88 / 101
88 魔導師は街に繰り出す 1
しおりを挟む
レグルス父様は、王宮を出たあと、一人転移魔法で帰って行った。
国をまたぐ転移は禁止だったのでは? とも思ったが、来てくれた事実の方が嬉しかったのでスルーする。
僕達はルラック公爵家に帰ったあと、街に繰り出すために着替えをした。
謁見後に倒れて、お城の離宮でラフな格好に着替えたあと、地下牢で一発お見舞いして。
そのラフな格好のまま、ローブをまとっただけで馬車に乗って帰ってきて。
侍女達がせっかくキレイにしてくれたのに、帰ってきたら、あまりにもラフすぎる格好だったから、邸中、どうしたんだと大騒ぎになった。
ルーお爺ちゃんが事情を説明すると、お爺ちゃんと同じように不敬をものともしないで、皆がブーブー文句を言っていて笑った。
「ありがとう。でも、僕もちゃんと報復してきたから、大丈夫だよ」
「あらまあ。どんなことをなさったのか、お聞きしても?」
「ああ、うん。こうね、大きな扇子みたいなのを魔法で作ってね、それで頬を張り倒してきた」
「ほあっ!? 何です、これ!」
そう言って、実際に作って見せると、やはりギョッとしたので、思わず笑った。
「ふふ、ごめん。ロズ達も同じ反応だったから……つい」
「まあ、そうでしょうとも。こんな扇子、見たことありません」
「ふふっ、扇子って言ってるけど、これはハリセンが正式名称で、頭や背中やお尻なんかを叩く道具なんだよ。音は凄いけど、怪我はしないよ」
ユリアナを気絶させたことをすっかり忘れて、軽い感じで教える僕を、側で苦笑しながら見ているロザリンド。
彼が使用人達に首を横に振って否定してたなんて、気付かずに。
「まあ、とにかく、ご無事でようございました。それで気分転換に、街へと出かけるのですね。では、ちょっといいところの商人のお坊ちゃま風に仕上げましょうね」
「え、平民の格好でいいのに」
「セイリュウ様の見目では、平民なんて、とてもじゃないですが無理でございます。かえって浮いて悪目立ちします。いいところのお坊ちゃまと護衛というのがギリギリのラインです」
侍女長が強く言うので、その辺り疎い僕は、彼女達にお任せした。
ということは、護衛役はロザリンドってことかな。
「護衛は、俺ももちろんだが、ルラック公爵家の私設騎士団からも三人ほどつけるぞ。本当は十人くらい欲しいが」
「いやいや、何言ってるの? そんなことしたら、気軽に歩けないよ!」
「それこそ、何言ってるんだ。それくらいしないと心配なんだよ。お前はもう少し、自分の容姿に自覚を持て。可愛いけど、レグルス様にそっくりなんだから」
ロザリンドや侍女達も、皆して、うんうんと頷いている。
ええ……そりゃあ色合いは似てるけど。
「そんなに似てる?」
そりゃあ、着飾れば似てるとは思うけど。普段は平凡だよ。
「むしろ、なぜ似てないと思っているんだ。セイリュウは自己肯定が低すぎる」
「うーん、たぶん、前世の影響かな? 取り立てて目立ったところがない生活だったし」
侍女達は、僕の前世のことを知らないので、ぼかしてそう話す。
そんなだから、今の容姿を鏡で見ても、他人事のような感覚なんだよね。
こればっかりは直そうと思って直せるものじゃない。前世の方が長く生きてたしね。
「……なら、これからは周りの者が、セイリュウが自覚出来るように積極的に褒めそやそう」
「え」
それって、まさか……。
「まずは侍女達に着飾ってもらって、イヤというほど褒めてもらえ」
「ええ!?」
「あら、ロザリンド様からオッケーが出ましたわ。じゃあ、皆、遠慮はいらなくてよ!」
「はい!」
「ひえ」
僕はこのあとのことを想像して、戦々恐々とするのだった。
※レグルス父様はどこに行ったと、自分で分からなくなったので、冒頭で帰った旨を追記しました。
国をまたぐ転移は禁止だったのでは? とも思ったが、来てくれた事実の方が嬉しかったのでスルーする。
僕達はルラック公爵家に帰ったあと、街に繰り出すために着替えをした。
謁見後に倒れて、お城の離宮でラフな格好に着替えたあと、地下牢で一発お見舞いして。
そのラフな格好のまま、ローブをまとっただけで馬車に乗って帰ってきて。
侍女達がせっかくキレイにしてくれたのに、帰ってきたら、あまりにもラフすぎる格好だったから、邸中、どうしたんだと大騒ぎになった。
