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30 神の独り言(sideアスガルド神)
しおりを挟む6年前、我が世界の国の一つが禁忌を犯した。
人族の国の一つで他種族を排斥する国だった。
いもしない魔王をあたかもいるかのように振る舞うその様は醜かった。
討伐するための勇者を異世界から召喚などと馬鹿げた事を言って古代の魔法を偶然にも発動させてしまい、我が気付いた時には異世界から召喚された後だった。
召喚されて地上に降り立ってしまえば、幾ら神といえど、秩序が乱れる為、過干渉は出来ない。
ただ見守るしか出来なかった。
勇者らしき人族はしっかりと立っていたが、巻き込まれたらしい森人は意識がないようだった。
青銀の長い髪に線の細い白い体、瞳は今は閉じられていて分からない。
しかし我はこの後起こるであろう出来事に思い至るも、手を出せない状況に歯痒い気持ちだった。
「---!! おお、勇者殿、ようこそ、我が国へ! ・・・・・・ところで、足元の森人はお知り合いで?」
国王の侮蔑を含んだ声と視線に勇者が足元を見て、ニヤリと笑った。
「ああ、顔は知ってる。だが知り合いじゃない」
「---ならば、性奴隷にしても問題はありませんな。何、ちょうど意識がない状態で幸いだ。誰か隷属の首輪を持て!」
「・・・・・・いいのか? そんな事をしても」
「なあに、我ら人族以外は家畜以下です。特に森人は数が少ない上に抱き心地くらいしかいいところは無いんですよ。まあ、長命なので何時までも長く、抱けますよ。それだけです」
---なんて屑発言!
国王もだが、勇者として召喚された男も同類のようだった。
ニヤニヤ笑って止めることもしない。
同郷の者だろうに。
結局、首輪を嵌められ、知らないうちに性奴隷にされてしまった森人を助け出すために6年・・・・・・。
彼の契約精霊のうちの火の精霊サラマンダー、風の精霊シルフィーネを探し出して我の神力を少し譲渡し、火の精霊が閉じ込められていた塔を燃やして、風の精霊が混乱の中、何とか救い出して世界樹に運んだ。
二体の精霊は力を使い果たし、それぞれ眠れる適性の土地に消えていった。
世界樹のところは聖域。
我が唯一、干渉出来る場所。
---ボロボロになって心も壊れてしまった彼の時間だけを戻す。
・・・・・・6年前のあの時まで。
《済まない・・・・・・我が世界の者が、非道な行いを・・・・・・》
静かに眠るカムイにそっと指を沿わせる。
《表層の記憶は消せるが、魂に刻まれている深層までは消せぬ。・・・・・・そのせいで辛い思いをするやもしれぬが・・・・・・我の力はここまでの干渉しか行えぬ》
アバターの能力を出来るだけ最大値にしたことにより高位森人になってしまったが・・・・・・。
《其方の番いには同等の寿命を約束しよう》
せめてものお詫びだ。
暫しカムイを見つめてから、その場を去った。
さて、無事に保護出来た事だし屑共の処理をしてこようか。
漸く実行出来る。
カムイがいる状態では彼にどんな危険が及ぶか分からなかったからな。
出来うる限りの干渉でもって。
まずはカムイとの縁切り。
ソレと、辛うじてあった土地への加護の消失。
後は・・・・・・。
こうしてアスガルド神は考え得る処理をして行った。
この後、国は徐々に衰退していくだろう・・・。
ソレはカムイのあずかり知らぬ事である。
※ここで一旦、ストックが切れたので不定期更新になります。
暫くお待ち下さい。
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