余裕がありそうだ。
そのまま俺は靴を脱いでこたつに入って横になる。
「あぁ、これこれ……もう出たくない……」
超技術で造られたこたつはすでに保温されていて、足先からじんわりと温まっていく。
「あ、ずるい。私も」
リンネも滑り込んできた。
「つめたっ」
リンネの服が当たって一瞬びくりとしてしまった。
「あぁ~、これはお風呂や暖房とも全然違うわねぇ。あったかいわぁ」
だが、俺の反応を気にせず、リンネは恍惚の表情を浮かべている。
彼女もこの魅力に取りつかれてしまったようだ。
『あったかぁい。もうずっとこの中にいたいな』
流石猫。こたつの中で丸くなるのは異世界でも変わらないらしい。
『ねみゅくなってきたぁ』
こたつで横になったフィーはウトウトし始める。
リューはすでに寝入っていた。
俺の意識もなんだか遠くなってきた。
気づけば意識が飛んでいた。
「ん? ここは……」
「おはようございます。こたつで寝入っておられました。二時間ほど経過しています」
こたつの中の居心地がよすぎて、いつの間にか意識が飛んでいたみたいだ。
「そうか。全員一旦起こして馬車に移動しよう」
「かしこまりました」
俺たちは馬車で一夜を過ごした後、依頼の達成報告をするために港町に戻った。
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