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入浴(1)
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翌日。ここ数日と異なり、彼とは別々の帰り道を歩む。友人に用があるから、それを終わらせてからダリスの家に向かうことにしたのだ。
中央通路の西にある自動扉を通り、地下商店街に
いくつも立ち並ぶ店の一つで足を止めると、馴染みある少年が愛想良く迎えに来た。
「!、こんにちわぁー!いらっしゃいませぇー!」
ダリスにこそ劣るが可愛らしい風貌の看板息子は、柔らかくも快活な声でそう呼びかける。
「あ、アインさんかぁー。いまフロアさん呼んでくるから、ちょーっと待っててくださいねーっ!」
こちらが何か言う前に状況を把握した彼は、ぱたぱたとスタッフルームへ消えていった。
しばらくして、目当ての人物はやってきた。
「おひさーアイン。元気してた?」
「久しぶりだな。いくらか買いたいものがあって、相談に来た。」
褪せた金髪を肩あたりの高さで整えた雑種猫がふらりと現れる。日頃はこの場所、楽器商店で働いている彼__フロアは、つてが多く個人的に雑多なものを仕入れては売り捌いている商人であり、また数少ない友人と呼べる人だ。
「えー助かるっすー。こないだ色々仕入れて。発注ミスですげー届いちゃってもう倉庫パンパンでー。あ、アインが好きそうなやつもけっこーいまあるよ。帰り寄ってくー?」
「ぜひ頼みたい。」
「おっけー。じゃあもう俺上がるや、ちっと待っててな」
ひらひらと手を振りながらスタッフルームへ戻って数分もしないうちに戻ってきたフロアは、いつもの貸し部屋へ俺を招いた。
彼の第二の職場であるその一室はとにかく大量の商品で溢れていて、商品を綺麗に飾り立てる内装が主流の地下商店街とは大きく異なっている。段ボールがそのまま積み重ねてあるその店内は、商店というより倉庫に近い。何の用途に使うかよくわからないガラクタでいっぱいのその店の通路を縫うようにして、フロアが奥の仕切られてた空間に入る。痩身の彼は柳のようにするすると通っていくが、太い骨と張った筋肉の体をした自分はそうもいかず、横歩きで慎重に後を追う。何度通っても慣れないが、こればかりはどうしようもない。
突っ張り棒により棚と壁の間で作られた仕切りのカーテンをくぐる。このスペースもやはり段ボールやプラスチックケースがそのまま置かれている無骨な見た目だが、カーテンの外とは若干様子が異なっている。ピンクや極彩色を基調としたパッケージの商品を所狭しに並べたそこは、目隠し用の布一枚を挟んで仕切られていることから想像できるとおり、アダルトグッズがメインのブースだった。オナホやバイブをはじめとした王道な玩具から、アロマやオイル、強壮剤など幅広いものを取り扱っているこの空間は相変わらず素晴らしい品揃えだ。例の天井に大量に貼り付けて保管していたディルド群や、おもちゃ類はこの店で購入したものだし、ダリス完全再現特注ラブドールは彼に仲介してもらい人形師に作らせたものだった。
「そーそ、これ引き取ってくんね?五十頼むつもりがなーんか単位ワンケースだったみたいで、五十箱かける百個で五百きちゃってさ。しかも小分けの使い切りみたいなやつじゃなくて詰め替え用で。シャンプーかよって爆笑しちゃったよねー。でまあ、置き場ないし捨てんのも金かかるしやばいんすよー今」
へらへらと笑いながら、フロアは壁際に詰まれた段ボールの一つを開ける。いつにも増して狭いと思いきやそんな理由があったとは。
