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第六話『あなたを刻まれたい』
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第六話 あなたを刻まれたい
医務室の前に立った竜輝は、緊張で足が震えそうになっているのを自覚した。ここに立つとき、いつもならあの人に逢える嬉しさで胸を弾ませているのに、今日はそうじゃない。もちろんそういう気持ちも胸の中にあるけれど、それ以上に竜輝を侵食しているのは、絶望にも似た重苦しい感情だ。
ドアをノックすると、あの人の声が返ってくる。この声を聴けるのももうあと幾何もないのかと思うと、涙が込み上げてきそうだった。
「月舘であります!」
「……入れ」
許可が出たので中に入ると、彼――日高郷治陸軍軍医中尉は、いつもの定位置である窓際の席に座っていた。目が合うといつもは意地悪く笑うのに、今日は無表情のまま、じっとこちらを見つめている。
日高は何も言わない。黙ってこちらの言葉を待ってくれているのだとわかったが、肝心の竜輝のほうが、言うべき言葉をなかなか言い出すことができず、自らの呼吸の音だけが静まり返った部屋に響き渡っていた。
「……明日、出撃します」
しばしの沈黙の後、ようやくひり出せた声は、震えて世にもみっともないものだった。けれどそれが、今の竜輝の精いっぱいだった。
命令が下ったのは昨日の話。萬代を失ったことへの悲しみからまだ全然立ち直れていないタイミングでの追い打ちはなかなか辛いものがあったが、それでもやっぱり、萬代の名前を呼ばれたときに比べればずいぶんとましな気分だった。
「一応、聞き及んでいる。残念だ」
「郷治さんには本当にお世話になりました。よくしていただいたこと、感謝しております」
自分の死にゆく運命が確定したとき、友人たちよりも先に頭に浮かんだのが日高の顔だった。いつかはこの人とも一緒にいられなくなる。それはずいぶんと前から覚悟していたことだったけれど、それでもやはり竜輝の胸に重く圧し掛かった。
「感謝なんてするんじゃない。俺のやったことはまあまあ下衆だ」
「そんなことはありません! 俺は郷治さんに触れられて、触れてもらえて、嬉しかった。幸せじゃった。あなたと一緒にいられた時間は俺の大事な宝です」
愛する人と繋がる悦びも、愛する人と一緒に朝を迎える幸せも、全部この人に教えてもらった。全部、この人が持っていた。たとえ竜輝の一方的な片想いなのだとしても、ともに過ごした時間は確かに存在していて、それは竜輝の生涯において何物にも代えがたい大切なものとなっている。
「最後に、郷治さんにお願いがあります」
「なんだ?」
「俺を抱いてくれませんか?」
これが最後の夜になるというなら、いつものように竜輝が抱くのではなく、この人に抱かれてみたいと思った。この人の形を身体の中に刻み込まれたい。まだ竜輝の知らないこの人を、全部知ってそれを記憶に焼き付けておきたかった。
「俺は構わんが、お前はそっちで大丈夫なのか? 経験はないんだろう?」
「ありませんが、郷治さんならきっと優しくしてくれるって信じてますから……」
「なんだそれは」
日高は苦笑する。
「まあいい。俺も貴様を一度抱いてみたいと思っていたし、うんと可愛がってやろう」
日高はいつもより長く丁寧に、竜輝の身体を愛撫してくれた。余すところなく全身を舌や指で責められたあと、両足をくいっと持ち上げられ、性的な意味では今まで一度も使ったことのないそこを覗き込まれる。
「意外と綺麗だな。思っていたほど毛も生えてないし」
「そんなじっくり見んといてくださいっ」
「貴様だっていつも俺のケツの穴を見てるだろうが。お互い様だと思って我慢しろ」
「ううっ……」
しばらく無遠慮に尻を眺められ、羞恥に顔を熱くさせているうちに、冷たい何かが入口に塗られるのがわかった。いつも挿入する前に日高が貸してくれる、滑りをよくするための軟膏のようなものだ。
指がそこに触れるたび、いつそれが中に入ってくるのだろうかと緊張して身体が硬くなる。その挙動が日高にも伝わったのか、彼は軽く笑った。
「あまり力を入れるな。そうすると指でも痛いぞ?」
「ですがっ……」
「仕方ないな、こっちで感じてろ。そうしたら少しは気が紛れるだろう」
そう言って日高は、さっき散々丁寧にしゃぶってくれた竜輝の性器を再び口に咥えた。覚えのある快感がすぐにせり上げてきて、甘ったるいような吐息が零れてしまう。
そうして与えられる快感に意識を持っていかれているうちに、ついに日高の指が竜輝の中へと押し入ってきた。軟膏のおかげか痛みはないが、異物がそこにある、という感覚は鮮明だ。
