飛翔英雄伝《三國志異聞奇譚》〜蒼天に誓う絆〜

銀星 慧

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第九章 中原の覇者と魔王の片鱗

第百六話 流浪する呂布軍

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冀州きしゅう界橋かいきょうから南方に二十里の地点で、歩兵三万余を中央に配置し、左右を一万余の騎兵で固めた公孫瓚軍と、盾を構えた八百の兵を先鋒に、数千の歩兵で対抗する袁紹軍が激突した。

袁紹軍の先鋒を率いたのは、韓馥かんふくの元配下で、涼州出身の麴義きくぎと言う将である。
敵の兵力が少数である事を見て取った公孫伯圭はくけいは、騎兵部隊で一気に押し潰そうと攻め寄せる。
だが、麴義は羌族きょうぞくとの戦いで騎兵戦術を熟知しており、兵たちは皆盾の下に伏せて動かず、体を張って堅固に守りを固めた。

敵が数十歩の距離にまで迫った時、麴義の兵は一斉に立ち上がって砂塵さじんを巻き上げ、伏せられた一千張の強弩兵きょうどへいを前面に押し出し一気に矢を放つ。
強力なから放たれた矢は唸りを上げ、次々に伯圭の騎兵部隊を襲った。

この麴義の奮闘ふんとうにより、公孫瓚軍最強を誇った“白馬義従はくばぎじゅう”は大破され、主力の一万余りを失った公孫瓚軍は退却を余儀よぎなくされたのである。
更に、追撃する麴義に配下の厳綱げんこうを捕らえられ斬られると、伯圭は渤海ぼっかいまで敗走した。

鮮やかに形勢をくつがえした袁本初が、勢いに乗って幽州ゆうしゅうへ攻め込んだしらせを聞き、南陽の袁公路えんこうろは強く歯噛みをした。

幽州の劉虞りゅうぐ(伯安はくあん)は、公孫瓚軍に兵糧の支援などを行っていたが、伯圭とは度々、北方の異民族である烏桓うがん鮮卑せんぴに対する対策について衝突する事があった。

劉伯安は、異民族に物資を贈るなどして彼らを懐柔かいじゅうする策を取っていたが、それに対して伯圭は手緩てぬるいと考え、常に反感を抱いていた。
「今は大人しく従っても、漢室を軽視している彼らは後々必ずそむくに違いなく、徹底的に討伐するべきである。」
とにかく武力行使こうしを押し進めようとする伯圭に、伯安は憂いを抱いており、この戦いでは次第に兵糧の支給を削減するようになる。

これに怒った伯圭は、異民族に贈る物資を襲ったり略奪するようになり、二人の仲は険悪さを増していった。
二人の間で、いつ戦が勃発ぼっぱつしてもおかしくない。このまま放って置けば、本初の勢力は拡大して行く一方となる。

そこで公路は、平原へいげん国へ派遣され、高唐こうとう県のになっていた劉玄徳や、伯圭の配下で平原の単経ぜんけい発干はつかん陶謙とうけんらと連携して、袁紹軍を包囲し圧迫しようと目論もくろんでいた。


季節が巡り、風が少し秋めいて来た頃、長安から部下を引き連れ流浪していた呂奉先が、袁公路の元を訪れた。
董仲穎とうちゅうえい誅殺ちゅうさつの報は既に各地に広まっており、初めは無下むげに追い返されるのではないかと心配していたが、公路は彼らの到着を思いのほか歓迎し、素直に喜びを表した。

仲穎は雒陽らくように居た頃、捕らえた袁氏一族を皆殺しにしている。
袁氏にとって仇敵きゅうてきである彼をたおした奉先は“恩人”と言う訳である。

「呂将軍、良く来てくれた!」
公路は自ら奉先と腹心の将たちを出迎え、笑顔で対面した。

「長安を追われ、今の俺は無位むい無官むかんの身…それ処か、住む場所も有りません…」
「何を言う、将軍は我が袁家の恩人…いや、逆賊董仲穎を討ち暴政を終わらせた英雄ではないか!」
苦笑を浮かべて拱手きょうしゅする奉先に、公路はそう言ってねぎらいの言葉を掛け、声を上げて笑う。
そして上賓じょうひんの礼で彼らを迎え入れ、配下たちにも立派な宿舎を用意してくれたのである。

「袁公路は、小心で狭量きょうりょうな性格だと聞いておりましたが、なかなか懐の深い人物ですね…!」
「そうだな。これ程のもてなしをされては、何か御返おかえしせねばなるまい…」
予想以上の厚遇こうぐうに、高士恭こうしきょうは驚くと同時に深く感心し、奉先は立派な宿舎を前に首をひねって苦笑した。

その翌日、貂蝉をともなった奉先は、公路の屋敷へと向かった。
貂蝉の家族は董仲穎に殺されている。
彼の予想では、彼女の身内は袁家とゆかりがある可能性が高く、彼女を知っている者が居ないか調べて貰おうと相談に行ったのである。