見せられたのは、シャンプーや洗剤の詰め替え用パックに近い見た目をした謎のパッケージだった。
「それは何だ?」
「なんか、媚薬?みたいなやつっすねー。飲むというよりかは塗るのかな?ちょっと俺もよく分かってなくて、効き目も謎っすねー。こんなん大量に買っちゃって、ほんとどーしよって」
わはは、と笑いながらフロアが話すが、やらかし度合いとしてはかなり笑えない部類だと思った。
「はは、やっぱ要らないすよねー。アインそれ系買わないし。……冗談はともかく、今日は何をお求めで?オナホとか色々新しいの入ってるっすよー!」
「待て、もっと詳しく聞かせてくれ。先ほどの物、購入上限はあるか?ないなら全て引き取っても良い」
「えーとすねー、………………え?いや、え、それ何に使うんすか?いやー、冗談きついっすって、え、全部自分で飲むとかすかー?」
フロアはへらへらと笑って、段ボールに例の媚薬を戻す。
「待て待て。冗談じゃない。実はつい最近恋人ができたんだ」
「あー、……え!?!?、うそまじすか?ご執心のダリスちゃんはいいの!?えっえ、まじー!?!?わー!!!!?」
目をくわっと開いたフロアが大袈裟に驚いて、ぐっと顔を寄せてくる。
「だれだれどんな子なんすかー、やば、アインに彼氏?彼女?……とかちょっと衝撃すぎて、いやー脳追いつかないっすー……やっぱダリスちゃんみたいなちっちゃくてかわいー子なんすかー?今度紹介してほしー」
「ああ、違くて。そのダリスと今付き合っているんだ」
「ええええええ!?!?!?ちょそれ幻覚じゃないすかー!?絶対騙されてるって、だってダリスちゃんっしょ!?あの魔性の!!うそうそうそ、やばぁ」
「まあ、いろいろとあったんだ。」
信じられないといった表情を浮かべつつも、妙に納得したような表情を浮かべた彼は一人でうんうんと頷いて、また口を開いた。
「まーとにかく。引き取ってくれるのはガチありがたいっすー。ほんとアイン大好きー。全部持ってく?」
「いいのか?それなら本当に全部買うが」
「ごめん言いすぎた、全部は無理っすねー」
そんな冗談や無駄口を叩き、なれそめやら何やらの質問攻めをかわして、支払い手続きや持ち帰りの自宅を済ませた。早く帰ってダリスに会いたくて適当に受け答えする俺にフロアは文句を垂れてながらも、在庫処理感謝とダリスと付き合った記念と破格で売ってくれた。さりげなく記念日なんだからとパックの赤飯を売りつけてきたのには苦笑したが、久々の友人との会話は楽しかった。
「いやー本当助かった助かった。今度飯かなんか行きたいっすねー!ダリスちゃんの話めっちゃ聞きたいっすー。」
「考えておく。こちらも面白いものが買えて良かった、ありがとう。持ち帰り用の台車はいつ頃返すべきか?」
「ぜーんぜんいつでも。まあ、できたら一週間以内にはって感じっすー。また近々来てくれると嬉しいっすねー」
「分かった。それではまた」
「ええ。ご贔屓にー」
ゆらゆら手を振る彼に見送られ、段ボールを積んだ台車を押して帰路に着く。ダリスの家を訪ねる時間が遅くなってしまい長居はできないなと切なく思う気持ちを、良い買い物をした満足感で誤魔化す。自宅のビルのエレベーターに入ったとき、本来買うつもりだったものを買い損ねたことに気がついたが、早くダリスに会いたくて仕方がない気持ちの方を優先することにした。
自宅の階にエレベーターで降りた時、家の前に見慣れた姿が待っていた。
「おそいよ」
俺の部屋の玄関のドアに寄りかかっている彼は、不満げに頬を膨らませてそう言った。
「ダリス、何故ここに?」
「ドラマの続き見たかっただけ。別にいいでしょ」
退勤時と同じ格好をしているところから見るに、あの後まっすぐ俺の家まで向かったのだろうか。内廊下で空調の整った環境とはいえ、彼と別れてから一時間半は経っている。ずっと一人で待っていたと思うと健気でかわいくてたまらなくて、口角が自然と上がってしまう。
「てかその荷物なに?」
「いろいろあってな。これを友人から引き取っていた」
「ふーん」
興味なさそうな返事をしたダリスは、はやく入れて、というように背中を小突く。慌ててドアを開けると、ぷんすか怒りながら部屋に上がった彼は速攻でベッドに飛び乗って、モニターの電源を入れる。
台車を玄関の中へ入れるのに苦戦していると、ダリスがこちらにやってきた。
「お風呂先入っちゃっといてよね。」
手伝ってくれるのかと思いきやただそう残して、また彼はベッドへと帰って行った。
「……はぁ。」
自然にため息が漏れる。付き合って、毎日セックスすることが決まってからの数日、彼に適当に扱われている気がする。目隠しをされ搾り取られた一日目。彼の残り湯__ダリス汁を廃棄された二日目に、ダリス汁再回収を阻まれた三日目と今日。対等なイチャイチャラブラブ生活を望んでいた身としては、とても悲しいことである。どうせならちょっとイタズラして一矢報いてやりたい。そう思ったとき、今運んでいる大量の媚薬と悪巧みが点と点で繋がった。
閃いたからには即実行してやろう。そう考えた俺は、風呂に段ボールを持ち込み、浴槽に片っ端から媚薬を入れていく。小瓶でなく詰め替え用で助かった。
黙々と作業を続け、かくして媚薬風呂は出来上がった。量が多いため数時間かかるのではないかと懸念していたが、ハサミで数袋ずつまとめて切っては入れる作業スタイルに変更してからはあっという間だった。
たっぷりと浴槽に収まった媚薬を追い焚き機能で沸かす。一時的につけていたマスクを外すと、部屋に立ち込める甘い香料で脳がくらくらした。きっと催淫効果があるのだろう。あまりこの風呂場に長居すると俺にまで媚薬の餌食になってしまうし、媚薬風呂用意のために随分と時間を使ってしまった。さっさと体を洗って軽く浸かって出た方が良いと考え、適当に洗身する。
温めた媚薬風呂に浸かると、じわじわと痺れるような不可思議な快感が肌に侵入してきた。通常ではあり得ない安さで売られたその媚薬の効果に大して期待はしていなかったのだが、もしかしたらなかなか良いものだったのかもしれない。
ほどほどに湯から上がって、俺はこれに浸かるダリスの反応を想像しながら部屋を片付け、彼に風呂を譲った。
ダリスが風呂に入ってから四十五分。長風呂の傾向がある彼なら現実的な時間であるのだが、全く水音も立たないとなると流石に不安になってきた。性欲に任せて媚薬風呂を作ったものの、モノがモノなので心配だ。ただの長湯なら良いのだが。
「ダリス?」
「あぇ……♡?」
ノックすると、ふにゃふにゃ蕩けた声が答えた。
「開けていいか?」
「ぅ……♡? あぅ……♡♡ ……ぉ゛、ぁ……♡」
呂律の回らない、肯定とも否定とも取れない声が返ってくる。辛抱ならずにドアを開けると、ぶわっと甘ったるい雌と媚薬の香りが鼻を襲った。
手で口元を押さえながら、風呂場に顔を覗かせる。見ると、白目を剥いてぴくぴくと震え絶頂する彼の姿があった。
「ッダリス!!!」
慌ててダリスを媚薬風呂から引き摺り出す。
「ぁ~~……♡ へぅ……♡ ぅ……♡♡♡」
タオルでダリスの体を拭く。触れるたびにびくびくと身を震わせて、竿の先端から透明な先走りをとぷとぷと溢す。尻まわりと股間を拭くと、しょわしょわと薄い尿が漏れ出てしまって、拭いても拭いても水分が取れない。
