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2 噂ってあっと言う間に広がる
しおりを挟む例の森からブランシュを連れ帰った途端、もの凄い速さで、冒険者ギルドはおろか街中に広まった。
さほど小さな街でもないクセに、娯楽に飢えているらしい。
「あのレイヴンが嫁さん連れ帰って来たってよ!」
「何処で見つけたんだか、もの凄え別嬪さんって話だぜ!!」
「あの野郎、何処に隠してやがったんだ?!」
「うわっ、ホントに美人だわ!」
「悔しい---!」
「アタシがいながら、浮気者っ!!」
「いやあんた、相手して貰ったことも無いじゃん」
そんな話を、ギルドに向かう二人に聞こえるようにワザと大きな声で話している冒険者や街の住民達。
『・・・・・・レイヴンって、人気者?』
初めての森の外、初めて空を翔び、初めて見た建物や人々に興奮し通しだったブランシュも、周りでわいわい騒ぐ声や視線に徐々にテンションが下がって来たようだ。
元々儚げな見た目が更に空気のように透明になってきている気がする。
「・・・・・・ほっとけば良い---って、お前・・・透けてないか?!」
慣れたように無視しながらそうブランシュに返せば、左腕に抱えたブランシュが心なしか透き通っている。
ギョッとしたレイヴンが慌てて駆け出す。
『・・・レイヴン? どうしたんです?』
「何を呑気に・・・! 何処か具合悪いのか?!」
『え? ---ああ、コレはねぇ、気配を薄くして周りに同化しようと思って・・・』
「・・・・・・は? 同化って・・・・・・」
『うん、たくさんの生物に慣れないのでねぇ。森の時みたいに姿を眩まそうと・・・だから心配しなくて大丈夫ですよ?』
腕の中でのほほんとそう言われて、レイヴンは駆けていた足を緩める。
それでも小走りくらいだったが。
「---はああ・・・、まあ良い。早くギルドに行こう。で、サッサと宿に戻りたい」
『・・・はぁい。・・・何か、ごめんなさい?』
「謝らんでいい。ブランシュのせいじゃ無い」
いつにも増して多いこの視線がブランシュがいるせいだとは分かっているが、だからといってコイツを責めるのはお門違いだ。
「それよりも感謝の言葉の方が良い」
『---っありがとうございます、レイヴン』
そう言ってふふっと笑ってくれる方が何倍も嬉しい、なんて思う日が来るなんてな・・・と内心で苦笑しつつも、レイヴンは笑って言った。
「ああ、それで良い」
そうして駆け足でギルドに入れば、一斉に視線を向けてザワザワ騒ぐ冒険者やギルド職員達。
それらを一瞥して睨むと静かになったので、受付にいるヤツに声をかける。
「おい、従魔登録してくれ」
「---へっ?! じゅ、従魔登録、ですか? ・・・・・・あの、その従魔は、何処に・・・?」
「ココにいる」
『どうも~・・・』
「・・・・・・・・・・・・はっ?」
レイヴンが告げるとあたふたとする受付職員。
従魔の事を聞かれてブランシュを突き出す。
ブランシュは戸惑いながらも手を挙げた。
「・・・・・・・・・・・・は?!」
「いや嫁じゃ無いの?!」
「えっ、この別嬪さんが従魔?!」
「魔物?!」
「嘘吐け?!」
「煩ぇ---!! 嘘じゃねえ!!」
『えっと・・・たぶん・・・魔性植物・・・?だと思いますぅ・・・』
「「「「何なんだよ、その自信の無さは---っ!!」」」」
黙って事の成り行きを見守っていた周りの冒険者達もツッコみまくる。
それにキレてレイヴンが喚き、ブランシュが一応自己申告するも自信なさげに言うものだから収拾がつかなくなった。
「お前ら煩い!! 静かにせんか!!」
「ッギルマス!」
「何やら楽しそうですねえ」
「サブギルマスも・・・」
ソコにやって来たのはこのギルドのギルドマスターとサブギルドマスターだ。
一気に静かになってところで、顎でくいっとギルマスの執務室に誘導する。
「面倒くさいだろう。コッチでやれ」
「・・・助かりました」
「そちらの美人さんもどうぞ」
『・・・ありがとうございます』
4人?はサッサと執務室に消えていった。
残された者達はこそこそと話をしだす。
「---あの美人さんが、魔物?」
「嫁さんじゃあ無いって?」
「どゆこと?」
「「「さっぱり分からん?!」」」
皆は疑問符を浮かべ、冒険者達はそれぞれ散って行き、職員達は仕事に戻るのだった。
※続きの更新は文字数少ないです。すみません。
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