5 / 22
第一章・ハイテク・プリズン『電子レンジ地獄』
第五話・異能力を発揮した俺が感じとった違和感
しおりを挟む
コンビニ妖精セファが、ゲーム再開を宣言すると、再び巨大な文字が浮かんだ。
『STAGE2 レジ打ちをしてお客様から代金をゲットせよ』
「それほど難しくないから、落ち着いてがんばって! あと、補助ラベルを電子レンジに貼るのも忘れずにね」
「――おっと、そうだった……」
富樫は手にした「補助ラベル」を確認すると、それを電子レンジの前面に、慎重に貼りつけた。
「この電子レンジがすべての鍵を握るからな。出来るだけ見やすく、――と」
ラベルを張り終えた時、店内に入店音が響いた。振り返ると地味な色のコートをきたあまちゃんが、寒そうに肩を抱きながら入ってきた。
「またあまちゃんか! って、さっきと違って冬らしい服装だな。さっきの露出の多い服装が、俺は好みだ」
「そんなエッチなこと言ってると、また難易度あげるんだからね!」
「エ、エッチなもんか! 俺の個人的好みを言ったまでだ! 夏でも冬でも、女の子はさわやかな薄着に限る、ってな!」
「――その差別発言にマイナス1ポイント。難易度が1ランクあがりまあす」
「お、おい! どこが差別発言だよ!!」
パチ――、と火花が散るような音がした。
「なんだ今のは」
「え? なんのこと?」
「今パチッっていう、小さな音がしたぞ。何が起こった?」
「……」
セファが黙り込んだ。
「おい! 答えろよ」
店内を歩く、お客のあまちゃんに聞こえない程度の声で富樫がささやくが、セファは答えない。耳をすます富樫の耳に、今度はあまちゃんのささやき声が聞こえた。
「今日はドリアに……、かな。新製品、シーフードカレードリア……、いいかも」
パチ……、また火花が散るような音がした。今度は富樫は何も言わなかった。何も聞かなかったそぶりをし、鼻をほじってその指をレジテーブルになすりつけた。その間も、ずっと自慢の耳はすませたままだ。
「今、トガシの様子がちょっとおかしい気がしたけど……、気のせいだったかなぁ?」
――ささやくようなセファの声。
異常な聴力を持つ富樫でなければ、聞き逃していただろう。だが富樫は耳たぶをぴくぴくと動かし、そのセファの、蚊の鳴くよりもずっと小さな声を聞き取った。だが富樫はセファの声は聞こえない振りをし、ぼうっとした表情であまちゃんの姿を追った。
そう、富樫は気付いたのだ、自分の異常な聴力が、このコンビニ地獄をブレイクするのに、少しでも役立つことに!
富樫は心の中でささやく。
(フフッ。さっきの音は設定を変更した音だな? 俺の異常な聴力。セファには気付かれていないようだ! このチート能力を、思う存分、有効活用させていただこう!)
富樫はさらに耳をすます。あまちゃんの、静かな息づかいさえ聞こえるほどに! あまちゃんの声が、ごくごく小さな音を発した。それを富樫は、聞き逃さなかった。
「そうだ、あの人の分も、買っていこ……」
(え?)
富樫は動揺した。あの人、だと? 誰だそれは。コンビニでいつも暗い顔をしてお客様を待つだけの存在。彼氏どころか趣味も生きがいもない、ただただレジ打ちとレンジを使ったあっためをするだけの存在であるはずの、あのあまちゃん。
そのあまちゃんに、「あの人」、だと? 富樫の、わりとすごい頭脳は混乱した。
(お、おいあまちゃん、お前はいつも暗い顔をして孤独にさいなまれるひとりっこだろ、高校の時などは、トイレでお母さんに作ってもらった冷たいお弁当を、かちゃかちゃとお箸を鳴らしながらわびしく食す、さびしっこだったはずだよな? いや、それは俺がいつものお前の態度を見て、推理していた、いわば俺だけの『あまちゃん像』、だったのかもしれないけど、でもお前は俺を裏切らないよな? 俺の両親が俺を裏切ったみたいにはな! そうだろ? お前は、お前だけは俺の味方だよな……?)
