パライソ~楽園に迷い込んだ華~

エウラ

文字の大きさ
6 / 45

6 第一異世界人に遭遇す

しおりを挟む

───第一異世界人。

この世界に来てはや半年。
引き篭もりしていたせいもあるが、いかんせん森がデカすぎた。

この世界の常識も知識もない俺は何処に行けば生き物のいる街があるのか知らない。
マップだって自分のいる森のある程度の範囲しか表示されない。
延々と続く深い森に、そうそうに森から離れることを諦めた。

当面、森の動物たちがいてくれるし衣食住は困っていない。
・・・・・・まぁ、話し相手が同じ言語を話してくれないのでもっぱら独り言だが。

そりゃあ寂しいが、そもそもこの世界の名前も知らないし。
アスガルドって神様の名前だけ。

こんな俺が人里に降りていって目立たないはずがないだろう。
アスガルド神がメールで言ってた。
ハイエルフは稀少で数がいないと。

そんなん、いくら俺がハイスペックでも捕まって奴隷とかで売られたりなんかしたらもう・・・。
いや、奴隷とかあるのかも知らんが。

だから出るの億劫になっちゃって。

毎日のんびりもふもふに癒されて過ごしていたわけで。

それが何故か今、目の前に第一異世界人がいるんだ。
いやいや、もう自分が異世界人と言うかこの世界の人だから言い方がおかしいけれども。


───誰?
ああいや、結界を越えてきたのなら悪い奴じゃあ無いんだろうけど・・・?

俺の頬を撫ぜていた掌がスッと離れる。

懐かしい長い黒髪に琥珀色の瞳。
俺の体の厚みよりも倍くらいある筋肉質な体。
頭には犬っぽい黒い耳が・・・・・・耳?

頭に疑問符を幾つも浮かべて固まった俺をどう思ったのか、その男はことさら優しい声音で俺に話しかけてきた。

「俺はアイントラハトという。黒狼の獣人だ。俺の言っている言葉が分かるか?」
「・・・・・・」

・・・うん、分かるかな。
でもごめん、ビックリしすぎて声が出ないんだ。
ちょっと待って。

「・・・大陸共通語なんだが、通じないか? 森人エルフみたいだし精霊語じゃないと駄目か? 俺、あんまり話せないんだよな・・・『俺の名はアイントラハト。君は誰?』」
「『・・・俺は、カムイ。ジェイド・カムイ』・・・あ、えっと、大陸共通語? も分かる。ごめんなさい、ビックリしちゃって」

俺が『精霊語』?で話した後に大陸共通語という言葉で返したら、あからさまにホッとした顔をした。

「───ああ良かった。何にも反応しないから焦った。初めまして、ジェイド?」
「あ、の。・・・カムイって呼んでくれる? もう誰にも呼んで貰えない名前なんだ。君に呼んで欲しい」

今となっては誰にも呼ばれない名前。
自分はそんなつもりなかったが、寂しそうな顔でもしてたのか、アイントラハトは一瞬辛そうな顔をしてからニコッと笑った。

「ああ、わかった。カムイ」
「ありがとう、アイントラハト」

嬉しくて俺もニコッと笑って言った。

「アルトで良いよ。長いからね」

アイントラハト・・・アルトがそう言って格好いい笑顔を見せた。
イケメンだなあ。

俺は体を起こして周りを見た。
さっきまでもふもふで溢れていたのに、誰一人(一匹?)いなくなってた。

「?」

首を傾げていると、察したらしいアルトが教えてくれた。

「ごめんね、俺が来たから皆帰っちゃったみたいなんだ」
「・・・そう。いや無事ならいいんだ。そっか、帰っちゃったのか」

もっとモフりたかったな。

そんな俺をジッと見つめていたらしいアルト。
俺は気付かずにアルトに声をかける。

「ところでアルトはどうしてここに? ていうかどうやってここに?」

体に付いた草や汚れを軽くはたき落とすと浄化魔法で綺麗にする。

傍に立つアルトを見ると、カムイよりも20cmくらい高い。
カムイが見上げないと目線が合わない。

───いいなあ。
背が高くて体もガッチリ。
やや細マッチョで格好いい。

なんて思いながら見つめてしまったら、照れたのか視線を逸らされた。
そうだよなぁ。
男に見つめられてもなぁ・・・なんかごめん?

「ああ、えっと、どうやって来たかだっけ? ココには空から来た」
「───空?」

思わず見上げるが何もない。

太陽がいつの間にか傾いて森の木々の間に隠れてしまっていたが、それだけだ。

首を傾げていると。

「ふふ、ワイバーンに乗ってきた。上空で飛び降りたんだよ」
「え」

な、なんですと───!!?






しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...