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冒険者ギルドヘ 1
サイファに宥められて何とか落ち着いた頃、どうやら到着したようで馬車が静かに止まった。
「ラトナ、ココは一般庶民街の入り口付近にある馬車の駐車場なんだ。大抵の者は皆、ココに馬車を預けて歩いて行く」
「ほうほう。じゃあ降りるんだね」
わくわくしながらそう言うと、サイファはキャスケットを俺に渡してきた。
「その前にさっき言ったように帽子を被って、更に少しの間フードも被って貰うがいいか?」
「うん、大丈夫!」
ちょっと申し訳なさそうに言うサイファに俺はにっこり笑って言った。全然気にしてないよーって感じで。実際、全く気にしてないからな。
そうして俺の装備を万端にしてからサイファもローブのフードを被った。
「すまない、俺はそれなりに顔が知られているので周りが騒がしいかもしれない」
「あー、Sランク冒険者だもんね。あっ、王子様っていうのも知られてるの?」
「王族として公務に出ることはあるが、一般庶民に大っぴらに顔を見せたことはないので、知っているのは一部の者くらいだな」
ということは、もしかしてこれから紹介される人は知ってるってことかな?
まぁ、王族以上に凄い身分の人とかいないだろうし大丈夫だよね?
そんなやり取りをしてからサイファが先に降りて、当然のように俺を抱き上げて左腕で縦抱っこする。
俺も慣れちゃって、無意識にサイファの首に腕を回して抱き付いた。
それを微笑ましそうに見守る馬車の御者と護衛騎士達。
抱っこは慣れたが、その視線は慣れなくてなんかいたたまれない。むぎゅっと顔を隠すようにしがみ付くとサイファがクスリと笑った。
「嬉しいが、そんなにしがみ付いてると周りがよく見えないだろう」
「うう・・・・・・うん。えと、周りキョロキョロ見ても大丈夫? 不審者って思われない?」
ハッとしてそう聞くと、サイファは笑って言った。
「豪商のお坊ちゃまの初めてのお忍び街歩き風だから、微笑ましそうに見られるだけだ」
「うえぇ・・・・・・それはそれでイヤだ」
「ははっ」
そうなのだ。今回、街を歩くにあたりどうしても俺達は一般庶民に見えないということで、それなりのお金持ちの商人の子息とその護衛達という体で身形を揃えたんだ。
これなら護衛達がいても不自然じゃないから。
サイファは伴侶だけど、専属護衛に見えるように俺を抱き上げて歩くんだって。
え? それってデフォルトだよね? 設定じゃないよね?
ただ単に俺への独占欲でやってるんじゃないの?
そう言って見つめたらサイファはちょっと目を逸らした。
図星か。
俺以外にも、護衛騎士達もナージュも思わず笑っていたら───。
『ただ、ちょっと不自由にはなるけどね。でも俺は冒険者として身を守れるがラトナには危険な目に合って欲しくないから、そこはすまないが・・・・・・』
サイファにそう言われたけど、俺としては全然、普通に気にしていない。だってそもそも街に行けるとは思わなかったんだから。
『大丈夫だって。それにサイファにくっ付いてれば危険なときは転移で逃げれそうだし、ずっとくっ付いていられて嬉しいし』
俺が存在する、サイファ達の生きるこの世界がどんなところなのか知りたかっただけで、あとはのんびり過ごせれば万事オッケーなんだよ。
そんなスローライフはサイファ達に頼りきりで成り立つというダメダメな俺なんだけどね!
「じゃあ御者さんもゆっくりしててね。護衛さん達もよろしくね」
「はい。お気をつけて」
「我々も少し離れて付いていきます」
護衛達はさっきも城で護衛してくれてた騎士達。
軽装備だけど腰に剣を佩いてる。護衛という見た目をワザと強調して周りを牽制する意味もあるんだって。
前に一人、名前はエリックさん。右斜め後ろがハサードさん、左斜め後ろがモーガンさんというトライアングルフォーメーションだ。
「では行こうか。まずは件の冒険者ギルドヘ」
「は、では周りを固めます」
そう言って自分達の位置について歩き出した。
俺はもちろん抱っこ移動だよ。
街歩きしてないじゃんって言うな。自分の足で歩くだけが散歩じゃないから!
