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アフター:ダイン外伝
last.追弔と、先々の時間へ
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強力な魔物だらけの山岳地帯。乾いた大地。
閉塞感と開放感を同時に感じる、そんな僻地。
〈聖下の檻〉本拠地の跡地まで戻ってきた。……戻ってきてしまった。
この名前を思い出すのもやめようって、未練がましいからって、そう思ってたけど。
上から谷底を見下ろす。日中であろうが底まで日差しは届かず、ぽっかり空いた暗闇へと繋がっている。今はそこに流れ込んでいた滝も方々へ分岐して霧散している。
上から見てもわかる。すっかり地形が変わってしまった。とんと地面を蹴って、岩壁の出っ張りを足場にしながら下へと降りていく。
「~~っ、てえ……」
谷底に着地すると、体がずくんと痛んだ。変な動きするもんじゃないな。けど地下通路は崩落してるし、魔術も使えない俺にはこのルートしかないんだけど。
俺の行き先。帰る場所。
そんなのはやっぱり、ここしかなかった。
ボスを埋葬した場所は聞いた。魔術で形を作った目印を探す。
いくつもの断層が折り重なって凹凸を作った谷底の大地と、崩落した巨大な施設。大量に積み上がった瓦礫と岩盤の脇に、そこだけきれいな表面の地面がある。
形のいい四角の石がまっすぐに立っている。これがささやかな墓石だ。事後処理の中でちゃんとやってくれたんだろう。
砂埃を払う。
今はきれいな石とはいえ、こんな悪条件下の吹きさらしじゃ、すぐに風化するだろうな。
本当に形だけのものだ。けれどここで間違いない。墓の前で膝をつき、頭を垂れる。
死者の魂だとか霊的なものは信じてないけど。墓を作るって習慣はどっから生まれたんだろうな。
……ボス。大量虐殺の主犯者で、大罪人。敬うような部分も、慕う要素も一個もないことはわかってる。
それでも……なんでついていったんだろうな。俺にはこの道しかないってわかってたのもあるけど。俺にはこの人しかいない、とも思ったんだ。
全部納得してた。ついていけばどうしようもない道に堕ちていくしかないとわかってても。敬ったり憧れたりしてたわけじゃないと思うけど。それでも、ついていけることに、不思議な安心感があった気がする。
犯した罪は罪だ。奪って殺して生きてきたのは事実だ。
でも、もう一度人生やりなおしたとしても、やっぱり俺は何度だってボスについていくんだと思う。
俺の人生は、これで幸せだったよ。どうしようもない道だったけど、あんたにずっと仕えることができてよかった。
あの日拾われて。認めてもらえて。生きる理由を与えてもらえて、よかった。
ただ。
倒壊した組織跡地に目を向ける。
……あんたは、ちゃんと幸せだったか?
結局全部失うことになってしまったけど。
到達したかった場所には行けたのか。悲願は、叶ったのか。最後の瞬間、追い求めてやまなかったものを目に収めることはできたのか。
もう、確かめる術もない……か。
「ん……?」
何かの気配がした気がした。
目を向けていた跡地からだ。防衛の魔術陣がなくなったから魔物も侵入できるだろうが、谷底に落ちてくるなんて間抜けなやつも少ないだろう。
魔物の可能性は低いし、いたとして放置でいい。が、何か引っかかって、瓦礫に足を踏み入れて探してみる。
瓦礫の山の裏側に、ぽつんと人影があった。膝を抱えて顔を埋めて丸まっていて、ぱっと見なんじゃこれと思ったけど。
「ま……マチ……?」
見ればすぐにわかった。が、別の意味で混乱して呆れた声が出た。
「どうした。なんでここにいるんだ。てかきったねえな。浮浪児かよ」
とりあえず歩み寄る。足場が悪くて踏むとガラガラと崩れる場所ばかりだ。
ボサボサ頭で、髪にも服にも土埃がこびりついて薄汚れたマチがそこにはいた。あんなに身綺麗にしてたくせに。なんでここにいるんだ、ほんとに。
「……も……見てくれる人も、いな、い……」
「喉乾いてんじゃねえの?」
マチは姿勢を変えないまま、掠れた声を途切れ途切れに発する。
持っていた水を差し出してやる。あと食料もだ。
「あなたの、恩情なんか……」
「いーから。このままだとまじで死ぬぞ」
容器で頭を小突いてやる。むくりと顔を起こしたマチは、パッサパサの肌なのが見て取れる。目も生気がないくせになんか据わってる。
見た瞬間、空腹を思い出したのか、ぐうぅーとお腹が鳴る。夢中で俺の手からひったくって水をぐいっと飲む。
「おい、ゆっくり飲まねえと……」
