【完結】オタク女子はクラス転移で愛を知り哀を察る(しる)

秋空花林

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26話

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「あかりちゃん!」

 部屋に転がり込んで来たわたしを見て、菜穂ちゃんが叫んだ。

「菜穂ちゃん!中庭に…!」
「敵が現れたんでしょ?大丈夫だよ!この部屋は敵の攻撃にも備えられる様に対策してるから!」
「…どうして…わかったの?」
「わかるよ!さっき鈴木くんが戦闘組に向けた合図出したでしょ!?」

 その言葉で気づいた。

 忍くんは、初めからわたしをココへ逃す為に、みんなに知らせてって言ったんだって。

 普通に逃げてって言ったら、わたしが気にするからー。

「そういえば…鈴木は?」

 クラスの男子がわたしの後ろを見る。続いて誰かが入ってくる気配は無いー。

「忍くん…わたしに、クラスのみんなに知らせてって言って…それで…1人で2体の魔物を…」

 わたしの言葉にクラスメイト達が一斉に息を飲んだ。

 忍くんは最強アイテムもバンバン作れちゃうスゴイ人だ。でも…非戦闘組だから、攻撃力なんか全然無い。防御力だって、きっと高く無い。

「きっと…わたしを逃がす為に…どうしよう…忍くん…」

 堪えてた涙がボロボロと溢れた。

「鈴木を助けに行こうぜ!」
「何か使える道具は無いか!?」

 クラスメイト達が忍くんを助ける為に動き出す。わたしも…何かできる事を…。

「あ、おい!あれ大河達だ!」

 窓の向こう。遥か遠くからすごい勢いで飛んでくるペガサスが見えた。大河の後ろには剣士の戸田くんが乗ってる。

「ん?何だあの砂煙」
「城に近づいてるな…」

 城の城壁の向こう。凄い勢いで砂煙が近づいてくる。それが不気味で、クラスメイトがざわつき出した。

 ちょうど大河達が城に降り立つ頃。

 砂煙がまさに城壁に当たる!という近距離で、ソレの正体が城壁を飛び越えて来た!

「うそ!江川さんと山田さん!?」

 城壁を飛び越えて来たのは、ユニコーンに乗った聖女の江川さんと、召喚士の山田さんだった。美人2人組の荒々しい登場に、一瞬みんなが呆気に取られる。

「はっ!ビックリした!とりあえず、主力メンバーが駆けつけてくれたんだ。きっと鈴木も助かる筈だぞ!」
「そうだな!」

 いてもたってもいられなくて。
 外に飛び出そうとしたわたしを、菜穂ちゃんが止めた。

「あかりちゃんはココにいた方がいい」
「でも忍くんが!」
「ふえーん。私達ゴブリンでも敵わないのに、行ったら足手まといです」
「そうだよ!鈴木くんは、あかりちゃんを安全なとこに逃がしたくて無理したんだよ?ならその想いを無駄にしないで!」
「わかった…」

 2人の言う事もすごくもっともで。
 わたしはシュンと項垂れながらも頷いた。

 その間にも、建物の外でドカーン!とか、ドン!とか凄い音が響いてくる。

 時折、ゲハハハ!と不気味な魔物の声に、大河や戸田くんの叫び声が混じった。

 鈴木くんの声は…聞こえない。

 暫くして音が止んだ。

 そして静寂の中。

 キエエエーー!

 あの鳥の鳴き声が聞こえたー。
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