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23裏の裏側後編 完結
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屋敷での醜事とは裏腹に学園に通っている間は穏やかに過ごせていた
もう一人の人格の私として
だが、ある日、同じように経営学の授業を取っているノエル・バッカスと言う男が話し掛けてきた
その内容を聞いている時の私は、人格が入れ替わり、その男を汚物を見るような目をしていただろう
あの獣のせいでこれからを台無しにされては堪らない
卒業したら王子に救い出して貰える所まできたのだ
無事に卒業し、絶対に幸せになってやる
私はあることを思い付いた
王子が付けただろう私の護衛なのか見張りの目を欺き、密かにバッカスと話をした
「私は間もなく伯爵家の藉に入るの。でも妹が居るわ。文字が読めない愚かな妹だけど、私には可愛い妹よ。妹は養女として私の妹になったけど、父にも後妻として来た愛人と同じように可愛がられてるわ。父の借金もあの子なら喜んで自分が返したいと言うでしょうね」
「…自分から娼婦になりたがるってことかい?」
「平民上がりとはいえ、今は男爵令嬢よ。自分の口からは言えないでしょう。はっきりと言わなくても、確かめる方法ならいくらでもあるでしょう?」
「…そうだね。で、いつその妹に会わせてくれるの?」
「私が紹介するなんてしたら、益々自分から言えないわね。偶然を装って貴方と引き合わせるから、後は…ね」
「ああ、…分かった」
「あ、妹は気が変わり易いから、色々話をしない方が良いわ。それと気が変わる前に父に先に話を通した方が良いわね。父も長々と説明されるよりも書類に目を通す方がお好きだからその辺も準備しておくことをおすすめするわ。二人共、私が気を回したことが分かると気分を害するだろうから、このことは秘密にしておいてね」
そうバッカスに告げ帰りの馬車で久しぶりに声を出して笑った
こんな楽しみなことがあるだろうか…
もう一人の私を暗闇に閉じ込めその日を待った
ベルに悩みとしてバッカスの提案を話し、どう動くのかを静観した
ベルは直接バッカスに対応すると言う
私としてはアイリーンと引き合わせたかったのだが、ベルを上手く誘導すればいずれバッカスの元へアイリーンを送り込んでくれるだろうと期待した
だがその期待よりもベルは私に応えてくれた
当初の目論見通りバッカスとアイリーンを対面させてくれたのだ
帰りの馬車の中で戸惑うフリをしたが自分でもなかなかの演技だったと思う
淫らで愚かなアイリーンは間もなくバッカスの手に堕ちるだろう
自分では使用人達を懐柔し、私を疎外させていると思い込み盗みまで働こうとしていた
ドレスや宝石など私には価値は無い
欲しければ望み通りくれてやる
私はもっと価値のあるものを手に入れるのだ
身分のことは王子が何とかすると言ってた通り、伯爵家に迎え入れてもらうことになった
残すはあの獣だ
どう始末してやるか考えあぐねていた
アイリーンは早々にバッカスの元に行った
姉として連れ戻すぐらいの行動を見せた方が良いのだろう
だが、馬車に向かおうとして引き留めたのは王子の従者だった
学園で護衛という名の監視が付いていたのは気づいていたが、どうやらこの従者は直接屋敷に入り込んでいるようだ
王子にそのまま伯爵家へ向かうように言われた
決められていた日程を変えるほど、急ぎあちらに行くということは賢いこの従者のことだあの獣の考えを読み取り王子に何か助言したのだろう
玩具を取り上げられた獣はいよいよ実の娘に目を付けたのだろう
女遊びと金だけにしか興味の無い男だ
素面といえど自分の娘だろうが何の躊躇もしないだろう
王子の機転のおかげで獣による二度目は無く済んだ
ほっとしたからなのか涙が溢れた
伯爵家でまさかの事実を知り、初めはあの獣の所に送り込んだ実の母親を憎んだ
だが、実の娘として渡した娘がまさかあの獣に襲われるとは思っても居なかったのだろう
伯爵から馴れ初めからどのようにして別れたのかまでを聞き、同情も有り許すことにした
あの獣の居る家を離れやっと休息の場を得られたのだ
二度と屋敷には戻りたく無かったが、伯爵と母親を会わせるため仕方なく戻った