中に入ってきたものはそのまま動かず、息を潜めるようにじっとしている。そのことに安堵したのも束の間のこと、指先が腹の側を優しく撫でるように動き、異物感が一瞬大きくなる。同時に射精感が増すような感覚に囚われ、感じたことのないそれに自分で困惑した。
「ここ、気持ちいいのか? 中が締まったぞ?」
「わかりませんっ……」
そんな竜輝をよそに、日高の指はその動きを徐々に大胆にしていく。円を描くように中を掻き回されたかと思うと、今度は鉤爪状になって中から性器を押し上げられ、自分のものとは思えないような甘さを孕んだ声が、吐息とともに零れてしまう。
「どうやら貴様もケツが感じるようだな」
「よく、わかりませんっ……」
「それだけいい声で鳴いてるんだ、感じていないということはないだろう? それにここも、舐(ねぶ)るをやめたのに硬いままだ」
先端を指で軽く弾かれ、後ろからの刺激と相まって快感の波が一瞬強く押し寄せ、身体がビクンと跳ねた。
「処女の開発なんて面倒なもんだとばかり思っていたが、こうも可愛い反応をされると開発のし甲斐がある」
「俺はっ、可愛くなんかっ……」
「いや、可愛いぞ。前からそう言ってるだろう? いい加減自分の可愛さを自覚しろ。だが決してそれを他人に振り撒いたりするんじゃないぞ? 可愛いのは俺の前だけで十分だ」
そのあと指が一本ずつ増やされ、三本でじっくり広げられてからついに日高の昂ったモノがあてがわれる。熱を持ったそれが入口に押し当てられただけで、竜輝は達してしまいそうなほどの興奮を覚えた。
「挿れるぞ?」
「はい……来てください、郷治さんっ」
日高のそれを受け入れたいと思う反面、後ろを使うのは初めてだったから、さっきまでそれを少し恐いとも感じていた。けれど今は全然恐くない。日高がじっくり慣らしてくれたし、そこで感じるというのがどういうことなのか、おぼろげにわかった気がする。だから早く日高と一つになりたい。愛する人と、早く繋がりたい。
「無理はするなよ? 俺は貴様を虐めたいわけじゃない」
「わかってます……」
入口が、グッと押し広げられる。熱い塊はそのまま竜輝の中へゆっくりと入ってきて、指のときとは全然違う圧迫感に、一瞬息が詰まりそうになった。けれど痛みはない。だから抵抗することはせず、そのまま日高を少しずつ受け入れる。
「すごいな、あっという間に全部飲み込んだぞ」
日高の手が竜輝の頬に添えられ、親指で優しく撫でられる。
「痛くはないか?」
「大丈夫です」
「なら動くぞ? ここからはやめろと言っても聞かないからな」
「今更そんなこと言いません」
こうしてせっかく一つになれたのだ。もっと繋がったままでいたいし、この先のことだって日高と共有したい。たとえ行為に痛みが伴うのだとしても、ここで中断したいとは思わなかっただろう。
日高の腰がゆっくりと引かれ、中の塊が質量を伴って動き始める。緩慢な動きだったが、それでもさっき感じたのと同じ、性器を中から刺激されるような感覚に襲われた。
押して、引いてがしばらく繰り返され、その動きが徐々にスピードを増していく。それに比例して与えられる快感も増していき、連続的に襲うそれに竜輝はあられもなく喘いだ。
「ここっ…気持ちいいだろうっ……?」
「気持ちいいっ……ですっ…あっ、ああっ!」
「竜輝がいつも、俺を気持ちよくしてくれてる場所だっ……貴様も同じ場所で感じてくれて嬉しいぞっ」
「俺もっ、嬉しいっ……あぁっ!」
行為のとき、いつもは怪しい色気を放つ日高の顔が、今日は獲物を狙う野獣のような、獰猛さをその瞳に宿して竜輝を見下ろしている。見たことのない彼の雄の表情に胸を高鳴らせながら、容赦なく押し寄せる快感の波に意識が朦朧とし始める。
「郷治さんっ……」
気持ちいいところに、日高のが擦れる。日高が竜輝の中で感じてくれている。それが嬉しく日高の身体にしがみ付けば、優しいキスが降ってきた。けれどそれも優しいのは一瞬で、まるで下半身の繋がりを模したような激しいそれに変わって竜輝を快感の渦へと引き込む。
激しく揺さぶられながら時折キスをして、それを繰り返しているうちに唐突に射精しそうな感覚がせり上げてきた。
「ああっ……郷治さんっ、駄目っ……俺っ、出てしまいますっ」
「なら出せばいいっ……俺も一度出しておこうっ……言っておくがっ、一度で終わるつもりはないからなっ」
「俺もっ……そのつもりですっ」
日高となら何度だって、何時間だって繋がっていたい。たとえそれで後ろが壊れてしまうのだとしても、それもこの人に愛された証なのだと思えてしまう。
