42 / 45
38話
しおりを挟む
空いた時間に描いたクラスメイト達と若ちん。
私の求めに応じて、そっくりなクラスメイト達と若ちんが現れた。そこに、黒い靄が吸い込まれていくー。
わたしが得意な事で大好きなクラスメイトや幼馴染、そして、彼氏を守れるなんて幸せだ。
忍くんが、驚愕した表情でわたしを見て、何かを叫んでいる。
たぶん、何で?って言ってると思う。
そう。わたしは、わたしを描いていない。
だからー。
黒い靄は、そのままわたしに入りんだ。
せめて最期に伝えたいな。
「だい…す…き…」
◇◇◇
いきなり、超巨大ロボットが姿を消した。
それまでロボットに乗っていたメンバーが宙に体を投げ出される。
慌てて召喚士達が召喚獣をだして、一頭に数名を乗せて回収し出した。
何が起きたのか、みんなよくわからなかった。いきなり自分達に瓜二つな分身が現れたと思ったら、魔物が放った黒い靄がそれに入り込んだのだ。そしてそのまま、靄も分身もスッと姿を消してしまった。
気づいたらロボットもいなくなり、宙に放り出されていたのだ。
「あかりちゃん!どうして!」
悲痛な叫び声が空に響き渡る。
田中あかりを抱きしめながら、共に宙に投げ出された鈴木忍だった。
「あかり!」
「田中!」
同じく宙に投げ出されている伊藤大河と担任の若宮が近寄ろうとするが宙を落下してる為、思う様に動けない。
「暴れないで!」
クラスでも随一の召喚士である山田が、一気に複数の召喚獣を呼び出して、伊藤、若宮、鈴木、そして目を閉じたままの田中を回収した。
全員が無事に大地に降り立つと、城壁の向こうにいた他のクラスメイト達が駆け寄ってきた。
それまで城門を塞いでいた超巨大ロボットが消えたので、みんな担任と仲間の元へ駆けつけて来たのだ。
「若ち~ん!何があったんだよ!」
「急に俺達にそっくりなのが現れてさ!すぐ消えたんだよ!」
「みんな、どうしたの…!?」
魔王に勝利したのに項垂れて涙している主力メンバーに、合流したクラスメイト達が呆然とする。
その中心には、横たわる田中がいた。
必死に聖女の江川や回復系のクラスメイトが田中に何か魔法を施している。
田中と仲の良い佐藤菜穂と高橋くるみが田中に駆け寄った。
「うそ!あかりちゃん!?」
「ふえーん、嘘です!そんな!」
田中が1人横たわり、その周囲を主力メンバーが囲んで泣いている。彼女が犠牲になったのは明らかだった。
「魔王を倒した後…別の魔物が…異世界人を即死させる呪いを発した…」
ポツリ、ポツリ若ちんが話しだした。
「それを田中が…描いてたみんなの絵を召喚して身代わりにした」
「じゃあさっきの…」
何の事かはみんな覚えがあった。いきなり、自分のそっくりさんが現れて、黒い靄が入り込んで消えたのだ。きっとあれがー。
「あかりちゃんは…」
「田中は自分を描いてなかった。だからそのまま即死の呪いを受けた…」
だから田中の召喚したロボットもペガサスも、ユニコーンも、デコトラも消えた。
「鈴木くんを助けたあの鳥は?」
「何度も召喚しようとしたわ!でも…無理なの!」
山田が泣きながら、辛そうに叫んだ。
そう。あの蘇生させる召喚獣も彼女がこの世界に呼んだ存在だからー。
「あかりちゃん…何で?一緒に帰ろうって…」
「ふえーん。あかりちゃん、あかりちゃん」
みんなが涙して項垂れるなか、田中の側で泣いていた伊藤が、ハッと顔を上げた。
恋人の手を握って泣いている鈴木に、おい、と声をかける。
「鈴木、お前あの石、あかりにやったか?」
「何を…。っ、あげた!」
鈴木も何かを思いついた様に、ハッと顔を上げた。
「佐藤さん、高橋さん。あかりちゃんがネックレスしてないか見て欲しい!」
「ネックレス?わかった!」
「ふえ、ちょっと待ってください」
泣いていた佐藤と高橋が、田中の首元を確認する。そこには、美しい細工の銀のロザリオがあった。虹色に輝く美しい石が嵌められていた。
「つけてる!」
鈴木が喜びの声をあげた。
ーーー
次回、最終話です。
エピローグ、最後の登場人物一覧まで一気に3話アップして完結です。
