天月記(旧:異世界の神に嫌われた男はゲームのステータスを手に入れて無双します。[改稿版])

徒花幸介

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序章 理不尽と無力、そして希望

第3話[3月6日大規模修正]

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俺は異世界転移してわずか1時間?も経たない間に牢屋に入れられていた。

「はぁー!?なんで俺がこんなとこにいるんだよ!」
寝るための干し草が置いてあるだけの冷たい石の牢屋で俺は寝ころびながら、そう叫んだ。それのおかげか、俺はあることに気づいた。
——ん?俺普通に喋れんじゃん。洗脳が解けたのか?だとしても、俺が今ここでできることはないがな。
まぁ、気を失う前に聞こえた言葉を信じて待つとしますか。

「しっかし。どうしたものかね。」
干し草の上に座り、体に異変はないか見つめながらそう呟くと、奥の方から階段を下りてくる音が聞こえた。

「その質問には私が答えよう。」
足音の主は、先ほど俺の意識を奪い、ついでに意味深な言葉を残した男だった。

「へぇ、あんた自ら来てもらえるとは思ってなかったよ。」
干し草から立ち上がり、牢屋の柵の前まで近づいた。

「やぁ、さっきぶりだね。」
男は王の目の前でしていた真面目な顔と違い、興味深そうな笑みを浮かべていた。

「やぁ、じゃないんだけどな。普通にあれ痛かったしな。」
俺がうなじをポンポンと触りながら、恨めし気にそう話す。

「すまないすまない。あの場での最善策はあれしかなかったのでね。」
ハハッと笑いながら男が語る。

「それで、目的は?っていうか俺はあんたの名前すら知らないんだが?」
俺の発言に男は少し驚いたような顔をした。

「そうですね。私の名から話しましょうか。私の名はクリストフ・シュタインです。どうぞお見知りおきを。」
クリストフ・シュタインと名乗った男は胸に手を置いて礼をする。

「俺の名前は小鳥遊宗太だ。よろしく頼む。」
俺はそう言って少し頭を下げる。

「それではよろしく頼むよ。小鳥遊くん。」

「で、あとは俺を助けた目的を教えてもらっていいか?」
俺は石の床の上に腰を落として、クリストフに問う。

「そうだね。目的だけ言っても、君にはよくわからないかもしれないから、ことの発端から説明させてもらうよ。これは、一年程前かな。我が国の皇女に女神からの信託が下ったらしいんだ。内容は『異邦の勇者たちを呼び、魔を滅ぼせ』ってね。」
クリストフもまた、石の床の上に座り話し始めた。

「それで?その信託に対してお前たちの国はどういう対応をしたんだ?」
クリストフの話の内容に少し腹を立てていたのか、強めの口調でそう言い放った。

「王はとても喜んだよ。あのゴミは人間以外の種族が大嫌いだからね。正式に殺す理由ができたと叫んでいたよ。」
クリストフもまた、怒りを含む声でそう話した。

「俺たちはそんなくそみたいな理由で呼ばれたのか。」
俺はそう言って床にこぶしをぶつける。

「それに関しては申し訳ない。言い訳にしかならないが、このことに私が気付いた時には、もう手を付けられないほどになってしまっていた。」
クリストフは座りながら地面に頭をぶつけんばかりの勢いで頭を下げた。

「いや、あんたに謝らせたいわけじゃない。それと一つ聞きたいんだが、俺たちに対して行われた洗脳みたいなやつ。あれは何だ?」
クリストフに頭を上げるように促しながら、俺はあの体が思うとおりに動かなくなったことについて聞いた。

「それはこの王城の謁見の間に存在する魔道具の影響だろう。多少なりとも精神耐性があれば大丈夫だが、君たちはなにぶんこの世界に来たばかりだからね。あの魔道具の影響をもろに受けてしまったのだろう。まぁ君たちの中に数人ほど完全に意識を奪われていなかったものがいたのは驚きだったがね。」
彼は顔を上げ、先ほどと同じ興味深そうな笑みを浮かべてそう話す。

「少し気になったんだが、俺って今洗脳が完全に解けてるよな?これは一体どういうわけだ?」
俺は頭を触りながら、そう話す。

「それはだね。君を気絶させたときにポケットに仕込ませてもらったブレスレット型の魔道具のおかげだよ。」
彼は、俺のズボンのポケットを指さしながらそう話す。
それを聞いた俺がポケットをまさぐると、少し小さめの紫色のブレスレットが入っていた。

「ありがとう。感謝するよ。話を切って済まん。それで、俺が助けられた理由は?」
おれのその言葉にクリストフは神妙な顔つきになった。

「端的に言えば君は明日にでも魔皇国周辺のダンジョンの半ばに捨てられるだろう。」
彼は、残念そうにそう話す。

「まじかよ。」
ダンジョンってことは普通に危険地帯だよな?このステータスでそこにポイされたら死ぬだろ。そんなことを考えていると、彼は更に残酷なことを告げる。

「そして君はそこで死ぬ可能性がかなり高い。」
彼の言葉は予想通りではあったが、その言葉におれは冷や汗を流した。

「それで?今日のことは黙って死ねと?」
冷静を保つために、ふざけた口調で俺は話す。

「違う。ダンジョンの難易度の問題でつきそうのは僕だけだ。君を他国に逃がすという手段も取れない。けど、私から君に最大限のサポートができる。だから...生き延びてくれ。」
彼は、頭を下げ、申し訳なさそうにいった。

「一つ聞きたい。それをして、お前になんのメリットがあるんだ?」
俺は頭を下げるクリストフに問う。これは当たり前の問いだ。俺みたいなやつを助けたところで彼には何のメリットもない。
俺の問いにクリストフは姿勢を変えず、悔しそうに話しだした。

「このまま魔皇国と戦争になれば、今回なんの関係もないのに呼ばれた君たちが被害を被ることになる。一人の騎士として、いやこの世界に生きるものとして、それはなんとしても避けなければならない。だから君には生き延びて、私の協力者として、この争いを止めるのを協力してほしい。頼む。」
クリストフは自らの力不足を嘆きながらも、強い意志をはらむ言葉で俺に頼み込んだ。

「わかった、その頼み、受け入れよう。クリストフ、お前の願いにおれは全力を尽くそう。まぁ、まずは俺が生き延びないとな。生き延びて、町にでも出たら、お前に手紙でも送るよ。」
俺の言葉を聞いたクリストフは顔を上げ、感謝でいっぱいという顔で俺を見つめてきた。

「感謝する。あぁ、君を選んでよかった。これで、私は一歩先に進めるかもしれない...!」
彼は立ちあがり、もう一度頭を下げる。

「俺は必ず生きて帰る。お前はお前の願いのために、全力を尽くせ。」
俺も立ち上がり力強く、覚悟を決めた声でそう言い放った。

「そうさせてもらうよ。我が協力者、ソウタ・タカナシ君!」
そう言い残しクリストフは俺の目の前から去っていく。取り残された俺は、希望を持った目をしていた。なぜなら、ダンジョンの危険性なんて考慮していないのだから。この後、自分が死ぬ・・なんて思ってもいない俺はそのまま干し草の上で眠りについた。

――そして次の日、俺はクリストフ主導のもと、ダンジョンの奥深くに捨てられた。


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