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76 シュヴァルツ公爵家騎士団 3
しおりを挟む---今、樹希の目の前ではノインによる騎士達への地獄の特訓とやらが繰り広げられている。
そしてそこにはしれっと混じる子ウサギぬいもいた。
---どうしてこうなったんだっけ・・・?
樹希は数十分前の記憶に思いを馳せた。
アレは騎士達に自己紹介をしたあと・・・。
騎士の一人が樹希にとある質問をしたのだ。
---随分と小柄ですが・・・。
そう言われて、午前中のお茶会での一幕を思い出した樹希は、皆まで言うな、とばかりに自分の年齢と成人済みでもう大きくならない事をヤケクソ気味に叫んだのだ。
それからである。
むちゃくちゃ怒ってるっぽいシュルツとノインが騎士達を射殺さんばかりに睨んで騎士達を震え上がらせ、その後、ノインはにっこりと笑って樹希に騎士達全員を治癒魔法で癒して欲しいと頼んできた。
すでにボロボロだった騎士達を目の前にしていた樹希は、それに疑問を持たずにそこにいる全員・・・ノインやシュルツにも・・・に治癒魔法をかけて元気にした。
その時、ノインとシュルツを見た騎士達は震え上がっていたが、樹希はこの時シュルツに抱っこされてシュルツの太い首元に顔を埋めていたのでそれに気付かなかった。
---そしてノインとシュルツがとっても恐ろしい笑顔でいた事にも・・・。
「---始めっ!!」
シュルツの合図で、凄い数の騎士達が一斉にノインとフェアグリン・・・ウサギのぬいぐるみ達に襲いかかる。
もちろん武器はそれぞれ模擬戦用に刃を潰してあるが、思い切り振れば傷も出来るし衝撃で骨も折れたりする。
まあ、そこは丈夫な身体を持つ竜人ばかりなのでそこまでの大怪我ではないらしいが。
それにしても、広いステージのような丸い闘技場の上で真っ白いもこもこウサギのぬいぐるみに襲いかかる筋肉マッチョ達という絵面はシュールである。
本当ならぴるぴる震えるはずのウサギが一番ヤル気に満ちているのだが・・・。
「・・・・・・シュルツ、これは・・・・・・?」
困惑気味な樹希にシュルツが言った。
「総当たり戦だな。母上が敵大将役で、今回はフェアグリンが副大将役でいるが。それで騎士達は大将達を倒すという訓練だ。だが個人プレーは難しい。上手く作戦を練ったり連係プレーをしたりと、協力し考えながら動かないと母上達は倒せない」
「へえ・・・・・・それだけ母様は強いって事?」
「まあな。俺でも未だ全敗だ。おそらくフェアグリンも同等レベルだぞ」
「---ええ? 凄いんだね、母様達」
シュルツもSランク冒険者で凄く強いはずなのに、全敗って・・・・・・。
思わずポカンとしてしまった。
「・・・ふっ、そうだな。それでイツキには戦闘不能になった騎士達を治癒して欲しい。だからここでお茶を飲みながら観戦していような」
「・・・うん」
---そうはいったものの、さすがの樹希も目の前で繰り広げられるバトルロイヤル的な訓練に気が気では無く、のんびりお茶を飲むという心境にはなれなかったのだが・・・・・・。
ひたすら無になって、シュルツの差し出すお菓子をもっくもっくと口を動かして飲み込んでいたのだった。
※遅くなりました。
シュルツさん、今回はイツキの心情に気付いていない模様・・・。
イツキにデスマッチ?を喜ぶ趣味はありません(笑)。
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