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三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下
第49話
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「でも以前聞いたのだけど、国王陛下は情熱的に己の伴侶にと、ユメノに打診したと聞いたわ」
こちらに来ていた時に、耳に胼胝ができるほど聞いた話だ。
国王とユメノは十歳ほど離れているのだが、彼女の美しさと聡明さに惚れて求婚したらしい。
どれだけ王妃は大切にされているか、愛されているかを、ロマンス好きの王宮付の侍女たちが常に噂していた。
「ええ。陛下はそうでしたが、ユメノは渋々でしたけどね。王妃の地位を何と思っているのかしら」
カエデが溜息を零した。
カエデの言葉からユメノの価値観を推測するならば、従属国の王妃なんて、帝国の令嬢と比べたら田舎者ということなのかもしれない。
シキへの気持ちは恋情だけではないようだ。
「じゃあ、この嫌がらせはシキとわたくしが婚約したからってことかしら」
「おそらくは。二度婚約が成立しなかったシキが三度婚約した。それが皇女殿下だったから、ユメノが動いたのではないかと。王弟殿下をけしかけて、破談を狙っているのかもしれませんね」
(婚約破棄はわたくしも望んでいるけれど……)
ちらりとシキを見れば、不満げに顔をしかめていた。
その姿にちくりと胸が痛む。
(どうして、胸が……)
「私が破談になんてさせませんよ」
「シキ」
「せっかくティナの隣に立つ権利を手に入れたのです。破談なんてありえません。ドルレアン王家には分からせる必要がありますね」
やけに気合の入った口調で言ったシキに、クリスティーナは眉根を寄せた。
「何をする気なの、シキ」
「パーティーに出席します」
「え、出席するの? わたくしは断る選択肢もあると思っているのだけれど」
「ティナ、ここに滞在している理由が理由だけに、断るのは悪手ですよ。それに相手がティナの状況を、どこまで把握しているのかはわかりませんしね」
「それは、そうね」
ドルレアンに何の打診もなく国境を越えているクリスティーナは、今の時点では不利な状況だ。しかも、討伐作戦で怪我を負っているなど、情報を掴まれていては面倒だ。
帝国の皇太子であるレオンハルトが手を打っているだろうが、問題が表面化しないだけで不利な状況に変わりはない。
「参加をすればティナに恥をかかせたり、怒らせたりするような何かを仕掛けてくるでしょう」
「全くどちらが悪女かわからないわね」
面倒ね、と表情で物言うクリスティーナに、シキがニヤリと笑った。
「だったら、こちらも仕掛ければいいのですよ」
「仕掛ける?」
「レオンも言っていたでしょう? 婚約者とイチャイチャするように、と。存分にみせつけてやればいいのです」
こちらに来ていた時に、耳に胼胝ができるほど聞いた話だ。
国王とユメノは十歳ほど離れているのだが、彼女の美しさと聡明さに惚れて求婚したらしい。
どれだけ王妃は大切にされているか、愛されているかを、ロマンス好きの王宮付の侍女たちが常に噂していた。
「ええ。陛下はそうでしたが、ユメノは渋々でしたけどね。王妃の地位を何と思っているのかしら」
カエデが溜息を零した。
カエデの言葉からユメノの価値観を推測するならば、従属国の王妃なんて、帝国の令嬢と比べたら田舎者ということなのかもしれない。
シキへの気持ちは恋情だけではないようだ。
「じゃあ、この嫌がらせはシキとわたくしが婚約したからってことかしら」
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(婚約破棄はわたくしも望んでいるけれど……)
ちらりとシキを見れば、不満げに顔をしかめていた。
その姿にちくりと胸が痛む。
(どうして、胸が……)
「私が破談になんてさせませんよ」
「シキ」
「せっかくティナの隣に立つ権利を手に入れたのです。破談なんてありえません。ドルレアン王家には分からせる必要がありますね」
やけに気合の入った口調で言ったシキに、クリスティーナは眉根を寄せた。
「何をする気なの、シキ」
「パーティーに出席します」
「え、出席するの? わたくしは断る選択肢もあると思っているのだけれど」
「ティナ、ここに滞在している理由が理由だけに、断るのは悪手ですよ。それに相手がティナの状況を、どこまで把握しているのかはわかりませんしね」
「それは、そうね」
ドルレアンに何の打診もなく国境を越えているクリスティーナは、今の時点では不利な状況だ。しかも、討伐作戦で怪我を負っているなど、情報を掴まれていては面倒だ。
帝国の皇太子であるレオンハルトが手を打っているだろうが、問題が表面化しないだけで不利な状況に変わりはない。
「参加をすればティナに恥をかかせたり、怒らせたりするような何かを仕掛けてくるでしょう」
「全くどちらが悪女かわからないわね」
面倒ね、と表情で物言うクリスティーナに、シキがニヤリと笑った。
「だったら、こちらも仕掛ければいいのですよ」
「仕掛ける?」
「レオンも言っていたでしょう? 婚約者とイチャイチャするように、と。存分にみせつけてやればいいのです」
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