「郷治さんっ……あっ! 愛して、いますっ……誰よりも愛していますっ」
ずっと胸の奥深くに押し留めていた感情が、堪らず声になって竜輝の外へ漏れ出てしまう。
「俺なんかっ……愛しちゃ駄目だっ」
「それでもっ……駄目って言われてもっ、愛していますっ」
同じ気持ちが返ってこなくても、一方的に愛するだけでも幸せだった。この人が自分の生きる世界にいる。それだけで十分なのだ。それ以上のことなんて、望んだりしない。
「郷治さんの子種をっ……俺にくださいっ」
「わかったっ……たっぷり出してやるからっ、ちゃんと全部受け止めろよっ」
腰が激しく打ち付けられ、竜輝は身も世もなく悶えながら喘ぐ。食い破るみたいに中で暴れる日高が与えるのは、脳が痺れるくらいの強烈な快感だ。
「郷治さんっ……出るっ……あっ!」
「俺も出すぞっ……!」
そうしてひときわ奥深くを貫かれた瞬間、何かが弾けるような感覚と、頭が真っ白になるような快感とが一気に押し寄せ、いきり勃った竜輝のモノから白濁がドロドロと溢れ出した。その直後に日高も激しいピストンを止め、全身を震わせる。
(ああ、郷治さんのが中にっ……)
自分の中で日高が達してくれた。愛する人の子種を中に注いでもらえた。そのことにたとえようのない幸福感を覚えながら、ゆっくりと身体を重ねた日高の背中を抱き締める。
「竜輝、平気か?」
「はい……すごく気持ちよかったです。もっといっぱい、郷治さんに犯されたい……」
「一度で終わるつもりはないと、さっき言ったろう? お前がへばっても今日は犯しつくしてやる。覚悟しておけ」
日高との行為は結局、互いに五回達したところで打ち止めとなった。行為が終わると簡単に身体を洗い、同じベッドで身を寄せ合いながら横になる。繋がりはとうの昔に解かれたはずなのに、まだ自分の中に日高が入っているような、不思議な感覚がする。
「郷治さんの子どもを孕めたらいいのに……」
これだけ中に出してもらえても、竜輝は男だから彼の子を身籠ることができない。それはやっぱり少し、寂しいような気がした。
「可愛いことを言うんじゃない」
そう言って日高は竜輝の頭を撫でてくれる。
「もしも男が孕めるなら、俺はとっくの昔に貴様の子を孕んでいただろうよ。これまで何度中に出されたことか」
「すみません……」
「謝るな。俺も望んだことだ」
今思えば本当に、夢のような時間を過ごさせてもらった。何も持たないただの候補生の自分が、地位にも容姿にも恵まれたこの人と身体の関係を持てたなんて、奇跡のような出来事だ。
「郷治さん、愛しています」
そんな夢のような時間は、もうすぐ終わってしまう。朝日が昇り、窓の外が明るくなれば、自分はこの人の元を離れなければならない。そしてもう、二度と戻ることはできないのだ。
「郷治さんにとっては、たくさんいる遊び相手の一人じゃったのかもしれませんが、俺は心の底からあなたを愛しておりました」
人生で一番愛した人。そして、人生で最後に愛した人。少し意地悪だけど、それでも優しかったこの人のことを、死んだって絶対に忘れたりなんかしない。
「ちょっと待て。貴様まさか、俺が他の男とも関係を持っていると思っていたのか?」
「えっ……違うんですか?」
「俺はそんな尻軽じゃない。ここの奴らと身体の関係を持ったことなど一度もないぞ」
「そ、それは本当ですか!?」
「こんな時に嘘などつくものか。まあ最初は確かに悪戯心もあって貴様に声をかけたが、それからもずっと身体の関係を持っていたのは……俺も貴様を愛していたからだ」
ずっと欲しいと――欲しいけれど絶対にもらえないと思っていた言葉が、唐突に降ってくる。
「俺は本来、他人に優しくなどない。兄貴みたく年下に甘いわけでもないし、むしろクソガキなど真っ平御免だ。それでも貴様に優しくしたのは、貴様が俺を優しいと感じたのは、きっと俺が貴様を愛していたからだ」
「郷治さんっ……」
嬉しさが胸の内からぶわっと溢れ出して、それが涙を形作って身体の外に零れていく。身体だけじゃない。心もずっと繋がっていたのだ。この人の中にも竜輝と同じ気持ちがあった。それが嬉しすぎて、もう訳が分からない。
「だからな、竜輝。立派に死んで来い、などという言葉は絶対に言わない。――生きて帰って来い。俺の元へ帰ってくるんだ」
「はいっ……」
もう死ぬ覚悟はできていたはずなのに、日高に愛されているとわかった途端、離れるのが惜しくなる。まだ生きたいと、この人と一緒に生きていきたいと思ってしまう。
この人も同じように思ってくれているだろうか? 竜輝がいなくなったら、悲しんでくれるだろうか? 時々竜輝のことを思い出して、ともに過ごした時間を懐かしんでくれるだろうか?
