【完結】オタク女子はクラス転移で愛を知り哀を察る(しる)

秋空花林

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38話

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 空いた時間に描いたクラスメイト達と若ちん。

 私の求めに応じて、そっくりなクラスメイト達と若ちんが現れた。そこに、黒い靄が吸い込まれていくー。

 わたしが得意な事で大好きなクラスメイトや幼馴染、そして、彼氏を守れるなんて幸せだ。

 忍くんが、驚愕した表情でわたしを見て、何かを叫んでいる。

 たぶん、何で?って言ってると思う。

 そう。わたしは、わたしを描いていない。

 だからー。

 黒い靄は、そのままわたしに入りんだ。

 せめて最期に伝えたいな。

「だい…す…き…」



◇◇◇



 いきなり、超巨大ロボットが姿を消した。

 それまでロボットに乗っていたメンバーが宙に体を投げ出される。

 慌てて召喚士達が召喚獣をだして、一頭に数名を乗せて回収し出した。

 何が起きたのか、みんなよくわからなかった。いきなり自分達に瓜二つな分身が現れたと思ったら、魔物が放った黒い靄がそれに入り込んだのだ。そしてそのまま、靄も分身もスッと姿を消してしまった。

 気づいたらロボットもいなくなり、宙に放り出されていたのだ。

「あかりちゃん!どうして!」

 悲痛な叫び声が空に響き渡る。

 田中あかりを抱きしめながら、共に宙に投げ出された鈴木忍だった。

「あかり!」
「田中!」

 同じく宙に投げ出されている伊藤大河と担任の若宮が近寄ろうとするが宙を落下してる為、思う様に動けない。

「暴れないで!」

 クラスでも随一の召喚士である山田が、一気に複数の召喚獣を呼び出して、伊藤、若宮、鈴木、そして目を閉じたままの田中を回収した。



 全員が無事に大地に降り立つと、城壁の向こうにいた他のクラスメイト達が駆け寄ってきた。

 それまで城門を塞いでいた超巨大ロボットが消えたので、みんな担任と仲間の元へ駆けつけて来たのだ。

「若ち~ん!何があったんだよ!」
「急に俺達にそっくりなのが現れてさ!すぐ消えたんだよ!」
「みんな、どうしたの…!?」

 魔王に勝利したのに項垂れて涙している主力メンバーに、合流したクラスメイト達が呆然とする。

 その中心には、横たわる田中がいた。
 必死に聖女の江川や回復系のクラスメイトが田中に何か魔法を施している。

 田中と仲の良い佐藤菜穂と高橋くるみが田中に駆け寄った。

「うそ!あかりちゃん!?」
「ふえーん、嘘です!そんな!」

 田中が1人横たわり、その周囲を主力メンバーが囲んで泣いている。彼女が犠牲になったのは明らかだった。

「魔王を倒した後…別の魔物が…異世界人を即死させる呪いを発した…」

 ポツリ、ポツリ若ちんが話しだした。

「それを田中が…描いてたみんなの絵を召喚して身代わりにした」
「じゃあさっきの…」

 何の事かはみんな覚えがあった。いきなり、自分のそっくりさんが現れて、黒い靄が入り込んで消えたのだ。きっとあれがー。

「あかりちゃんは…」
「田中は自分を描いてなかった。だからそのまま即死の呪いを受けた…」

 だから田中の召喚したロボットもペガサスも、ユニコーンも、デコトラも消えた。

「鈴木くんを助けたあの鳥は?」
「何度も召喚しようとしたわ!でも…無理なの!」

 山田が泣きながら、辛そうに叫んだ。

 そう。あの蘇生させる召喚獣も彼女がこの世界に呼んだ存在だからー。

「あかりちゃん…何で?一緒に帰ろうって…」
「ふえーん。あかりちゃん、あかりちゃん」

 みんなが涙して項垂れるなか、田中の側で泣いていた伊藤が、ハッと顔を上げた。

 恋人の手を握って泣いている鈴木に、おい、と声をかける。

「鈴木、お前あの石、あかりにやったか?」
「何を…。っ、あげた!」

 鈴木も何かを思いついた様に、ハッと顔を上げた。

「佐藤さん、高橋さん。あかりちゃんがネックレスしてないか見て欲しい!」
「ネックレス?わかった!」
「ふえ、ちょっと待ってください」

 泣いていた佐藤と高橋が、田中の首元を確認する。そこには、美しい細工の銀のロザリオがあった。虹色に輝く美しい石が嵌められていた。

「つけてる!」

 鈴木が喜びの声をあげた。



ーーー



 次回、最終話です。
 エピローグ、最後の登場人物一覧まで一気に3話アップして完結です。
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