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37 婚約しました
しおりを挟む朝までぐっすり夢も見なかった気がする。
目が覚めて最初に瞳に映るのが愛しい人って・・・サイコーのシチュエーションだよね。
「おはよう、カムイ」
「・・・・・・おはよう」
うう、眩しい顔の至近距離がヤバい。
鼻血出そう・・・!
顔を真っ赤にして目の前の逞しい胸筋に突っ伏した。
支度をして食堂に行くと、昨夜と同じく皆、勢揃いしていた。
使用人さん達もにこにこしている。
何で?
「おはよう、ジェイド。今日はとても良いニュースがあるんだ」
「そうなのよ! お母さん、嬉しくって!」
「・・・何? アルト、知ってるか?」
「いや、俺も何が何だか・・・?」
カムイとアルトがそう言っていると、フルクベルトが一枚の紙をペラッと出した。
「「「「婚約おめでとう!!」」」」
「「「「おめでとうございます!!」」」」
お父さん達が言った後、使用人さん達も一斉に叫んだ。
「え? え?」
「・・・婚約・・・・・・?」
こんやく・・・・・・婚約?!
「え、俺達、婚約したの? てか、出来たの?!」
俺って身元不明の高位森人なんだけど?!
大丈夫なの?!
「ちゃんと許可は下りてるよ、大丈夫。正式に婚約者同士だ」
そういって、俺達に書類の控えを渡してきた。
朝食を食べたら、お父さんが神殿に原本を提出しに行くんだって。
「・・・・・・嬉しい・・・ありがとう、お父さん達」
「ありがとうございます、父さん、母さん、兄さん達も」
「大切な弟の為だ、一肌脱いだぜ!」
「ジェイドも最初から家族同然だもんな。これで本当の家族になれる」
「式は何時が良いかしら、ジェイド達は希望とかある?!」
「・・・え? いや別に、いつでも・・・?」
「別に籍だけ入れれば良いんじゃ・・・?」
「何言ってるの?! 綺麗に着飾って皆に祝福されて結婚するのよ! 任せて!!」
お母さんが力説し始めて、皆が諦めの表情になった。
・・・・・・うん。
止まらないんだね。
もう良いよ、好きにして。
「・・・・・・それより朝ご飯・・・・・・」
「そうだった。ほら、マリア。食べてからならいくらでも考えて良いから、急ごう。仕事に遅れる!!」
お父さんの一声で皆が大急ぎで朝食を食べ、めいめいに出かけていった。
アルトは婚約出来たからか、昨日のようにごねることもなくすんなりと出かけていった。
俺はひとまず落ち着いたので、一度世界樹に帰ることをマリアお母さんに告げてから転移魔法で戻った。
『ちゃんとまた帰ってくるわよね?』
お母さんが心配そうに言うから、大丈夫だよと説得するのが大変だった。
『世界樹に、婚約の報告をしてくるだけだから、心配しないで』
そういって納得して貰った。
数日とはいえ、この世界に来て半年余り、ずっと世界樹の元で過ごしてきたから、寂しい。
ていうか、何だろう。
エルフだからかな、世界樹のところが凄く落ち着くんだ。
世界樹にそっと抱きつく。
アルトとは違う安心感・・・。
「---ただいま。神様、俺、結婚するんだ。アイントラハトって言う、黒狼の獣人。とっても好きなんだ・・・でもね、俺ってハイエルフでしょう? もの凄く長生きだって・・・アルトと少ししか一緒にいられないんでしょ?」
それが辛い。
「・・・・・・どうにもならないのかな・・・・・・」
誰に言うともなしに呟いたんだけど・・・。
《心配せずとも良い》
静かで心地良い声が聞こえた。
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