いきなりがぶ飲みは……しかしマチは気にしてる余裕もないのか、食べ物にもがっつきだした。
「……食うか泣くかどっちかにしろよ」
食べながらボロボロ泣いている。汚さに磨きがかかってるな。
「ティナたちはどうしたんだよ。もうそれぞれで生活しようって話になったのか?」
もしゃもしゃと獣みたいな食い方をするマチを眺めつつ聞いてみる。
ティナなら少しは気にかけてくれるはずだ。途中までは団体で動いてたし、マチがいついなくなったのかは知らなかったけど、はぐれたとは思えない。
「私……なんの役にも、立てないもの。いなくても、誰も、困らないから……」
「まさか、黙っていなくなったのか?」
マチは答えない。食べ終わって、げふぅと空気を吐き出してから膝に顔を埋める。露骨に顔を逸らしてる。それは肯定ってことだろう。
はあー、と深いため息が出た。顔を見せてこないだけで、少しは性格が丸くなってると思いきや。
「なにしてんだよ、ほんと……。一人で生きてく術なんかないだろ。他の奴はちゃんと、今後どうやって生きてくか話し合ってただろ? ある程度まで寄り添ったりしてさ」
同じはぐれもの同士だ。助け合って生きていくのは当たり前だろう。そんな輪の中にすら入れなかったのか。
たしかにマチにわざわざ手を差し伸べる奴は少ないだろうけど、マチのほうから助けてと言えば、手を貸してくれる奴だっていたはずなのに。
それさえせずに、見た感じ何の装備もなくこんな僻地まで一人で戻ってきて。死にたいとしか思えない。
「いいの。ここで。私はロードの魂と共に、死ぬまでここで過ごすの」
「ロードの魂はほんとにここにあるんですかね……」
あったら問題だろ。天に昇ってるほうが安心じゃないか。じゃないと未練があるみたいな感じになるし。
「じゃあ、あなたは何しにきたのよ」
「ロードの墓参りだよ」
「あなたこそ、どうやって生きてくか、決めてるっていうの?」
「……決めてない」
食糧を摂取してやや元気を取り戻したのか、生意気な口調でマチは聞いてくる。
マチの隣に腰を下ろす。嫌そうな反応はされたけど。俺もマチに偉そうなこと言える立場じゃなかった。
「マチと同じで、ここで余命が尽きるまで待ってもいいかもな」
「嫌よ私は。どっか行ってちょうだい。あなたと同じ死に場所だなんて御免だわ」
「そう冷たいこと言うなよ。ロード同好会の同志じゃん」
「私の愛をくだらない同好会なんかに格下げしないでくれるかしら!?」
しかし、死んでも構わない覚悟でここに戻ってきたなんて。その変な行動力だけは目を見張る。感慨深くなって呟く。
「マチ……ほんとに、ボスのこと好きだったんだなあ」
「常に言ってたわ。ロードのためならなんでもできるもの。お姿が見られるだけで幸せなのよ」
拠り所が欲しかっただけとか、思い込みとばかり思ってたけど。ある程度はそういう側面はあるだろうけど、ここまで来ればだいぶ本気だろう。……ボス、意外とモテるんだな。
何も言葉を交わさない時間が過ぎる。マチからは時折、早く帰れ、どっか行けと文句を飛ばされてた気がするけど。
ここで余命が尽きるまで、か。案外、アリかもしれない。
何も残ってないし、することもない。それならせめても死に場所くらいは選んでも……。
「……マチはさ」
死に場所という言葉で思い出した。
「最後、ボスと一緒に降りてきてなかったっけ。降臨の儀式のとき……」
降臨の儀式が始まった瞬間、抉れた大穴には、マチの鎖がレールのように伸びていた記憶が焼き付いている。
今日まで、ティナにもミリアにも聞こうとしてやっぱり躊躇って、事実を知るのを避けていたことだ。
あの瞬間。ボスの最も近くにいたのは、マチだったんじゃないだろうか……そんな一縷の望みをかけるような気持ちだった。
「ええそうよ。肩に触れていただけたの。ロードはもう満身創痍だったから……私を支えにしてくださって……。あの瞬間が人生での頂点だったわ」
そうするとすぐにマチは語りだした。
頬を上気させて色っぽい仕種だ。俺への気遣いなんてまるでなくて逆に清々しいわ。
「でも最悪よ。最後に聞いたのが、私へのお言葉じゃなくて、あんたに言ってたみたいなんだもの」
「……俺に?」
どきっと心臓が掴まれたようになる。
お言葉って……なんか言ってたのか。
聞くのは、やっぱちょっと怖い。耳を塞ぎたくなる。が、マチは遠慮なしに続けた。
「よくやりましたね、みたいな一言だけよ。たったそれだけよ。もっとすごいお褒めの言葉でもあると思ったの? 残念だったわね」
遮る間もなかった。マチは小馬鹿にするように顎を上げて見下してくる。マチには人の空気を察知するとかいう頭はないしな。
ふうっと頭から淀んでいた空気が抜けていく。
やっと聞けた、んだろうか。俺の人生の理由。目標そのもの。
よくやりましたね。みたいな一言、か。
まあマチのことだし、ちゃんと聞いてはいないだろう。微妙に言葉が違ったりもするかもしれないけど。
でも。それだけでいい。
そもそも褒め言葉なんて期待してなかった。すごいご褒美だとかもいらない。
そんな言葉が出てくるということはつまり……。俺が目標を成し遂げたと、ボスが認識してくれた、ということだろう。
もう十分だ。
きっと無事に見届けられたんだろう。降臨の儀式の結果を。本物の精霊を――。
だからこその言葉、だったと。そう思いたい。そう思っとこう。それなら、報われた気がした。
「……だからもういいの。私の頂点はもう終わったの。ゆっくり沈んでいくだけだわ。だったらここで……」
だんだん沈んでいくマチの声に合わせて俺の気分も沈んでいく。
生きる気力みたいなものが。今の言葉で俺の頂点も終わったかもしれない。俺も今、死んでもいいって思えた。
「ここで死ぬならもれなく俺がついてくるけど」
「なんでよッ! だから早くいなくなってちょうだい!」
「ほんとに死ぬ気なら、食べ物にがっついたりしないだろ」
「あ、あれは、本能よ。生き物としての本能だったの。もう恩情は受けないわ」
死んでもいい、けど。
もう何も残されていない。あるのは禊ぐことのできない量の罪だけ。役目も何もない。帰る場所もない。先のなくなった余生だ。
だけど、バナードの言葉を思い出す。
ゆっくり時間をかけて。今までしたことは消えない。けど――。
ここでただ余生が尽きるのを待つのも、なんだかな。たまたま生き残ったにしても、そんな消費の仕方は惜しい。
俺は終わったと思っていても、時間は変わらず流れている。道だけはどんどん先へと続いていく。必然でもないけど、変わらない流れの中での偶然を無駄にしている。そう感じた。
「恩情ねえ。タダとは一言も言ってないけどなあ?」
じろっとマチを見る。
さっき食べ物にがっついたとは思えないほど、マチは縮こまるように身構える。
「な、何をすればいいのよ」
無意識のように体を内側に庇うような仕種をする。
今はボサボサのボロボロだけど、マチはかわいい顔はしているのだ。小生意気に上から目線の女っぽいことを言うだけで、瞳も大きくて幼さも残っている。ちゃんと磨けば、間違いなくいい女に育つはずなのだ。
「そーだなあ。じゃあ。まずは……」
マチに手を伸ばす。腕を掴んで引き寄せた。
※ ※ ※ ※ ※
「……なんなのこれ」
体が動くから、金銭稼ぎはそこまで困らない。
根無し草で構わないから、日銭を稼いで分相応な暮らしをしていれば、困窮して餓死することもそうそうないだろう。
とりあえず、マチの衣服を一式揃えてみた。もさもさだった髪も切って整えた。
今までみたいな胸が開けたフリフリ装飾ではない、地味で平凡な町娘みたいなものに新調した。顔もよく見えるようになった。
「よしできた。こんなもんか。これだけでどこにでもいる女の子みたいな見た目になるもんだなあ」
「優雅さが足りないわ。地味よこんなの」
「もう必要ないんじゃなかったっけ?」
「わ、私の趣味として、必要なのよ」
「必要なら自分で金稼いで買え。俺はそこまでは買ってやらん」
「ていうか、いいかげん離してちょうだい! 私はあそこでいいの! あそこで死にたいの!」
「死ぬのは許さん。水も食料もタダじゃねえから体で払え」
ムキーッと暴れるマチの腕を掴んで、町中、次の場所へと引きずっていく。
道の先は続いている。俺の周りだけは流れていく。
俺はこの身体と同じで相変わらず止まったようなままだけど、マチにはその感覚はまだ早い。
「マチ、おまえ、まだ若いじゃん。まだまだ生きられるんだからさ。縛りもなくなったその時間を、ただ未練のまま過ごすだけなんてもったいないって思わねえか?」
聞いているかもわからないマチを引っ張ったまま、独り言のように続ける。
「自立できるまでなら、手伝ってやるから。未練があるならあるでそれでいいけど。あんなヤケクソみたいなのじゃなくてさ。自分が納得できる道をちゃんと考えろよ」
「……」
マチを振り返るが、俺のほうを見ようとしない。ぶすっとした顔で、わざと無視してるみたいだ。
町娘みたいな見た目にはなったけど、こういうところは本当に変わらないな。ずっと前からだ。泣きじゃくって、お家に帰りたい、と喚いていた頃から。
「もしおまえがそうしたいって言うなら。……元の家に戻ることも――」
そう言った瞬間、マチは本気の抵抗で腕を振りほどいた。
