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最終章 いつの間かBLの世界だってさ
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あけましておめでとうございます。
ーーー
◆◆◆
「森の奥に悪しきエネルギーが溜まってます。しかも、これまでとは比べ物にならない強さです」
調査団のもたらした内容は最悪の報告だった。
城内の会議室では、貴族学校の敷地内で突如発生した異常事態への対策が話し合われていた。
貴族学校から戻ったネフリティスとジェードも加わり、既に例の氷の塊は他国から襲撃を受けた可能性が高い事。そして周辺国が痺れを切らして、本格的な探りを入れて来ている事も既に話している。
「もしや、悪しきエネルギーの塊が?」
「ほぼ確実かと。しかも類をみない大きさです」
「…むむ」
貴族学校は王都の端だが、比較的城からも近く、貴族街にも近い。そして、城や貴族街を挟んだ反対側の端には平民街や貧民街もある。彼らはほぼ戦う術を持たない。
すなわち、貴族学校内で全てを終わらせなければ、被害は甚大に上るのは確実だった。
「やむおえん、聖なる乙女の派遣を許可しよう」
「陛下!危険です!彼女はまだ…」
「黙れ!そちら教会側の報告を間に受け、様子を見ている間に他国からの信用が地に落ちたでは無いか!」
この国の王は、怒りにテーブルを叩いた。普段温厚として知られる彼にしては珍しい態度だった。
それほどに、彼は怒っていた。
元々、国王は騎士や魔術士に乙女を守らせながら実践で経験を積ませる方針だった。
それを教会側が乙女は祈りで育成するべきだと猛抗議し、王族と関係が悪化していた大貴族のトルマリン家を取り込んだのだ。
そして、乙女の育成は教会側に委ねられた。その結果が、現在の中途半端な状況を生み出している。
教会側についていたトルマリン家はどう出る?
会議の参加者は、財務大臣の様子を固唾を飲んで見守る。彼の補佐が、何か用紙を手渡して囁いた。
それに頷くと、財務大臣は一つ咳払いをして口を開いた。
「私は財務大臣としても、トルマリン家としても国王を支持しましょう」
「なんですと!?」
裏切りられた形となった教会代表が、何故急に!?とくってかかる。教会側の最大の支持者を失う訳にはいかないから必死だ。
「うーん。どうやら、私の知らない所で、息子同士で勝手に取決めてしまったようです。ね? ジェード様?」
財務大臣がチラリと、国王側に座る少年に目を向けた。
「アレは妹の事になると、全く親の言う事を聞かなかったのに。どうやって説得したのですか?」
補佐から手渡された紙をヒラヒラとして見せた。
「ヴィラトリア嬢を見つけたと伝えました」
「ほう?3年かかって見つからなかった我が娘をジェード様が見つけたと。それで、その上で3年前の約束の反故を、我が家にどう補填すると?」
「それに関しては、内々でお伝えします」
その後、国王、王妃、ネフリティス、ジェード、そして財務大臣は別室に移りー。
戻って来た時には、トルマリン家は完全に王族派に与していた。
「トルマリン様?何故ですか?約束を反故にした王族側に、あんなに怒っていらっしゃったのに!」
「……黙りなさいな。教会への支援を全て打ち切られたいですか?」
「う、申し訳ありません」
「それが嫌なら、今すぐ!乙女を貴族学校へ派遣しなさい!」
「は、はい~」
密室で行われた打ち合わせがどんな物だったかは、分からない。だが、その会議のあと、財務大臣は一切王家に頭が上がらなくなったという。
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◆◆◆
「森の奥に悪しきエネルギーが溜まってます。しかも、これまでとは比べ物にならない強さです」
調査団のもたらした内容は最悪の報告だった。
城内の会議室では、貴族学校の敷地内で突如発生した異常事態への対策が話し合われていた。
貴族学校から戻ったネフリティスとジェードも加わり、既に例の氷の塊は他国から襲撃を受けた可能性が高い事。そして周辺国が痺れを切らして、本格的な探りを入れて来ている事も既に話している。
「もしや、悪しきエネルギーの塊が?」
「ほぼ確実かと。しかも類をみない大きさです」
「…むむ」
貴族学校は王都の端だが、比較的城からも近く、貴族街にも近い。そして、城や貴族街を挟んだ反対側の端には平民街や貧民街もある。彼らはほぼ戦う術を持たない。
すなわち、貴族学校内で全てを終わらせなければ、被害は甚大に上るのは確実だった。
「やむおえん、聖なる乙女の派遣を許可しよう」
「陛下!危険です!彼女はまだ…」
「黙れ!そちら教会側の報告を間に受け、様子を見ている間に他国からの信用が地に落ちたでは無いか!」
この国の王は、怒りにテーブルを叩いた。普段温厚として知られる彼にしては珍しい態度だった。
それほどに、彼は怒っていた。
元々、国王は騎士や魔術士に乙女を守らせながら実践で経験を積ませる方針だった。
それを教会側が乙女は祈りで育成するべきだと猛抗議し、王族と関係が悪化していた大貴族のトルマリン家を取り込んだのだ。
そして、乙女の育成は教会側に委ねられた。その結果が、現在の中途半端な状況を生み出している。
教会側についていたトルマリン家はどう出る?
会議の参加者は、財務大臣の様子を固唾を飲んで見守る。彼の補佐が、何か用紙を手渡して囁いた。
それに頷くと、財務大臣は一つ咳払いをして口を開いた。
「私は財務大臣としても、トルマリン家としても国王を支持しましょう」
「なんですと!?」
裏切りられた形となった教会代表が、何故急に!?とくってかかる。教会側の最大の支持者を失う訳にはいかないから必死だ。
「うーん。どうやら、私の知らない所で、息子同士で勝手に取決めてしまったようです。ね? ジェード様?」
財務大臣がチラリと、国王側に座る少年に目を向けた。
「アレは妹の事になると、全く親の言う事を聞かなかったのに。どうやって説得したのですか?」
補佐から手渡された紙をヒラヒラとして見せた。
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「ほう?3年かかって見つからなかった我が娘をジェード様が見つけたと。それで、その上で3年前の約束の反故を、我が家にどう補填すると?」
「それに関しては、内々でお伝えします」
その後、国王、王妃、ネフリティス、ジェード、そして財務大臣は別室に移りー。
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