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本編
23 幸せなお茶会とその裏で
せっせとクッキーを焼いて、お茶会用に取り分けた残りは使用人さん達で分けて食べてね、と言い置いて、再びの着替え。
お菓子の甘い香りが染みついた。
浄化でいいんじゃ?と思っていたら、華恋母様が。
「せっかく衣装をたくさん用意したのだから、着て見せて欲しいわ」
との鶴の一声です。
僕は正直、何を着ても頓着しないからスオウや各務に基本お任せ。
楽だし。元々服なんて選ぶほど持ってないしな!
なんて事を言って2人に選んで貰った。
藤色の着物を着て、髪も結い上げて藤の花の簪を挿して、いざお茶会へ。
・・・・・・ところで、コレって女性物の着物なんだけど。
いや、別にいいんだけどね?
帯が窮屈でお菓子が入らなそうってくらいで、問題はないよ?
自分で言うのも何だが、似合ってると思うし?
・・・・・・そういえばこの世界、男もいけるんだっけ。
あれ? そういう意味でのこの衣装?
僕は嫁の立ち位置って事かな?
なんてぐるぐる考えてて、スオウが『良い』って悶絶しているのに気付かなかった。
各務がスオウを呆れた目で見てたのも。
中庭の藤棚の下。
お茶会の準備は出来ていた。
初日に泣いてしまったので、気を使って違う場所にしようとしてくれたけど。
アレはたまたま花江と見た藤の花を思い出してしまったために無意識に泣いてしまっただけなので、全然イヤじゃない事を伝えてそのままにして貰った。
「お招き頂き、ありがとうございます」
「そんな堅苦しくしないで。もう家族でしょう? 気軽に母様と呼んで、敬語はなしよ、ね?」
そう言われたら否やはない。
「ありがとう、母様」
「僕もね、普通に話してね? 弟だからね!」
「ふふ、こんなに可愛い子が弟で嬉しいな」
「・・・ふわあ! サクヤ兄様、笑ってる!」
「え?」
僕、笑ってた?
いや、声は笑ってるけど、顔は自信ない。
「花が綻ぶって、こういう事を言うのね。柔らかい顔だわ。よかった。笑えるのね」
「・・・きっと皆のお陰だね。ありがとう」
そうか、笑えるのか。嬉しいと自然に顔が動くんだな。
「スオウもありがとう」
「どういたしまして」
スオウの満面の笑みに、僕もまた笑った顔をした、気がする。
その後は僕の焼いたクッキーを摘まみながら、母様が花江のエピソードを話したり、リオウ君の学園の話を聞いたりしてお開きになった。
その夜、例によってリオネルの執務室に集まったガオウとスオウ、各務をはじめとする影多数・・・ウン、数名じゃなく、多数である。
「・・・別にいいんだけどね? 皆、サクヤの役に立ちたいって気持ちは分かるよ! 分かるけどね!」
ガオウが呆れている。
リオネルは苦笑している。
多過ぎだろう。この場には出ないが、周辺は非常に密であろう事が分かる。
「まあ、有用な情報を得てきたのだろうからヨシとしようか」
そう言って、話を促す。
まずは俺から。
「皇の視察の方は、特に問題はなかったけど、サクヤの方は問題があり過ぎ。本人にもうちょっと詳しく確認を取るけど、外部に漏れると不味い案件ばかりで・・・」
はあ、と溜息を吐く。
各務が付け足す。
「まず地図ですが、上空から見たものをそのまま『転写』したと言ってましたが、現実の風景そのものでした。鳥が見ていたらこうだろうと思われるくらい、正確です。軍事等に使われたら、どこが弱点かなどすぐに分かります」
本人には全くその気はないだろうが、アレは不味い。とてつもなくヤバい。
「それと、転移もですがあの方は魔法は全て無詠唱との事です。魔力量も、本人曰くかなり多いので問題ないとのこと。実際、執務室から始まり、何カ所も苦もなく転移しております」
