拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
423 / 641
連載

485 獣人国における幻獣(フェンリル)伝説

「この獣人国の建国前にまで時は遡りますが・・・・・・」

そう言って静かに話し出したオウランによると───。

獣人国が建国される前、この大陸には頂点を極める竜王国の他には魔人国があるくらいで、あとは様々な種族が少数部族として小さな村を作っているくらいのものだった。

その中でも人族は力も弱く寿命も他種族に比べると遥かに短く、長くても八〇年ほど。
だが繁殖力は驚くほど強く、発情期という期間がなく、何時でも子供を孕みやすかった。そのため人口は爆発的に増えていき、やがて村は街へ、街は国へと規模を広げていった。

その上、手先が器用だった。力の弱い自分達が生き残るために特化していったのだろう頭の良さで様々な魔導具を作り、やがて魔物を倒すための魔導具を他種族を排除するものに進化させ、人族の住処を広げようとし始めた。

細々と自分達のコミュニティの中で自然と共に暮らしていた獣人族はその魔導具で襲われ、人数的にも不利なために逃げるしかなかった。

人族にとっては獣性を持つ獣人は彼等と同等の存在ではなく、その辺の無害な獣や魔物と変わらなかったのだろう。

だから住処を奪っても罪悪感などなかったに違いない。

そうして追いやられた獣人達は、途方に暮れながらも人族の国から離れるように移動した。

そんな獣人達がある森に集まりだす。

───現在の獣人国の側にある古の森。
そこに自然と辿り着いた獣人達は小さいながらも村を作り、森の浅いところで魔物を狩り、薬草を採って薬を作り生活をしていた。

そのうち噂を聞いたらしい獣人達があちらこちらからやって来るようになった。
しかし獣人が増えれば当然住む場所も狭くなるし獣人同士のトラブルも起きる。

ちょうどこの頃、村のリーダー的存在だった金獅子の青年が古の森の浅い場所で氷の幻獣フェンリルを見かけ、偶然にも意気投合して友誼を結んでいた。

金獅子の青年はフェンリルに言った。

『今の住処では狭すぎる。古の森には手をつけないから、こちらの森を開拓するのを手伝ってくれまいか』

フェンリルは面白そうだと笑い、青年の望む森の開拓を己が魔法で手伝ってやった。

氷の魔法で森に巣喰う数多の魔物を凍らせて絶命させたあと、風魔法で生い茂る木々を薙ぎ払った。

一度で五〇〇平方メートル近くが更地になった。それを何度行ったのか・・・・・・一日もかからずに森は切り拓かれ、現在の獣人国の下地が出来たのだった。

そこに新たな家を建て、畑を作り、獣人は増え続けてすでに国といっていい規模になっていた。
そして皆の推薦で金獅子の青年はやがて獣人国を名乗り初代国王になった。
その傍らには気紛れに幻獣フェンリルが寄り添う姿が見られたという。

「───ということで建国に一役買っているのがフェンリル様だったという訳なのです」
「代々金獅子が王になっているのはそう言う理由なのです。初代様のお口添えがなければ国など早々に作れませんもの!」
「獣人国はフェンリル様が作ったと言っても過言ではないでしょう。おかげで私達は今、平和に暮らせているのですから」

オウラン達が口々に陶酔したように話しているが、当の本人? 本狼? はどう思っているのか。

「・・・・・・ヴァン」
『・・・・・・うむ。まあ、結果だけを見ればな? 間違ってはいないな』

若干ジト目で見つめてやれば目を泳がせるヴァン。これ絶対、面白そうだってだけで考えなしに切り拓いたなと察した俺とアーク。

「初代国王と本当に友人だったの?」
『それは間違いない。彼奴はいいヤツだった。死に際にこっそり会いに行って、枕元でくだらないことを死ぬまで話して聞かせてやったら、微笑んで逝ったよ』

静かにそう話すヴァンに、俺達はかける言葉がなかった。

本当に、大切な思い出を話すような声だったから。














感想 1,589

あなたにおすすめの小説

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい

八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。 ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。 これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。