「このが噂に聞く貂蝉か、実に美しい…!」

公路は目をみはり食い入る様に彼女を見詰めていたが、一頻ひとしきり話を聞くと、

「わしに任せて置くと良い、必ず彼女の身内を探すと約束しよう。」
そう言って自分の胸を大きく叩いて笑い、こころよく受け入れてくれた。
それから公路はあらたまって向き直り、奉先に膝を進めると、

「実は、わしはもうすぐ南陽ここを発って兗州えんしゅう陳留郡ちんりゅうぐんへ向け出兵する予定なのだ。」
と、今度は彼に戦の話しを振る。

「陳留へ、ですか…?」
「そうだ。今、陳留には曹孟徳が居る。袁本初を叩くには、先ず陳留郡の曹操軍を撃破する必要がある。そこで将軍には我々の援軍として従軍して貰い、奴らを打ち破って欲しい!」

「曹操軍を…?!」

奉先は思わず瞠目どうもくし、言葉を失った。

「曹操軍は弱小だ。何なら、わしの兵を貸しても良い。将軍なら簡単に蹴散けちらす事が出来るであろう?!」
そう言って公路は笑い、身を乗り出して彼の顔色をうかがい見る。

申し出を断り、曹孟徳との関係性を疑われればたちま此処ここを追い出されて仕舞うであろう。
それ処か、家族や部下たちに危険が及ぶ可能性も有る。
奉先は、仲間たちにも孟徳との関係を語った事は無く、それを知る者はいない。
むしろ、彼らは敵対関係だと思い込んでいる者の方が多かった。

「…それでは、一度部下たちに相談してみます。」
苦笑を浮かべながら取りつくろいそう答えると、奉先は再び貂蝉を連れ、一旦彼の屋敷を後にした。

此処へ置いて貰う以上、何らかの形で義を果たさねば成らぬ…

戦場で相見あいまみえれば、鋭敏えいびんな孟徳なら直ぐに此方こちらの事情を斟酌しんしゃくしてくれるに違いないが、果たして自分に孟徳の軍を破る事が出来るであろうか。
そう思うと、奉先は苦悶くもんした。

「奉先、大丈夫?」
屋敷を出た後、門へ向かって歩きながら振り返ると、貂蝉が心配げな眼差しで彼を見上げている。
奉先は暫し黙して彼女を見詰めていたが、やがて腕を伸ばし、彼女の小さな細い肩を抱き寄せた。

「済まない貂蝉、此処でお前の身内を探してやりたかったのだが…また直ぐに、発たねば成らぬかも知れぬ…」
「私はいいの。奉先の側に居られれば、何処どこでも平気だもの…!」
明るい声で答え、貂蝉は彼の胸に顔をうずめて強く抱き着いた。

薄暗い居室に小さな手燭てしょくを持った雲月が入って来る。
日が傾いた頃宿舎へ戻った奉先は、居室で一人瞑目めいもくしながら深く考え事をしていたが、いつの間にか日は落ち辺りはすっかり暗くなっていた様である。

床に座したまま、心配げな面持ちで近寄る雲月を見上げると、奉先は腕を伸ばし彼女のお腹をそっと撫でた。
雲月はゆったりとした着物を身にまとっているが、お腹のふくらみが少し目立つ様になっている。

「奉先、一人で悩んでは良くないぞ…」

奉先は雲月を見上げて微笑を返すと、

「ああ、だがもう心は決まった。明日、皆に話す積もりだ。」

そう言って、彼女のお腹に耳を押し当て、胎児の胎動たいどうを聞こうと耳を澄ませる。
雲月は彼の様子に目を細め、やかな口元に手をえて少し恥じらう様にくすくすと笑った。

細く棚引たなびく雲の切れ間から、青白く輝く月がのぞき、公路の屋敷にある長い廊下に月明かりを降らせている。
その廊下を、足早に歩く一人の男の姿があった。

「殿、少し宜しいでしょうか?」
公路の居室へ現れた色白で細身のその男は、そう言って部屋でくつろぐ公路の前へ進み出た。

子台しだいか、どうした?」
「あの者を、余り信用せぬ方が宜しいでしょう。欲にられて、養父の丁建陽ていけんようを殺した男です…!」

劉勲りゅうくん、字を子台と言うその人物は、公路の寵臣ちょうしんの一人である。
袁公路の配下たちからすれば、流浪の身である彼らが厚遇され、自分たちが軽視される様になってはたまらない。
公路が奉先に全面的な信頼を寄せ、軍事まで任せようとしている事には我慢ならなかった。
更に、子台は拱手きょうしゅしながらこう告げる。

「それに、長安から発した使者が此方こちらへ向かっているとの報もございます。」

長安では、李傕りかく郭汜かくしが城内を分割して統治とうちしていたが、二人はどちらも統治能力が低く、治安の維持が出来ないばかりか、民衆の生活は困窮こんきゅうを極め、城内には白骨死体があふれると言う悲惨な有り様であった。

そんな状況下で、この時期、李傕は西方の馬騰ばとう(寿成じゅせい)と争っており、北で勢力を拡大し始めている袁本初に不安を抱き、南陽の袁公路と結ぼうと考えていたのである。

