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いにしえの聖女の悲しき物語
第89話
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二人の竜神が視線を合わすと、竜神たちの体がきらきらと青白く輝く。
二人の竜神が腕を高く掲げ、力強く振り下ろした。
その瞬間、青白い光が私の全身を包みこむ。
「何、これ……魔力がみなぎってくる……」
『イシュカ、もう一度水術を唱えろ』
スクルドに促されて、すばやく詠唱した。
「水圧砲撃!!」
グググガガガアアアアッッッッッッ
私の腕から巨大な水の渦が生まれ、荒れ狂う川を横断した。
水の渦は高い壁となり濁流を防ぐ。
アケロース川の流れが自然の摂理に反して止まった。
さらに勢いが止まらない水の渦は、空に向かって突き進み分厚い雲を突き破った。
雲が霧散し青空が見え、柔らかな光が射しこむ。
「すごいわ……水術の威力が数倍にも上がっているなんて」
こんな水術なんて見たことがない。
自ら生み出した術だけれど、あまりの凄さに呆然としてしまった。
『これであれば、十分に救助ができるじゃろう』
「ありがとう。これでみんなを助けられる」
中州に視線を移すとローク達の先導のもと、取り残されていた人たちが安全に救出されていた。
残り一人が川岸に無事避難できたところで、私は術を解いた。
たちまち川が自然な姿に戻る。先ほどと同じように、濁流が勢いよく流れていく。
けれども空は曇天が消え去り、気持ちの良い青空が広がっていた。もう大雨は心配ないだろう。
「間一髪だったわ。スクルド、ウルズ、ありがとう」
『よくやった、イシュカ』
『妾も役に立てて良かったわい』
互いに微笑み合っていると、ふと多くの視線を感じて振り向いた。
ここにいたニコラス閣下と作業員たちが、目を丸くして私たちを見ていた。
「イシュカ嬢、感謝する。ありがとう。しかし、こんなすごい術を使えるとは」
「しかも竜神様まで降臨するなんて……」
「竜神様から加護を受けられている方っていたんだな」
「もしかしてこの方は伝説の……聖女様では!?」
「せ、聖女!?」
聖女に向き合い始めたけれど、私はまだまだ、ただの水術師ですからね!?
けれど、私を見る目がキラキラしている。
「イシュカ!」
そんな中、名前を呼ばれて振り返るとロークが駆け寄ってきた。
そして勢いそのままに、ぎゅっと強く抱きしめられた。
「え、ローク!?」
「良かった、無事で………突然ここに現れたから心配した」
私の肩に顔を埋めたロークの声が少し震えていた。
ロークのこんな声、初めて聞いた。
「急に来てごめんなさい。居ても立っても居られなくて……」
「こんなところに来るなんて危ないだろう? でも、正直助かった」
二人の竜神が腕を高く掲げ、力強く振り下ろした。
その瞬間、青白い光が私の全身を包みこむ。
「何、これ……魔力がみなぎってくる……」
『イシュカ、もう一度水術を唱えろ』
スクルドに促されて、すばやく詠唱した。
「水圧砲撃!!」
グググガガガアアアアッッッッッッ
私の腕から巨大な水の渦が生まれ、荒れ狂う川を横断した。
水の渦は高い壁となり濁流を防ぐ。
アケロース川の流れが自然の摂理に反して止まった。
さらに勢いが止まらない水の渦は、空に向かって突き進み分厚い雲を突き破った。
雲が霧散し青空が見え、柔らかな光が射しこむ。
「すごいわ……水術の威力が数倍にも上がっているなんて」
こんな水術なんて見たことがない。
自ら生み出した術だけれど、あまりの凄さに呆然としてしまった。
『これであれば、十分に救助ができるじゃろう』
「ありがとう。これでみんなを助けられる」
中州に視線を移すとローク達の先導のもと、取り残されていた人たちが安全に救出されていた。
残り一人が川岸に無事避難できたところで、私は術を解いた。
たちまち川が自然な姿に戻る。先ほどと同じように、濁流が勢いよく流れていく。
けれども空は曇天が消え去り、気持ちの良い青空が広がっていた。もう大雨は心配ないだろう。
「間一髪だったわ。スクルド、ウルズ、ありがとう」
『よくやった、イシュカ』
『妾も役に立てて良かったわい』
互いに微笑み合っていると、ふと多くの視線を感じて振り向いた。
ここにいたニコラス閣下と作業員たちが、目を丸くして私たちを見ていた。
「イシュカ嬢、感謝する。ありがとう。しかし、こんなすごい術を使えるとは」
「しかも竜神様まで降臨するなんて……」
「竜神様から加護を受けられている方っていたんだな」
「もしかしてこの方は伝説の……聖女様では!?」
「せ、聖女!?」
聖女に向き合い始めたけれど、私はまだまだ、ただの水術師ですからね!?
けれど、私を見る目がキラキラしている。
「イシュカ!」
そんな中、名前を呼ばれて振り返るとロークが駆け寄ってきた。
そして勢いそのままに、ぎゅっと強く抱きしめられた。
「え、ローク!?」
「良かった、無事で………突然ここに現れたから心配した」
私の肩に顔を埋めたロークの声が少し震えていた。
ロークのこんな声、初めて聞いた。
「急に来てごめんなさい。居ても立っても居られなくて……」
「こんなところに来るなんて危ないだろう? でも、正直助かった」
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