「今さら! ふざけないでっ! わ、私は……! 今さらそんな気は……!」
「ちゃんと親がいたんじゃねえの? 俺と違って」
「馬鹿言わないで! 戻るなんてっ……こんな……こんな私で、こんなになったのに……っ! 戻れるわけない……もう……っ」
マチは途端にパニックになったかのように、ボロっと涙をこぼしたかと思えば、うわあぁんと泣きじゃくりだした。
「あー、もー、泣くなって……」
なんだなんだと周囲の注目を集めている。僻地の町だから疎らに住人がいるだけだが、すごい目立つ。
またいつもの癇癪。駄々っ子。……じゃない、か。
「ごめんって。悪かったって。泣くなって」
「あなたがっ、無神経なのが悪いのよっ……!」
「はいはい、俺が無神経でした。すいませんね疎くてね」
単に俺が理解できないだけだ。元のお家がちゃんとあっただとか、そこから理不尽に引き離されたんだとか。今さら戻れない、みたいな気持ちだって。
ぐずぐずと泣いたままのマチを連れて、恥ずかしいなと思いつつも閑散とした町中を進む。
泣く子どもの手を、こうして引いて歩くのは久しぶりだ。子どもじゃないけど。
子どものあやし方はわからない。どうやって手を差し伸べればいいのかも。理解してやるのも難しい。
マチの行く道を指し示すことまではできない。だから。
「……見捨てたりはしねえから」
とりあえず、今の俺にできることは、手を離さずにいることくらいだ。
俺は絶対に見捨てない――。恥ずかしげもなく言い放った、迷いのない奴の姿が浮かぶ。
俺はやっぱり、あんなのには勝てないと思う。理想のヒーロー像だよ。あれはずるいだろ。
俺だって本当はそういうのになりたかったんだろうな。それはもう叶わないことなのはわかった。
けど少しは、目の前のこいつぐらいには、手を差し伸べてやりたいと思った。
これは単なる俺のわがままだ。
救えなかったものがたくさんある。見過ごすしかなくて諦めをつけたものも。見捨てざるをえなかったものも。
そんな中から偶然でも生き残ってくれたマチには、何かしら残すことを許してほしかった。
※ ※ ※ ※ ※
マチの居場所を見つけてやるのは困難だ。今はまだその日暮らしで転々とする俺についてきているだけの状態だ。
その中で少しずつ、教えてやるほどのことはできなくとも、学んでいればいいなとは思う。最終的には一人でも大丈夫だと言えるくらい自立できなければ意味がない。
マチはやはり生きる気力が薄いようで、面倒なことはしたくないとすぐに不平不満を垂れるし労働なんか嫌だと騒ぐし、俺がついててやらないと悪いことに手を染めて金を得るようになるのは目に見えていた。
組織跡地の近辺からはなかなか離れる決心がつかない。行こうと思えばすぐ行けるくらいの範囲内で過ごしてしまう。
だけどいいかげんに縛られたままではいられない。だいたい谷底に向かうまでで体力を使うし、マチがいることを思えばそんな暇はない。
すぐ泣くしすぐ脱走しようとするマチを監視して生活していれば、少しは忘れられた。
マチにとってはいまだに、あの跡地で死ねたほうが幸せだと思えているのかもしれない。
何かを変える力はない。それでも今は、何もなくなった俺でも、こうしてやり残しを消化するような日々を過ごしていた。
今でも時々、夢なのかどうか判然とはしないけど、頭の片隅に蘇る。
貧民街で非力な妹と二人で生き抜いてきたこと。組織に拾われて戦闘員として訓練を受けたこと。
シャノンと交わした言葉も。ミリアという少女のでたらめな計画に巻き込まれて、おとぎ話のような体験をしたことも。
人智を超えた異形の怪物、古代の魔族という生物、その最上位に位置するであろう力を持っていた存在。魔王に等しい奴につけられた爪痕だけが現実味を帯びて残っている。
なぜそんなものに対抗しようと思えたのか。その気力の発生源が今ではわからない。
ただ、結局は。
あの一時。自分のためだけに戦った瞬間。血肉を肌で感じてすべてを忘れられた、あの瞬間だけは停滞していた時間が無限のように感じられた。
俺はそんなことでしか、生きてるという実感を持てない人間だったのかもしれない。
今の今まで、夢でもなく。
これがダインという人間が辿った道筋の果てなのだと、残されていた。
ミリアたちは、元気だろうか。どうしてるかな。
クロウは、目を覚ます兆しはあったのだろうか。
行ってみようか。久しぶりに。許す時間と言われたから、期間を空けたからって顔を見せるのは虫がいい気もするけど。
マチも最近は少しは大人しくなってきた。いや言動自体は変わらないんだけど。ぶーぶー言いながらも、一応本気で脱走することはなくなった。
