79 / 100
次兄・第二皇子の画策
第79話
しおりを挟む
「姫様、お湯加減はいかがでしたか?」
「とても気持ちが良かったわよ、ニーナ。やっぱり皇宮のお風呂は違うわね」
帝国に帰還したクリスティーナは帝都にある皇宮の自室にいた。
さっと湯浴みをした後、侍女たちが慌ただしくクリスティーナの身支度を進めていた。
「もう少しゆっくりなさってはいかがですか? 長期任務でお疲れでしょうに……」
久しぶりに会った侍女のニーナが眉をひそめる。
年配だが衰え知らずのニーナは、クリスティーナの筆頭侍女であり母のような存在だ。クリスティーナの身をいつも案じてくれている。
「そうも言っていられないのよ。レオンお兄様に報告に行く必要があるもの」
「殿下なら明日でもかまわないと言うでしょうに」
「それではわたくしが嫌なのよ」
これまでの旅の軽装から、クリスティーナのアイデンティティである戦空艇団の紅の軍服を身にまとう。
軍服に袖を通すのは久しぶりだ。
ドルレアンにいた時から今日まで、珍しく軍服とは縁遠い生活を送って来たから。
軍服を身に着けると気持ちが引き締まる。
「姫様、お支度が終わりました」
「ありがとう」
侍女の一人に声をかけられ、クリスティーナは微笑みを返す。
侍女たちは頬を赤らめ、ほぅと溜息を零した。
「姫様に見惚れている場合ではないですよ、あなた方」
「じゃあ、ニーナ。行ってくるわ。この時間帯ならお兄様との面会も叶うだろうし」
「かしこまりました。姫様、お気をつけて」
侍女たちの見送られながら自室を出たクリスティーナは、兄のいる執務室へと向かった。
周囲に人がいないことをいいことに、そっと溜息を吐く。
帝都に向かっている最中、クリスティーナは今後のことについて考えていた。
何よりも自分が第二皇子派に狙われていることだ。厄介なことにどういう意図があるのかまだ分からない。
レオンハルトからの情報を待ちたいところだが、自ら探りに行った方がいいのではないかとクリスティーナは考えている。
それと、少しずつ記憶が戻っていきていることも気になっている。
ナウシエト遺跡で何かがあり、それがきっかけになったのではないかと推測している。
(それは一体なんなのかしら……)
ワイバーンの攻撃を受けて体に傷を負った。
腑に落ちないのだが、そうレオンハルトとシキから聞いている。
(……シキ、ね)
彼の顔を浮かべた時、クリスティーナはなぜか沸き立つ気持ちを感じてしまう。
シキからもらった首元のペンダントに優しく触れた。
本来であれば、自分の目的は婚約破棄だったはず。
それなのに、どうしてだか心の奥底にシキが住み着いてしまったように感じる。
「とても気持ちが良かったわよ、ニーナ。やっぱり皇宮のお風呂は違うわね」
帝国に帰還したクリスティーナは帝都にある皇宮の自室にいた。
さっと湯浴みをした後、侍女たちが慌ただしくクリスティーナの身支度を進めていた。
「もう少しゆっくりなさってはいかがですか? 長期任務でお疲れでしょうに……」
久しぶりに会った侍女のニーナが眉をひそめる。
年配だが衰え知らずのニーナは、クリスティーナの筆頭侍女であり母のような存在だ。クリスティーナの身をいつも案じてくれている。
「そうも言っていられないのよ。レオンお兄様に報告に行く必要があるもの」
「殿下なら明日でもかまわないと言うでしょうに」
「それではわたくしが嫌なのよ」
これまでの旅の軽装から、クリスティーナのアイデンティティである戦空艇団の紅の軍服を身にまとう。
軍服に袖を通すのは久しぶりだ。
ドルレアンにいた時から今日まで、珍しく軍服とは縁遠い生活を送って来たから。
軍服を身に着けると気持ちが引き締まる。
「姫様、お支度が終わりました」
「ありがとう」
侍女の一人に声をかけられ、クリスティーナは微笑みを返す。
侍女たちは頬を赤らめ、ほぅと溜息を零した。
「姫様に見惚れている場合ではないですよ、あなた方」
「じゃあ、ニーナ。行ってくるわ。この時間帯ならお兄様との面会も叶うだろうし」
「かしこまりました。姫様、お気をつけて」
侍女たちの見送られながら自室を出たクリスティーナは、兄のいる執務室へと向かった。
周囲に人がいないことをいいことに、そっと溜息を吐く。
帝都に向かっている最中、クリスティーナは今後のことについて考えていた。
何よりも自分が第二皇子派に狙われていることだ。厄介なことにどういう意図があるのかまだ分からない。
レオンハルトからの情報を待ちたいところだが、自ら探りに行った方がいいのではないかとクリスティーナは考えている。
それと、少しずつ記憶が戻っていきていることも気になっている。
ナウシエト遺跡で何かがあり、それがきっかけになったのではないかと推測している。
(それは一体なんなのかしら……)
ワイバーンの攻撃を受けて体に傷を負った。
腑に落ちないのだが、そうレオンハルトとシキから聞いている。
(……シキ、ね)
彼の顔を浮かべた時、クリスティーナはなぜか沸き立つ気持ちを感じてしまう。
シキからもらった首元のペンダントに優しく触れた。
本来であれば、自分の目的は婚約破棄だったはず。
それなのに、どうしてだか心の奥底にシキが住み着いてしまったように感じる。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる