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12 レイヴンの外出と悪いヤツら
時は遡って、レイヴンが宿主にブランシュを頼んでから十数分後。
数人の輩が密かにレイヴンの後を付け、数人は宿に忍び込んだ。
宿主はちょうど裏口で今日の夜と明日の朝の食材の搬入に気が向いていて、不審者に気付いてはいなかった。
従業員も洗濯物の取り込みや夕食の仕込みで厨房にいてたまたま目が離れていたせいで、正面から堂々と入り込まれてしまったのである。
そしてこの不審者達、身形の良い商人風だったのも良くなかった。
宿の宿泊客も数人いたが、誰も気に止めなかったのである。
一方、レイヴンはさすがに尾行に気付いていた。
何時も癖でサーチ魔法を使っている上に、元々気配には聡いのだ。
---ブランシュを狙ってるんだろうな。
昨日の騒ぎでブランシュの面は割れている。
更には従魔という話も広まっただろう。
そしてブランシュ自身、儚げ美人でレイヴンが贔屓目無しに見ても見目が良い。
おおかた、性奴隷にでもして何処ぞの貴族辺りに売りつけようって算段だろうが・・・。
「---させるわけねえだろ」
レイヴンはワザと狭い路地に入ってヤツらを誘い込むと、くるりと向きを変えて正面から対峙した。
「---よお、俺に何か用か?」
「---っ、いやなに、アンタの従魔だっていうあのかわい子ちゃんを、俺達に譲ってくれねえかと思ってよ? どうだ? 言い値で買ってやるぜ?」
ニヤニヤしながらそう宣う悪漢共にスンッとしたレイヴンは、すぐに心底イヤそうな顔で応えた。
「ブランシュは俺の伴侶だ。金でどうこうするようなモンじゃねえ。去ね」
「---っじゃあ力尽くだな!」
「ソレこそ俺の本領発揮だな」
襲いかかってきた輩を不敵に笑って迎え撃つレイヴン。
悪党共に、レイヴンはその背に隠していた漆黒の翼を広げると一羽ばたきした。
途端に煽られ、吹き飛ばされる悪党共。
その顔は最初の余裕が無くなり、若干青ざめていた。
「---お前っまさかSランクの・・・?!」
「・・・鴉一族の---!!」
「おいおい、俺を襲うくらいならちゃんと事前に調べておけよなぁ?」
「---!! ヤバいっ!! 逃げろ!!」
「うわあ---!!」
慌てて逃げ出す悪党共にニヤリと笑うレイヴン。
「・・・鴉は執着心が強いんだぜ。狙った獲物はドコまでも追いかけて---」
必ず潰す。
獰猛に嗤ったレイヴンは、ブランシュのためにサッサと片付けるべく動き出した。
ソレからすぐ後、レイヴンは宿に向かっていた。
「---アレ? もうお戻りですか?」
受付に戻っていた宿主がレイヴンに気付いて声をかけた。
「ああ、ちょっとな。・・・誰か来たか?」
「ええと、裏口にちょっと行ってて、その時はどうだか・・・? ぁ、でもお嫁さんは起きてきてないみたいですよ」
「そうか、ありがとう」
他愛もない会話をして上の階に向かうレイヴンを見送り、再び宿の仕事に戻る主人。
少しして、ドカッゴスンドゴッバキッという音が聞こえて、慌ててそうっと階段上を覗き込むと・・・。
「---宿主、悪いが憲兵を呼んでくれるか?」
「一体、どうしたので・・・ひいっ?!」
レイヴンの声が聞こえたので応えながら上を見ると、ボコボコになった商人風の男が四人、レイヴンに引き摺られているのが見えて思わず叫んだ。
「俺の部屋をこじ開けようとしてた。ブランシュ・・・嫁を攫おうとしていたのだろう。商人風の出で立ちだがコイツら違法な奴隷商人だ」
「---えっ?! いつの間にこんな輩が?! すみません!! 急いで憲兵を・・・おおい!!」
「どうしました?」
「人攫いの奴隷商人らしい。宿に不法侵入してたんだ。早く憲兵を呼んできてくれ」
「うわっ?! え、もしかしてレイヴンさんが捕まえてくれたんですか?! うわあ、助かりました!! 急いで行ってきます!!」
話を聞いて、従業員が大急ぎで出て行った。
宿主はほっとしてレイヴンに話を振った。
「・・・でも良く気付きましたね?」
「さっき出先で俺も襲われたからな」
「・・・・・・ソレは、お相手がご愁傷様で・・・」
「ふっ。俺の素性を知らなかったらしい」
「あー・・・。最近騒ぎになってたヤツらですかね。新参者でレイヴンさんのこと、知らなかったんですねえ。おかげで助かりましたけど」
そうこうしているウチに憲兵達が到着し、奴隷商人を連れて帰っていった。
「先ほどの・・・レイヴン殿。助かりました」
「ああ。嫁が気になって戻ってきて良かった」
「・・・ご伴侶殿を狙われたのですね。無事で良かったです。凄い美人だと窺っております」
「・・・・・・ああ、まあ・・・」
「お幸せに! では失礼致します」
憲兵隊長は満面の笑みでほくほくになり、帰っていった。
「・・・・・・はあ。じゃあ改めて出かけてくるが、宿の出入り口に何か対策をしたほうが良いと思うぞ?」
「・・・・・・肝に銘じます。早速、魔導具なぞ・・・」
そんなやり取りをして再び出かけたレイヴンを見送る。
「・・・しかしアイツら、レイヴンさんのあの結界魔法を破ろうとしてたの? そりゃ無理でしょー」
本当にアイツらの運がなかったとしか言いようが無い。
伊達にSランク冒険者してないのだから。
苦笑して早速出入り口に魔導具の設置を検討する宿主だった。
---その頃のブランシュは結界魔法の中で何も聞こえず、振動もなく、ぐっすりと夢の中であった。
※ブランシュの知らないうちにフラグ立てて回収されてましたとさ。
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