マチにはしばらく戻らないことを伝えてから、もう一度バナードの家へと、足を運ぶことにした。
……最終章へ続く。
閉塞感と開放感を同時に感じる、そんな僻地。
〈聖下の檻〉本拠地の跡地まで戻ってきた。……戻ってきてしまった。
この名前を思い出すのもやめようって、未練がましいからって、そう思ってたけど。
上から谷底を見下ろす。日中であろうが底まで日差しは届かず、ぽっかり空いた暗闇へと繋がっている。今はそこに流れ込んでいた滝も方々へ分岐して霧散している。
上から見てもわかる。すっかり地形が変わってしまった。とんと地面を蹴って、岩壁の出っ張りを足場にしながら下へと降りていく。
「~~っ、てえ……」
谷底に着地すると、体がずくんと痛んだ。変な動きするもんじゃないな。けど地下通路は崩落してるし、魔術も使えない俺にはこのルートしかないんだけど。
俺の行き先。帰る場所。
そんなのはやっぱり、ここしかなかった。
ボスを埋葬した場所は聞いた。魔術で形を作った目印を探す。
いくつもの断層が折り重なって凹凸を作った谷底の大地と、崩落した巨大な施設。大量に積み上がった瓦礫と岩盤の脇に、そこだけきれいな表面の地面がある。
形のいい四角の石がまっすぐに立っている。これがささやかな墓石だ。事後処理の中でちゃんとやってくれたんだろう。
砂埃を払う。
今はきれいな石とはいえ、こんな悪条件下の吹きさらしじゃ、すぐに風化するだろうな。
本当に形だけのものだ。けれどここで間違いない。墓の前で膝をつき、頭を垂れる。
死者の魂だとか霊的なものは信じてないけど。墓を作るって習慣はどっから生まれたんだろうな。
……ボス。大量虐殺の主犯者で、大罪人。敬うような部分も、慕う要素も一個もないことはわかってる。
それでも……なんでついていったんだろうな。俺にはこの道しかないってわかってたのもあるけど。俺にはこの人しかいない、とも思ったんだ。
全部納得してた。ついていけばどうしようもない道に堕ちていくしかないとわかってても。敬ったり憧れたりしてたわけじゃないと思うけど。それでも、ついていけることに、不思議な安心感があった気がする。
犯した罪は罪だ。奪って殺して生きてきたのは事実だ。
でも、もう一度人生やりなおしたとしても、やっぱり俺は何度だってボスについていくんだと思う。
俺の人生は、これで幸せだったよ。どうしようもない道だったけど、あんたにずっと仕えることができてよかった。
あの日拾われて。認めてもらえて。生きる理由を与えてもらえて、よかった。
ただ。
倒壊した組織跡地に目を向ける。
……あんたは、ちゃんと幸せだったか?
結局全部失うことになってしまったけど。
到達したかった場所には行けたのか。悲願は、叶ったのか。最後の瞬間、追い求めてやまなかったものを目に収めることはできたのか。
もう、確かめる術もない……か。
「ん……?」
何かの気配がした気がした。
目を向けていた跡地からだ。防衛の魔術陣がなくなったから魔物も侵入できるだろうが、谷底に落ちてくるなんて間抜けなやつも少ないだろう。
魔物の可能性は低いし、いたとして放置でいい。が、何か引っかかって、瓦礫に足を踏み入れて探してみる。
瓦礫の山の裏側に、ぽつんと人影があった。膝を抱えて顔を埋めて丸まっていて、ぱっと見なんじゃこれと思ったけど。
「ま……マチ……?」
見ればすぐにわかった。が、別の意味で混乱して呆れた声が出た。
「どうした。なんでここにいるんだ。てかきったねえな。浮浪児かよ」
とりあえず歩み寄る。足場が悪くて踏むとガラガラと崩れる場所ばかりだ。
ボサボサ頭で、髪にも服にも土埃がこびりついて薄汚れたマチがそこにはいた。あんなに身綺麗にしてたくせに。なんでここにいるんだ、ほんとに。
「……も……見てくれる人も、いな、い……」
「喉乾いてんじゃねえの?」
マチは姿勢を変えないまま、掠れた声を途切れ途切れに発する。
持っていた水を差し出してやる。あと食料もだ。
「あなたの、恩情なんか……」
「いーから。このままだとまじで死ぬぞ」
容器で頭を小突いてやる。むくりと顔を起こしたマチは、パッサパサの肌なのが見て取れる。目も生気がないくせになんか据わってる。
見た瞬間、空腹を思い出したのか、ぐうぅーとお腹が鳴る。夢中で俺の手からひったくって水をぐいっと飲む。
「おい、ゆっくり飲まねえと……」
いきなりがぶ飲みは……しかしマチは気にしてる余裕もないのか、食べ物にもがっつきだした。
「……食うか泣くかどっちかにしろよ」
食べながらボロボロ泣いている。汚さに磨きがかかってるな。
「ティナたちはどうしたんだよ。もうそれぞれで生活しようって話になったのか?」