そうして初めての、本当に初めての王都の街歩きが始まった。
俺は見るモノ全てが物珍しいので、あっちこっちキョロキョロと顔ごと動かして、分からないこと全部サイファに質問した。
サイファはフードの下で笑いながら律儀に全部応えてくれて、それで俺は更に興奮して自然と声が大きくなり、ローブから覗いている白いもふもふの尻尾をぶんぶんと振り回していた、らしい。
「ラトナ、尻尾振りすぎ。可愛いけど、俺の視界が奪われる。真っ白で見えない」
「えっあっ・・・・・・うわあ、ごめんね! ヤだ、恥ずかしい。サイファ、俺の尻尾押さえててくれない?」
「・・・・・・ソレは構わないが・・・・・・いやいや、人前でソレはマズい。やはり無理だ」
「何で?」
サイファに注意されたので押さえてて貰おうとしたら、葛藤したあと、断られた。
首を傾げると、左斜め後ろにいたモーガンさんがサッと近付いてコソッと耳打ちしてくれた。
「尻尾は、その、性感帯なので───」
「───え、あ、うえっ!?」
そこで言葉は切れたけど、鈍い俺でも察したよね!
公衆の面前で性的な接触になっちゃうよね!?
何なら公然わいせつ罪とかで通報されちゃうね!? そんな法律あるのか知らんけど!
俺はかあぁーっと顔を赤くしてサイファの首筋に顔を埋めた。サイファごめんね!
「・・・・・・分かったならいい。その代わり、城に帰ったら───」
「はい、ごめんなさい。もう言いません」
「よろしい」
シュンと萎れた俺の頭をフードの上からポンポンと撫ぜる手が優しいから怒ってはいないんだろうけど・・・・・・。
言動には気を付けねばと反省するのだった。
「ラトナ、ココは一般庶民街の入り口付近にある馬車の駐車場なんだ。大抵の者は皆、ココに馬車を預けて歩いて行く」
「ほうほう。じゃあ降りるんだね」
わくわくしながらそう言うと、サイファはキャスケットを俺に渡してきた。
「その前にさっき言ったように帽子を被って、更に少しの間フードも被って貰うがいいか?」
「うん、大丈夫!」
ちょっと申し訳なさそうに言うサイファに俺はにっこり笑って言った。全然気にしてないよーって感じで。実際、全く気にしてないからな。
そうして俺の装備を万端にしてからサイファもローブのフードを被った。
「すまない、俺はそれなりに顔が知られているので周りが騒がしいかもしれない」
「あー、Sランク冒険者だもんね。あっ、王子様っていうのも知られてるの?」
「王族として公務に出ることはあるが、一般庶民に大っぴらに顔を見せたことはないので、知っているのは一部の者くらいだな」
ということは、もしかしてこれから紹介される人は知ってるってことかな?
まぁ、王族以上に凄い身分の人とかいないだろうし大丈夫だよね?
