7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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悪女殿下の7回目の婚約の行方

第91話

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「クリス、どこ!? クリスティーナ!」


 悲鳴に近い声が近づいてくる。
 驚いたクリスティーナとシキは、扉を凝視しているとバンッ、と扉が開いた。


「お、お母さま?」

「クリス、ここにいたのね。ここは危ないわ。逃げるのよ」


 血相を変えて部屋に入って来たのは、母である皇妃ロザーラと侍女だった。
 ロザーラが何かを侍女に言うと、侍女がすぐに動き、シキの部屋の本棚を動かし始めた。
 普段とは違う緊迫感にクリスティーナは体が震え、シキの手をぎゅっと握った。


「皇妃さま、一体何があったと言うのです!?」

「シキ、ごめんなさいね。あなたを巻き込んでしまったわ」

「ロザーラ様、開きました!」


 侍女が動かした本棚の先は、薄気味悪い空間が広がっているが、下階へ続く階段があった。


「とにかく中へ。ここから急いで離れないと。シキ、体は起こせる?」

「はい」


 体を起こそうとしたシキを手伝うように、クリスティーナはよいしょとシキの手を引っ張った。


「二人とも私についてくるのよ」


 下へ続く階段を進むロザーラの背を見て、クリスティーナはシキを見上げた。
 シキがこくりと頷くとクリスティーナはシキの手を引っ張り、ロザーラの後に続いた。
 背後でガタンと音がなる。侍女が扉を閉めたのだろう、辺りは薄暗くなった。

 進めば進むほど、悲鳴と剣戟の音が増えていく。
 クリスティーナはただならぬ気配に手が震えた。
 クリスティーナに不安が忍び寄るが、シキがぎゅっと安心させるように手を握ってくれる。
 そんなシキがロザーラに声をかけた。


「皇妃さま、何が起きているのですか」

「この屋敷が襲われたわ」

「襲われた!?」

「おそらく第二皇子派でしょうね。テオドラが仕向けているに違いないわ」

「しかし、ここにレオンはいません」

「ええ。今日は急遽公務が入ったから来られなかったの。ここへは私が進めている女学院の設立に向けて、打ち合わせに来ていたのだけど……悲しいけれど、裏切り者がいたようね」

「じゃあ、今狙われているのは……」

「私とクリスね。テオドラからすれば、第一皇子と同様に私は邪魔者。それに、魔力量の多いクリスも今の内に、と考えるのは自然でしょう」

「そんな……」

「今までも狙われていたけれど、とうとう実力行使に出てきたわね……」


 薄暗い階段を下りきると、目の前に古めかしい木造の扉が現れた。
 ロザーラがドアノブを回し開けると外からの光があふれ、クリスティーナは目を細めた。
 屋敷の外へ出た四人は、屋敷の外れにある石造りの門へ向かって走った。


「いたぞ!」


 野太い男の声が響き渡る。
 バタバタとこちらに向かってくる数人の足音が迫る。
 襲撃者たちだ。





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