媚薬風呂からの香りにやられてくらくらしてきた
とめどなく小水を垂れ流す彼を抱いて、ベッドまで避難する。僅かな振動さえも刺激になるのか、抱えて歩く間にも何度か甘イキしていた。
中央通路の西にある自動扉を通り、地下商店街に
いくつも立ち並ぶ店の一つで足を止めると、馴染みある少年が愛想良く迎えに来た。
「!、こんにちわぁー!いらっしゃいませぇー!」
ダリスにこそ劣るが可愛らしい風貌の看板息子は、柔らかくも快活な声でそう呼びかける。
「あ、アインさんかぁー。いまフロアさん呼んでくるから、ちょーっと待っててくださいねーっ!」
こちらが何か言う前に状況を把握した彼は、ぱたぱたとスタッフルームへ消えていった。
しばらくして、目当ての人物はやってきた。
「おひさーアイン。元気してた?」
「久しぶりだな。いくらか買いたいものがあって、相談に来た。」
褪せた金髪を肩あたりの高さで整えた雑種猫がふらりと現れる。日頃はこの場所、楽器商店で働いている彼__フロアは、つてが多く個人的に雑多なものを仕入れては売り捌いている商人であり、また数少ない友人と呼べる人だ。
「えー助かるっすー。こないだ色々仕入れて。発注ミスですげー届いちゃってもう倉庫パンパンでー。あ、アインが好きそうなやつもけっこーいまあるよ。帰り寄ってくー?」
「ぜひ頼みたい。」
「おっけー。じゃあもう俺上がるや、ちっと待っててな」
ひらひらと手を振りながらスタッフルームへ戻って数分もしないうちに戻ってきたフロアは、いつもの貸し部屋へ俺を招いた。
彼の第二の職場であるその一室はとにかく大量の商品で溢れていて、商品を綺麗に飾り立てる内装が主流の地下商店街とは大きく異なっている。段ボールがそのまま積み重ねてあるその店内は、商店というより倉庫に近い。何の用途に使うかよくわからないガラクタでいっぱいのその店の通路を縫うようにして、フロアが奥の仕切られてた空間に入る。痩身の彼は柳のようにするすると通っていくが、太い骨と張った筋肉の体をした自分はそうもいかず、横歩きで慎重に後を追う。何度通っても慣れないが、こればかりはどうしようもない。
突っ張り棒により棚と壁の間で作られた仕切りのカーテンをくぐる。このスペースもやはり段ボールやプラスチックケースがそのまま置かれている無骨な見た目だが、カーテンの外とは若干様子が異なっている。ピンクや極彩色を基調としたパッケージの商品を所狭しに並べたそこは、目隠し用の布一枚を挟んで仕切られていることから想像できるとおり、アダルトグッズがメインのブースだった。オナホやバイブをはじめとした王道な玩具から、アロマやオイル、強壮剤など幅広いものを取り扱っているこの空間は相変わらず素晴らしい品揃えだ。例の天井に大量に貼り付けて保管していたディルド群や、おもちゃ類はこの店で購入したものだし、ダリス完全再現特注ラブドールは彼に仲介してもらい人形師に作らせたものだった。
「そーそ、これ引き取ってくんね?五十頼むつもりがなーんか単位ワンケースだったみたいで、五十箱かける百個で五百きちゃってさ。しかも小分けの使い切りみたいなやつじゃなくて詰め替え用で。シャンプーかよって爆笑しちゃったよねー。でまあ、置き場ないし捨てんのも金かかるしやばいんすよー今」
へらへらと笑いながら、フロアは壁際に詰まれた段ボールの一つを開ける。いつにも増して狭いと思いきやそんな理由があったとは。
見せられたのは、シャンプーや洗剤の詰め替え用パックに近い見た目をした謎のパッケージだった。
「それは何だ?」