「他にも、探索とか魔力探知とかシャレになんねえ広範囲でガンガン使ってた。サクヤは比較対象がいなかったから、自分が異常って事を全く分かってない」
それを聞いた皆の顔は青ざめた。
帝国お抱えの魔導師でもそんなことは出来ないからだ。
一体どれ程の魔力量だろう。
「・・・とにかくスオウは、サクヤと魔法の知識の擦り合わせを。ガオウは学園の方はどうだった?」
すでに頭の痛い話だが、リオネルがひとまず先を促す。
それに渋い顔をしながらガオウが話し出した。
「真っ先に生徒会長に連絡を取ったら、案の定、ハルキが連休初日から生徒会のメンバーに突撃していたよ。事前に皆に、いかにアイツが愚かで害悪か話しておいたから総スカン食らってるって」
「それでも懲りずに色んな方に接触を試みていおります」
影の一人が追加してきた。
「・・・その、見張りの時に、あの者が気になる事を口走っていたのですが・・・」
ちょっと躊躇う素振りの影に続きを促せば。
「『何でアイツばっかり! 僕が主人公でしょ?! アイツは悪役令息なのに、何でスオウと仲良くなってんの! あそこは僕の場所なのに!』・・・と喚いておりました」
「・・・・・・どういう事だ? アイツも前世の記憶があるのか? いや、それにしたって、サクヤの記憶とは全く関係ないよな? ・・・主人公って、物語か何かか?」
「そうだとして、思い込みなのか前世の記憶なのか、はたまたただの狂人か。暫く様子見だね。お前達はそのままハルキを見張っててくれ」
「畏まりました」
「さて遅くなるから、この辺りで解散しよう。じゃあスオウ、頼んだよ? サクヤ本人は何が非常識か分かってないだろうから、上手く誘導して聞き出してね?」
「りょーかい」
ハルキの事は気になるが、今はサクヤの事だ。
さて、どうやって聞き出そうかな?
スオウの瞳は獰猛に光っていた。
『サクヤ様、逃げて!!』
各務、他の影が声にならない声で叫んでいたが、サクヤには届かない。
お菓子の甘い香りが染みついた。
浄化でいいんじゃ?と思っていたら、華恋母様が。
「せっかく衣装をたくさん用意したのだから、着て見せて欲しいわ」
との鶴の一声です。
僕は正直、何を着ても頓着しないからスオウや各務に基本お任せ。
楽だし。元々服なんて選ぶほど持ってないしな!
なんて事を言って2人に選んで貰った。
藤色の着物を着て、髪も結い上げて藤の花の簪を挿して、いざお茶会へ。
・・・・・・ところで、コレって女性物の着物なんだけど。
いや、別にいいんだけどね?
帯が窮屈でお菓子が入らなそうってくらいで、問題はないよ?
自分で言うのも何だが、似合ってると思うし?
・・・・・・そういえばこの世界、男もいけるんだっけ。
あれ? そういう意味でのこの衣装?
僕は嫁の立ち位置って事かな?
なんてぐるぐる考えてて、スオウが『良い』って悶絶しているのに気付かなかった。
各務がスオウを呆れた目で見てたのも。
中庭の藤棚の下。
お茶会の準備は出来ていた。
初日に泣いてしまったので、気を使って違う場所にしようとしてくれたけど。
アレはたまたま花江と見た藤の花を思い出してしまったために無意識に泣いてしまっただけなので、全然イヤじゃない事を伝えてそのままにして貰った。
「お招き頂き、ありがとうございます」
「そんな堅苦しくしないで。もう家族でしょう? 気軽に母様と呼んで、敬語はなしよ、ね?」
そう言われたら否やはない。
「ありがとう、母様」
「僕もね、普通に話してね? 弟だからね!」
「ふふ、こんなに可愛い子が弟で嬉しいな」
「・・・ふわあ! サクヤ兄様、笑ってる!」
「え?」
僕、笑ってた?
