主にショートのいろんな小話集【R18版】

エウラ

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5ー1【引きこもりな僕と竜の番い】ハイスペ竜人攻め×病弱引きこもり転移(転生)者受け

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【異世界。同性婚・異種族婚可、男性妊娠可(出産等の描写なし)。前世(前の世界)で忌み嫌われて成人前に孤独に息を引き取った少年が、気が付けば見知らぬ異世界にいて…。少年を番いと言って構い倒す竜人と引きこもり少年(のちに青年)の話】
※病気等はふわっと。フィクションですので。
※順不同で、4とは違う話を新たに投稿してます。ご注意ください。




あの日、僕は確かに息を引き取ったはずだった。



お医者さん以外は誰もいない、静かで冷たい病室。骨と皮だけのような細く青白い腕に繋がる無数のチューブ、口には酸素吸入器。

その全てが、僕を死ぬまで縛り付ける鎖のようだった。



僕は母親の命と引き換えに生まれたそうだ。
どうやら資産家の家の次男らしいけど、そうして生まれたくせに、病弱で、さらに心臓が悪かった。

だから父親は、僕を病院に入院させたまま、一度も会いに来ることはなかった。もしかしたら意識のないときに来たのかもしれないけど、少なくとも記憶にはない。
僕には二つ上の兄がいるらしいけど、彼にも会ったことはない。
病室に置いてあるタブレットで検索すればすぐに出てくるほど有名企業の社長とその息子。

……僕は名前も顔も出てこない。彼らにとってはいない存在。

放置はされたけど、体裁のためか、学校に通えない代わりに家庭教師をつけてくれたのは助かった。体調のいいときしか勉強できなかったけど、タブレットでのオンライン授業で少しずつ学んだ。

あとは、仲のいい看護師さんやお医者さんから聞いたネット小説とか漫画とかを読んだ。
そういうので、暇な時間を潰した。

その中によくある異世界転生や転移の物語が好きだった。

……もし、そういう世界に行けたら、僕も丈夫な身体になって冒険してみたい。
そこに、恋物語のように、僕だけ好きになってくれるような人がいたらいいなあ。

そんな夢を見ながら過ごしてきた、一四歳の誕生日。

いよいよガタがきた僕の心臓は、ゆっくりと動きを止める。
家族の誰も看取ってくれない。

ああ、いや、最初から家族なんていなかった。

僕は一粒、ポロリと涙を溢して、真っ白な世界に沈んでいった。



───そのはず、なんだけど。

「……天国? いや、僕は地獄行きだよね。なんてったって、母親の命を奪ったんだから」

でも、じゃあ、ここはどこ? どうみても、地獄という感じじゃない。
今、自分がいるところは芝生みたいな広場で、僕は寝転がった状態で、少し先に小さな二階建ての家が見える。
屋根は濃い緑色で、茶色いレンガ造りの、おとぎ話に出てくるような深い森の中の一軒家。

うん、周りは確かに深い森に見える。だって、ちょっと先は薄暗くてよく見えないんだもの。もっとも、外に出たことがない僕には、その森や家が、僕の知っているものと同じかどうかも分からないけど。

でも、柔らかくてちょっとチクチクする、青臭い匂い。

「これは……本物? 僕、今、本当に外にいる?」

もしかしたら、これって異世界転生? でも、このガリガリの手は、死ぬ前の僕の手だ。じゃあ、転移系?

「でも、それじゃあ、僕はきっとすぐに死んじゃう」
『大丈夫だよ。この敷地内なら、死なない』
「えっ? 誰!?」

気配なんてなかったのに、急に誰かの声が聞こえてビックリした。止めてよ、心臓悪いのに、驚いて止まっちゃう。

ビクビクしながら何とか声のした方を見ると、もの凄い美人のお兄さん? が目の前にいた。
森の若葉のような色の髪が腰辺りまである。優しげに僕を見つめる瞳は蜂蜜色。背は一八〇センチくらいありそうなキレイな人だ。

『ああ、ごめんね、驚かせたね。この世界の神様から神託を受けてね、君を待っていたんだ。異界の子。私達の世界エスピオへようこそ。私はこの家を護っている家護いえもりという精霊で、名前はないんだ』
「……エスピオの神様? 神託って、それじゃあ本当に異世界転移なの? あの、じゃあ、あなたをどう呼べば……」

名前がないなんて……。いない者だった僕にさえ、一応、名前があるのに。
そう思っていると、美人さんはニッコリ笑った。

『不便はないからね。それに普通は人前に現れないし。でも君は特別。これからはずっと一緒にいるし、好きに呼んでくれていいよ。私はこれからこの家と君を護るから、よろしくね』
「え、そうなんですか? よろしくお願いします? 僕は柊羽しゅうって言います。ええと、じゃあ、あなたのことは『ヴェルデ』と呼びますね」