「俺が帰るのを、ずっと待っとってくれますか?」
「ああ。いつまでも待っている。だから早く帰って来い」
きっと竜輝が無事に帰ることはできないだろう。特攻に赴いて帰って来られたという話など、聞いたことがない。それでも竜輝は夢見てしまう。戦争が終わり、平和になったこの国の片隅で、二人で暮らしている自分たちの姿を。幸せそうに笑い合う自分たちの顔を――。
◆◆◆
部屋の一番奥に置かれたベッド。クシャっとなったままの布団に、日高郷治はそっと手を触れさせる。
つい数時間前まで、ここで愛する人と身を寄せ合いながら眠っていた。幸せな時間は刹那のように過ぎ去り、あとには冷たい現実が郷治の前に待ち受けていた。
早く帰って来いと、いつまでも待っていると、郷治は彼に言った。けれどわかっている。愛する彼はもう二度と、郷治の元へ戻って来ないと。窓の向こうに広がる海のどこかで、その命を散らせてしまうのだと。
「竜輝っ……」
彼の名前を呼んだ瞬間に、目頭がじんと熱くなった。泣くものかと歯を食いしばっても、涙は郷治の意思に関係なくボロボロと零れ落ち始め、真っ白なシーツの上に次々とシミをつくっていく。
竜輝を愛していた。一見大人びて見えるのに、甘えん坊な彼のことが可愛くて仕方なかった。大人になっていく彼のことをずっとそばで見守っていきたかったし、ともに年を重ね、寄り添い合いながら二人で生きていきたかった。だけどそれはもう、永遠に叶えることができない。二人でともに生きる未来への扉は今日、永遠に閉ざされてしまったのだ。
もっと話をしておけばよかった。もっと優しくしておけばよかった。もっと、もっと――後悔ばかりが悲しみとともに郷治の胸の中に積もっていく。他の感情を覆い尽くすほどに溜まったそれは鈍い痛みを発し、郷治はベッドに上半身を倒れ込ませた。
戸の開く音がしたのはそのときだ。ノックもせずにこの部屋に入ってくる人間には一人しか心当たりがないので、郷治はベッドに伏せたままでいる。
「郷治……」
兄の声が名前を呼んだ。足音がすぐそばまで近づいてくると、背中にそっと手が触れる。
「兄さんっ……特攻なんて、間違ってるっ……こんな戦争っ、絶対に間違ってるっ……」
「そうだな、間違ってる」
「あいつを……俺の竜輝を、返してくれっ」
こんなこと、兄に言ったってどうしようもない。戦争も特攻も、出撃メンバーに竜輝が選ばれたことも、兄のせいじゃないのだから。それでもやり場のない感情をどこかにぶつけたくて、湧き上がる言葉をそのまま口に出してしまう。
「すまない……」
何も悪くないはずなのに、兄は心底申し訳なさそうな声で謝った。謝らせてしまったことが申し訳なくて、こちらも謝ろうと身体を起こしたが、心配そうな目でこちらを見ている兄を前に、言葉を紡ぐことができなかった。代わりに嗚咽が喉を突き上げ、縋るように兄の顔を仰ぎ見ると、大きな手が郷治の背中を抱き寄せる。
大人になってから、こうして誰かに甘えたことなんて一度もない。そういう心境になることがなかったし、相手を甘やかすほうが郷治は好きだった。けれどこのときは、兄の優しさに甘えていたいと思った。このどうしようもない悲しみと寂しさをやり過ごすために、温かな優しさを与えてくれるこの人に、縋らずにはいられなかった。
医務室の前に立った竜輝は、緊張で足が震えそうになっているのを自覚した。ここに立つとき、いつもならあの人に逢える嬉しさで胸を弾ませているのに、今日はそうじゃない。もちろんそういう気持ちも胸の中にあるけれど、それ以上に竜輝を侵食しているのは、絶望にも似た重苦しい感情だ。
ドアをノックすると、あの人の声が返ってくる。この声を聴けるのももうあと幾何もないのかと思うと、涙が込み上げてきそうだった。
「月舘であります!」
「……入れ」
許可が出たので中に入ると、彼――日高郷治陸軍軍医中尉は、いつもの定位置である窓際の席に座っていた。目が合うといつもは意地悪く笑うのに、今日は無表情のまま、じっとこちらを見つめている。
日高は何も言わない。黙ってこちらの言葉を待ってくれているのだとわかったが、肝心の竜輝のほうが、言うべき言葉をなかなか言い出すことができず、自らの呼吸の音だけが静まり返った部屋に響き渡っていた。
