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『応募者多数につき、今回は不採用とさせて頂きます』
ため息をついてメールを閉じた。
また不採用。やばい、短期でもバイト探さないと。家賃払えなくなっちゃう。
もう溜息しか出てこない。
今回、自転車で転んで怪我して入院してる間にアルバイト先のカフェをクビにされてて、もうバイトは止めとこうと思っていろいろ申し込んだけど。
社会は世知辛い。アルバイト経験しかないからか、なかなか正社員が決まらない。
私は机の中から1枚の写真を取り出した。
お父さんとお母さんと私が並んで映っている。小学校入学式の写真だ。
私――飯塚 若葉、23年生きてきてるけど、一番幸せだったのは小学校のころだったと思う。そのころはごくごく普通の幸せな家族で、一人っ子だったからお父さんもお母さんもすごい可愛がってくれてたし、友達もたくさんいたし楽しかった。
それが小学校4年生の時にお父さんの浮気が発覚。お母さんと別居からの離婚で、私はお母さんの実家についてったけど、それからお母さんは私にすごい期待するようになって、口癖は『地元で良い大学に行って、地元の良い企業に入りなさい』
家に早く帰って勉強しないと怒られるしで、気づいたら友達もいない性格になってて、大学受験失敗して、そのまま逃げるみたいに家を出て、アルバイト生活。
小学校ピークに転落人生だよ……。
「寒いなあ」
一枚フリースを羽織る。電気代も節約しなきゃだから、クーラーも止めてて切ない。
でも、お母さんのとこには戻りたくない。
今回怪我で入院するとき、保証人が必要だったからしょうがなく数年ぶりに連絡とったら、『私の言う通りにしないからそうなるのよ』って、さんざん言われた。
「とりあえず、短期バイト探そう……」
求人サイトを探そうと思ってスマホを開いた途端、電話が鳴った。
「うわっ」
人から電話かかってくることなんてめったにないから、びっくりする。
番号を見ると、03から始まる固定電話の番号だ。
「もしかして、どっか合格してた……?」
就活の電話かもしれない!
慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、……?」
でも、電話の人物は予想外の名前を名乗った。
「こちら×〇テレビの、『あの人どうしてる?』番組アシスタントディテクターの富岡と申しますが、星野 若葉さんのお電話でよろしいでしょうか」
女の人の声だ。それは良いとして、星野――、それはお父さんの苗字、親が離婚する前の私の旧姓だった。
何で知ってるの?
テレビ局?
「いえ、私、飯塚ですけど――、あの、昔は星野でしたけど――」
「ああ、そうなんですか! 失礼しました。突然お電話すいません。今お話し大丈夫ですか?」
なにこれ、新手の詐欺?
私お金ないけど?
「いえ、すいません、間に合ってますので」
切ろうとすると自称ディレクター富岡さんは慌てたような声を出した。
「あっ、怪しい者じゃありませんっ、あの、ご存じでしょうか『あの人どうしてる?』」
「……知らないです」
「毎週木曜日の20時からやってる番組なんですが、芸能人の方の思い出の人を探すコーナーでして」
見たことない番組だった。その時間はいっつも働いてたししばらく病院に入院しててそれどころじゃなかったし。
芸能人? 思い出の人?
「Rhythms、リズムスのTAKAさんが飯塚さんをお探しで、番組の企画でですね、調べさせて頂いてこの番号におかけしたんですけど――」
リズムス、という名前に私はびっくりした。
テレビの音楽番組で見たことあるグループだった。
男4人のダンスと歌のグループで、2年前くらいにデビューして結構テレビに出てる。TAKAはその中のひとりで一番ダンス上手い人だ。
私を探してる?
意味が分からない。
「人違いじゃないでしょうか……?」
そう言うと富岡さんは困ったような声になった。
「あれぇ、ご存じないですかぁ。TAKAさん、細井 貴司さん、小学校の同級生って聞いてるんですけど」
「細井……貴司?」
その名前には聞き覚えがあった。
確かに小学校の同級生で、そんなやつがいたと思う。
私が必死に記憶を取り戻していると、富岡さんはさらにびっくりすることを言った。
「それで、TAKAさんの初恋の人ってことで、飯塚さんを探してまして……」
初恋の人?
