王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~

結田龍

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千年越し、新たな聖女が誕生だ

第111話

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 空は雲一つない青空が広がっている。
 その下にあるのは雄大に流れるアケロース川だ。
 三か月前に氾濫を起こしたとは思えないほど、穏やかに流れていた。


「氾濫が起こった時は大変だったんだけどね」

『……今は違うだろう。我のおかげで舟運が上手くいっているのだから』


 少し不機嫌な表情で、ふいっと横を向いたのはヴェルザンディだ。
 その隣にはスクルドとウルズもいる。

 今日は舟運事業の創業記念式典を開催している。会場はアケロース川の河岸に完成した河港だ。
 私たちは舞台袖にいて、出番を待っているところだ。
 私の視線の先には、舞台に出て演説をしているロークがいる。
 集まった聴衆は、ロークの力強い演説を熱心に聞いているようだ。


「さすが、王太子殿下ね。みんなが惹きつけられているわ」

『王太子も随分と顔つきが変わったようじゃな。より精悍になっておる』

『王太子が王位につけば、カスタリアはもとより、国はますます繁栄するだろうな』


 河港や船の建設はあれから三か月かかった。
 ヴェルザンディのおかげでアケロース川は穏やかになり、工事中の天候も恵まれて順調すぎるくらいに進んだ。
 舟運拠点となる河港は二か所に造られた。
 この会場となっているアケロース川と王都付近を流れるエリダノス川の河岸だ。
 式典前からすでに舟運事業はスタートしていて、私が作ったポーションやカスタリア産の農産物が、王都へと運ばれていた。


「イシュカ、出番だ」


 舞台袖に待機していたグレッグに呼ばれて、こくりとひとつ頷いた。
 うう、緊張する……っ。
 これから私は聖女として正式にお披露目される。
 舞台袖から出て、こつんこつんとヒールの音を鳴らしながら、舞台中央にいるロークに近づいた。
 会場から、おおっ、聖女様だ! という歓声が上がる。
 聖女じゃないですけど、と言うことはもうない。けれど、ここまで歓迎されると照れてしまう。


「イシュカ」


 近づいた私にロークが柔らかく笑う。
 その表情に、今日の衣装にほうと見惚れてしまう。
 ロークの今日の姿は格好良いが過ぎるのよ……。
 式典用の華やかな衣装を着こなし、この人は王族なのだとはっきりと印象付けられる。


「お待たせいたしました」

「イシュカ、きれいだ」

「え……」

「聖女の衣装がよく似合っている」


 も、もう! 
 さらりと甘い言葉を言われてしまった。
 私は頬が熱くて、聴衆に見られないように慌てて下を向いた。

 そうすると、自分が着ている衣装が目に飛び込んでくる。
 この日のために、そしてこれからのためにと作られた聖女の衣装。
 白を基調に繊細な模様が金糸で織られており、細やかレースで縁取られている美しい衣装だ。
 何よりもナンシーが力を入れてこのローブを作ってくれた。
 私にはもったいない衣装だ。







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