いや、声は笑ってるけど、顔は自信ない。
「花が綻ぶって、こういう事を言うのね。柔らかい顔だわ。よかった。笑えるのね」
「・・・きっと皆のお陰だね。ありがとう」
そうか、笑えるのか。嬉しいと自然に顔が動くんだな。
「スオウもありがとう」
「どういたしまして」
スオウの満面の笑みに、僕もまた笑った顔をした、気がする。
その後は僕の焼いたクッキーを摘まみながら、母様が花江のエピソードを話したり、リオウ君の学園の話を聞いたりしてお開きになった。
その夜、例によってリオネルの執務室に集まったガオウとスオウ、各務をはじめとする影多数・・・ウン、数名じゃなく、多数である。
「・・・別にいいんだけどね? 皆、サクヤの役に立ちたいって気持ちは分かるよ! 分かるけどね!」
ガオウが呆れている。
リオネルは苦笑している。
多過ぎだろう。この場には出ないが、周辺は非常に密であろう事が分かる。
「まあ、有用な情報を得てきたのだろうからヨシとしようか」
そう言って、話を促す。
まずは俺から。
「皇の視察の方は、特に問題はなかったけど、サクヤの方は問題があり過ぎ。本人にもうちょっと詳しく確認を取るけど、外部に漏れると不味い案件ばかりで・・・」
はあ、と溜息を吐く。
各務が付け足す。
「まず地図ですが、上空から見たものをそのまま『転写』したと言ってましたが、現実の風景そのものでした。鳥が見ていたらこうだろうと思われるくらい、正確です。軍事等に使われたら、どこが弱点かなどすぐに分かります」
本人には全くその気はないだろうが、アレは不味い。とてつもなくヤバい。
「それと、転移もですがあの方は魔法は全て無詠唱との事です。魔力量も、本人曰くかなり多いので問題ないとのこと。実際、執務室から始まり、何カ所も苦もなく転移しております」
「他にも、探索とか魔力探知とかシャレになんねえ広範囲でガンガン使ってた。サクヤは比較対象がいなかったから、自分が異常って事を全く分かってない」
それを聞いた皆の顔は青ざめた。
帝国お抱えの魔導師でもそんなことは出来ないからだ。
一体どれ程の魔力量だろう。
「・・・とにかくスオウは、サクヤと魔法の知識の擦り合わせを。ガオウは学園の方はどうだった?」
すでに頭の痛い話だが、リオネルがひとまず先を促す。
それに渋い顔をしながらガオウが話し出した。
「真っ先に生徒会長に連絡を取ったら、案の定、ハルキが連休初日から生徒会のメンバーに突撃していたよ。事前に皆に、いかにアイツが愚かで害悪か話しておいたから総スカン食らってるって」
「それでも懲りずに色んな方に接触を試みていおります」
影の一人が追加してきた。
「・・・その、見張りの時に、あの者が気になる事を口走っていたのですが・・・」
ちょっと躊躇う素振りの影に続きを促せば。
「『何でアイツばっかり! 僕が主人公でしょ?! アイツは悪役令息なのに、何でスオウと仲良くなってんの! あそこは僕の場所なのに!』・・・と喚いておりました」
「・・・・・・どういう事だ? アイツも前世の記憶があるのか? いや、それにしたって、サクヤの記憶とは全く関係ないよな? ・・・主人公って、物語か何かか?」
「そうだとして、思い込みなのか前世の記憶なのか、はたまたただの狂人か。暫く様子見だね。お前達はそのままハルキを見張っててくれ」
「畏まりました」
「さて遅くなるから、この辺りで解散しよう。じゃあスオウ、頼んだよ? サクヤ本人は何が非常識か分かってないだろうから、上手く誘導して聞き出してね?」
「りょーかい」
ハルキの事は気になるが、今はサクヤの事だ。
さて、どうやって聞き出そうかな?
スオウの瞳は獰猛に光っていた。
『サクヤ様、逃げて!!』
各務、他の影が声にならない声で叫んでいたが、サクヤには届かない。
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