7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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次兄・第二皇子の画策

第79話

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「姫様、お湯加減はいかがでしたか?」

「とても気持ちが良かったわよ、ニーナ。やっぱり皇宮のお風呂は違うわね」


 帝国に帰還したクリスティーナは帝都にある皇宮の自室にいた。
 さっと湯浴みをした後、侍女たちが慌ただしくクリスティーナの身支度を進めていた。


「もう少しゆっくりなさってはいかがですか? 長期任務でお疲れでしょうに……」


 久しぶりに会った侍女のニーナが眉をひそめる。
 年配だが衰え知らずのニーナは、クリスティーナの筆頭侍女であり母のような存在だ。クリスティーナの身をいつも案じてくれている。


「そうも言っていられないのよ。レオンお兄様に報告に行く必要があるもの」

「殿下なら明日でもかまわないと言うでしょうに」

「それではわたくしが嫌なのよ」


 これまでの旅の軽装から、クリスティーナのアイデンティティである戦空艇団の紅の軍服を身にまとう。
 軍服に袖を通すのは久しぶりだ。
 ドルレアンにいた時から今日まで、珍しく軍服とは縁遠い生活を送って来たから。
 軍服を身に着けると気持ちが引き締まる。


「姫様、お支度が終わりました」

「ありがとう」


 侍女の一人に声をかけられ、クリスティーナは微笑みを返す。
 侍女たちは頬を赤らめ、ほぅと溜息を零した。


「姫様に見惚れている場合ではないですよ、あなた方」

「じゃあ、ニーナ。行ってくるわ。この時間帯ならお兄様との面会も叶うだろうし」

「かしこまりました。姫様、お気をつけて」


 侍女たちの見送られながら自室を出たクリスティーナは、兄のいる執務室へと向かった。
 周囲に人がいないことをいいことに、そっと溜息を吐く。

 帝都に向かっている最中、クリスティーナは今後のことについて考えていた。
 何よりも自分が第二皇子派に狙われていることだ。厄介なことにどういう意図があるのかまだ分からない。
 レオンハルトからの情報を待ちたいところだが、自ら探りに行った方がいいのではないかとクリスティーナは考えている。

 それと、少しずつ記憶が戻っていきていることも気になっている。
 ナウシエト遺跡で何かがあり、それがきっかけになったのではないかと推測している。


(それは一体なんなのかしら……)


 ワイバーンの攻撃を受けて体に傷を負った。
 腑に落ちないのだが、そうレオンハルトとシキから聞いている。


(……シキ、ね)


 彼の顔を浮かべた時、クリスティーナはなぜか沸き立つ気持ちを感じてしまう。
 シキからもらった首元のペンダントに優しく触れた。
 本来であれば、自分の目的は婚約破棄だったはず。
 それなのに、どうしてだか心の奥底にシキが住み着いてしまったように感じる。




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