どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ

文字の大きさ
21 / 22

21 魔導師様 1

若干の不安を抱えつつ、シンに手を引かれて向かうと王宮の魔導師達が詰める魔塔と呼ばれる塔に着いた。
それは前世で言うところの五階建てビルくらいの高さがある、石造りの円形状の塔だった。

「魔導師達が多くいるから、不測の事態に備えて建物は頑丈に、更に結界の魔導具をいくつも設置している」
「……それって、もしかして過去に不測の事態が起こった故の対策で?」
「うん、そう。よく分かったね。かく言う俺もその対策の元になったけど」

要するにお前も魔法とかでやらかしたことがあるんだな。それも対策されるような規模のやらかしをしたんだな。

思わずジト目で見つめると、俺の視線に気付いたシンは何でもないように笑って流した。

「ちなみにその結界の魔導具の発案者はノヴァ、君でしょ。その辺り、ちゃんと自覚してね。じゃないと危険だから」
「え、危険って何が? ていうか発案者が俺って、何で知って──」
「いやいや、何言ってるの。辺境の街でノヴァの魔導具のこと知らない人は赤ん坊くらいじゃないの? 他にも役に立つ知識をあんなに発信してて、無自覚もいいところだよ」

いや何、その情報? 初めて聞いたんだけど。そもそも発案が俺ってこと、内緒にして貰ってたはず。

俺が首をひねっているとシンは苦笑した。でもそれだけで詳しいことは教えてくれなさそう。
まあ、俺が発案者だってバレたときのリスクなんて──あ、もしかして攫われるとか、そういう知識を無理矢理搾取されるとか、そういうこと?

今更、そのことに思い至ってサーッと血の気が引いた。シンの言葉がなければ俺はこれからも無防備に、何の危機感も持たずに呑気に生活していたはずだ。
今の俺は物理でも大した攻撃力はないし、魔法なんて転移以外に何も出来ない。なけなしの魔力を封じられたら、頼みの綱の転移すら発動出来ないんだから。

「……分かってくれた? 君の保護はそういう意味もあるんだよ。万が一、奴隷にでもされたら、とんでもないことになるよ」
「……俺の知識の悪用、だけじゃなく、東国の第一王子という俺を奪還するために、この国に攻めてくるかも」

たぶんだけど、俺の実の両親の国は穏やかな気質だけど軍事力は物凄いと思う。元日本人が多いっていうなら、ラノベやアニメとかの影響で魔法や魔導具は凄いモノが生まれている気しかない。
本気になったら国の一つや二つ、簡単に制圧できるだろう。

「たぶん圧倒的に、蹂躙される未来しか見えない。──怖っ」
「うん、じゃあ自覚したところで件の魔導師様に会いに行きますか」

気が付いたら、その魔塔の入り口を潜っていて、目の前にはらせん階段もあったが、俺が気になったのは透明なガラス張りの筒状の魔導具らしきものだった。

らせん階段の中央にそびえ立つソレは、前世でよく見かけた昇降機エレベーターに近かった。扉が開くようになっていて、中の床には魔法陣の描かれた円形状の石板がある。

「これ……」
「ああ、ノヴァは知ってるんだ。昇降機の魔導具だよ。凄いよね、楽ちんだよね」
「……何で、ここに……」

まさかこの国にも転生者がいて、発明でもしてるのか?

「うん、まあ、あとで教えるね。これに乗って最上階に行くから」
「えーと、魔導師様のところ?」
「そう。──あー、やっぱり会わせたくない、けどノヴァを診てくれる魔導師ってアイツしかいないから仕方ない」
「お、おう?」

この期に及んで、まだダダをこねるシンにちょっと引きつつ、エレベーターに乗りこむとタッチパネルのような縦二〇センチ、横一五センチくらいの半透明の板が浮き出てきた。
何階に行くのか数字を触るようになっている。五階が最上階らしい。
シンが迷いなく触ると、途端にふわっとゆっくり浮き上がり、エレベーター特有の浮遊感に俺は乗り物酔いの感覚がよみがえって吐きそうになった。

数秒で『チン』という音がして止まり、扉が開く。上に上がるときにガラス張りで外がよく見えたが、気持ち悪くて見る余裕がなかった。たった数秒でこれって、俺、乗り物酔い悪化してねえ?

「着いたよ──って、ノヴァ、大丈夫? まさか酔った?」
「……きぼじわる……ぅぷ」
「──あらあら、か弱いお坊ちゃまだね。大丈夫?」

口を手で押さえて、シンに腰を抱かれながらエレベーターから下りたら、やたらとイケボな低音が聞こえて顔を上げると、目の前にはシンと同じ色の長い髪と瞳を持つイケメン寄りの美人なお兄さんがいた。

濃い紫色の高級そうなローブを身に纏っている。見た感じ最上階にいる魔導師様はどうやらこの人らしい。

それにしても──。

「エルフ?」

長い髪の毛からでもはみ出て見える長い耳は、前世でファンタジーな存在であるエルフの特徴を持っていた。

「おーおー、さすが前世記憶持ちの転生者。一発で分かったか」
「……いるんだ、この世界にエルフって」

俺は乗り物酔いを忘れるくらい呆気にとられた。だって人以外の種族を見たことがなかったから。
そこは異世界あるあるじゃないんかい、って残念に思ったヤツ。でも、いたんだ。

「うん、誰も知らない隠れ里に住んでて、外界にいるのはたぶん俺一人だよ。実は俺もねぇ、前世の記憶持ちー! ノヴァ君と一緒だねぇ! やったー!」
「いや外界って。ていうか、軽いな! そんでもって前世記憶持ちって隠さなくていいんかーい!」

思わず叫んだ俺は悪くない。そもそも転生者って日本人が多いって聞いてたし、俺みたいに周りに知られないように行動しないか、普通?
バレたら色々ヤバいだろう!

なのにあっけらかんと言ってのけたうえに、この国の魔導師様で、こんなチャラエルフだとー!?

「シン!?」
「……コイツ、こういうヤツだけど腕はいいから」

俺の言いたいことを察したシンは諦めたように溜め息を吐いた。



感想 5

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

泥酔している間に愛人契約されていたんだが

暮田呉子
BL
泥酔していた夜、目を覚ましたら――【愛人契約書】にサインしていた。 黒髪の青年公爵レナード・フォン・ディアセント。 かつて嫡外子として疎まれ、戦場に送られた彼は、己の命を救った傭兵グレイを「女避けの盾」として雇う。 だが、片腕を失ったその男こそ、レナードの心を動かした唯一の存在だった。 元部下の冷徹な公爵と、酒に溺れる片腕の傭兵。 交わした契約の中で、二人の距離は少しずつ近づいていくが――。

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

王子様から逃げられない!

一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?