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21 魔導師様 1
若干の不安を抱えつつ、シンに手を引かれて向かうと王宮の魔導師達が詰める魔塔と呼ばれる塔に着いた。
それは前世で言うところの五階建てビルくらいの高さがある、石造りの円形状の塔だった。
「魔導師達が多くいるから、不測の事態に備えて建物は頑丈に、更に結界の魔導具をいくつも設置している」
「……それって、もしかして過去に不測の事態が起こった故の対策で?」
「うん、そう。よく分かったね。かく言う俺もその対策の元になったけど」
要するにお前も魔法とかでやらかしたことがあるんだな。それも対策されるような規模のやらかしをしたんだな。
思わずジト目で見つめると、俺の視線に気付いたシンは何でもないように笑って流した。
「ちなみにその結界の魔導具の発案者はノヴァ、君でしょ。その辺り、ちゃんと自覚してね。じゃないと危険だから」
「え、危険って何が? ていうか発案者が俺って、何で知って──」
「いやいや、何言ってるの。辺境の街でノヴァの魔導具のこと知らない人は赤ん坊くらいじゃないの? 他にも役に立つ知識をあんなに発信してて、無自覚もいいところだよ」
いや何、その情報? 初めて聞いたんだけど。そもそも発案が俺ってこと、内緒にして貰ってたはず。
俺が首をひねっているとシンは苦笑した。でもそれだけで詳しいことは教えてくれなさそう。
まあ、俺が発案者だってバレたときのリスクなんて──あ、もしかして攫われるとか、そういう知識を無理矢理搾取されるとか、そういうこと?
今更、そのことに思い至ってサーッと血の気が引いた。シンの言葉がなければ俺はこれからも無防備に、何の危機感も持たずに呑気に生活していたはずだ。
今の俺は物理でも大した攻撃力はないし、魔法なんて転移以外に何も出来ない。なけなしの魔力を封じられたら、頼みの綱の転移すら発動出来ないんだから。
「……分かってくれた? 君の保護はそういう意味もあるんだよ。万が一、奴隷にでもされたら、とんでもないことになるよ」
「……俺の知識の悪用、だけじゃなく、東国の第一王子という俺を奪還するために、この国に攻めてくるかも」
たぶんだけど、俺の実の両親の国は穏やかな気質だけど軍事力は物凄いと思う。元日本人が多いっていうなら、ラノベやアニメとかの影響で魔法や魔導具は凄いモノが生まれている気しかない。
本気になったら国の一つや二つ、簡単に制圧できるだろう。
「たぶん圧倒的に、蹂躙される未来しか見えない。──怖っ」
「うん、じゃあ自覚したところで件の魔導師様に会いに行きますか」
気が付いたら、その魔塔の入り口を潜っていて、目の前にはらせん階段もあったが、俺が気になったのは透明なガラス張りの筒状の魔導具らしきものだった。
らせん階段の中央にそびえ立つソレは、前世でよく見かけた昇降機に近かった。扉が開くようになっていて、中の床には魔法陣の描かれた円形状の石板がある。
「これ……」
「ああ、ノヴァは知ってるんだ。昇降機の魔導具だよ。凄いよね、楽ちんだよね」
「……何で、ここに……」
まさかこの国にも転生者がいて、発明でもしてるのか?
「うん、まあ、あとで教えるね。これに乗って最上階に行くから」
「えーと、魔導師様のところ?」
「そう。──あー、やっぱり会わせたくない、けどノヴァを診てくれる魔導師ってアイツしかいないから仕方ない」
「お、おう?」
この期に及んで、まだダダをこねるシンにちょっと引きつつ、エレベーターに乗りこむとタッチパネルのような縦二〇センチ、横一五センチくらいの半透明の板が浮き出てきた。
何階に行くのか数字を触るようになっている。五階が最上階らしい。
シンが迷いなく触ると、途端にふわっとゆっくり浮き上がり、エレベーター特有の浮遊感に俺は乗り物酔いの感覚がよみがえって吐きそうになった。
数秒で『チン』という音がして止まり、扉が開く。上に上がるときにガラス張りで外がよく見えたが、気持ち悪くて見る余裕がなかった。たった数秒でこれって、俺、乗り物酔い悪化してねえ?