まさか何の手を下さなくても獣を始末してくれる者が現れるとは思いも寄ら無かった
皆、私と同じようにこの獣の被害者だったのだから今思えば当然だったのかもしれない
王子の従者が屋敷に紛れ込んでいることには気付いていたが、執事見習いとしてこの屋敷の実態を把握していたとは
…そうか私は守られていたのか
ただ自分の幸せのために策を講じてきたが…
全ての私の枷は外された
最早自由だ
悪夢にうなされた分幸せになりたいともがいてきた
もうもがき苦しむことは無い
暗闇でずっとじっとしていたもう一人の私が私の心を優しく抱きしめてくれたのを感じた
何も知らなかった頃の私と今の私はここへ来て一人の私になった
伯爵家で幸せな家族としての生活も担ったのだろう
ただもう一度だけ…
ノエル様との初夜の日だけ
あの時の私になった
湯浴みを済ませ寝台の上でノエル様を待つまでの間に、わざと大きめの宝石の付いた指輪を嵌め、自分で中を傷付けた
もう何かを画策するのもこれでお終い
これからはノエル様に守ってもらう
二人に子供が出来た時にはまたこの考えは変わるのかもしれない
幸せに満たされたら次は誰かを幸せにするために画策するのも良いかもしれない
だけど今は何も考えずただこの甘い幸せに浸らせて欲しい…
ー 裏の裏側 完 ー
慌ただしく完結になりました
本編の自業自得ざまあからのあの時あの人達はストーリーいかがだったでしょうか?
読み返しもせずに書き上げては投稿しましたので辻褄の合わない所もあったかもしれません
時間が取れましたら改めて反省の意味を込めて修正加筆致します
リクエスト下さいました読者様にこの場を借りてお礼申し上げます
sideストーリーとして描き始めたのにも関わらず本編の4倍もの長さ…
ドロドロ系が好きなんでしょうね
筆が進みました(笑)
どのようにお感じになっかコメントいただけると嬉しいです
拙い作品でしたがお楽しみいただけましたら幸いです
また何かの作品で
まめ
年内に描き終えれて良かった~♪
もう一人の人格の私として
だが、ある日、同じように経営学の授業を取っているノエル・バッカスと言う男が話し掛けてきた
その内容を聞いている時の私は、人格が入れ替わり、その男を汚物を見るような目をしていただろう
あの獣のせいでこれからを台無しにされては堪らない
卒業したら王子に救い出して貰える所まできたのだ
無事に卒業し、絶対に幸せになってやる
私はあることを思い付いた
王子が付けただろう私の護衛なのか見張りの目を欺き、密かにバッカスと話をした
「私は間もなく伯爵家の藉に入るの。でも妹が居るわ。文字が読めない愚かな妹だけど、私には可愛い妹よ。妹は養女として私の妹になったけど、父にも後妻として来た愛人と同じように可愛がられてるわ。父の借金もあの子なら喜んで自分が返したいと言うでしょうね」
「…自分から娼婦になりたがるってことかい?」
「平民上がりとはいえ、今は男爵令嬢よ。自分の口からは言えないでしょう。はっきりと言わなくても、確かめる方法ならいくらでもあるでしょう?」
「…そうだね。で、いつその妹に会わせてくれるの?」
「私が紹介するなんてしたら、益々自分から言えないわね。偶然を装って貴方と引き合わせるから、後は…ね」
「ああ、…分かった」
「あ、妹は気が変わり易いから、色々話をしない方が良いわ。それと気が変わる前に父に先に話を通した方が良いわね。父も長々と説明されるよりも書類に目を通す方がお好きだからその辺も準備しておくことをおすすめするわ。二人共、私が気を回したことが分かると気分を害するだろうから、このことは秘密にしておいてね」
そうバッカスに告げ帰りの馬車で久しぶりに声を出して笑った
こんな楽しみなことがあるだろうか…
もう一人の私を暗闇に閉じ込めその日を待った
ベルに悩みとしてバッカスの提案を話し、どう動くのかを静観した
ベルは直接バッカスに対応すると言う
私としてはアイリーンと引き合わせたかったのだが、ベルを上手く誘導すればいずれバッカスの元へアイリーンを送り込んでくれるだろうと期待した
だがその期待よりもベルは私に応えてくれた
当初の目論見通りバッカスとアイリーンを対面させてくれたのだ
帰りの馬車の中で戸惑うフリをしたが自分でもなかなかの演技だったと思う