「……明日、出撃します」
しばしの沈黙の後、ようやくひり出せた声は、震えて世にもみっともないものだった。けれどそれが、今の竜輝の精いっぱいだった。
命令が下ったのは昨日の話。萬代を失ったことへの悲しみからまだ全然立ち直れていないタイミングでの追い打ちはなかなか辛いものがあったが、それでもやっぱり、萬代の名前を呼ばれたときに比べればずいぶんとましな気分だった。
「一応、聞き及んでいる。残念だ」
「郷治さんには本当にお世話になりました。よくしていただいたこと、感謝しております」
自分の死にゆく運命が確定したとき、友人たちよりも先に頭に浮かんだのが日高の顔だった。いつかはこの人とも一緒にいられなくなる。それはずいぶんと前から覚悟していたことだったけれど、それでもやはり竜輝の胸に重く圧し掛かった。
「感謝なんてするんじゃない。俺のやったことはまあまあ下衆だ」
「そんなことはありません! 俺は郷治さんに触れられて、触れてもらえて、嬉しかった。幸せじゃった。あなたと一緒にいられた時間は俺の大事な宝です」
愛する人と繋がる悦びも、愛する人と一緒に朝を迎える幸せも、全部この人に教えてもらった。全部、この人が持っていた。たとえ竜輝の一方的な片想いなのだとしても、ともに過ごした時間は確かに存在していて、それは竜輝の生涯において何物にも代えがたい大切なものとなっている。
「最後に、郷治さんにお願いがあります」
「なんだ?」
「俺を抱いてくれませんか?」
これが最後の夜になるというなら、いつものように竜輝が抱くのではなく、この人に抱かれてみたいと思った。この人の形を身体の中に刻み込まれたい。まだ竜輝の知らないこの人を、全部知ってそれを記憶に焼き付けておきたかった。
「俺は構わんが、お前はそっちで大丈夫なのか? 経験はないんだろう?」
「ありませんが、郷治さんならきっと優しくしてくれるって信じてますから……」
「なんだそれは」
日高は苦笑する。
「まあいい。俺も貴様を一度抱いてみたいと思っていたし、うんと可愛がってやろう」
日高はいつもより長く丁寧に、竜輝の身体を愛撫してくれた。余すところなく全身を舌や指で責められたあと、両足をくいっと持ち上げられ、性的な意味では今まで一度も使ったことのないそこを覗き込まれる。
「意外と綺麗だな。思っていたほど毛も生えてないし」
「そんなじっくり見んといてくださいっ」
「貴様だっていつも俺のケツの穴を見てるだろうが。お互い様だと思って我慢しろ」
「ううっ……」
しばらく無遠慮に尻を眺められ、羞恥に顔を熱くさせているうちに、冷たい何かが入口に塗られるのがわかった。いつも挿入する前に日高が貸してくれる、滑りをよくするための軟膏のようなものだ。
指がそこに触れるたび、いつそれが中に入ってくるのだろうかと緊張して身体が硬くなる。その挙動が日高にも伝わったのか、彼は軽く笑った。
「あまり力を入れるな。そうすると指でも痛いぞ?」
「ですがっ……」
「仕方ないな、こっちで感じてろ。そうしたら少しは気が紛れるだろう」
そう言って日高は、さっき散々丁寧にしゃぶってくれた竜輝の性器を再び口に咥えた。覚えのある快感がすぐにせり上げてきて、甘ったるいような吐息が零れてしまう。
そうして与えられる快感に意識を持っていかれているうちに、ついに日高の指が竜輝の中へと押し入ってきた。軟膏のおかげか痛みはないが、異物がそこにある、という感覚は鮮明だ。
中に入ってきたものはそのまま動かず、息を潜めるようにじっとしている。そのことに安堵したのも束の間のこと、指先が腹の側を優しく撫でるように動き、異物感が一瞬大きくなる。同時に射精感が増すような感覚に囚われ、感じたことのないそれに自分で困惑した。
「ここ、気持ちいいのか? 中が締まったぞ?」
「わかりませんっ……」
そんな竜輝をよそに、日高の指はその動きを徐々に大胆にしていく。円を描くように中を掻き回されたかと思うと、今度は鉤爪状になって中から性器を押し上げられ、自分のものとは思えないような甘さを孕んだ声が、吐息とともに零れてしまう。
「どうやら貴様もケツが感じるようだな」
「よく、わかりませんっ……」