もしゃもしゃと獣みたいな食い方をするマチを眺めつつ聞いてみる。
ティナなら少しは気にかけてくれるはずだ。途中までは団体で動いてたし、マチがいついなくなったのかは知らなかったけど、はぐれたとは思えない。
「私……なんの役にも、立てないもの。いなくても、誰も、困らないから……」
「まさか、黙っていなくなったのか?」
マチは答えない。食べ終わって、げふぅと空気を吐き出してから膝に顔を埋める。露骨に顔を逸らしてる。それは肯定ってことだろう。
はあー、と深いため息が出た。顔を見せてこないだけで、少しは性格が丸くなってると思いきや。
「なにしてんだよ、ほんと……。一人で生きてく術なんかないだろ。他の奴はちゃんと、今後どうやって生きてくか話し合ってただろ? ある程度まで寄り添ったりしてさ」
同じはぐれもの同士だ。助け合って生きていくのは当たり前だろう。そんな輪の中にすら入れなかったのか。
たしかにマチにわざわざ手を差し伸べる奴は少ないだろうけど、マチのほうから助けてと言えば、手を貸してくれる奴だっていたはずなのに。
それさえせずに、見た感じ何の装備もなくこんな僻地まで一人で戻ってきて。死にたいとしか思えない。
「いいの。ここで。私はロードの魂と共に、死ぬまでここで過ごすの」
「ロードの魂はほんとにここにあるんですかね……」
あったら問題だろ。天に昇ってるほうが安心じゃないか。じゃないと未練があるみたいな感じになるし。
「じゃあ、あなたは何しにきたのよ」
「ロードの墓参りだよ」
「あなたこそ、どうやって生きてくか、決めてるっていうの?」
「……決めてない」
食糧を摂取してやや元気を取り戻したのか、生意気な口調でマチは聞いてくる。
マチの隣に腰を下ろす。嫌そうな反応はされたけど。俺もマチに偉そうなこと言える立場じゃなかった。
「マチと同じで、ここで余命が尽きるまで待ってもいいかもな」
「嫌よ私は。どっか行ってちょうだい。あなたと同じ死に場所だなんて御免だわ」
「そう冷たいこと言うなよ。ロード同好会の同志じゃん」
「私の愛をくだらない同好会なんかに格下げしないでくれるかしら!?」
しかし、死んでも構わない覚悟でここに戻ってきたなんて。その変な行動力だけは目を見張る。感慨深くなって呟く。
「マチ……ほんとに、ボスのこと好きだったんだなあ」
「常に言ってたわ。ロードのためならなんでもできるもの。お姿が見られるだけで幸せなのよ」
拠り所が欲しかっただけとか、思い込みとばかり思ってたけど。ある程度はそういう側面はあるだろうけど、ここまで来ればだいぶ本気だろう。……ボス、意外とモテるんだな。
何も言葉を交わさない時間が過ぎる。マチからは時折、早く帰れ、どっか行けと文句を飛ばされてた気がするけど。
ここで余命が尽きるまで、か。案外、アリかもしれない。
何も残ってないし、することもない。それならせめても死に場所くらいは選んでも……。
「……マチはさ」
死に場所という言葉で思い出した。
「最後、ボスと一緒に降りてきてなかったっけ。降臨の儀式のとき……」
降臨の儀式が始まった瞬間、抉れた大穴には、マチの鎖がレールのように伸びていた記憶が焼き付いている。
今日まで、ティナにもミリアにも聞こうとしてやっぱり躊躇って、事実を知るのを避けていたことだ。
あの瞬間。ボスの最も近くにいたのは、マチだったんじゃないだろうか……そんな一縷の望みをかけるような気持ちだった。
「ええそうよ。肩に触れていただけたの。ロードはもう満身創痍だったから……私を支えにしてくださって……。あの瞬間が人生での頂点だったわ」
そうするとすぐにマチは語りだした。
頬を上気させて色っぽい仕種だ。俺への気遣いなんてまるでなくて逆に清々しいわ。
「でも最悪よ。最後に聞いたのが、私へのお言葉じゃなくて、あんたに言ってたみたいなんだもの」
「……俺に?」
どきっと心臓が掴まれたようになる。
お言葉って……なんか言ってたのか。
聞くのは、やっぱちょっと怖い。耳を塞ぎたくなる。が、マチは遠慮なしに続けた。
「よくやりましたね、みたいな一言だけよ。たったそれだけよ。もっとすごいお褒めの言葉でもあると思ったの? 残念だったわね」
遮る間もなかった。マチは小馬鹿にするように顎を上げて見下してくる。マチには人の空気を察知するとかいう頭はないしな。
ふうっと頭から淀んでいた空気が抜けていく。
やっと聞けた、んだろうか。俺の人生の理由。目標そのもの。
よくやりましたね。みたいな一言、か。
まあマチのことだし、ちゃんと聞いてはいないだろう。微妙に言葉が違ったりもするかもしれないけど。
