7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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次兄・第二皇子の画策

第78話

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「どういうことだ。お前は帝国授与式典の後、皇帝陛下に望みを伝えたんじゃないのか」

「もちろん伝えましたよ」

「その望みを皇帝陛下が叶えた。それがクリスとの結婚だったのではないのか。私は皇帝陛下からそう聞いたのだが」

「いいえ。皇帝陛下は望みを叶えてはくださらなかったのですよ」

「何?」

「私はクリスティーナ皇女殿下の婚約者候補から外してほしい、とお願いしたんですよ」


 困ったように眉を下げるシキとは対照的に、レオンハルトは眉根をきつく寄せ、ハッと短く息を吐いた。
 レオンハルトがきっと七人目の婚約者候補を探すだろうと考えていたから、高位貴族である自分を最初から入れないでほしいと思っていたのだ。
 それがちょうど帝国授与式典でタイミングが来て、皇帝陛下にシキは申し出た。
 だが蓋を開けてみれば、自分が婚約者に収まることが決定していた。


「そんな望みを申し出たのか。なぜだ。お前はずっとクリスを想っていただろう?」


 ずっと想ってはいたが、傍にいる気はなく伝える気もなかった。
 他の女性と婚約を交わすことになったし、クリスティーナの幸せを考えれば、シキはそれで良かったと思っている。


「言ったでしょう。生きるきっかけを与えてくれたティナには、幸せになってほしいんです。私が傍にいれば、記憶を思い出して辛い思いをすることになるかもしれない。きっと幸せには程遠い状況を作ってしまう」

「確かに私もクリスには幸せになってほしい。あの事件の時、私は傍にいてやれず、クリスに全てを負わせてしまったからな。でも、クリスはそんなに軟じゃないと思うのだ。それは父上も同じことを思っているんじゃないかと思う。そうでなければシキと婚約させない」


 レオンハルトの言葉に、シキははっと息をのんだ。


(レオンハルトの言う通りだ。私はティナの何を見てきたのだろう)


 久しぶりに近くで見たクリスティーナは、確かに精神的に危うい部分もあるが奥底は強い。自分よりもずっと。
 生き生きと師団長として任務を遂行していた姿は、出会った時のまま眩しかった。
 そんなクリスティーナを思い出すだけで、自然と表情が柔らかくなってしまう。
 立場を得た今、もう自分の気持ちにも抗う必要はないのかもしれない。


「そうですね。私はティナの強さを侮っていたのかもしれません。ティナはいずれ過去を受け入れられるのかもしれません。皇帝陛下からの婚約の命を受けた時は、断るきっかけを見つけようとしていましたが、ティナ本人に会えばダメですね」

「何がダメなんだ」

「傍にいてはいけないのに、魅力的過ぎて隣にいられる幸福や、他の男に渡したくない独占欲は湧くのです。どうしようもないですね」

「だったら婚約は継続だな」

「婚約者は私で最後です。私が幸せにします」





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