「なんか、媚薬?みたいなやつっすねー。飲むというよりかは塗るのかな?ちょっと俺もよく分かってなくて、効き目も謎っすねー。こんなん大量に買っちゃって、ほんとどーしよって」
わはは、と笑いながらフロアが話すが、やらかし度合いとしてはかなり笑えない部類だと思った。
「はは、やっぱ要らないすよねー。アインそれ系買わないし。……冗談はともかく、今日は何をお求めで?オナホとか色々新しいの入ってるっすよー!」
「待て、もっと詳しく聞かせてくれ。先ほどの物、購入上限はあるか?ないなら全て引き取っても良い」
「えーとすねー、………………え?いや、え、それ何に使うんすか?いやー、冗談きついっすって、え、全部自分で飲むとかすかー?」
フロアはへらへらと笑って、段ボールに例の媚薬を戻す。
「待て待て。冗談じゃない。実はつい最近恋人ができたんだ」
「あー、……え!?!?、うそまじすか?ご執心のダリスちゃんはいいの!?えっえ、まじー!?!?わー!!!!?」
目をくわっと開いたフロアが大袈裟に驚いて、ぐっと顔を寄せてくる。
「だれだれどんな子なんすかー、やば、アインに彼氏?彼女?……とかちょっと衝撃すぎて、いやー脳追いつかないっすー……やっぱダリスちゃんみたいなちっちゃくてかわいー子なんすかー?今度紹介してほしー」
「ああ、違くて。そのダリスと今付き合っているんだ」
「ええええええ!?!?!?ちょそれ幻覚じゃないすかー!?絶対騙されてるって、だってダリスちゃんっしょ!?あの魔性の!!うそうそうそ、やばぁ」
「まあ、いろいろとあったんだ。」
信じられないといった表情を浮かべつつも、妙に納得したような表情を浮かべた彼は一人でうんうんと頷いて、また口を開いた。
「まーとにかく。引き取ってくれるのはガチありがたいっすー。ほんとアイン大好きー。全部持ってく?」
「いいのか?それなら本当に全部買うが」
「ごめん言いすぎた、全部は無理っすねー」
そんな冗談や無駄口を叩き、なれそめやら何やらの質問攻めをかわして、支払い手続きや持ち帰りの自宅を済ませた。早く帰ってダリスに会いたくて適当に受け答えする俺にフロアは文句を垂れてながらも、在庫処理感謝とダリスと付き合った記念と破格で売ってくれた。さりげなく記念日なんだからとパックの赤飯を売りつけてきたのには苦笑したが、久々の友人との会話は楽しかった。
「いやー本当助かった助かった。今度飯かなんか行きたいっすねー!ダリスちゃんの話めっちゃ聞きたいっすー。」
「考えておく。こちらも面白いものが買えて良かった、ありがとう。持ち帰り用の台車はいつ頃返すべきか?」
「ぜーんぜんいつでも。まあ、できたら一週間以内にはって感じっすー。また近々来てくれると嬉しいっすねー」
「分かった。それではまた」
「ええ。ご贔屓にー」
ゆらゆら手を振る彼に見送られ、段ボールを積んだ台車を押して帰路に着く。ダリスの家を訪ねる時間が遅くなってしまい長居はできないなと切なく思う気持ちを、良い買い物をした満足感で誤魔化す。自宅のビルのエレベーターに入ったとき、本来買うつもりだったものを買い損ねたことに気がついたが、早くダリスに会いたくて仕方がない気持ちの方を優先することにした。
自宅の階にエレベーターで降りた時、家の前に見慣れた姿が待っていた。
「おそいよ」
俺の部屋の玄関のドアに寄りかかっている彼は、不満げに頬を膨らませてそう言った。
「ダリス、何故ここに?」
「ドラマの続き見たかっただけ。別にいいでしょ」
退勤時と同じ格好をしているところから見るに、あの後まっすぐ俺の家まで向かったのだろうか。内廊下で空調の整った環境とはいえ、彼と別れてから一時間半は経っている。ずっと一人で待っていたと思うと健気でかわいくてたまらなくて、口角が自然と上がってしまう。