ルーお爺ちゃんが事情を説明すると、お爺ちゃんと同じように不敬をものともしないで、皆がブーブー文句を言っていて笑った。
「ありがとう。でも、僕もちゃんと報復してきたから、大丈夫だよ」
「あらまあ。どんなことをなさったのか、お聞きしても?」
「ああ、うん。こうね、大きな扇子みたいなのを魔法で作ってね、それで頬を張り倒してきた」
「ほあっ!? 何です、これ!」
そう言って、実際に作って見せると、やはりギョッとしたので、思わず笑った。
「ふふ、ごめん。ロズ達も同じ反応だったから……つい」
「まあ、そうでしょうとも。こんな扇子、見たことありません」
「ふふっ、扇子って言ってるけど、これはハリセンが正式名称で、頭や背中やお尻なんかを叩く道具なんだよ。音は凄いけど、怪我はしないよ」
ユリアナを気絶させたことをすっかり忘れて、軽い感じで教える僕を、側で苦笑しながら見ているロザリンド。
彼が使用人達に首を横に振って否定してたなんて、気付かずに。
「まあ、とにかく、ご無事でようございました。それで気分転換に、街へと出かけるのですね。では、ちょっといいところの商人のお坊ちゃま風に仕上げましょうね」
「え、平民の格好でいいのに」
「セイリュウ様の見目では、平民なんて、とてもじゃないですが無理でございます。かえって浮いて悪目立ちします。いいところのお坊ちゃまと護衛というのがギリギリのラインです」
侍女長が強く言うので、その辺り疎い僕は、彼女達にお任せした。
ということは、護衛役はロザリンドってことかな。
「護衛は、俺ももちろんだが、ルラック公爵家の私設騎士団からも三人ほどつけるぞ。本当は十人くらい欲しいが」
「いやいや、何言ってるの? そんなことしたら、気軽に歩けないよ!」
「それこそ、何言ってるんだ。それくらいしないと心配なんだよ。お前はもう少し、自分の容姿に自覚を持て。可愛いけど、レグルス様にそっくりなんだから」
ロザリンドや侍女達も、皆して、うんうんと頷いている。
ええ……そりゃあ色合いは似てるけど。
「そんなに似てる?」
そりゃあ、着飾れば似てるとは思うけど。普段は平凡だよ。
「むしろ、なぜ似てないと思っているんだ。セイリュウは自己肯定が低すぎる」
「うーん、たぶん、前世の影響かな? 取り立てて目立ったところがない生活だったし」
侍女達は、僕の前世のことを知らないので、ぼかしてそう話す。
そんなだから、今の容姿を鏡で見ても、他人事のような感覚なんだよね。
こればっかりは直そうと思って直せるものじゃない。前世の方が長く生きてたしね。
「……なら、これからは周りの者が、セイリュウが自覚出来るように積極的に褒めそやそう」
「え」
それって、まさか……。
「まずは侍女達に着飾ってもらって、イヤというほど褒めてもらえ」
「ええ!?」
「あら、ロザリンド様からオッケーが出ましたわ。じゃあ、皆、遠慮はいらなくてよ!」
「はい!」
「ひえ」
僕はこのあとのことを想像して、戦々恐々とするのだった。
※レグルス父様はどこに行ったと、自分で分からなくなったので、冒頭で帰った旨を追記しました。
579
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜
侑
BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。
婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。
しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。
王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。
転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。
リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて……
婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。
仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。
2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる