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序章 詩織

詩織という少女

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翌日━━━

 昼休みに芹沢さんがやってきてくれた。表情から察するにOKはもらえたんだな、そう確信できる微笑だった。

「事情説明したらパパもぜひ協力したいって言ってくれたよっ」

嬉しそうに答えてくれる。

「ありがとう、芹沢さん!」
「とりあえず1度うちに来て欲しいって言ってるんだけど、天使君はいつが都合いいかな?」
「そうだね、できれば早いほうがいいからおとうさんの都合が悪くなければ今日の放課後にでも行きたいんだけど、芹沢さんは大丈夫?」
「うん、ぜんぜん問題ないよっ。さっそくパパに連絡しとくね」
「うん、それじゃぁまた放課後」
「うんっ!」

 僕より芹沢さんのほうがうれしそうだな。駆け足でクラスへもどる彼女の背中を見送りながら僕も教室へと戻った。ゆれるポニーテールが印象的だった。

「あまちゃん、今の何?あれ2組の芹沢さんじゃないの?」

クラスメイトの一人が茶化してくる。

「そうだよ、ちょっと色々あってね」
「なんだよそれー、詳しく教えろよー」

男子がわいわいとやってくる。

「そういうんじゃないって。」
「そうか、あーさんは芹沢みたいなのがタイプなのか」

その男子生徒は眼鏡に手をやり分析面をする。

「だからちがうって」

 クラスメイトの男子が騒いでる中、女子達は遠巻きにその様子を伺っている。クラスの女子は女子で気になっているみたいだ。ちらりとそちらに目をやると一人の生徒と目がぶつかった。でもその子は気まずそうにすぐに瞳をそらしてしまった。

“ 詩織・・・ ”

 彼女とは幼馴染だ。家がとても近い。神社にも子供の頃から足繁く通っている。昔はよく3人で遊んだりもした。良くありがちなどっちが僕のお嫁さんになるかでケンカしたりすることもあった。あの時は華族になって二人と結婚するって答えたんだっけ。なれるわけもないのに。

 詩織は光とは対照的な美人さんだ。光が天真爛漫なそれこそ天使のような純粋無垢な天衣無縫とでも言うか誰からも愛される存在であるのに対し、詩織は女神様とでも言えばよいか誰にでも慈悲深く常に後光がさしている存在、気高く孤高の高嶺の花とでもいうか、常に光芒が差している皆の憧れ的な存在である。

 ちなみに詩織は頭がいい。天才といっていいレベル。僕が言うんだから間違いない。こちらもデタラメなレベルでの頭の良さだ。

 光という特別な存在を除いて、僕が唯一尊敬できる異性といっても過言ではない。

“ 詩織には話しておかなきゃ…… ”

 最近様子がおかしいことくらい彼女も察しているようだ。ある程度落ち着いたら彼女にも全部はなそう。
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