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三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下
第46話
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「わたくしもですわ。この度はわたくしをこちらに置いてくださり感謝しています」
「皇女殿下をお守りする……いや、孫の婚約者を守るのは当然のことですよ」
クリスティーナとシキの祖父母であるモガミとカエデが会うのは、実は初めてではない。
初めて出会った場所は、この国ドルレアンの王宮だ。
モガミは公爵家当主であり、この国の政治の中枢を担う人物の一人。そして公爵夫人であるカエデは、王太后の右腕と呼ばれるほどの人物である。
「ティナがドルレアンの王弟と婚約していたことを、すっかり忘れていました」
「ふふ。わたくしもこの国に来るまですっかり忘れていたわ。三人目の婚約者だったかしら」
クリスティーナは当時のことを思いだし、苦笑した。
この時ももう婚約することはないと思っていたが、今では七人目の婚約者を迎えている。
クリスティーナはモガミにすすめられて、応接室のソファに腰かけた。その隣に当然のようにシキも座った。
「この国から殿下が去られたことは残念でなりませんでしたよ。この国の膿を出してくださった、殿下のような気骨のある人物は少ないですからな」
「何をしたんですか、ティナ」
にこにこと笑みを向けるモガミとは対照的に、シキから胡乱気な視線を向けられたが、クリスティーナは嫣然と微笑んで見せる。
「あら。わたくしはただ王弟が外交の職務の裏で、海外の多くの令嬢をたぶらかしていたことを、みなさんに教えて差し上げただけよ」
「それだけじゃないでしょう?」
「そうね。外交ルートとは別ルートで勝手に交渉して、私腹を肥やしていたことも暴いたかしら」
「それはそれはすばらしい婚約破棄劇でしたな。王弟殿下の振る舞いは目に余っておりましたから。プライドも高い方でしたから、鼻をへし折るにはちょうどよかったですよ」
「おかげさまで、悪女と呼ばれるようになったけれど」
六人目の婚約者からも言われた悪女という評判は、このドルレアンから始まった。
三人目の婚約者であった王弟ナガト・ドルレアンは、端正な顔立ちで貴族令嬢に人気があった。
婚約破棄をされた王弟は、令嬢たちの噂好きを利用して、一方的にひどく振った悪女だとクリスティーナにレッテルを貼ったのだ。
はあ、と深くため息をついたシキは手を伸ばし、クリスティーナの頭をぽんぽんと撫ぜた。
「無茶をしないでください。それに悪女と噂を流されるなんて……」
「悪女である前に、わたくしは血を恐れない軍人よ。悪女ごとき、何を恐れることがあるのかしら?」
「さすが殿下でいらっしゃる。軍人としてもすばらしい方だと私は思っております。この国も何度か第三師団に助けてもらっていますからな」
「ふふ、お上手ね」
「……お爺様、ティナをそんなに褒めちぎって、何かあるのですか?」
シキがモガミをひたと見据えた。
モガミはにこにこと笑っていたが、その笑みを深くした。
「いい勘をしておるな、シキ。殿下宛にこれが届いておりますよ」
すっとクリスティーナの目の前に差し出されたのは、高位貴族からと思われる手紙だった。
「皇女殿下をお守りする……いや、孫の婚約者を守るのは当然のことですよ」
クリスティーナとシキの祖父母であるモガミとカエデが会うのは、実は初めてではない。
初めて出会った場所は、この国ドルレアンの王宮だ。
モガミは公爵家当主であり、この国の政治の中枢を担う人物の一人。そして公爵夫人であるカエデは、王太后の右腕と呼ばれるほどの人物である。
「ティナがドルレアンの王弟と婚約していたことを、すっかり忘れていました」
「ふふ。わたくしもこの国に来るまですっかり忘れていたわ。三人目の婚約者だったかしら」
クリスティーナは当時のことを思いだし、苦笑した。
この時ももう婚約することはないと思っていたが、今では七人目の婚約者を迎えている。
クリスティーナはモガミにすすめられて、応接室のソファに腰かけた。その隣に当然のようにシキも座った。
「この国から殿下が去られたことは残念でなりませんでしたよ。この国の膿を出してくださった、殿下のような気骨のある人物は少ないですからな」
「何をしたんですか、ティナ」
にこにこと笑みを向けるモガミとは対照的に、シキから胡乱気な視線を向けられたが、クリスティーナは嫣然と微笑んで見せる。
「あら。わたくしはただ王弟が外交の職務の裏で、海外の多くの令嬢をたぶらかしていたことを、みなさんに教えて差し上げただけよ」
「それだけじゃないでしょう?」
「そうね。外交ルートとは別ルートで勝手に交渉して、私腹を肥やしていたことも暴いたかしら」
「それはそれはすばらしい婚約破棄劇でしたな。王弟殿下の振る舞いは目に余っておりましたから。プライドも高い方でしたから、鼻をへし折るにはちょうどよかったですよ」
「おかげさまで、悪女と呼ばれるようになったけれど」
六人目の婚約者からも言われた悪女という評判は、このドルレアンから始まった。
三人目の婚約者であった王弟ナガト・ドルレアンは、端正な顔立ちで貴族令嬢に人気があった。
婚約破棄をされた王弟は、令嬢たちの噂好きを利用して、一方的にひどく振った悪女だとクリスティーナにレッテルを貼ったのだ。
はあ、と深くため息をついたシキは手を伸ばし、クリスティーナの頭をぽんぽんと撫ぜた。
「無茶をしないでください。それに悪女と噂を流されるなんて……」
「悪女である前に、わたくしは血を恐れない軍人よ。悪女ごとき、何を恐れることがあるのかしら?」
「さすが殿下でいらっしゃる。軍人としてもすばらしい方だと私は思っております。この国も何度か第三師団に助けてもらっていますからな」
「ふふ、お上手ね」
「……お爺様、ティナをそんなに褒めちぎって、何かあるのですか?」
シキがモガミをひたと見据えた。
モガミはにこにこと笑っていたが、その笑みを深くした。
「いい勘をしておるな、シキ。殿下宛にこれが届いておりますよ」
すっとクリスティーナの目の前に差し出されたのは、高位貴族からと思われる手紙だった。
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