7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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第三師団の魔獣討伐

第32話

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「クリス閣下。距離七十、幼体のワイバーンを確認。魔導弾装填の準備は完了しました」


 司令室の席で、モニカが計測器を操作しながら報告する。
 戦空艇は岩山に囲まれたナウシエト遺跡を捉えた。そして、ワイバーンの幼体三体を確認した。
 幼体のワイバーンは翼を羽ばたかせて、巣の周りを優雅に飛んでいる。幼体と言えども、体長は人間の二倍ほどで、凶暴なことには変わりない。
 成体は現時点では確認できないが、おそらく留守にしているだけで、巣に何か異変があれば飛んで帰ってくるだろう。
 作戦は短時間で完遂しなければならない。


「始めましょう」


 クリスティーナは凛とした声で、開始を告げた。


「了解! 総員に告ぐ。戦闘部隊はカヴァルリーでの出撃準備を開始せよ。魔導弾は距離五十にて射出」

「魔導弾のカウントを開始します。距離六十三、二、一、六十……」


 エドワードのアナウンスで、すぐさま団員たちが行動を開始する。
 急ぎ足の靴音が響く中、モニカがカウントを始めると同時に、戦空艇全体が振動し、ビリビリと空気を震わせた。


「ティナ、本当に遺跡の調査へ行くのですか? 調査は私一人でも大丈夫ですよ?」


 シキが遠慮気味に、それでいて少し心配そうに聞いてくるが、クリスティーナは首を横に振った。


「もう決めたことよ。わたくしは行くわ」

「わかりました。では行きましょう」


 二人で司令室を出ると、甲板を目指して全速力で駆け上がった。
 クリスティーナは甲板に到着後すぐに、用意されていたカヴァルリーにひらりと跨る。
 すでに起動させていたイヤーカフの通信機から、モニカのカウントが聞こえた。


『五十四、三、二、一、五十! 魔導弾、射出!』


 戦空艇の大砲から閃光が走り、轟音を立てて魔導弾が射出した。
 魔導弾の向かう先はワイバーンの巣ではない。それは遺跡から少し離れた岩山を貫いた。
 ドオオオオンッ、と耳を劈く爆発音が響き渡る。
 岩山は一瞬で抉られてバランスを失い、ゴガガガガガッ、と激しく崩落すると、砂埃が舞い上がっていた。


「ギャアッ、ギャアッ!!」


 突然の轟音に驚いた幼体のワイバーン三体が、声を荒げながら、慌てて巣から飛び出すのが見えた。
 巣、つまり遺跡から逃げるように離れ、どんどん距離が離れていく。


『命中! 幼体のワイバーン三体を遺跡から駆逐。距離百五十!』

「……作戦は成功ね」


 イヤーカフの通信機から聞こえたモニカの報告に、クリスティーナが呟いた。
 今回は魔獣討伐だけでなく、ロストテクノロジーの調査も任務だ。そのため遺跡を破壊しないように、まずはワイバーンを遺跡から引き離す作戦をとった。まずは成功である。
 クリスティーナは肉眼でもワイバーンが一定以上離れたことを確認すると、カヴァルリーの操縦桿をすばやく操作した。
 ブーンと低い羽音のようなモーター音とともに、ふわりと浮き上がり、暗く染めた灰色の曇天へ向かって飛び出した。シキも同時にカヴァルリーで離陸する。


「クリス閣下、雨が降りそうだ。気をつけて行けよ!」


 甲板にともに待機していたマルスがプロペラ音に負けずに叫んだ。ワイバーンが巣に戻ってきた時に再び引き離すため、戦闘部隊は甲板にて待機していたのだ。


「もちろん。マルス、みんな。この後を頼んだわよ!」

「任せろ!」

「クリス閣下、お気をつけて!」

「閣下、絶対戻ってきてくださいよ!」


 他の戦闘部隊の団員たちも、クリスティーナに声をかけ、拳を突き上げる。
 戦闘部隊の頼もしさに目を細めながら、徐々に地上へ向かって下降していった。





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