「それだけいい声で鳴いてるんだ、感じていないということはないだろう? それにここも、舐(ねぶ)るをやめたのに硬いままだ」
先端を指で軽く弾かれ、後ろからの刺激と相まって快感の波が一瞬強く押し寄せ、身体がビクンと跳ねた。
「処女の開発なんて面倒なもんだとばかり思っていたが、こうも可愛い反応をされると開発のし甲斐がある」
「俺はっ、可愛くなんかっ……」
「いや、可愛いぞ。前からそう言ってるだろう? いい加減自分の可愛さを自覚しろ。だが決してそれを他人に振り撒いたりするんじゃないぞ? 可愛いのは俺の前だけで十分だ」
そのあと指が一本ずつ増やされ、三本でじっくり広げられてからついに日高の昂ったモノがあてがわれる。熱を持ったそれが入口に押し当てられただけで、竜輝は達してしまいそうなほどの興奮を覚えた。
「挿れるぞ?」
「はい……来てください、郷治さんっ」
日高のそれを受け入れたいと思う反面、後ろを使うのは初めてだったから、さっきまでそれを少し恐いとも感じていた。けれど今は全然恐くない。日高がじっくり慣らしてくれたし、そこで感じるというのがどういうことなのか、おぼろげにわかった気がする。だから早く日高と一つになりたい。愛する人と、早く繋がりたい。
「無理はするなよ? 俺は貴様を虐めたいわけじゃない」
「わかってます……」
入口が、グッと押し広げられる。熱い塊はそのまま竜輝の中へゆっくりと入ってきて、指のときとは全然違う圧迫感に、一瞬息が詰まりそうになった。けれど痛みはない。だから抵抗することはせず、そのまま日高を少しずつ受け入れる。
「すごいな、あっという間に全部飲み込んだぞ」
日高の手が竜輝の頬に添えられ、親指で優しく撫でられる。
「痛くはないか?」
「大丈夫です」
「なら動くぞ? ここからはやめろと言っても聞かないからな」
「今更そんなこと言いません」
こうしてせっかく一つになれたのだ。もっと繋がったままでいたいし、この先のことだって日高と共有したい。たとえ行為に痛みが伴うのだとしても、ここで中断したいとは思わなかっただろう。
日高の腰がゆっくりと引かれ、中の塊が質量を伴って動き始める。緩慢な動きだったが、それでもさっき感じたのと同じ、性器を中から刺激されるような感覚に襲われた。
押して、引いてがしばらく繰り返され、その動きが徐々にスピードを増していく。それに比例して与えられる快感も増していき、連続的に襲うそれに竜輝はあられもなく喘いだ。
「ここっ…気持ちいいだろうっ……?」
「気持ちいいっ……ですっ…あっ、ああっ!」
「竜輝がいつも、俺を気持ちよくしてくれてる場所だっ……貴様も同じ場所で感じてくれて嬉しいぞっ」
「俺もっ、嬉しいっ……あぁっ!」
行為のとき、いつもは怪しい色気を放つ日高の顔が、今日は獲物を狙う野獣のような、獰猛さをその瞳に宿して竜輝を見下ろしている。見たことのない彼の雄の表情に胸を高鳴らせながら、容赦なく押し寄せる快感の波に意識が朦朧とし始める。
「郷治さんっ……」
気持ちいいところに、日高のが擦れる。日高が竜輝の中で感じてくれている。それが嬉しく日高の身体にしがみ付けば、優しいキスが降ってきた。けれどそれも優しいのは一瞬で、まるで下半身の繋がりを模したような激しいそれに変わって竜輝を快感の渦へと引き込む。
激しく揺さぶられながら時折キスをして、それを繰り返しているうちに唐突に射精しそうな感覚がせり上げてきた。
「ああっ……郷治さんっ、駄目っ……俺っ、出てしまいますっ」
「なら出せばいいっ……俺も一度出しておこうっ……言っておくがっ、一度で終わるつもりはないからなっ」
「俺もっ……そのつもりですっ」
日高となら何度だって、何時間だって繋がっていたい。たとえそれで後ろが壊れてしまうのだとしても、それもこの人に愛された証なのだと思えてしまう。
「郷治さんっ……あっ! 愛して、いますっ……誰よりも愛していますっ」
ずっと胸の奥深くに押し留めていた感情が、堪らず声になって竜輝の外へ漏れ出てしまう。
「俺なんかっ……愛しちゃ駄目だっ」
「それでもっ……駄目って言われてもっ、愛していますっ」
同じ気持ちが返ってこなくても、一方的に愛するだけでも幸せだった。この人が自分の生きる世界にいる。それだけで十分なのだ。それ以上のことなんて、望んだりしない。
「郷治さんの子種をっ……俺にくださいっ」
「わかったっ……たっぷり出してやるからっ、ちゃんと全部受け止めろよっ」
腰が激しく打ち付けられ、竜輝は身も世もなく悶えながら喘ぐ。食い破るみたいに中で暴れる日高が与えるのは、脳が痺れるくらいの強烈な快感だ。
「郷治さんっ……出るっ……あっ!」
「俺も出すぞっ……!」
そうしてひときわ奥深くを貫かれた瞬間、何かが弾けるような感覚と、頭が真っ白になるような快感とが一気に押し寄せ、いきり勃った竜輝のモノから白濁がドロドロと溢れ出した。その直後に日高も激しいピストンを止め、全身を震わせる。
(ああ、郷治さんのが中にっ……)
自分の中で日高が達してくれた。愛する人の子種を中に注いでもらえた。そのことにたとえようのない幸福感を覚えながら、ゆっくりと身体を重ねた日高の背中を抱き締める。
「竜輝、平気か?」
「はい……すごく気持ちよかったです。もっといっぱい、郷治さんに犯されたい……」
「一度で終わるつもりはないと、さっき言ったろう? お前がへばっても今日は犯しつくしてやる。覚悟しておけ」
日高との行為は結局、互いに五回達したところで打ち止めとなった。行為が終わると簡単に身体を洗い、同じベッドで身を寄せ合いながら横になる。繋がりはとうの昔に解かれたはずなのに、まだ自分の中に日高が入っているような、不思議な感覚がする。
「郷治さんの子どもを孕めたらいいのに……」
これだけ中に出してもらえても、竜輝は男だから彼の子を身籠ることができない。それはやっぱり少し、寂しいような気がした。
「可愛いことを言うんじゃない」
そう言って日高は竜輝の頭を撫でてくれる。
「もしも男が孕めるなら、俺はとっくの昔に貴様の子を孕んでいただろうよ。これまで何度中に出されたことか」
「すみません……」
「謝るな。俺も望んだことだ」
今思えば本当に、夢のような時間を過ごさせてもらった。何も持たないただの候補生の自分が、地位にも容姿にも恵まれたこの人と身体の関係を持てたなんて、奇跡のような出来事だ。
「郷治さん、愛しています」
そんな夢のような時間は、もうすぐ終わってしまう。朝日が昇り、窓の外が明るくなれば、自分はこの人の元を離れなければならない。そしてもう、二度と戻ることはできないのだ。
「郷治さんにとっては、たくさんいる遊び相手の一人じゃったのかもしれませんが、俺は心の底からあなたを愛しておりました」
人生で一番愛した人。そして、人生で最後に愛した人。少し意地悪だけど、それでも優しかったこの人のことを、死んだって絶対に忘れたりなんかしない。
「ちょっと待て。貴様まさか、俺が他の男とも関係を持っていると思っていたのか?」
「えっ……違うんですか?」
「俺はそんな尻軽じゃない。ここの奴らと身体の関係を持ったことなど一度もないぞ」
「そ、それは本当ですか!?」
「こんな時に嘘などつくものか。まあ最初は確かに悪戯心もあって貴様に声をかけたが、それからもずっと身体の関係を持っていたのは……俺も貴様を愛していたからだ」
ずっと欲しいと――欲しいけれど絶対にもらえないと思っていた言葉が、唐突に降ってくる。
「俺は本来、他人に優しくなどない。兄貴みたく年下に甘いわけでもないし、むしろクソガキなど真っ平御免だ。それでも貴様に優しくしたのは、貴様が俺を優しいと感じたのは、きっと俺が貴様を愛していたからだ」
「郷治さんっ……」
嬉しさが胸の内からぶわっと溢れ出して、それが涙を形作って身体の外に零れていく。身体だけじゃない。心もずっと繋がっていたのだ。この人の中にも竜輝と同じ気持ちがあった。それが嬉しすぎて、もう訳が分からない。
「だからな、竜輝。立派に死んで来い、などという言葉は絶対に言わない。――生きて帰って来い。俺の元へ帰ってくるんだ」
「はいっ……」
もう死ぬ覚悟はできていたはずなのに、日高に愛されているとわかった途端、離れるのが惜しくなる。まだ生きたいと、この人と一緒に生きていきたいと思ってしまう。
この人も同じように思ってくれているだろうか? 竜輝がいなくなったら、悲しんでくれるだろうか? 時々竜輝のことを思い出して、ともに過ごした時間を懐かしんでくれるだろうか?