――私が?
ため息をついてメールを閉じた。
また不採用。やばい、短期でもバイト探さないと。家賃払えなくなっちゃう。
もう溜息しか出てこない。
今回、自転車で転んで怪我して入院してる間にアルバイト先のカフェをクビにされてて、もうバイトは止めとこうと思っていろいろ申し込んだけど。
社会は世知辛い。アルバイト経験しかないからか、なかなか正社員が決まらない。
私は机の中から1枚の写真を取り出した。
お父さんとお母さんと私が並んで映っている。小学校入学式の写真だ。
私――飯塚 若葉、23年生きてきてるけど、一番幸せだったのは小学校のころだったと思う。そのころはごくごく普通の幸せな家族で、一人っ子だったからお父さんもお母さんもすごい可愛がってくれてたし、友達もたくさんいたし楽しかった。
それが小学校4年生の時にお父さんの浮気が発覚。お母さんと別居からの離婚で、私はお母さんの実家についてったけど、それからお母さんは私にすごい期待するようになって、口癖は『地元で良い大学に行って、地元の良い企業に入りなさい』
家に早く帰って勉強しないと怒られるしで、気づいたら友達もいない性格になってて、大学受験失敗して、そのまま逃げるみたいに家を出て、アルバイト生活。
小学校ピークに転落人生だよ……。
「寒いなあ」
一枚フリースを羽織る。電気代も節約しなきゃだから、クーラーも止めてて切ない。
でも、お母さんのとこには戻りたくない。
今回怪我で入院するとき、保証人が必要だったからしょうがなく数年ぶりに連絡とったら、『私の言う通りにしないからそうなるのよ』って、さんざん言われた。
「とりあえず、短期バイト探そう……」
求人サイトを探そうと思ってスマホを開いた途端、電話が鳴った。
「うわっ」
人から電話かかってくることなんてめったにないから、びっくりする。
番号を見ると、03から始まる固定電話の番号だ。
「もしかして、どっか合格してた……?」
就活の電話かもしれない!
慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、……?」
でも、電話の人物は予想外の名前を名乗った。
「こちら×〇テレビの、『あの人どうしてる?』番組アシスタントディテクターの富岡と申しますが、星野 若葉さんのお電話でよろしいでしょうか」
女の人の声だ。それは良いとして、星野――、それはお父さんの苗字、親が離婚する前の私の旧姓だった。
何で知ってるの?
テレビ局?
「いえ、私、飯塚ですけど――、あの、昔は星野でしたけど――」
「ああ、そうなんですか! 失礼しました。突然お電話すいません。今お話し大丈夫ですか?」
なにこれ、新手の詐欺?
私お金ないけど?
「いえ、すいません、間に合ってますので」
切ろうとすると自称ディレクター富岡さんは慌てたような声を出した。
「あっ、怪しい者じゃありませんっ、あの、ご存じでしょうか『あの人どうしてる?』」
「……知らないです」
「毎週木曜日の20時からやってる番組なんですが、芸能人の方の思い出の人を探すコーナーでして」
見たことない番組だった。その時間はいっつも働いてたししばらく病院に入院しててそれどころじゃなかったし。
芸能人? 思い出の人?
「Rhythms、リズムスのTAKAさんが飯塚さんをお探しで、番組の企画でですね、調べさせて頂いてこの番号におかけしたんですけど――」
リズムス、という名前に私はびっくりした。
テレビの音楽番組で見たことあるグループだった。
男4人のダンスと歌のグループで、2年前くらいにデビューして結構テレビに出てる。TAKAはその中のひとりで一番ダンス上手い人だ。
私を探してる?
意味が分からない。
「人違いじゃないでしょうか……?」
そう言うと富岡さんは困ったような声になった。
「あれぇ、ご存じないですかぁ。TAKAさん、細井 貴司さん、小学校の同級生って聞いてるんですけど」
「細井……貴司?」
その名前には聞き覚えがあった。
確かに小学校の同級生で、そんなやつがいたと思う。
私が必死に記憶を取り戻していると、富岡さんはさらにびっくりすることを言った。
「それで、TAKAさんの初恋の人ってことで、飯塚さんを探してまして……」
初恋の人?
――私が?
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