7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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天才公爵令息は、7番目の婚約者⁉

第13話

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 ブーンと低いモーター音が続くカヴァルリーを走らせる。前方から吹いてくる風に煽られ、クリスティーナの髪が靡き、光を反射して煌めいた。
 クリスティーナが空の状況をさっと確認すると、空の一部を覆っていた魔導弾の爆煙はすでに引いていた。その煙幕から出てきたのは、残った五体のワイバーンだ。


(目視で確認できたわ。ワイバーンは残り半分)


 そのワイバーンたちも、魔導弾のおかげでかなりダメージが入っていて、先に出撃していた戦闘部隊の団員たちが戦闘を繰り広げていた。
 ふっと短い息を吐いたクリスティーナは、カヴァルリーの金属製のステップに軍靴をガチリと固定する。
 操縦桿を器用に操りながら、己の肚に力を込めて、すくっと立ち上がった。
 早いスピードはそのままに、すでにワイバーンと交戦している戦闘部隊を目指す。
 クリスティーナは腰のベルトに差していた、手のひらくらいの大きさの黒いロッドをさっと取り出し、それを右手でぐっと握りしめながら、なけなしの魔力を込めた。


「ハルバード!」


 ロッドがブンッと低く短い音を発したと同時に、ぶわりと光を放ち、状態を変化させていく。
 手のひらくらいの大きさだったロッドが、クリスティーナの身長を超える長い柄に変わる。
 先端には魔力が放出され、魔力で作られた鋭い斧が生成された。
 魔導武器・魔斧ハルバードだ。
 クリスティーナの右腕に重みが加わり、ブンッと一振りすれば、彼女の双眸に鋭さが宿った。


「さあ、殲滅して差し上げるわ」


 クリスティーナは全身の血を滾らせ、ハルバードの柄を握る手にぐっと力を込める。
 カヴァルリーをさらに加速させ、モーター音を唸らせながら、ワイバーンとの戦いを繰り広げている中に突っ込んだ。
 直後、一体のワイバーンが戦闘部隊の団員に対し、太くて重そうな拳が振り上げられた。


(わたくしの団員に手出しさせないわ!)


 クリスティーナはハッと短く息を吐き、側面から魔獣の硬い胴体に向かって、力強く右腕をブンッと一振り。得物のハルバードで、真一文字に薙ぎ払った。


「ギャアアアアアアアッ!」


 硬い胴体にも関わらず、魔力で作られた鋭い斧刃はバッサリと両断した。
 ワイバーンが絶叫し、その巨体は魔力の炎に焼かれ、塵となって消滅した。


「閣下!」

「クリス閣下!」

「待たせたわね!」


 クリスティーナがニッと口の端を上げて余裕を見せれば、団員たちがさらに気合の入った顔つきに変わった。


(今日もハルバードの威力は絶好調ね。切れ味が抜群で気持ちがいいわ)


 魔斧ハルバードはクリスティーナが愛用する、帝国軍が扱う魔導武器の一つだ。
 魔力の少ないクリスティーナは、この武器を改良して魔導石を追加し、魔力を抽出している。
 魔力なしと揶揄される第三師団の武器は、彼女ものと同じように改良され、どの団員でも扱えるようにしているのだ。
 自分たちの欠点を補うため、第三師団には専属の技術士がいるくらいだ。


「閣下、油断するなよ! 残り三体だ!」

「わかってるわ」


 ちょうど、もう一体のワイバーンを倒したマルスが叫んだ。
 マルスが愛用している魔導武器・魔槍ランケアを構え、すぐにもう一体に突っ込んでいく。


「わたくしたちももう一体を狙うわよ!」


 クリスティーナは器用にカヴァルリーごとくるりと向きを変え、団員たちに指示を飛ばす。


「みんな! 魔導ライフルでワイバーンの注意を引いて!」

「了解、閣下!」


 飴色の銃火器・魔導ライフルを所持している団員たちが、一斉にワイバーンへの射撃を開始した。
 ドパパパパパンッ、と魔力のこもった弾丸が雨のように降り注ぎ、ワイバーンを襲う。
 だが、ワイバーンは弾丸の雨を縫うように、翼を使って上手く回避していく。弾が当たると体力が削られていくが、ワイバーンの致命傷にはならない。ワイバーンもそれがわかっているような動きだ。
 そして、こちらの攻撃が止むとわかると、ぐわっと大きく口を開け、炎のブレスを吐いた。


(知能があるのね。でも、わたくしが斬りつけてあげてよ)


 クリスティーナは魔獣に隙ができる一瞬を狙い、じっと注意深く見つめる。
 何度も吐かれるワイバーンの炎のブレスだが、団員たちはカヴァルリーを器用に操りながら、危なげなく躱す。
 何度も躱されるからか、ワイバーンに苛立ちが見え、徐々に動きが荒くなっていく。
 ワイバーンがブレスを吐くのを止めて、我慢しきれず、団員の一人に真正面から突っ込んできた。


(今だわ!)





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