そんなやり取りをしてからサイファが先に降りて、当然のように俺を抱き上げて左腕で縦抱っこする。
俺も慣れちゃって、無意識にサイファの首に腕を回して抱き付いた。
それを微笑ましそうに見守る馬車の御者と護衛騎士達。
抱っこは慣れたが、その視線は慣れなくてなんかいたたまれない。むぎゅっと顔を隠すようにしがみ付くとサイファがクスリと笑った。
「嬉しいが、そんなにしがみ付いてると周りがよく見えないだろう」
「うう・・・・・・うん。えと、周りキョロキョロ見ても大丈夫? 不審者って思われない?」
ハッとしてそう聞くと、サイファは笑って言った。
「豪商のお坊ちゃまの初めてのお忍び街歩き風だから、微笑ましそうに見られるだけだ」
「うえぇ・・・・・・それはそれでイヤだ」
「ははっ」
そうなのだ。今回、街を歩くにあたりどうしても俺達は一般庶民に見えないということで、それなりのお金持ちの商人の子息とその護衛達という体で身形を揃えたんだ。
これなら護衛達がいても不自然じゃないから。
サイファは伴侶だけど、専属護衛に見えるように俺を抱き上げて歩くんだって。
え? それってデフォルトだよね? 設定じゃないよね?
ただ単に俺への独占欲でやってるんじゃないの?
そう言って見つめたらサイファはちょっと目を逸らした。
図星か。
俺以外にも、護衛騎士達もナージュも思わず笑っていたら───。
『ただ、ちょっと不自由にはなるけどね。でも俺は冒険者として身を守れるがラトナには危険な目に合って欲しくないから、そこはすまないが・・・・・・』
サイファにそう言われたけど、俺としては全然、普通に気にしていない。だってそもそも街に行けるとは思わなかったんだから。
『大丈夫だって。それにサイファにくっ付いてれば危険なときは転移で逃げれそうだし、ずっとくっ付いていられて嬉しいし』
俺が存在する、サイファ達の生きるこの世界がどんなところなのか知りたかっただけで、あとはのんびり過ごせれば万事オッケーなんだよ。
そんなスローライフはサイファ達に頼りきりで成り立つというダメダメな俺なんだけどね!
「じゃあ御者さんもゆっくりしててね。護衛さん達もよろしくね」
「はい。お気をつけて」
「我々も少し離れて付いていきます」
護衛達はさっきも城で護衛してくれてた騎士達。
軽装備だけど腰に剣を佩いてる。護衛という見た目をワザと強調して周りを牽制する意味もあるんだって。
前に一人、名前はエリックさん。右斜め後ろがハサードさん、左斜め後ろがモーガンさんというトライアングルフォーメーションだ。
「では行こうか。まずは件の冒険者ギルドヘ」
「は、では周りを固めます」
そう言って自分達の位置について歩き出した。
俺はもちろん抱っこ移動だよ。
街歩きしてないじゃんって言うな。自分の足で歩くだけが散歩じゃないから!
そうして初めての、本当に初めての王都の街歩きが始まった。
俺は見るモノ全てが物珍しいので、あっちこっちキョロキョロと顔ごと動かして、分からないこと全部サイファに質問した。
サイファはフードの下で笑いながら律儀に全部応えてくれて、それで俺は更に興奮して自然と声が大きくなり、ローブから覗いている白いもふもふの尻尾をぶんぶんと振り回していた、らしい。
「ラトナ、尻尾振りすぎ。可愛いけど、俺の視界が奪われる。真っ白で見えない」
「えっあっ・・・・・・うわあ、ごめんね! ヤだ、恥ずかしい。サイファ、俺の尻尾押さえててくれない?」
「・・・・・・ソレは構わないが・・・・・・いやいや、人前でソレはマズい。やはり無理だ」
「何で?」
サイファに注意されたので押さえてて貰おうとしたら、葛藤したあと、断られた。
首を傾げると、左斜め後ろにいたモーガンさんがサッと近付いてコソッと耳打ちしてくれた。
「尻尾は、その、性感帯なので───」
「───え、あ、うえっ!?」
そこで言葉は切れたけど、鈍い俺でも察したよね!
公衆の面前で性的な接触になっちゃうよね!?
何なら公然わいせつ罪とかで通報されちゃうね!? そんな法律あるのか知らんけど!
俺はかあぁーっと顔を赤くしてサイファの首筋に顔を埋めた。サイファごめんね!
「・・・・・・分かったならいい。その代わり、城に帰ったら───」
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