私の求めに応じて、そっくりなクラスメイト達と若ちんが現れた。そこに、黒い靄が吸い込まれていくー。
わたしが得意な事で大好きなクラスメイトや幼馴染、そして、彼氏を守れるなんて幸せだ。
忍くんが、驚愕した表情でわたしを見て、何かを叫んでいる。
たぶん、何で?って言ってると思う。
そう。わたしは、わたしを描いていない。
だからー。
黒い靄は、そのままわたしに入りんだ。
せめて最期に伝えたいな。
「だい…す…き…」
◇◇◇
いきなり、超巨大ロボットが姿を消した。
それまでロボットに乗っていたメンバーが宙に体を投げ出される。
慌てて召喚士達が召喚獣をだして、一頭に数名を乗せて回収し出した。
何が起きたのか、みんなよくわからなかった。いきなり自分達に瓜二つな分身が現れたと思ったら、魔物が放った黒い靄がそれに入り込んだのだ。そしてそのまま、靄も分身もスッと姿を消してしまった。
気づいたらロボットもいなくなり、宙に放り出されていたのだ。
「あかりちゃん!どうして!」
悲痛な叫び声が空に響き渡る。
田中あかりを抱きしめながら、共に宙に投げ出された鈴木忍だった。
「あかり!」
「田中!」
同じく宙に投げ出されている伊藤大河と担任の若宮が近寄ろうとするが宙を落下してる為、思う様に動けない。
「暴れないで!」
クラスでも随一の召喚士である山田が、一気に複数の召喚獣を呼び出して、伊藤、若宮、鈴木、そして目を閉じたままの田中を回収した。
全員が無事に大地に降り立つと、城壁の向こうにいた他のクラスメイト達が駆け寄ってきた。
それまで城門を塞いでいた超巨大ロボットが消えたので、みんな担任と仲間の元へ駆けつけて来たのだ。
「若ち~ん!何があったんだよ!」
「急に俺達にそっくりなのが現れてさ!すぐ消えたんだよ!」
「みんな、どうしたの…!?」
魔王に勝利したのに項垂れて涙している主力メンバーに、合流したクラスメイト達が呆然とする。
その中心には、横たわる田中がいた。
必死に聖女の江川や回復系のクラスメイトが田中に何か魔法を施している。
田中と仲の良い佐藤菜穂と高橋くるみが田中に駆け寄った。
「うそ!あかりちゃん!?」
「ふえーん、嘘です!そんな!」
田中が1人横たわり、その周囲を主力メンバーが囲んで泣いている。彼女が犠牲になったのは明らかだった。
「魔王を倒した後…別の魔物が…異世界人を即死させる呪いを発した…」
ポツリ、ポツリ若ちんが話しだした。
「それを田中が…描いてたみんなの絵を召喚して身代わりにした」
「じゃあさっきの…」
何の事かはみんな覚えがあった。いきなり、自分のそっくりさんが現れて、黒い靄が入り込んで消えたのだ。きっとあれがー。
「あかりちゃんは…」
「田中は自分を描いてなかった。だからそのまま即死の呪いを受けた…」
だから田中の召喚したロボットもペガサスも、ユニコーンも、デコトラも消えた。
「鈴木くんを助けたあの鳥は?」
「何度も召喚しようとしたわ!でも…無理なの!」
山田が泣きながら、辛そうに叫んだ。
そう。あの蘇生させる召喚獣も彼女がこの世界に呼んだ存在だからー。
「あかりちゃん…何で?一緒に帰ろうって…」
「ふえーん。あかりちゃん、あかりちゃん」
みんなが涙して項垂れるなか、田中の側で泣いていた伊藤が、ハッと顔を上げた。
恋人の手を握って泣いている鈴木に、おい、と声をかける。
「鈴木、お前あの石、あかりにやったか?」
「何を…。っ、あげた!」
鈴木も何かを思いついた様に、ハッと顔を上げた。
「佐藤さん、高橋さん。あかりちゃんがネックレスしてないか見て欲しい!」
「ネックレス?わかった!」
「ふえ、ちょっと待ってください」
泣いていた佐藤と高橋が、田中の首元を確認する。そこには、美しい細工の銀のロザリオがあった。虹色に輝く美しい石が嵌められていた。
「つけてる!」
鈴木が喜びの声をあげた。
ーーー
次回、最終話です。
エピローグ、最後の登場人物一覧まで一気に3話アップして完結です。
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる