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53 御対面 3
バーンと開いた扉の向こうからキラキラしいイケオジがズカズカと入ってきた。
アイスブルーの切れ長の瞳をにっこり垂れさせて長い銀髪を緩く縛ったガタイのいい美中年。白い軍服みたいなかっちりした服に、表地は白く裏地が紅い豪奢なマントを肩に引っかけている。
「やっと帰ってきたかロルフ! 待ちきれずに来てしまったぞ!」
そう言って両手を広げて近付いてきたので、俺は正面から抱き付いていたロルフから思わず距離を取ろうとして───失敗した。
一応離れたのだが、素早くロルフに右腕で腰を拘束されてロルフの右側にガッツリ引っ付く形になっただけだった。
「それ以上近付かないで下さい、父上」
「なんでだ! せっかくの親子の感動の対面だというのに!」
「そのまま抱き付いてきたらセッカも巻き込まれます。潰れます。そもそもセッカに触れないで下さい」
ガーンという顔で手を広げたまま立ちすくんだ推定ロルフパパ。
そこに素早くやって来た綺麗な美人さんがハリセンでスパーンとその後頭部を張り倒した。
・・・・・・この世界にもあるんだ、ハリセンって。
「貴方は! 何時も言ってるでしょ! 落ち着きなさいって!」
「ごっごめんなさいごめんなさい!」
美人さんは長い銀髪に金色の瞳でほっそり儚げなのに容赦なくバンバン張り倒している。
───なにこのカオス。
「・・・・・・すまない。うちの親が・・・・・・」
「えーっと?」
「張り倒されてる方がこの国の王で、張り倒している方が王妃だ」
「煩くてすまない」
「はあ・・・・・・何となくそうかなって───え? 誰?」
ロルフが申し訳なく謝ったあとに初めて聞く声がして、ぽけっと返事をしたあと気付いてハッとした。
ロルフ達は苦笑している。
「兄上達、お久しぶりです」
「アドルフォ殿下、アマロック殿下。御無沙汰しております」
「お久しぶりです。お元気そうですね」
ロルフが兄上達と呼び、スレッドが現れた二人をそう呼んで、ダートが割と軽い感じで声をかけた。
ということは、ロルフの上のお兄さん達───つまりは第一と第二王子殿下ってことか。
「セッカ、紹介するよ。第一王子のアドルフォ兄上と第二王子のアマロック兄上だ。兄上達、彼が私の番いのセッカです」
「初めまして。セッカと言います」
「うん、初めまして。アドルフォだ。アルファで一応、王太子やってる。ここでは堅苦しい挨拶はなしでね」
「初めまして、セッカ。アマロックだよ。私も気楽に話して欲しいな。同じオメガだし」
ロルフの紹介のあと気さくに話しかけられて、俺もホッとした。
ていうか、アッチは放って置いて大丈夫なのか?
俺の視線がチラッと向いたのに気付いたアドルフォが笑って言った。
「国王のウルリケと王妃のフロスティだ。私達の両親だが・・・・・・何時もこんな感じだからねぇ。気にしないで」
そう言われても気になるんですけど!
「はあ、えっと、はい。あ、こちらは私の従魔のコハクです」
『・・・・・・よろしくな』
俺の紹介で仕方なくクルルと鳴くが、どうにも居心地悪そうだ。本当にお前、何したの?
「従魔・・・・・・ふーん。あとで本当の姿を見せてくれる?」
「えっと・・・・・・?」
「あぁ、アドルフォ兄上は魔力感知に優れているから、擬態を見破っているんだと思う」
ロルフにコソッと耳打ちされて思わずアドルフォを見るとニコッとされた。
「マジ? あー、ちょっとコハクと要相談で・・・・・・」
「ふふ、期待してるよ」
若干、黒いオーラを醸しだすアドルフォにコハクはぎこちなく顔を逸らす。
俺もちょっとビビりながら曖昧に頷くに留まった。
アドルフォ殿下、怖え・・・・・・。
俺は癒しを求めて、未だにバシバシやり合ってる国王夫夫を思わず見つめるのだった。
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