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思惑と葛藤
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本当に勿体ないとしか言いようがない。
(まぁ、それがまた面白いってのもあるんだけど…)
前に彼女に普通に声を掛けたら、共に歩いていた後輩の立花がぎょっとした様子を見せていたのを思い出す。
「京介さん、あの子と知り合いなんですか?」
「あ?まぁ顔見知りっつーか。ちょっとした縁で知り合ってな」
そう適当に答えると、立花は尚も驚いたような表情を見せて呟いた。
「意外だ…。彼女、一年生ですよね?」
「そうだが…。何だよ、立花。オレが下級生に挨拶しちゃ悪いってのか?」
何となく立花の言わんとするところを理解しつつもワザと突っ込みを入れてみる。すると、立花は慌てて両手をひらひらと横に振って否定を口にした。
「いや…いやいや、そういう訳じゃないですけどっ」
「じゃあ何だよ?」
「あー…その、こんなこと言っちゃうと失礼かもしれませんけど…。その、京介さんがああいうタイプのコとお知り合いなのが違和感あるというか何というか…」
その言い草に思わずプッ…と噴出した。
「違和感な」
「すみませんっ。でも…京介さん、普段からああいう如何にも真面目なタイプのコ、敬遠しがちじゃないですか?苦手っていうか…。自分からは絶対関わらないでしょう。悪く言えば視界にも入れずにスルーしちゃう感じで」
その散々な言われようにオレは声を上げて笑った。
「京介さん…」
「はははっ。よく見てんだなァ、お前」
確かに普通なら関わり合いたくもない苦手なタイプだ。言っちゃ悪いが異性としての興味も何も湧かない。それだけは断言出来る。
(でも、あいつはなぁ…)
友人と笑い合い、三つ編みを揺らしているその後ろ姿を見つめる。
(素顔の方を先に見ちまったからな。ある意味、例外っつーか…。それ程抵抗は感じないんだよな)
如何にも地味な風貌の奥に隠された、愛らしい顔。その素顔を知る者は、もしかしたら校内では少ないのではないだろうか。
それが何処か得をしたような、ある種の優越感のようなものを感じさせるのは確かだった。
自分が彼女を気に掛ける気持ちは、そういう部分から来ているのだろうと桐生は自分を分析していた。
そんなことを取りとめもなく考えていた、その時。
何気なく見下ろしていた校庭で。
それは、一瞬の出来事だった。
「!?」
一人の生徒が投げ放ったボールが、記録用に引かれた線の枠外のあらぬ方向へと飛んでいくのが見えた。
そして、その先には…。
(如月っ!)
それは思いのほか早い速度で紅葉の後頭部へと直撃する。かと、思われた。
だが、ボールに気付いた周囲の生徒が声を上げるのと同時に紅葉が後方を振り返り掛けたことで、逆に顔面でそのボールを受けそうになる。
…だが。次の瞬間。
紅葉は咄嗟にそれを手で受け止めた。
本人もそのボールが飛んで来た状況に驚いてはいるようだったが、何よりその反応速度は半端ないものだった。
(すげえ…)
そう言えば、以前にもこんなことがあったなと思い出す。
自分達が体育の授業中、サッカーボールが飛んで行った先に一人の女子生徒が歩いていたのだが、後方から飛んで来たそれを見事に屈んで避けて見せたのだ。
あれは流石に偶然だと思っていたが、あの時の後ろ姿は何処か彼女と重なる気がした。
(まぁ、それがまた面白いってのもあるんだけど…)
前に彼女に普通に声を掛けたら、共に歩いていた後輩の立花がぎょっとした様子を見せていたのを思い出す。
「京介さん、あの子と知り合いなんですか?」
「あ?まぁ顔見知りっつーか。ちょっとした縁で知り合ってな」
そう適当に答えると、立花は尚も驚いたような表情を見せて呟いた。
「意外だ…。彼女、一年生ですよね?」
「そうだが…。何だよ、立花。オレが下級生に挨拶しちゃ悪いってのか?」
何となく立花の言わんとするところを理解しつつもワザと突っ込みを入れてみる。すると、立花は慌てて両手をひらひらと横に振って否定を口にした。
「いや…いやいや、そういう訳じゃないですけどっ」
「じゃあ何だよ?」
「あー…その、こんなこと言っちゃうと失礼かもしれませんけど…。その、京介さんがああいうタイプのコとお知り合いなのが違和感あるというか何というか…」
その言い草に思わずプッ…と噴出した。
「違和感な」
「すみませんっ。でも…京介さん、普段からああいう如何にも真面目なタイプのコ、敬遠しがちじゃないですか?苦手っていうか…。自分からは絶対関わらないでしょう。悪く言えば視界にも入れずにスルーしちゃう感じで」
その散々な言われようにオレは声を上げて笑った。
「京介さん…」
「はははっ。よく見てんだなァ、お前」
確かに普通なら関わり合いたくもない苦手なタイプだ。言っちゃ悪いが異性としての興味も何も湧かない。それだけは断言出来る。
(でも、あいつはなぁ…)
友人と笑い合い、三つ編みを揺らしているその後ろ姿を見つめる。
(素顔の方を先に見ちまったからな。ある意味、例外っつーか…。それ程抵抗は感じないんだよな)
如何にも地味な風貌の奥に隠された、愛らしい顔。その素顔を知る者は、もしかしたら校内では少ないのではないだろうか。
それが何処か得をしたような、ある種の優越感のようなものを感じさせるのは確かだった。
自分が彼女を気に掛ける気持ちは、そういう部分から来ているのだろうと桐生は自分を分析していた。
そんなことを取りとめもなく考えていた、その時。
何気なく見下ろしていた校庭で。
それは、一瞬の出来事だった。
「!?」
一人の生徒が投げ放ったボールが、記録用に引かれた線の枠外のあらぬ方向へと飛んでいくのが見えた。
そして、その先には…。
(如月っ!)
それは思いのほか早い速度で紅葉の後頭部へと直撃する。かと、思われた。
だが、ボールに気付いた周囲の生徒が声を上げるのと同時に紅葉が後方を振り返り掛けたことで、逆に顔面でそのボールを受けそうになる。
…だが。次の瞬間。
紅葉は咄嗟にそれを手で受け止めた。
本人もそのボールが飛んで来た状況に驚いてはいるようだったが、何よりその反応速度は半端ないものだった。
(すげえ…)
そう言えば、以前にもこんなことがあったなと思い出す。
自分達が体育の授業中、サッカーボールが飛んで行った先に一人の女子生徒が歩いていたのだが、後方から飛んで来たそれを見事に屈んで避けて見せたのだ。
あれは流石に偶然だと思っていたが、あの時の後ろ姿は何処か彼女と重なる気がした。
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