「李傕は、殿に爵位しゃくいを与える積りでしょうから、呂布をかくまうのは得策では無いでしょう。」
「それでは、彼らを追い出せと申すのか?!…しかし、呂奉先は董仲穎をたおし、我々のあだを討ってくれた恩人…」
公路が首をひねり困惑を顔に表すと、

「殿、それこそ恩着おんきせがましいとは思いませぬか?!」
子台は突然大声を上げて、更に公路に詰め寄った。

「あの者は、殿の恩義を利用して此処へ来たのです。始めから、追い返される筈が無いと踏んでいたのですよ…!隙きあらば、殿の領地を横取りしようとするかも知れません…!」

袁公路は、元々猜疑心さいぎしんの強い性格である。
寵臣である子台の意見を聞き、もっともだと思った。

「しかし、どうやって追い出すものか…」
「追い出す必要はございません。見た所、奴らは智謀ちぼうけてはおらず、簡単に策にめる事が出来るでしょう。」
そう言って、にやりと口の端をゆがめ、


「良い策がございます。呂布を捕らえ、その首を長安へ送るのです…!」


邪悪な光を宿した瞳で、子台は不気味に笑みを浮かべた。

翌日、奉先の元へ公路から伝達の使者が送られて来た。
使者にると、貂蝉の身内と思われる人物が見付かったと言う話である。

こんなに早く…?
奉先は少し不審ふしんに思いつつ、貂蝉を伴って再び公路の屋敷を訪れた。
広間で彼らを待っていた公路は昨日と変わらず上機嫌で、二人を笑顔で迎える。
昨日と違うのは、彼の周りには側近や屈強くっきょうな護衛がはべり、物々ものものしい雰囲気をかもし出している事である。

「………」
稍々ややいぶかりながらも、広間で彼女の身内の者が現れるのを待っていると、やがて夫婦らしき一組の男女が入って来た。
歳は四十前後であろうか、人の良さそうな男と優しげな眼差しの小柄な女である。
二人は貂蝉を見ると、喜びを声に出して小走りに走り寄った。

「貂蝉、良く生きていたね…!叔母おばさんを覚えてる?」
女が床に膝を突き、彼女の顔を覗き込みながら尋ねると、貂蝉はうつむいて首を横へ振る。

「覚えておらぬのも無理は無い。わしらに会ったのは、まだ幼い頃であった…」
泪をこぼし、着物の袖口を目に押し当てている女の肩を撫でながら、男がなぐさめる様に言った。

二人の話しでは、女は貂蝉の母親の従姉妹いとこで、貂蝉とは長い間会っていなかったが、一目で彼女だと分かったと言う。
現在二人には子供がおらず、彼女さえ良ければ自分たちの娘として引き取りたいと訴えた。

「今直ぐに決めなくても良いのだぞ。一度、彼らの所へ行ってみてはどうだね?」
袁公路が優しく貂蝉に話し掛ける。

「………」
貂蝉は浮かぬ表情のまま、少し視線を上げて奉先の方を見たが、彼は黙って見つめ返しているだけである。

「心配しなくて大丈夫よ、うちにはとても綺麗な鳥がいるから見せてあげましょう。きっと気に入るわ…!」
「そうだとも、それに叔母さんは料理が得意でね、美味しい物を御馳走ごちそうしよう。さあ、おいで。」
二人はにこやかに話し掛けながら、彼女の手を引き肩をいだきながら、そこから連れ出そうとした。
貂蝉は少し戸惑とまどい、振り返って奉先の顔を見上げると、何か言いたげな眼差しで彼を見詰める。

「待て…!」

突然、奉先が二人を呼び止めた。

「彼女の実の名は…?」
「…え?」
彼の問い掛けに、二人は首を傾げた。

「“貂蝉”と言う呼び名は、彼女が成長してから与えられた名だ。幼い頃に会い、一目で彼女だと分かったと言っていたな。身内の者なら、実の名を知っているであろう?」

奉先は少し険しい表情を浮かべながら、そう言って二人に詰め寄った。

「そ、それは…っ…!」
女は途端に狼狽うろたえ始める。

「会ったのは随分ずいぶん昔の事だ、覚えてなどおらぬ…!」
苛立いらだった様に答え、男が奉先の前に立ち塞がる。

二人は嘘をついている…!
奉先が抱いていた疑いは確信に変わっていた。

「行こう、貂蝉。」
素早く男をかわして貂蝉の腕をつかみ取ると、奉先は足早に広間を出て行こうとした。

「ま、待て…っ!」
慌てて公路が呼び止めようとした途端とたんに、側近や護衛たちが走り出し、忽ち広間の入口を塞いだ。

「お前たちを、此処から帰す訳には行かぬ…!」
立ちはだかったのは、寵臣の劉子台である。
彼の合図で側近たちは一斉に抜刀ばっとうし、二人を取り囲んで威嚇いかくする。

「奉先…!」
貂蝉は思わず彼の腕にしがみ着き、恐怖に肩を震わせた。

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