淫らで愚かなアイリーンは間もなくバッカスの手に堕ちるだろう
自分では使用人達を懐柔し、私を疎外させていると思い込み盗みまで働こうとしていた
ドレスや宝石など私には価値は無い
欲しければ望み通りくれてやる
私はもっと価値のあるものを手に入れるのだ
身分のことは王子が何とかすると言ってた通り、伯爵家に迎え入れてもらうことになった
残すはあの獣だ
どう始末してやるか考えあぐねていた
アイリーンは早々にバッカスの元に行った
姉として連れ戻すぐらいの行動を見せた方が良いのだろう
だが、馬車に向かおうとして引き留めたのは王子の従者だった
学園で護衛という名の監視が付いていたのは気づいていたが、どうやらこの従者は直接屋敷に入り込んでいるようだ
王子にそのまま伯爵家へ向かうように言われた
決められていた日程を変えるほど、急ぎあちらに行くということは賢いこの従者のことだあの獣の考えを読み取り王子に何か助言したのだろう
玩具を取り上げられた獣はいよいよ実の娘に目を付けたのだろう
女遊びと金だけにしか興味の無い男だ
素面といえど自分の娘だろうが何の躊躇もしないだろう
王子の機転のおかげで獣による二度目は無く済んだ
ほっとしたからなのか涙が溢れた
伯爵家でまさかの事実を知り、初めはあの獣の所に送り込んだ実の母親を憎んだ
だが、実の娘として渡した娘がまさかあの獣に襲われるとは思っても居なかったのだろう
伯爵から馴れ初めからどのようにして別れたのかまでを聞き、同情も有り許すことにした
あの獣の居る家を離れやっと休息の場を得られたのだ
二度と屋敷には戻りたく無かったが、伯爵と母親を会わせるため仕方なく戻った
まさか何の手を下さなくても獣を始末してくれる者が現れるとは思いも寄ら無かった
皆、私と同じようにこの獣の被害者だったのだから今思えば当然だったのかもしれない
王子の従者が屋敷に紛れ込んでいることには気付いていたが、執事見習いとしてこの屋敷の実態を把握していたとは
…そうか私は守られていたのか
ただ自分の幸せのために策を講じてきたが…
全ての私の枷は外された
最早自由だ
悪夢にうなされた分幸せになりたいともがいてきた
もうもがき苦しむことは無い
暗闇でずっとじっとしていたもう一人の私が私の心を優しく抱きしめてくれたのを感じた
何も知らなかった頃の私と今の私はここへ来て一人の私になった
伯爵家で幸せな家族としての生活も担ったのだろう
ただもう一度だけ…
ノエル様との初夜の日だけ
あの時の私になった
湯浴みを済ませ寝台の上でノエル様を待つまでの間に、わざと大きめの宝石の付いた指輪を嵌め、自分で中を傷付けた
もう何かを画策するのもこれでお終い
これからはノエル様に守ってもらう
二人に子供が出来た時にはまたこの考えは変わるのかもしれない
幸せに満たされたら次は誰かを幸せにするために画策するのも良いかもしれない
だけど今は何も考えずただこの甘い幸せに浸らせて欲しい…
ー 裏の裏側 完 ー
慌ただしく完結になりました
本編の自業自得ざまあからのあの時あの人達はストーリーいかがだったでしょうか?
読み返しもせずに書き上げては投稿しましたので辻褄の合わない所もあったかもしれません
時間が取れましたら改めて反省の意味を込めて修正加筆致します
リクエスト下さいました読者様にこの場を借りてお礼申し上げます
sideストーリーとして描き始めたのにも関わらず本編の4倍もの長さ…
ドロドロ系が好きなんでしょうね
筆が進みました(笑)
どのようにお感じになっかコメントいただけると嬉しいです
拙い作品でしたがお楽しみいただけましたら幸いです
また何かの作品で
まめ
年内に描き終えれて良かった~♪
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引き続きよろしくお願い致します!
とても面白く、あっという間に読破してしまいました!私もドロドロ大好きです(o^^o)
また是非ドロドロを書いてくださいm(_ _)m
むむちゃん様
コメントありがとうございます!
初投稿から半年でまだまだ拙いですが、楽しんで頂ける作品になるようこれからも頑張ります!
ドロドロ大好き仲間が居て嬉しい〜♪
これからもよろしくお願い致します