ひく……、と眉間に皺を寄せた富樫。そんな富樫の様子には全く無関係に、ほっこりした笑顔でドリアを品定めするあまちゃんと、おかしな発言をした富樫の様子を疑いのまなざしで観察するセファ。ちょっとした緊張感がこの三者を包み、それぞれの感情を、それぞれが気づかない程度の、微妙な感じで増幅しようとしていた。
『STAGE2 レジ打ちをしてお客様から代金をゲットせよ』
「それほど難しくないから、落ち着いてがんばって! あと、補助ラベルを電子レンジに貼るのも忘れずにね」
「――おっと、そうだった……」
富樫は手にした「補助ラベル」を確認すると、それを電子レンジの前面に、慎重に貼りつけた。
「この電子レンジがすべての鍵を握るからな。出来るだけ見やすく、――と」
ラベルを張り終えた時、店内に入店音が響いた。振り返ると地味な色のコートをきたあまちゃんが、寒そうに肩を抱きながら入ってきた。
「またあまちゃんか! って、さっきと違って冬らしい服装だな。さっきの露出の多い服装が、俺は好みだ」
「そんなエッチなこと言ってると、また難易度あげるんだからね!」
「エ、エッチなもんか! 俺の個人的好みを言ったまでだ! 夏でも冬でも、女の子はさわやかな薄着に限る、ってな!」
「――その差別発言にマイナス1ポイント。難易度が1ランクあがりまあす」
「お、おい! どこが差別発言だよ!!」
パチ――、と火花が散るような音がした。
「なんだ今のは」
「え? なんのこと?」
「今パチッっていう、小さな音がしたぞ。何が起こった?」
「……」
セファが黙り込んだ。
「おい! 答えろよ」
店内を歩く、お客のあまちゃんに聞こえない程度の声で富樫がささやくが、セファは答えない。耳をすます富樫の耳に、今度はあまちゃんのささやき声が聞こえた。
「今日はドリアに……、かな。新製品、シーフードカレードリア……、いいかも」
パチ……、また火花が散るような音がした。今度は富樫は何も言わなかった。何も聞かなかったそぶりをし、鼻をほじってその指をレジテーブルになすりつけた。その間も、ずっと自慢の耳はすませたままだ。
「今、トガシの様子がちょっとおかしい気がしたけど……、気のせいだったかなぁ?」
――ささやくようなセファの声。
異常な聴力を持つ富樫でなければ、聞き逃していただろう。だが富樫は耳たぶをぴくぴくと動かし、そのセファの、蚊の鳴くよりもずっと小さな声を聞き取った。だが富樫はセファの声は聞こえない振りをし、ぼうっとした表情であまちゃんの姿を追った。
そう、富樫は気付いたのだ、自分の異常な聴力が、このコンビニ地獄をブレイクするのに、少しでも役立つことに!
富樫は心の中でささやく。
(フフッ。さっきの音は設定を変更した音だな? 俺の異常な聴力。セファには気付かれていないようだ! このチート能力を、思う存分、有効活用させていただこう!)
富樫はさらに耳をすます。あまちゃんの、静かな息づかいさえ聞こえるほどに! あまちゃんの声が、ごくごく小さな音を発した。それを富樫は、聞き逃さなかった。
「そうだ、あの人の分も、買っていこ……」
(え?)
富樫は動揺した。あの人、だと? 誰だそれは。コンビニでいつも暗い顔をしてお客様を待つだけの存在。彼氏どころか趣味も生きがいもない、ただただレジ打ちとレンジを使ったあっためをするだけの存在であるはずの、あのあまちゃん。
そのあまちゃんに、「あの人」、だと? 富樫の、わりとすごい頭脳は混乱した。
(お、おいあまちゃん、お前はいつも暗い顔をして孤独にさいなまれるひとりっこだろ、高校の時などは、トイレでお母さんに作ってもらった冷たいお弁当を、かちゃかちゃとお箸を鳴らしながらわびしく食す、さびしっこだったはずだよな? いや、それは俺がいつものお前の態度を見て、推理していた、いわば俺だけの『あまちゃん像』、だったのかもしれないけど、でもお前は俺を裏切らないよな? 俺の両親が俺を裏切ったみたいにはな! そうだろ? お前は、お前だけは俺の味方だよな……?)
ひく……、と眉間に皺を寄せた富樫。そんな富樫の様子には全く無関係に、ほっこりした笑顔でドリアを品定めするあまちゃんと、おかしな発言をした富樫の様子を疑いのまなざしで観察するセファ。ちょっとした緊張感がこの三者を包み、それぞれの感情を、それぞれが気づかない程度の、微妙な感じで増幅しようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?
浅野明
ファンタジー
ある日突然天使に拉致された篠宮蓮、38歳。ラノベは好きだが、異世界を夢見るお年頃でもない。だというのに、「勇者召喚」とやらで天使(自称)に拉致られた。周りは中学生ばっかりで、おばちゃん泣いちゃうよ?
しかもチートがもらえるかどうかはガチャの結果次第らしい。しかし、なんとも幸運なことに何万年に一度の大当たり!なのにチートがない?もらえたのは「幸運のアイテム袋」というアイテム一つだけ。
これは、理不尽に異世界転生させられた女性が好き勝手に生きる物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる