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18 レイヴンのお買い物事情振り返り 2
しおりを挟む屋台で目に付いた料理を買いながら鍛冶屋のおやっさんのところに戻る途中のレイヴン。
昼のピークを過ぎたのに人が多いし、やたらと視線を感じる。
何時もは飄々と流していたが、今日のはどう見ても含みのある生温かい視線だった。
しかしソレにツッコんでしまえば絶対にさっきの二の舞だと堪える。
だが、そういうときに限って向こうからツッコんでくるのだ。
「よう、レイヴンさんよぉ、嫁を貰ったんだって?」
そう声をかけられれば振り向かざるを得ない。
声の主を振り返り見れば、案の定、常連の串焼き屋のオヤジだった。
「・・・・・・まあな。どうせアンタのコトだ、俺に聞くより詳しいんじゃないのか?」
「いやあ参ったねえ。そりゃあ、お前さんの嫁がそこいらの美女よりも綺麗な儚げ美人の兄ちゃんだってコトも知ってるけどよぉ」
「---良く男だって分かったな。まさかギルマス達・・・」
「ああ、ソイツは無いぜ。単に俺の勘だ。カマをかけただけよ。・・・・・・上手く引っかかってくれて助かった!」
「---ッチ」
大っぴらには言えないしそうとは気付かせないが、この屋台のオヤジはいわゆる情報屋で、どんなツテやコネを持ってるのか、ありとあらゆる情報を手に入れてソレを密かに売っている。
かく言う俺も何度も御世話になっているオヤジで情報は正確で信用できる。
そんなヤツだから、一晩もあればブランシュの種族さえも知っているだろうし、さっきの違法奴隷商人やら服屋でのやり取りまでも把握しているのだろう。
現にニヤニヤ笑っている。
「いやあ、変態鬼畜って叫ばれて---」
「ストップ! アレは誤解だから。余計なこと口にしないでくれ」
「はっはっは!! 天下のレイヴン様も嫁のコトには弱いってか!」
「煩い。もう良いから、何時もの串焼き5本くれ」
「アレ、5本? 嫁さんには?」
「・・・どうせ分かってんだろう? アイツには別のご飯が必要なんだよ」
「そうだった。お前のアレがご飯だっけなぁ」
「・・・・・・良いから早く寄越せ」
「照れてんのか? ・・・・・・ああ、いや、スマン。そうか・・・・・・。初恋かぁ。甘酸っぱいなぁ、新鮮だなぁ」
そう言って一人うんうん頷いて納得するオヤジにイラッとしながら金を支払う。
ほんっとうにどっから情報仕入れてんだよ?!
悪かったな、初恋だよ!!
「末永くお幸せに~! 次は一緒に来いよ。オマケしてやるからな!」
「はいはい」
ソレを皮切りに、そこら中の屋台や店、果ては通行人にまで声をかけられ祝いだと手土産を渡され、適当にあしらいながら漸く辿り着いた鍛冶屋で、またもや絡まれ・・・。
「ほれ、ご所望の装飾品一式出来とるぞい! 結構時間かかったの」
「服屋から屋台のオヤジから、そこら中で捕まってた。・・・・・・さすがに疲れた」
そこらへんの椅子にだらしなく座るレイヴンに鍛冶屋のおやっさんも苦笑した。
「有名人は辛いの」
「---たかが嫁くらいで大袈裟なんだよ」
「それだけお主を心配しとるんだろ? お前さん、いい歳して恋人の話、一つも聞かなかったし。・・・まあ一夜のお相手は腐るほど聞いとるがな?」
「・・・・・・そんな相手、いなかっただけだろ」
「そこに今回、降って湧いた伴侶だろう? そりゃあ皆、浮かれて大騒ぎさ。当分は騒がしいな」
そう言って笑うおやっさん。
「はー、面倒くさい」
「ホレホレ、腐っとらんで確認しろ。ピアスに指環に腕輪、あとチョーカーな」
「---おー、サンキュ。・・・・・・アレ? ピアスが一組多いぞ?」
「そりゃ、お前さんの分だ。お揃いで使え。ピアスなら邪魔にはならんだろう? どれも付与はお前さんの好きに入れられるように付けてない。台座に黒曜石と魔導銀を使っとるからかなり付与出来るぞ」
しっかり考えが読まれていたようだ。
さすがだな。
「・・・・・・助かる」
「何、お前さんならそれくらいの素材を使ったとて端金だろう?」
そう言っておやっさんは請求書を見せた。
---ああ、確かに良い金額だがかなり安い。
コレがお祝い代わりなんだろう。
確かに俺の稼ぎなら余裕で払える額だ。
「ありがとう。いい出来だ」
「おう、今度は嫁さん連れて来いよ!」
「・・・・・・ドコでも言われるな、それ」
「皆、考えることは一緒だってコトよ。良い子らしいしな」
「・・・・・・まあ、そのうちな」
そう言って別れて、漸く宿に向かった。
---まだ寝てるかな?
満足げに眠っていたブランシュを思い浮かべて、自然と柔らかい笑みを浮かべていたことには気付かず、今度は真っ直ぐに宿へと歩いていくレイヴンだった。
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