【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
221 / 303
思惑と誤算

17-14

しおりを挟む
「結婚の約束はしてないけど、ファースト・キスは貰ったぜっ」
ニヤリと得意げな笑みを浮かべる力に。
「なッ!?」
「おぉっ!?スゲーっ♪」
驚きの声を上げる雅耶と長瀬よりも、何よりも飛び上がるほど驚いたのは冬樹だ。

「ちょっ!お前っ!!何てこと言うんだッ!!」
「え?うわっ!」

思わず咄嗟に身体が動いていた。
椅子がガタンッと大きな音を立てる。
気が付けば、目の前で力は顔を引きつらせながら両手を上げて降参のポーズをしていて、冬樹は知らず知らずの内に立ち上がり、その力の胸ぐらを両手で掴んで持ち上げていた。
当然のことながら周囲の注目も一身に浴びていて、思わず固まる。
「ふ…冬樹チャン、冬樹チャンっ、落ち着いて落ち着いてっ」
珍しく長瀬が慌てている。
雅耶は無言で目を見張っていた。
「………」
冬樹は、気持ちを落ち着かせるように小さく息を吐くと、力を解放して元の席へと着いた。

「……ごめん」

小さく謝ってくる冬樹に、力は。
「あ…ああ、別に大丈夫…だけど…。ちょっとビックリした」
その気迫に。
(可愛い顔して、怒ると結構な迫力なんだな…)
その意外性も面白いとは思うが。

「その…何でお前がそんなに怒ってるのか、イマイチ分からないんだが…」
いささか控えめに聞いてみると、冬樹はバツの悪そうな顔をして答えた。
「お前が下らないことを言うからだっ。あんな騙し討ちでそんな風に触れ回られたら誰だって…。夏樹だって…浮かばれない…」
何故か語尾が小さくなっていく冬樹に。
「何でお前がアレを知ってるんだ?」
力が疑問を口にした。
その言葉に、冬樹は俯いていた顔を上げると、
「オレ達は二人で一人なんだ。夏樹のことで知らないことなんてない」
そう言い切った。
その表情は凛としていて綺麗だったけれど、何処か寂し気でもあった。
(それだけ、仲が良かった…ということなんだろう…)
力はそう解釈をする。
とりあえず故人のことでもあるし、多少大きく話してしまったことを反省して、力は素直に「…すまなかった」と、冬樹に詫びを入れた。
その言葉に。
冬樹は俯きながら「…別にいい」と小さく答えるだけだった。

そんな冬樹の様子に、それ以上誰もツッコミを入れることなど出来ず、微妙な空気のままその話題はそこで終了した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...