「着いたよ──って、ノヴァ、大丈夫? まさか酔った?」
「……きぼじわる……ぅぷ」
「──あらあら、か弱いお坊ちゃまだね。大丈夫?」
口を手で押さえて、シンに腰を抱かれながらエレベーターから下りたら、やたらとイケボな低音が聞こえて顔を上げると、目の前にはシンと同じ色の長い髪と瞳を持つイケメン寄りの美人なお兄さんがいた。
濃い紫色の高級そうなローブを身に纏っている。見た感じ最上階にいる魔導師様はどうやらこの人らしい。
それにしても──。
「エルフ?」
長い髪の毛からでもはみ出て見える長い耳は、前世でファンタジーな存在であるエルフの特徴を持っていた。
「おーおー、さすが前世記憶持ちの転生者。一発で分かったか」
「……いるんだ、この世界にエルフって」
俺は乗り物酔いを忘れるくらい呆気にとられた。だって人以外の種族を見たことがなかったから。
そこは異世界あるあるじゃないんかい、って残念に思ったヤツ。でも、いたんだ。
「うん、誰も知らない隠れ里に住んでて、外界にいるのはたぶん俺一人だよ。実は俺もねぇ、前世の記憶持ちー! ノヴァ君と一緒だねぇ! やったー!」
「いや外界って。ていうか、軽いな! そんでもって前世記憶持ちって隠さなくていいんかーい!」
思わず叫んだ俺は悪くない。そもそも転生者って日本人が多いって聞いてたし、俺みたいに周りに知られないように行動しないか、普通?
バレたら色々ヤバいだろう!
なのにあっけらかんと言ってのけたうえに、この国の魔導師様で、こんなチャラエルフだとー!?
「シン!?」
「……コイツ、こういうヤツだけど腕だけはいいから」
俺の言いたいことを察したシンは諦めたように溜め息を吐いた。
それは前世で言うところの五階建てビルくらいの高さがある、石造りの円形状の塔だった。
「魔導師達が多くいるから、不測の事態に備えて建物は頑丈に、更に結界の魔導具をいくつも設置している」
「……それって、もしかして過去に不測の事態が起こった故の対策で?」
「うん、そう。よく分かったね。かく言う俺もその対策の元になったけど」
要するにお前も魔法とかでやらかしたことがあるんだな。それも対策されるような規模のやらかしをしたんだな。
思わずジト目で見つめると、俺の視線に気付いたシンは何でもないように笑って流した。
「ちなみにその結界の魔導具の発案者はノヴァ、君でしょ。その辺り、ちゃんと自覚してね。じゃないと危険だから」
「え、危険って何が? ていうか発案者が俺って、何で知って──」
「いやいや、何言ってるの。辺境の街でノヴァの魔導具のこと知らない人は赤ん坊くらいじゃないの? 他にも役に立つ知識をあんなに発信してて、無自覚もいいところだよ」
いや何、その情報? 初めて聞いたんだけど。そもそも発案が俺ってこと、内緒にして貰ってたはず。
俺が首をひねっているとシンは苦笑した。でもそれだけで詳しいことは教えてくれなさそう。
まあ、俺が発案者だってバレたときのリスクなんて──あ、もしかして攫われるとか、そういう知識を無理矢理搾取されるとか、そういうこと?