「てかその荷物なに?」
「いろいろあってな。これを友人から引き取っていた」
「ふーん」
興味なさそうな返事をしたダリスは、はやく入れて、というように背中を小突く。慌ててドアを開けると、ぷんすか怒りながら部屋に上がった彼は速攻でベッドに飛び乗って、モニターの電源を入れる。
台車を玄関の中へ入れるのに苦戦していると、ダリスがこちらにやってきた。
「お風呂先入っちゃっといてよね。」
手伝ってくれるのかと思いきやただそう残して、また彼はベッドへと帰って行った。
「……はぁ。」
自然にため息が漏れる。付き合って、毎日セックスすることが決まってからの数日、彼に適当に扱われている気がする。目隠しをされ搾り取られた一日目。彼の残り湯__ダリス汁を廃棄された二日目に、ダリス汁再回収を阻まれた三日目と今日。対等なイチャイチャラブラブ生活を望んでいた身としては、とても悲しいことである。どうせならちょっとイタズラして一矢報いてやりたい。そう思ったとき、今運んでいる大量の媚薬と悪巧みが点と点で繋がった。
閃いたからには即実行してやろう。そう考えた俺は、風呂に段ボールを持ち込み、浴槽に片っ端から媚薬を入れていく。小瓶でなく詰め替え用で助かった。
黙々と作業を続け、かくして媚薬風呂は出来上がった。量が多いため数時間かかるのではないかと懸念していたが、ハサミで数袋ずつまとめて切っては入れる作業スタイルに変更してからはあっという間だった。
たっぷりと浴槽に収まった媚薬を追い焚き機能で沸かす。一時的につけていたマスクを外すと、部屋に立ち込める甘い香料で脳がくらくらした。きっと催淫効果があるのだろう。あまりこの風呂場に長居すると俺にまで媚薬の餌食になってしまうし、媚薬風呂用意のために随分と時間を使ってしまった。さっさと体を洗って軽く浸かって出た方が良いと考え、適当に洗身する。
温めた媚薬風呂に浸かると、じわじわと痺れるような不可思議な快感が肌に侵入してきた。通常ではあり得ない安さで売られたその媚薬の効果に大して期待はしていなかったのだが、もしかしたらなかなか良いものだったのかもしれない。
ほどほどに湯から上がって、俺はこれに浸かるダリスの反応を想像しながら部屋を片付け、彼に風呂を譲った。
ダリスが風呂に入ってから四十五分。長風呂の傾向がある彼なら現実的な時間であるのだが、全く水音も立たないとなると流石に不安になってきた。性欲に任せて媚薬風呂を作ったものの、モノがモノなので心配だ。ただの長湯なら良いのだが。
「ダリス?」
「あぇ……♡?」
ノックすると、ふにゃふにゃ蕩けた声が答えた。
「開けていいか?」
「ぅ……♡? あぅ……♡♡ ……ぉ゛、ぁ……♡」
呂律の回らない、肯定とも否定とも取れない声が返ってくる。辛抱ならずにドアを開けると、ぶわっと甘ったるい雌と媚薬の香りが鼻を襲った。
手で口元を押さえながら、風呂場に顔を覗かせる。見ると、白目を剥いてぴくぴくと震え絶頂する彼の姿があった。
「ッダリス!!!」
慌ててダリスを媚薬風呂から引き摺り出す。
「ぁ~~……♡ へぅ……♡ ぅ……♡♡♡」
タオルでダリスの体を拭く。触れるたびにびくびくと身を震わせて、竿の先端から透明な先走りをとぷとぷと溢す。尻まわりと股間を拭くと、しょわしょわと薄い尿が漏れ出てしまって、拭いても拭いても水分が取れない。
媚薬風呂からの香りにやられてくらくらしてきた
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