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6 九死に一生を得たらしい
全身が灼けるように痛くて熱い・・・のが一瞬で消えた。
いや、一瞬じゃあないか。
だってあの後気絶したもんな、俺。
あの後どうなったのかなんて全く分からない。
気が付いたらベオウルフのベッドに再び寝ていた。
どのくらい寝てたのか。
今はカーテンがちょっと開けられているけど、月明かりが差し込んでいる。
夜の何時なんだろう?
「・・・・・目が覚めたのか」
ベオウルフが酷く心配そうな目で見つめてきた。
ああ、そういえば俺、日の光に灼かれて・・・・・。
思い至ってサーッと青くなる。
俺、何やった?!
言われるがまま、何も考えずにカーテン開けて。
死にかけたんだよな?
それでたぶん、またベオウルフに助けられた?
思わずがばっと上半身を起こして頭を下げた。
「ーっごめ、ごめんなさい、俺また迷惑・・・」
「謝るな。お前のせいじゃない。アイツが迂闊な事をしたせいだ。・・・お前は、記憶が無いせいで吸血鬼って自覚が無いから」
そう言われて、そういえばあの時、頭からスッパリ消えていたな、自分が吸血鬼って。
「・・・・・うん、吸血鬼ってお日様に弱いんですね。もの凄く熱くて痛くて死ぬかと思いました。・・・あの、もしかして、また助けてくれました?」
「あ、ああ。俺の血をな、少し吸ったらあっと言う間に治って・・・驚いた」
心底驚いたように言うベオウルフに不思議そうに首を傾げる桜雅。
───おそらく、記憶が無いから比較が出来ないのだ。
自分がどれ程特殊な吸血鬼か分かっていないのだろう。
ベオウルフは話を変えるように聞いた。
「何処か違和感は無いか? 痛いとか苦しいとか」
そう言われて桜雅は手をにぎにぎしたりしてみたが、普通に動く。
「───大丈夫そうです」
「そうか。ひとまず診て貰おう。ウチの医療部隊の部長が診てくれてな、さっきも桜雅が気が付いたら呼んでくれと言っていたので呼ぶが、心配ないからな」
アルスのせいで怖がらなきゃ良いが。
そうベオウルフが思っていると。
「・・・あの、さっきの、えっとアルスさん? の事は気にしませんよ。不審者に警戒するのは当然ですし」
「・・・・・アイツ、名乗りもしなかったのか・・・。絶対シメる・・・!! 本当に悪かった」
「もう良いですってば」
「───はあ、とりあえず診て貰おう。呼んでくるから待ってろ。俺以外には開けるなよ?」
「大丈夫ですって」
部屋をあとにするベオウルフを見送り、過保護だなあとクスリと笑い、ぽすっとベッドに倒れ込んだ。
痛いところとかは無いが、体がちょっと重怠い気がする。
ベオウルフによると彼の血を貰って回復を早めたんだろうけど、その弊害なのか?
それとも単に栄養が足りていないのか・・・?
何で記憶喪失なんだろう?
考えようとすると頭が痛くなるようだし。
何にも分からなくて、昼間は外に出られそうに無いし、そもそもベオウルフ以外の血って飲めそうに無いんだけど・・・・・俺・・・詰んでる?
つらつらとそんな後ろ向きな事を考えていたらベオウルフがお医者さんらしい人を連れて戻ってきた。
「こんばんは。良かった、意識が戻ったんですね。心配しました。あ、私はこの騎士団の医療部隊の部長でマロウド・トーイと言います。トーイと呼んで下さい」
「あ、はい、こんばんは。羽柴桜雅です。桜雅で良いです」
お医者さんぽい人はウサ耳だった。
それも垂れてるタイプの。
そういえばベオウルフって狼っぽい名前だけど耳も狼っぽい?
「・・・どうかしましたか?」
ジッと見つめて考えこんでたらしい。
トーイさんがキョトンとして聞いてきた。
可愛い・・・じゃなくて。
「あ、いえ、えーと・・・お二人はどういう種族?なのかなって・・・スミマセン」
「・・・オルヴァ団長、教えてないんですか?」
ジト目でベオウルフを見るトーイさん。
気まずそうにしながらベオウルフが言った。
「そういえば、名前くらいしか。すまない、俺は人狼で」
「私は兎人ですよ。よろしくお願いしますね」
にっこり笑ったトーイさんこちらもにっこり笑う。
「こちらこそ」
「じゃあ種族も分かったところで、一通り診察しちゃいましょうか」
「はい、えっと、脱いだ方が良いですか?」
「え?」
「え?」
「・・・・・・え?」
トーイさんにっこりしたまま固まっちゃったけど、何かマズかったですか?!
見るとベオウルフも驚いて固まってた。
え?
どうすれば・・・・・・?!
※ちょっと忙しくて投稿予約忘れてました。
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