今更、そのことに思い至ってサーッと血の気が引いた。シンの言葉がなければ俺はこれからも無防備に、何の危機感も持たずに呑気に生活していたはずだ。
今の俺は物理でも大した攻撃力はないし、魔法なんて転移以外に何も出来ない。なけなしの魔力を封じられたら、頼みの綱の転移すら発動出来ないんだから。
「……分かってくれた? 君の保護はそういう意味もあるんだよ。万が一、奴隷にでもされたら、とんでもないことになるよ」
「……俺の知識の悪用、だけじゃなく、東国の第一王子という俺を奪還するために、この国に攻めてくるかも」
たぶんだけど、俺の実の両親の国は穏やかな気質だけど軍事力は物凄いと思う。元日本人が多いっていうなら、ラノベやアニメとかの影響で魔法や魔導具は凄いモノが生まれている気しかない。
本気になったら国の一つや二つ、簡単に制圧できるだろう。
「たぶん圧倒的に、蹂躙される未来しか見えない。──怖っ」
「うん、じゃあ自覚したところで件の魔導師様に会いに行きますか」
気が付いたら、その魔塔の入り口を潜っていて、目の前にはらせん階段もあったが、俺が気になったのは透明なガラス張りの筒状の魔導具らしきものだった。
らせん階段の中央にそびえ立つソレは、前世でよく見かけた昇降機に近かった。扉が開くようになっていて、中の床には魔法陣の描かれた円形状の石板がある。
「これ……」
「ああ、ノヴァは知ってるんだ。昇降機の魔導具だよ。凄いよね、楽ちんだよね」
「……何で、ここに……」
まさかこの国にも転生者がいて、発明でもしてるのか?
「うん、まあ、あとで教えるね。これに乗って最上階に行くから」
「えーと、魔導師様のところ?」
「そう。──あー、やっぱり会わせたくない、けどノヴァを診てくれる魔導師ってアイツしかいないから仕方ない」
「お、おう?」
この期に及んで、まだダダをこねるシンにちょっと引きつつ、エレベーターに乗りこむとタッチパネルのような縦二〇センチ、横一五センチくらいの半透明の板が浮き出てきた。
何階に行くのか数字を触るようになっている。五階が最上階らしい。
シンが迷いなく触ると、途端にふわっとゆっくり浮き上がり、エレベーター特有の浮遊感に俺は乗り物酔いの感覚がよみがえって吐きそうになった。
数秒で『チン』という音がして止まり、扉が開く。上に上がるときにガラス張りで外がよく見えたが、気持ち悪くて見る余裕がなかった。たった数秒でこれって、俺、乗り物酔い悪化してねえ?
「着いたよ──って、ノヴァ、大丈夫? まさか酔った?」
「……きぼじわる……ぅぷ」
「──あらあら、か弱いお坊ちゃまだね。大丈夫?」
口を手で押さえて、シンに腰を抱かれながらエレベーターから下りたら、やたらとイケボな低音が聞こえて顔を上げると、目の前にはシンと同じ色の長い髪と瞳を持つイケメン寄りの美人なお兄さんがいた。
濃い紫色の高級そうなローブを身に纏っている。見た感じ最上階にいる魔導師様はどうやらこの人らしい。
それにしても──。
「エルフ?」
長い髪の毛からでもはみ出て見える長い耳は、前世でファンタジーな存在であるエルフの特徴を持っていた。
「おーおー、さすが前世記憶持ちの転生者。一発で分かったか」
「……いるんだ、この世界にエルフって」
俺は乗り物酔いを忘れるくらい呆気にとられた。だって人以外の種族を見たことがなかったから。
そこは異世界あるあるじゃないんかい、って残念に思ったヤツ。でも、いたんだ。
「うん、誰も知らない隠れ里に住んでて、外界にいるのはたぶん俺一人だよ。実は俺もねぇ、前世の記憶持ちー! ノヴァ君と一緒だねぇ! やったー!」
「いや外界って。ていうか、軽いな! そんでもって前世記憶持ちって隠さなくていいんかーい!」
思わず叫んだ俺は悪くない。そもそも転生者って日本人が多いって聞いてたし、俺みたいに周りに知られないように行動しないか、普通?
バレたら色々ヤバいだろう!
なのにあっけらかんと言ってのけたうえに、この国の魔導師様で、こんなチャラエルフだとー!?
「シン!?」
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俺の言いたいことを察したシンは諦めたように溜め息を吐いた。
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