でも。それだけでいい。
そもそも褒め言葉なんて期待してなかった。すごいご褒美だとかもいらない。
そんな言葉が出てくるということはつまり……。俺が目標を成し遂げたと、ボスが認識してくれた、ということだろう。
もう十分だ。
きっと無事に見届けられたんだろう。降臨の儀式の結果を。本物の精霊を――。
だからこその言葉、だったと。そう思いたい。そう思っとこう。それなら、報われた気がした。
「……だからもういいの。私の頂点はもう終わったの。ゆっくり沈んでいくだけだわ。だったらここで……」
だんだん沈んでいくマチの声に合わせて俺の気分も沈んでいく。
生きる気力みたいなものが。今の言葉で俺の頂点も終わったかもしれない。俺も今、死んでもいいって思えた。
「ここで死ぬならもれなく俺がついてくるけど」
「なんでよッ! だから早くいなくなってちょうだい!」
「ほんとに死ぬ気なら、食べ物にがっついたりしないだろ」
「あ、あれは、本能よ。生き物としての本能だったの。もう恩情は受けないわ」
死んでもいい、けど。
もう何も残されていない。あるのは禊ぐことのできない量の罪だけ。役目も何もない。帰る場所もない。先のなくなった余生だ。
だけど、バナードの言葉を思い出す。
ゆっくり時間をかけて。今までしたことは消えない。けど――。
ここでただ余生が尽きるのを待つのも、なんだかな。たまたま生き残ったにしても、そんな消費の仕方は惜しい。
俺は終わったと思っていても、時間は変わらず流れている。道だけはどんどん先へと続いていく。必然でもないけど、変わらない流れの中での偶然を無駄にしている。そう感じた。
「恩情ねえ。タダとは一言も言ってないけどなあ?」
じろっとマチを見る。
さっき食べ物にがっついたとは思えないほど、マチは縮こまるように身構える。
「な、何をすればいいのよ」
無意識のように体を内側に庇うような仕種をする。
今はボサボサのボロボロだけど、マチはかわいい顔はしているのだ。小生意気に上から目線の女っぽいことを言うだけで、瞳も大きくて幼さも残っている。ちゃんと磨けば、間違いなくいい女に育つはずなのだ。
「そーだなあ。じゃあ。まずは……」
マチに手を伸ばす。腕を掴んで引き寄せた。
※ ※ ※ ※ ※
「……なんなのこれ」
体が動くから、金銭稼ぎはそこまで困らない。
根無し草で構わないから、日銭を稼いで分相応な暮らしをしていれば、困窮して餓死することもそうそうないだろう。
とりあえず、マチの衣服を一式揃えてみた。もさもさだった髪も切って整えた。
今までみたいな胸が開けたフリフリ装飾ではない、地味で平凡な町娘みたいなものに新調した。顔もよく見えるようになった。
「よしできた。こんなもんか。これだけでどこにでもいる女の子みたいな見た目になるもんだなあ」
「優雅さが足りないわ。地味よこんなの」
「もう必要ないんじゃなかったっけ?」
「わ、私の趣味として、必要なのよ」
「必要なら自分で金稼いで買え。俺はそこまでは買ってやらん」
「ていうか、いいかげん離してちょうだい! 私はあそこでいいの! あそこで死にたいの!」
「死ぬのは許さん。水も食料もタダじゃねえから体で払え」
ムキーッと暴れるマチの腕を掴んで、町中、次の場所へと引きずっていく。
道の先は続いている。俺の周りだけは流れていく。
俺はこの身体と同じで相変わらず止まったようなままだけど、マチにはその感覚はまだ早い。
「マチ、おまえ、まだ若いじゃん。まだまだ生きられるんだからさ。縛りもなくなったその時間を、ただ未練のまま過ごすだけなんてもったいないって思わねえか?」
聞いているかもわからないマチを引っ張ったまま、独り言のように続ける。
「自立できるまでなら、手伝ってやるから。未練があるならあるでそれでいいけど。あんなヤケクソみたいなのじゃなくてさ。自分が納得できる道をちゃんと考えろよ」
「……」
マチを振り返るが、俺のほうを見ようとしない。ぶすっとした顔で、わざと無視してるみたいだ。
町娘みたいな見た目にはなったけど、こういうところは本当に変わらないな。ずっと前からだ。泣きじゃくって、お家に帰りたい、と喚いていた頃から。
「もしおまえがそうしたいって言うなら。……元の家に戻ることも――」
そう言った瞬間、マチは本気の抵抗で腕を振りほどいた。
「今さら! ふざけないでっ! わ、私は……! 今さらそんな気は……!」
「ちゃんと親がいたんじゃねえの? 俺と違って」
「馬鹿言わないで! 戻るなんてっ……こんな……こんな私で、こんなになったのに……っ! 戻れるわけない……もう……っ」
マチは途端にパニックになったかのように、ボロっと涙をこぼしたかと思えば、うわあぁんと泣きじゃくりだした。
「あー、もー、泣くなって……」
なんだなんだと周囲の注目を集めている。僻地の町だから疎らに住人がいるだけだが、すごい目立つ。
またいつもの癇癪。駄々っ子。……じゃない、か。
「ごめんって。悪かったって。泣くなって」
「あなたがっ、無神経なのが悪いのよっ……!」
「はいはい、俺が無神経でした。すいませんね疎くてね」
単に俺が理解できないだけだ。元のお家がちゃんとあっただとか、そこから理不尽に引き離されたんだとか。今さら戻れない、みたいな気持ちだって。
ぐずぐずと泣いたままのマチを連れて、恥ずかしいなと思いつつも閑散とした町中を進む。
泣く子どもの手を、こうして引いて歩くのは久しぶりだ。子どもじゃないけど。
子どものあやし方はわからない。どうやって手を差し伸べればいいのかも。理解してやるのも難しい。
マチの行く道を指し示すことまではできない。だから。
「……見捨てたりはしねえから」
とりあえず、今の俺にできることは、手を離さずにいることくらいだ。
俺は絶対に見捨てない――。恥ずかしげもなく言い放った、迷いのない奴の姿が浮かぶ。
俺はやっぱり、あんなのには勝てないと思う。理想のヒーロー像だよ。あれはずるいだろ。
俺だって本当はそういうのになりたかったんだろうな。それはもう叶わないことなのはわかった。
けど少しは、目の前のこいつぐらいには、手を差し伸べてやりたいと思った。
これは単なる俺のわがままだ。
救えなかったものがたくさんある。見過ごすしかなくて諦めをつけたものも。見捨てざるをえなかったものも。
そんな中から偶然でも生き残ってくれたマチには、何かしら残すことを許してほしかった。
※ ※ ※ ※ ※
マチの居場所を見つけてやるのは困難だ。今はまだその日暮らしで転々とする俺についてきているだけの状態だ。
その中で少しずつ、教えてやるほどのことはできなくとも、学んでいればいいなとは思う。最終的には一人でも大丈夫だと言えるくらい自立できなければ意味がない。
マチはやはり生きる気力が薄いようで、面倒なことはしたくないとすぐに不平不満を垂れるし労働なんか嫌だと騒ぐし、俺がついててやらないと悪いことに手を染めて金を得るようになるのは目に見えていた。
組織跡地の近辺からはなかなか離れる決心がつかない。行こうと思えばすぐ行けるくらいの範囲内で過ごしてしまう。
だけどいいかげんに縛られたままではいられない。だいたい谷底に向かうまでで体力を使うし、マチがいることを思えばそんな暇はない。
すぐ泣くしすぐ脱走しようとするマチを監視して生活していれば、少しは忘れられた。
マチにとってはいまだに、あの跡地で死ねたほうが幸せだと思えているのかもしれない。
何かを変える力はない。それでも今は、何もなくなった俺でも、こうしてやり残しを消化するような日々を過ごしていた。
今でも時々、夢なのかどうか判然とはしないけど、頭の片隅に蘇る。
貧民街で非力な妹と二人で生き抜いてきたこと。組織に拾われて戦闘員として訓練を受けたこと。
シャノンと交わした言葉も。ミリアという少女のでたらめな計画に巻き込まれて、おとぎ話のような体験をしたことも。
人智を超えた異形の怪物、古代の魔族という生物、その最上位に位置するであろう力を持っていた存在。魔王に等しい奴につけられた爪痕だけが現実味を帯びて残っている。
なぜそんなものに対抗しようと思えたのか。その気力の発生源が今ではわからない。
ただ、結局は。
あの一時。自分のためだけに戦った瞬間。血肉を肌で感じてすべてを忘れられた、あの瞬間だけは停滞していた時間が無限のように感じられた。
俺はそんなことでしか、生きてるという実感を持てない人間だったのかもしれない。
今の今まで、夢でもなく。
これがダインという人間が辿った道筋の果てなのだと、残されていた。
ミリアたちは、元気だろうか。どうしてるかな。
クロウは、目を覚ます兆しはあったのだろうか。
行ってみようか。久しぶりに。許す時間と言われたから、期間を空けたからって顔を見せるのは虫がいい気もするけど。
マチも最近は少しは大人しくなってきた。いや言動自体は変わらないんだけど。ぶーぶー言いながらも、一応本気で脱走することはなくなった。
マチにはしばらく戻らないことを伝えてから、もう一度バナードの家へと、足を運ぶことにした。
……最終章へ続く。
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