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22話

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 異世界12日目。

 スキルが開花してから、王様がわかりやすくわたしに手の平を返してきた!

 これまでオマケ扱いだったので、この国の人に無視されてたのに。急に必要な物は無いかとか、城内の色んな人が声を掛けてくれる様になった。

 そしてー。



「タナカ殿!お待ちしてましたぞ!どーぞ、どーぞ!」

 立派でゴージャスな食堂(?)みたいな所に連れてこられていた。
 勧められて座った席の正面には王様!

 ええー!?何で!?こんな事に!?

 

 確か今日は戦闘組が城外で訓練で。若ちんも赤い稲妻でチリンチリンと付き添いに出ていて。

 で、わたしはいつも通りに非戦闘組と一緒に色々やってて。

 忍くんが使う素材をわたしがもらってくるね、と部屋にいたオジサンに声をかけて。

 では材料のある場所に案内します、とついて行ったら気づいたらココだった!

 これって非公式な王様との面会では!?

 どうしていいかわからなくて、ナイフとフォーク手にショボンとしてると。王様が話しかけてきた!

「タナカ殿!タナカ殿の才能とスキルは素晴らしい!」

 何やら王様が大袈裟にわたしを褒めてくれている。
 そして、身振り手振り付きのお芝居みたいな話し方で何か話していた。

 わたしは目の前の料理が気になって、話どころじゃない!どうぞ、と勧められたので遠慮なくパクついた!

 もぐもぐ。ぱくぱく。美味しい!

「ーという訳で!どうだろうかタナカ殿!」
「へ?何がですか?」

 しまった!料理が美味し過ぎて聞いて無かった!

 ゴホン、とわたしをこの食堂に連れて来たオジサンが、簡単に説明してくれた。

 簡単に言うと、この国用にペガサスとユニコーンをもう一体ずつ召喚して欲しい、という事だった。

「うーん。でもアレは勇者と聖女でイメージ固定しちゃったので、それ以外には多分無理です」
「では、他にも聖獣は出せませんか?」
「うーん」

 一旦フォークとナイフを置いて、ガサゴソとノートを取り出す。確か他の聖獣は…。

「こんなのとかですか?」

 見せたイラストに、周りの人達がおぉー!と歓声を上げた。いつの間にこんなに人が!

「これは強そうですな!」
「我が国の守神にしてはどうか!」

 周囲の人達が盛り上がって。

「ワシにも見せい!」

 遠くの王様が拗ねた!

 護衛を珍しく後ろに引き連れて(いつもは護衛の後ろに隠れてるよ!)王様がわたしの近くまで来た。

「おお!本当じゃ、これなんか素晴らしい!」

 王様が指差したのは…。

「これカッコいいですけど、扱いが難しいと思いますよ」
「大丈夫じゃ!我が国の召喚士は皆優秀じゃ!きっとすぐ契約できるのじゃ!」

 これって誰でも契約出来るのかなぁ?
 何か気難しくて、気高くて、扱い難いイメージなんだけど。
 
「そこまで仰るなら、わかりました。やってみます」
「よし。では召喚士よ準備せい」
「ハイ!」

 何と!わたしの周りにいたほとんどが召喚士だったらしく、一斉に杖を取り出して構えている。

 ひどい!
 あのオジサン最初からわたしをココに連れて来るつもりだったんだ!

 でも今さら嫌だと言えずに、渋々尋ねる。

「えと、どこで呼び出すんですか?」
「無論ココじゃ」
「ココですか!?」

 この食堂で?

「大丈夫ですか?わたしの中ではスゴク大きいですけど…」
「お任せください!あのペガサスやユニコーンとやらクラスでもココなら大丈夫です!」

 確かに広い食堂だけれども。
 まぁ本人達がいいって言ってるし、いいか!

「じゃあいきますよ」

 わたしなりにイメージを固める。
 
「おいで!」
 
 瞬間。

 キエエエーー!

 大きな鳴き声と共に。

 大食堂の壁と屋根が崩壊した!
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