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追う者・追われる者
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二人はすぐに住宅街へと続く角を曲がり、夜の闇の中へと消えて行ってしまったのだが、立花は特に慌てる様子もなく静かに今撮った写真を開いた。そして、後ろに乗っていた女性を画面上で拡大する。
(やっぱり…)
それは、先程目の前で乱闘していた『掃除屋』らしき人物に間違いなかった。服装や髪型、背格好などが全て一致している。
立花の持っているスマートフォンのカメラは性能が良く、わりと暗い中でも綺麗に撮れる方なのだが、距離が離れていたこともあり、顔部分を拡大してみてもぼやけてしまっていて良く分からなかった。こちら側を向いて映ってはいるものの、この写真を片手に人探しをすることは難しそうだ。
だが、スマホを介してよりも自身の目で見た時の方が顔は良く見えた気がする。
(あれは、まだ若いな…)
中学生、または高校生か。何にしても十代なのは間違いないだろう。
(そして、意外にも掃除屋には協力者有り…っと)
これは今まで聞いたこともない、予想外の収穫だ。
今度は、自転車を運転していた男の方に画面を移動しようと操作し始める。遠目で見ても分かるぐらい彼も年若い少年のようだった。
その横顔を大きく拡大する。すると…。
(あれ?この子は…)
見たことのある顔だった。
少女と同様にハッキリと人相が判るわけではない。だが、その横顔のシルエットと髪型。そして着ている服…。
それは、ほんのつい先程見掛けた人物のものにあまりにも酷似していた。
同じ高校の一年下の後輩で、同じ予備校にも通っている…。
(これ…本宮くんじゃないか?)
立花は驚愕に大きく眼を見張った。
ふわふわ、そよそよ。
何処からか流れてくる風に吹かれている。
緩やかな風に下ろした髪と服の裾がなびく。涼しいというよりは少し冷たくて肌寒いくらいだった。
僅かに身震いをしたところで、不意に手に伝わる温かな存在があることに気付く。
傍に在る優しいぬくもり。それは自分が良く知っている背中だった。
そこにそっと身を寄せると、その主が驚いたように身動ぎしたのが分かった。それでも特にその行動を咎めることもなく好きにさせてくれる。
自分は、この背中が好きだ。
男の子のわりに線は細めだけれど、自分とは違う逞しい背中。昔はそう変わらなかったのに、いつの間にか大きくなっていた。気付けば、その背中に支えられることも多くなった。
圭ちゃん…。
傍にいてくれるだけでいつだって安心する、心を落ち着かせてくれる存在。
「紅葉…」
自分を呼ぶ、その少し甘い声も。
本当は他の誰に呼ばれるのとも違うのに。
自分にとっては大切で、特別なのに…。
『もう小さな子どもじゃないんだからさ、そういうの止めたら?昔からの腐れ縁に付き合わされる本宮くんの身にもなってみなよ』
…そうだ。
ダメなんだ…。
この温かさに手を伸ばしたら。
その背中に縋ってしまったら…。
「紅葉?…着いたよ」
圭ちゃんの声が聞こえる。
「…だ、め…」
「え?…紅葉?」
だって、私…。これ以上、圭ちゃんに嫌われたくない!!
「ご、め…なさ…」
「紅葉…?目が覚めたの?」
家の前へと辿り着き、後ろに座る紅葉に圭がそっと声を掛けると、今まで虚ろに何処かを見つめていたその瞳が不意に揺れた。
(やっぱり…)
それは、先程目の前で乱闘していた『掃除屋』らしき人物に間違いなかった。服装や髪型、背格好などが全て一致している。
立花の持っているスマートフォンのカメラは性能が良く、わりと暗い中でも綺麗に撮れる方なのだが、距離が離れていたこともあり、顔部分を拡大してみてもぼやけてしまっていて良く分からなかった。こちら側を向いて映ってはいるものの、この写真を片手に人探しをすることは難しそうだ。
だが、スマホを介してよりも自身の目で見た時の方が顔は良く見えた気がする。
(あれは、まだ若いな…)
中学生、または高校生か。何にしても十代なのは間違いないだろう。
(そして、意外にも掃除屋には協力者有り…っと)
これは今まで聞いたこともない、予想外の収穫だ。
今度は、自転車を運転していた男の方に画面を移動しようと操作し始める。遠目で見ても分かるぐらい彼も年若い少年のようだった。
その横顔を大きく拡大する。すると…。
(あれ?この子は…)
見たことのある顔だった。
少女と同様にハッキリと人相が判るわけではない。だが、その横顔のシルエットと髪型。そして着ている服…。
それは、ほんのつい先程見掛けた人物のものにあまりにも酷似していた。
同じ高校の一年下の後輩で、同じ予備校にも通っている…。
(これ…本宮くんじゃないか?)
立花は驚愕に大きく眼を見張った。
ふわふわ、そよそよ。
何処からか流れてくる風に吹かれている。
緩やかな風に下ろした髪と服の裾がなびく。涼しいというよりは少し冷たくて肌寒いくらいだった。
僅かに身震いをしたところで、不意に手に伝わる温かな存在があることに気付く。
傍に在る優しいぬくもり。それは自分が良く知っている背中だった。
そこにそっと身を寄せると、その主が驚いたように身動ぎしたのが分かった。それでも特にその行動を咎めることもなく好きにさせてくれる。
自分は、この背中が好きだ。
男の子のわりに線は細めだけれど、自分とは違う逞しい背中。昔はそう変わらなかったのに、いつの間にか大きくなっていた。気付けば、その背中に支えられることも多くなった。
圭ちゃん…。
傍にいてくれるだけでいつだって安心する、心を落ち着かせてくれる存在。
「紅葉…」
自分を呼ぶ、その少し甘い声も。
本当は他の誰に呼ばれるのとも違うのに。
自分にとっては大切で、特別なのに…。
『もう小さな子どもじゃないんだからさ、そういうの止めたら?昔からの腐れ縁に付き合わされる本宮くんの身にもなってみなよ』
…そうだ。
ダメなんだ…。
この温かさに手を伸ばしたら。
その背中に縋ってしまったら…。
「紅葉?…着いたよ」
圭ちゃんの声が聞こえる。
「…だ、め…」
「え?…紅葉?」
だって、私…。これ以上、圭ちゃんに嫌われたくない!!
「ご、め…なさ…」
「紅葉…?目が覚めたの?」
家の前へと辿り着き、後ろに座る紅葉に圭がそっと声を掛けると、今まで虚ろに何処かを見つめていたその瞳が不意に揺れた。
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