確か外国語で緑って意味だったはず。キレイな緑の髪だから。安直かもだけど。

『ヴェルデ──いいね、それ。じゃあそれで。あと、私に敬語は要らない。ここでは私をお兄さんだと思ってくれればいいよ』
「お兄さん……」

いいの? こんな美人で優しそうな人がお兄さんなんて。

「嬉しい……僕だけの、お兄さん」

血の繋がった人達は、全然、家族じゃなかったのに。

全くの見ず知らずの、初対面のキレイなヴェルデが、この世界でたった一人の、僕の家族。なんて素敵なんだろう。

『さあ、ここにいたら身体に障る。家の中に移動しよう』
「わわっ」

そう言ってふわりと横抱きしたヴェルデに驚いて、しがみ付く。実際にはそんな力もなくて、気持ちだけだったけど。

『……うん、軽すぎる。これからは少しずつ、いろんなものを食べて体重を増やそうね、シュウ』
「え、いろんなもの? 食べていいの?」

入院中は体調管理のために病院食か流動食だけだった。それすらも食べられないときもあって、普通の食事なんて摂ったことない。

『うん。ここはね、特別な場所なんだよ。ほら、そんなに息苦しくないだろう? ここで生活していれば、君の心臓もよくなっていくよ。でも急には無理だから、少しずつ慣らしていこう』

歩きながらそう教えてくれるヴェルデに、ハッとした。

「そういえば、確かに息がしやすい。酸素吸入器もないのに。まさか、この心臓、直るの? 頑張れば、自分の足で歩ける?」
『うん。歩けるし、走ることもできる。まあ、ちょっと身体は弱いままだけど、寝たきりにはならないから。無理せずに頑張ろうね』
「──うん、うん」

地獄だと思ってたら、まさかの異世界転移?
それに家族ができて、心臓もよくなるんだって。

何これ。どうしてこうなったのか全然分からないけど、僕は、生きていいらしい。
こうしてエスピオというこの世界で、僕は病気療養をしながら、生まれて初めて幸せを感じるのだった。



ガリガリの骸骨のようだった僕は、最初の一ヶ月ほどはほぼ寝たきり。
自力で身体を起こせなかった。
そりゃあそうだよね。死に際のときは点滴で栄養を身体に入れてたくらい、何もできない状態だったもの。
当然、筋肉なんてない。

ご飯を食べるにも、スプーンを持つこともできないくらいで、ヴェルデがつきっきりで食べさせてくれたりとお世話をしてくれて、何とかベッドで上半身を起こせるくらいになった。

ひとつ助かったのは、この世界には小説のように身体をキレイな状態にしたり、排泄も消し去ってくれる魔法があったこと。

いくら入院生活で身の回りの世話をされることに慣れているとはいえ、美人なヴェルデに下の世話までして貰うのはもの凄く恥ずかしくて。
だから、恥を忍んでヴェルデにそう言ったら、『人はそういうの気にするよね。大丈夫、浄化魔法というのがあって、それでお腹の中もキレイになるから心配しないで』と言われて、ホッとした。

肉付きがよくなってきたから、少しずつ歩行訓練。最初はベッドから下りるだけで力尽き、情けなくて泣いた。
そんな僕をヴェルデはニコニコして。

『下りることができて凄い! えらい!』

そう言って大袈裟なくらい褒めてくれて。だからこれって凄いんだ、僕もできるじゃんって、妙な自信がついて。
おかげで、毎日ちょっとだけど、頑張れた。ほんの些細な進捗を手放しで褒めてくれるヴェルデに、本当の兄のような気持ちを抱き始めて、この頃には『ヴェルデ兄さん』って呼んでたな。

そうして、着実に体力をつけていって、自分の足で玄関から庭に行けた日は、ヴェルデ兄さんに飛びついて嬉し泣きをした。
庭のテーブルで、初めてお茶を飲み、森を見ながらまったり。

「外の世界って、気持ちいいんだね」

最初に転移したときは、そんなことに気を遣う余裕なんてなかったから。体調も最悪だったし。

『うん。でもね、最初に言ったように、この家の周辺、半径一キロの結界の中でしか、今のシュウは生活できないから、出てはダメだよ。もっとも結界に阻まれて出られないだろうけど』
「うん、分かってる。魔物とか、濃い魔力とかが僕には危険なんでしょ? 一人で行きたいとも思わないし、そもそもそこまで行けないし」
『ごめんね』

申し訳なさそうに言うヴェルデに笑って首を横に振る。

魔物は僕には倒せないし、異世界人の僕には、濃い魔力は毒のように障りがあるんだって。だから、もっと元気になって体力がついて、もっと身体に魔力が馴染むまでは、この結界内で生活しないといけないそうだ。

その辺も、神様の神託で教えられたそう。
僕は、そういえば神様に会ってないと言ったら、ヴェルデ兄さんが、『シュウの魂は弱り切ってて、神様の神気にあてられたら消滅してしまうから会えなかったって言ってたよ』と教えてくれた。
神様って、僕のことを色々と考えてここに転移してくれたのかなと嬉しくなった。

もし会うことがあったら、お礼を言おう。

「全然。謝らないで、ヴェルデ兄さん。僕はこの家が、ヴェルデ兄さんが大好きだから、ずっと住めて幸せなんだよ」

この狭い箱庭が、今の僕の幸せ。

これからもずっと───。

そう思ってた。

六年後の、あの日までは───。

















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