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悪女殿下の7回目の婚約の行方
第96話
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やがてクリスティーナから眩い光が煌めくと、ズンッと重くて強大なエネルギーが発現した。
金色に輝く瞳には何の感情も浮かばない。
ただ、頭上高くすっと右腕を上げて、振りかざした。
キラリと煌めいたのは一瞬だった。
ドオオンンッ
「ぎゃあああああっ!」
空気が膨れて弾けた。
ジェレミーとエドワードが悲鳴を上げて、一瞬にして吹き飛び、そのまま壁に激突した。
特にエドワードは強く打ったのか、ぴくりとも動かない。
「こ、これが、魔力暴走……」
ジェレミーがわなわなと唇を震えさせた。
一度立ち上がろうとしたが支えきれず床に伏した。
クリスティーナの強大なエネルギーは、どんどん膨れ上がっていく。
建物は耐えらず、みしみしと壁にひびが入り崩れ落ちる。
天井は膨れ上がり、ドンッと弾けとんだ。
屋根が吹き飛ばされ、場違いな穏やかな青空が見えた。
「ティ、ナ……」
建物が崩れていくさまをクリスティーナは見ていたが、耳で音を捉えた。
「シ、キ……?」
倒れていたシキが、ぐっと体を起こしてクリスティーナを見つめた。
クリスティーナははっと息を飲み、見つめ返した。
体に傷を負っているはずのシキが、足を引きずりながらクリスティーナに向ってくる。
「ティナ。私は、大丈夫。私は生きています……死ぬわけない、でしょう?」
クリスティーナは目を細めた。
やがてクリスティーナのもとへ来たシキが、彼女へ腕を伸ばし抱き寄せた。
「シ、キ……」
「ティナと私は、婚約者です。結婚するんです。私を、一人にしないで」
そのままぐっと顎を上げられ、シキの顔が近づいた。
そして、重なった部分から温かなエネルギーが流れ込んできた。
クリスティーナの身体が与えられるエネルギーに反応し、纏っていた嵐のようなエネルギーが徐々に落ち着いていく。
身体がぐらりと傾き、無意識に目の前にある胸にぎゅっと縋った。
シキにさらに抱き込まれて、重なっている部分が深いものに変わる。
こくり、こくりと何度か喉が動くと、やがてクリスティーナの意識が白く塗りつぶされていく。
……愛している
耳に残った音は、クリスティーナの心を温かくした。
「うれ、しい」
「ティナ?」
「クリス閣下!」
「閣下! ご無事ですか!?」
上の方から声が聞こえた。
シキに抱きしめられながらクリスティーナは、ゆっくりと空を見上げる。
そこにはクリスティーナの愛してやまない、戦空艇があり、カルヴァリーに乗った団員たちの姿がこちらに向かっていた。
クリスティーナの双眸が大きく開かれた。
「わたくしの、団員たち」
「そうです。あなたの第三師団、です。師団長を助けるために、みんなここへ、駆けつけたんですよ」
そう、わたくしのために。
副官としてまだ日が浅いシキが誇らしげにいうのが、なんだか可笑しくて、うれしくて。
クリスティーナは意識が沈んでいく中で、口元を笑ませた。
金色に輝く瞳には何の感情も浮かばない。
ただ、頭上高くすっと右腕を上げて、振りかざした。
キラリと煌めいたのは一瞬だった。
ドオオンンッ
「ぎゃあああああっ!」
空気が膨れて弾けた。
ジェレミーとエドワードが悲鳴を上げて、一瞬にして吹き飛び、そのまま壁に激突した。
特にエドワードは強く打ったのか、ぴくりとも動かない。
「こ、これが、魔力暴走……」
ジェレミーがわなわなと唇を震えさせた。
一度立ち上がろうとしたが支えきれず床に伏した。
クリスティーナの強大なエネルギーは、どんどん膨れ上がっていく。
建物は耐えらず、みしみしと壁にひびが入り崩れ落ちる。
天井は膨れ上がり、ドンッと弾けとんだ。
屋根が吹き飛ばされ、場違いな穏やかな青空が見えた。
「ティ、ナ……」
建物が崩れていくさまをクリスティーナは見ていたが、耳で音を捉えた。
「シ、キ……?」
倒れていたシキが、ぐっと体を起こしてクリスティーナを見つめた。
クリスティーナははっと息を飲み、見つめ返した。
体に傷を負っているはずのシキが、足を引きずりながらクリスティーナに向ってくる。
「ティナ。私は、大丈夫。私は生きています……死ぬわけない、でしょう?」
クリスティーナは目を細めた。
やがてクリスティーナのもとへ来たシキが、彼女へ腕を伸ばし抱き寄せた。
「シ、キ……」
「ティナと私は、婚約者です。結婚するんです。私を、一人にしないで」
そのままぐっと顎を上げられ、シキの顔が近づいた。
そして、重なった部分から温かなエネルギーが流れ込んできた。
クリスティーナの身体が与えられるエネルギーに反応し、纏っていた嵐のようなエネルギーが徐々に落ち着いていく。
身体がぐらりと傾き、無意識に目の前にある胸にぎゅっと縋った。
シキにさらに抱き込まれて、重なっている部分が深いものに変わる。
こくり、こくりと何度か喉が動くと、やがてクリスティーナの意識が白く塗りつぶされていく。
……愛している
耳に残った音は、クリスティーナの心を温かくした。
「うれ、しい」
「ティナ?」
「クリス閣下!」
「閣下! ご無事ですか!?」
上の方から声が聞こえた。
シキに抱きしめられながらクリスティーナは、ゆっくりと空を見上げる。
そこにはクリスティーナの愛してやまない、戦空艇があり、カルヴァリーに乗った団員たちの姿がこちらに向かっていた。
クリスティーナの双眸が大きく開かれた。
「わたくしの、団員たち」
「そうです。あなたの第三師団、です。師団長を助けるために、みんなここへ、駆けつけたんですよ」
そう、わたくしのために。
副官としてまだ日が浅いシキが誇らしげにいうのが、なんだか可笑しくて、うれしくて。
クリスティーナは意識が沈んでいく中で、口元を笑ませた。
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