偽聖女——呪われた公爵令嬢は聖女になりたい——

夜道に桜

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オリビアの苦悩

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「マーガレット様なら、あちらの方に行かれましたが……」

「……連れてきなさい」


「しかし……」

空を天で仰ぎながら、騎士に指示を出すオリビアだが、どうも騎士の歯切れが悪い。

オリビアもそれに勘付き、念を押すように、

「行くのを見たのでしょう? さっさと連れてきなさい」

何度も言わせないで頂戴、と付け加えた。

——片方の騎士が、サファリアが一望できる、窓を指差して、重い口を開いた

「外へ……街へ行ったようで……」

「面白い冗談……よね?」

「ひぃ!」


折れてしまうのではないかと思うほどの力を、手に持っていたペンに加え、オリビアは今日1番の声を張り上げた。

「さっさと連れ戻してきなさい!」

「「わ、分かりました!」」

騎士たちは、一目散に駆け出していった。


——

「どうしたんだい、オリビア? そんなに声を荒げて? またマーガレットが何かしたのかい?」

騎士が去った後、騒ぎを聞きつけた男性が、オリビアに心配な顔をしてやってきた。

オリビアは、男性の姿を見ると、愚痴をこぼすように言った。

「クローリー。マーガレットがまた部屋を抜け出して、全然勉強しないの。あなたからも言ってください。……あの子は、全く……。今は、帝国からも遣いの者が来ている大切な時期だというのに……」

オリビアが必死に頼み込むと、クローリーは少し考え込むように、顎に手を当て、

「………そうだね。マーガレットもそろそろ落ち着きを覚えなければいけないかもしれないね。ワタシからも言っておくよ」

「本当ですか? クローリー。いつも、貴方はそう私に言って、結局マーガレットを放置してきたではありませんか!」

「……こ、今度こそちゃんと言うよ」

「約束ですよ!」

「あ、あぁ……」

オリビアの圧に、困ったような表情で、苦笑いして、そう対処するクローリー。
 
温和な雰囲気を、全身から醸し出す男性——クローリー・ウィル・バレンタインはこの国の王である。

「そういえば、今年の帝国から来る遣いは、グランデ家だそうだよ」

話を逸らすように、クローリーはポリポリと頬を掻きながら、オリビアに伝えた。

「グランデ……家ですか」

「うん。あの家系は代々優秀な事で有名だからね。……中でも今代の当主は一際だとか。一体、どんな話を私にしてくれるのだろうか!」

空を指でなぞるような仕草をしながら、目を輝かせるクローリー。
彼の心中は、踊っていた。

——知恵・知識のある者との対話。
それは、クローリーの最大の喜びであったから。


だが、そんな彼とは別に、オリビアは悩みの種で頭がいっぱいで……。

「マーガレットを机に向かわせる方法とか知っているのかしら? それか、あの落ち着きのない性格を治す方法とか……。ぜひ、私にも知恵を貸して欲しいわ」

「……」
    

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