「俺が帰るのを、ずっと待っとってくれますか?」
「ああ。いつまでも待っている。だから早く帰って来い」
きっと竜輝が無事に帰ることはできないだろう。特攻に赴いて帰って来られたという話など、聞いたことがない。それでも竜輝は夢見てしまう。戦争が終わり、平和になったこの国の片隅で、二人で暮らしている自分たちの姿を。幸せそうに笑い合う自分たちの顔を――。
◆◆◆
部屋の一番奥に置かれたベッド。クシャっとなったままの布団に、日高郷治はそっと手を触れさせる。
つい数時間前まで、ここで愛する人と身を寄せ合いながら眠っていた。幸せな時間は刹那のように過ぎ去り、あとには冷たい現実が郷治の前に待ち受けていた。
早く帰って来いと、いつまでも待っていると、郷治は彼に言った。けれどわかっている。愛する彼はもう二度と、郷治の元へ戻って来ないと。窓の向こうに広がる海のどこかで、その命を散らせてしまうのだと。
「竜輝っ……」
彼の名前を呼んだ瞬間に、目頭がじんと熱くなった。泣くものかと歯を食いしばっても、涙は郷治の意思に関係なくボロボロと零れ落ち始め、真っ白なシーツの上に次々とシミをつくっていく。
竜輝を愛していた。一見大人びて見えるのに、甘えん坊な彼のことが可愛くて仕方なかった。大人になっていく彼のことをずっとそばで見守っていきたかったし、ともに年を重ね、寄り添い合いながら二人で生きていきたかった。だけどそれはもう、永遠に叶えることができない。二人でともに生きる未来への扉は今日、永遠に閉ざされてしまったのだ。
もっと話をしておけばよかった。もっと優しくしておけばよかった。もっと、もっと――後悔ばかりが悲しみとともに郷治の胸の中に積もっていく。他の感情を覆い尽くすほどに溜まったそれは鈍い痛みを発し、郷治はベッドに上半身を倒れ込ませた。
戸の開く音がしたのはそのときだ。ノックもせずにこの部屋に入ってくる人間には一人しか心当たりがないので、郷治はベッドに伏せたままでいる。
「郷治……」
兄の声が名前を呼んだ。足音がすぐそばまで近づいてくると、背中にそっと手が触れる。
「兄さんっ……特攻なんて、間違ってるっ……こんな戦争っ、絶対に間違ってるっ……」
「そうだな、間違ってる」
「あいつを……俺の竜輝を、返してくれっ」
こんなこと、兄に言ったってどうしようもない。戦争も特攻も、出撃メンバーに竜輝が選ばれたことも、兄のせいじゃないのだから。それでもやり場のない感情をどこかにぶつけたくて、湧き上がる言葉をそのまま口に出してしまう。
「すまない……」
何も悪くないはずなのに、兄は心底申し訳なさそうな声で謝った。謝らせてしまったことが申し訳なくて、こちらも謝ろうと身体を起こしたが、心配そうな目でこちらを見ている兄を前に、言葉を紡ぐことができなかった。代わりに嗚咽が喉を突き上げ、縋るように兄の顔を仰ぎ見ると、大きな手が郷治の背中を抱き寄せる。
大人になってから、こうして誰かに甘えたことなんて一度もない。そういう心境になることがなかったし、相手を甘やかすほうが郷治は好きだった。けれどこのときは、兄の優しさに甘えていたいと思った。このどうしようもない悲しみと寂しさをやり過ごすために、温かな優しさを与えてくれるこの人に、縋らずにはいられなかった。
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