27 / 52
王都観光 準備中
しおりを挟むセバスを拾って城を出てタウンハウスに戻った一行は、普段着に着替えてホッと一息吐いた。
「いやあ、王太子の暴走っぷりがあそこまでとは・・・」
そう口火を切ったのはイライアス。
「あんなに馬鹿だったか?」
「おい、仮にも王族だぞ。不敬だ」
「その言いっぷりがすでに不敬」
「それ程でしたか?」
「アルカエラ神が怒るくらいにはね」
ダグラスもヒューズもセバスですらこの言いよう。
まあ、さすがに僕も頭にきたけどね。
「でもお陰でこちらに不干渉という言質を取れたからね。これで煩わしさが減る。良かった良かった!」
「そうだな。それよりも今日はゆっくりして、明日の観光の準備をしないと」
そうだよ!
楽しみにしてたんだ!
「どういうところに行く予定なの?」
「それは内緒だよ。楽しみは取っておかなくちゃね?」
ダグラスがいたずらな顔をしていた。
皆は詳しいのかな?
「僕だけ(王都)初体験?」
首を傾げると、ヒューズが鼻を押さえてダグラスとイライアスは天井を仰いだ。
セバスは普通だったけど。
「・・・ルカの言葉のチョイス・・・」
「---妄想が・・・!!」
ヒューズとダグラスがブツブツと言ってるがよく分からない。
「---アイツらは気にするな。ケーキ食べるか?」
「はい! あ、でもお城で食べちゃった。食べ過ぎだよね・・・?」
「いやいや、もっと体重を増やして欲しいくらいだよ。痩せてるんだから」
「---じゃあ、小さめのを、セバス」
「畏まりました」
そういってケーキを食べようとした時に正気に返ったヒューズがルカに手ずから食べさせていた。
概ね何時もの光景に戻ったようだ。
それからルカはやはり疲れが出て、部屋で横になるとあっと言う間に眠ってしまった。
「ルカも疲れたよな」
「気疲れだろうがな。でもまあ良かった」
「明日は予定をゆっくりに変更しよう」
「余裕を持たせないと、ルカが疲れるからな」
そういってテキパキと予定を組み直して色々と手配をした。
「楽しんでくれるといいな」
「ルカなら何にでもあの瞳をきらきらさせて喜ぶんじゃないか?」
ヒューズの言葉にダグラスは言った。
「確かに」
イライアスやセバスも想像して笑った。
何より辺境伯領から出るのでさえ今回が初めてのルカは、出発してからずっとキョロキョロと目を輝かせていた。
本人はそういうつもりはないのだろうが、小動物のようだった。
可愛らしくて、皆、密かに笑っていたのだ。
「ルカ様がお目覚めになりました」
使用人が告げに来たので、お開きにしてヒューズが部屋へ向かう。
ノックをし、声をかける。
「ルカ、ヒューズだ。起きたのか?」
「・・・ああ、うん。入っていいよ」
部屋へ入るとベッドから立ち上がる所だった。
側へ寄ってエスコートする。
「・・・・・・よく眠っていたな。疲れたか」
「うーん、思ったより疲れてたみたい。寝たらスッキリしたよ。ごめんね?」
「いや、良いんだ。明日の準備もしていたしな」
ヒューズがクロゼットから服を出し、皺になった服を着替えさせて食堂へ連れて行った。
ケーキを食べて眠ってしまった為にお腹の空いてないルカは、スープとパンくらいしか食べられず、料理人達に申し訳なさそうにしながら部屋へと戻って行った。
その後、運動という名の閨をガッツリしっぽりされたルカは、翌朝、きゅるきゅるお腹を鳴らして食堂へ来て、真っ赤になりながらヒューズに給餌されていた。
それをイライアスを始め、使用人や料理人達が生温かく見つめていた。
「お腹いっぱいにしてしまうと、街で食べられなくなるからこの辺で止めておこうか」
「はぁい。朝の御飯も美味しかったです。ありがとうございます」
「とんでもないことです! ありがとうございます」
にっこり笑って御礼を言う。
料理人達もにこにこだ。
「では、支度が調ったら出かけるから、準備を頼む」
イライアスの言葉で、それぞれ準備を始めた。
もちろんルカはヒューズとセバスが準備してくれた。
裕福な家の御子息っぽい服装だった。
ヒューズもお揃いだ。
これだけですでにルカのテンションは上がっていた。
目に見えてわくわくしている様子が可愛らしくてヒューズとセバスはほっこりしていた。
1,025
あなたにおすすめの小説
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる