7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下

第58話

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 ちらりと見たシキの眉根はきつく寄せられており、自分がやろうとしたことを察しているようだ。
 そんなシキの態度にどこかホッとしている自分がいて、クリスティーナは少し戸惑った。


「……助かったわ」

「本当にそう思ってくれているといいですが。ご無事でなによりです」

「よくここがわかったわね」

「姿が見えなくなったあなたを探していましたからね。それで何者ですか、この者たちは。それにあの令嬢たちと……え、王弟?」


 シキが目を眇めてナガトを見れば、ハッとした表情をしたナガトがこちらに駆けてきた。


「クリスティーナ、無事か!? 無事のようだな。まさか、こんなことになるとは……」

「どういうことですか」


 低く唸るような声音を出したシキが、ナガトの胸倉をつかんで、ドンと壁に押し付けた。


「く、苦しい……」

「あなたの差し金ですか」

「ち、違……僕じゃ、ない」

「本当かしら。相手は刺客というよりも王宮の騎士って感じだけど」

「王宮の騎士ですか。じゃあ、広間に行って聞いてみましょうか?」

「や、やめろ」


 ナガトが弱々しい声で抗議した時、刺客たちがゆらりと立ち上がって、剣を振り上げこちらに走りこんできた。
 二人はニヤリと口の端を上げると、ナガトを引き連れて広間に向って駆け出した。


「ふぎゃああ、やめろぉ!」

「待て!」


 ナガトの叫びと刺客の制止する声が重なる。
 三人の刺客たちはケガを負いながらも、クリスティーナたちを追いかけてきた。
 二人が武器を持ったまま広間に突入すると、あちこちから悲鳴が上がる。
 広々としたダンスフロアでクリスティーナは踵を返し、こちらに向かってくる男を迎え撃つ。
 ガキンッ、と男が上段から剣を振り下ろしたのを、クリスティーナは柄で受け止めた。
 そのままその部分を支点にして、くるりと回転し、ガッ、と勢いよく男を蹴りつけた。


 ズザザザザザアアアッ


 真後ろにいた男も巻き込み、床面にものの見事に衝突し、激しく転倒した。
 そして、ドスッ、という鈍い音が聞こえたかと思えば、シキが男を昏倒させていて、ずるりと地面に転がった。
 シキの傍にいたナガトはどしんと尻もちをつき、わなわなと震えていた。


「何事だ!?」

「陛下、お下がりください!」


 クリスティーナがちらりと視線を向けると、近衛騎士に止められながらも、国王がこちらにやってきた。


「あら、国王陛下ごきげんよう」

「で、殿下!?」


 現状を見てぎょっとした国王とは対照的に、クリスティーナは綺麗に微笑んだ。


「手厚い歓待でしたわ。これは陛下の趣向でいらっしゃるの?」

「まさか、ありえません! すぐに賊を捕らえよ。パーティーの参加者を安全な所へ避難させるのだ」


 はっ、と短い返事を発した近衛騎士たちが、方々に散らばった。
 クリスティーナとシキが仕留めた男たちも、近衛騎士が改めて捕縛した。


「皇女殿下、お怪我は?」

「わたくしは軍人です。この程度の者たち相手に後れは取りません」

「ご無事で何よりです。一体何があったのですか。それになぜ愚弟がそこに?」


 ナガトは腰が抜けたのかその場から動けず、青白い顔でこちらを見ていた。


「わたくしはこの者たちに襲撃されたのです。なぜか太刀筋が王宮の騎士のようでしたのよ。そのような王宮の騎士なんて、王族か大臣クラスでないと動かせないと思いますが」

「そんな王宮の騎士だなんて……それは本当なのですか」

「残念ながら。ナガトがこんなことになるとは、って言っていたけれど」

「……まさかナガト、この騒動はお前が起こしたのか」

「ち、違う! 僕は言われたままに……」

「言われたままに?」

「言われたままに……クリスティーナを助けに行ったんだ」

「はい?」


 クリスティーナも国王も目が点になった。






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